基礎型
遠見と近見の差:10PD以内
AC/A比:正常
融像幅:正常
特徴:最も一般的な病型

間欠性外斜視(intermittent exotropia)は、片眼が固視目標を注視中に他眼が外方偏位する外斜視の状態と、両眼とも固視目標を注視して外方偏位が現れない外斜位の状態が合併する斜視である。日常では正位が多いが、疲労時・注意散漫時・寝起き・遠方視・強い日差しの屋外で外斜視が顕在化する。
外斜視症例の約75〜90%を占め、全人口の約1%に認められる。斜視の中で最も発症頻度が高く、小学生の約0.14%にみられる。発症時期は幼児期から8歳くらいまでで、3〜4歳頃の発症が最も多い。通常5歳以前に始まる。
未治療の場合の転帰は以下のように報告されている。
Von Noordenは未治療51人を平均3.5年追跡し、75%に進行、9%変化なし、16%改善を報告した。加齢などの影響により恒常性外斜視に移行することもある。
約10%は自然治癒するが、約50%は恒常性外斜視へ進行する。残り約40%は変化なしである。自然治癒の可能性はあるものの、進行リスクが高いため定期的な経過観察が必要である。
初期には融像性輻輳(両眼を寄せる力)で斜位を維持しやすいが、疲労時・体調不良時・起床直後に外斜視になりやすい。子どもは自覚症状を訴えることが少ないため注意が必要である。
斜位時の眼位は良好で、両眼視はほぼ正常に発達する。以下の所見が認められる。
外斜視のコントロール状態を以下のスケールで評価する。
| スコア | 状態 |
|---|---|
| 5 | 恒常性外斜視 |
| 4 | 検査時間の50%超で外斜視 |
| 3 | 検査時間の50%未満で外斜視 |
| 2 | 遮閉しない限り外斜視にならず、回復に5秒超 |
| 1 | 回復1〜5秒 |
| 0 | 回復1秒未満(外斜位) |
遠見立体視は偏位コントロールと融像悪化の客観的評価手段となる。近見立体視は疾患悪化の指標として使用可能である。
明るい屋外での片目つむりは間欠性外斜視の特徴的な症状である。強い光により融像が維持しにくくなり、外斜視が顕在化することで誘発される。繰り返しみられる場合は眼科受診が望ましい。
間欠性外斜視の原因は多因子性であり、単一の原因で説明されない。以下の因子が関与するとされる。
間欠性外斜視の診断には、複数の眼位検査と屈折検査を組み合わせて行う。融像幅が広いため測定のたびに斜視角が異なることがあり、最大斜視角を検出して手術適応の判断に臨む。
基礎型
遠見と近見の差:10PD以内
AC/A比:正常
融像幅:正常
特徴:最も一般的な病型
開散過多型
遠見偏位:近見より10PD以上大きい
細分類:見かけの開散過多型と真の開散過多型
鑑別:パッチテストと+3.0D加入で判定
輻輳不全型
近見偏位:遠見より10PD以上大きい
AC/A比:正常または低い
特徴:近見作業で症状が出やすい
偽開散過多型
特徴:30〜60分の単眼遮閉後に近見偏位が増加
鑑別後:遠見との差が10PD以内に収まる
本質:基礎型に近い病態
基礎型・開散過多型・輻輳不全型・偽開散過多型の4型に分類される。遠見と近見の偏位量の差やAC/A比に基づいて病型を判定し、治療方針を決定する。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。
間欠性外斜視の治療は、病態の重症度やコントロール状態に応じて非手術的治療と手術的治療を使い分ける。最も有効な治療は手術療法である。
以下のいずれかに該当する場合に手術を検討する。
原則4歳以降に適応を判断する。両眼視の維持の点からは5〜10歳頃までに手術を行うのがよいとされる。間欠性外斜視45例と恒常性外斜視31例を比較した報告では、60秒角以下の正常立体視の獲得には7歳までの手術および斜視発症から5年以内の手術が必要であり、恒常性に悪化してからの手術では39%しか正常立体視が獲得できなかった。
遠見斜視角を基準に術式を選択する。
両外直筋後転術
適応:基礎型・開散過多型
特徴:最も一般的な術式
後転短縮術
内容:片眼の外直筋後転+内直筋短縮
適応:弱視がある場合に選択
両内直筋短縮術
適応:輻輳不全型に有用
特徴:近見偏位が大きい場合
50PDを超える大角度の症例では、両外直筋後転に加え1本以上の内直筋短縮を併用する。
A型・V型斜視が併存する場合は以下の対応をとる。
術後成功率は約60〜70%と報告されている。ただし小児期の手術では術直後と比較して10〜25PDの「もどり」が少なからず生じるため、術直後の眼位を10PD以内の内斜視にする意図的過矯正が理想とされている。成人の「もどり」は小児より少ない。
原則4歳以降に適応を判断する。外斜視相の頻度増加、偏位量の増大、恒常性への移行などがみられた場合に手術を検討する。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
間欠性外斜視の発症には機械的因子と神経支配因子の両方が関与する。
脳幹被蓋の開散中枢や中脳網様体の開散バースト細胞が開散運動を制御している。これらの神経支配の不均衡により外方偏位が生じる。融像機能の先天的欠陥とする説もあるが、多くの患者で正常な両眼視機能が保たれている点から、主因とは考えにくい。
AC/A比(調節性輻輳/調節比)の測定にはheterophoria法とgradient法がある。遠見と近見で斜視角の差が10PD以上の場合に高AC/A比と判定する。高AC/A比は開散過多型の特徴であり、+3.0Dレンズ加入テストでその関与を評価する。
Dondersの理論では、未矯正近視や遠視により調節性内寄せが不足し、外斜位が発生するとされる。
間欠性外斜視は以下の段階を経て進行する。
外斜位 → 間欠性外斜視 → 恒常性外斜視
早期発症の場合、感覚適応による抑制が生じ、複視を自覚しないことが多い。このため保護者が外見上の眼位異常に気づくことが発見の契機となる。
遺伝的素因も関与し、病因は多因子性である。外眼筋プーリーの位置異常は機械的な要因として眼球運動の偏りを引き起こす。
Yoshimuraら(2022)は、間欠性外斜視の6歳女児に対し外直筋後転6.0mm+内直筋短縮6.5mmを施行したところ、術眼に+0.25Dから-9.00Dへの一過性の高度近視化が生じた症例を報告した1)。AS-OCTで毛様体剥離・前房浅化(1.955mm vs 対側3.007mm)・水晶体厚延長(4.216mm vs 対側3.528mm)を確認した。8週間で自然回復した。
原因として、斜視手術による前眼部虚血がぶどう膜炎を惹起し、毛様体剥離からZinn小帯弛緩・水晶体変形に至る機序が推察されている1)。
前眼部虚血は直筋手術で前毛様体動脈を切断することにより生じうる合併症であり、成人では回復に2〜12週を要する1)。小児は水晶体の柔軟性が高く、成人より重度の近視化が起こりうる1)。
| 項目 | 術眼 | 対側眼 |
|---|---|---|
| 屈折値(術後) | -9.00D | +0.25D |
| 前房深度 | 1.955mm | 3.007mm |
| 水晶体厚 | 4.216mm | 3.528mm |