眼(75-90%)

CHARGE症候群
ひとめでわかるポイント
Section titled “ひとめでわかるポイント”1. CHARGE症候群とは
Section titled “1. CHARGE症候群とは”CHARGE症候群は、CHD7遺伝子(8q12.2)の病原性バリアントによって引き起こされる多発奇形症候群である。1979年にHittnerとHallが初めて報告し、1981年にPagonが主要所見の頭文字からアクロニム「CHARGE」を命名した。
病名はそれぞれの主要所見を示す:
- C:Coloboma(コロボーマ;眼裂孔)
- H:Heart defects(心奇形)
- A:Atresia choanae(後鼻孔閉鎖)
- R:Retardation of growth and development(成長・発達障害)
- G:Genital anomalies(性器・生殖器異常)
- E:Ear abnormalities(耳の異常)
発生率は約1/10,000〜17,000出生と報告され、5)日本では指定難病に認定されている。原因となるCHD7遺伝子変異は70〜90%の患者で同定される。1)3) 変異の大多数はde novo(新規変異)であるが、常染色体顕性(優性)遺伝をとる家系も存在する。
5歳未満の死亡率は約30%と高く、5)心奇形・後鼻孔閉鎖・誤嚥などが主な死因となる。
約1/10,000〜17,000出生に1人の割合で発生する。5)5歳未満の死亡率が約30%と高く、重篤な心奇形や後鼻孔閉鎖が予後を左右する。指定難病として医療費助成の対象となる。
2. 主な症状と臨床所見
Section titled “2. 主な症状と臨床所見”- 視力障害:コロボーマの範囲・部位によって重症度が異なる。視神経や黄斑に及ぶ場合は高度視力障害となる
- 羞明・光過敏:虹彩コロボーマによる瞳孔機能の異常から生じる
- 難聴:感音難聴が90〜95%に認められる。1) 半規管低形成に伴う混合性難聴も多い。聴覚障害と視覚障害がともに重い場合にはコミュニケーションが極めて困難となり、早期からの専門的な療育・教育が必要である
- 平衡機能障害:半規管の低形成・無形成により歩行・座位保持の発達が遅れる
- 摂食困難:脳神経機能不全や後鼻孔閉鎖に伴い、哺乳・嚥下が困難になる
CHARGE症候群は多臓器に及ぶ複合奇形を呈する。
心臓(75-85%)
ファロー四徴症:最多の心奇形の一つ。2)
大動脈弓離断症・DORV:手術的修復が必要。2)
動脈管開存(PDA):早期結紮が必要。4)5)
耳・後鼻孔
後鼻孔閉鎖:約65%に認められる。新生児期の呼吸困難の原因となる。1)
半規管低形成・無形成:前庭機能と平衡感覚に影響。5)
外耳形態異常:耳介が短く幅広、耳垂が欠如する。
その他の主要所見:
- 性腺機能低下症:低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が60〜80%に認められる。5) 小陰茎・停留精巣・テストステロン低値を伴う
- 成長・発達障害:低身長・知的機能低下・言語発達遅滞
- 特徴的顔貌:四角い顔・突出前額・広い鼻根・顔面非対称1)5)
コロボーマの影響は範囲と部位に依存する。虹彩コロボーマのみの場合は視力低下は軽微なことが多い。脈絡網膜コロボーマや視神経コロボーマでは高度の視力障害を来すことがある。またコロボーマ周囲は網膜が薄く剥離しやすいため、定期的な眼底検査が必要である。
3. 原因とリスク要因
Section titled “3. 原因とリスク要因”CHD7遺伝子(8q12.2)はクロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質(2,997アミノ酸)をコードする。3) CHD7はクロマチンリモデリングを介して多数の遺伝子の発現を制御し、胚発生初期の神経堤細胞の遊走・分化に不可欠な役割を担う。1)
変異のタイプはnonssense変異(41%)とframeshift変異(32%)が最多であり、4) いずれも機能喪失(haploinsufficiency)をもたらす。3) Missense変異は孤立性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(IHH)との関連が強く、nonsense/frameshift変異はCHARGE症候群全体の表現型と関連しやすい傾向がある。5) ただし、遺伝子型と表現型の相関は必ずしも明確ではない。5)
大多数の変異はde novo(新規)で生じる。親のモザイク現象による家族内再発例もまれに存在するため、遺伝カウンセリングが推奨される。
大多数は両親に症状がなく子にのみ変異が生じるde novoケースである。まれに親のモザイク現象による家族内再発が起こる。患者本人が成人し子をもつ場合は50%の確率で子が同変異を受け継ぐ可能性がある。遺伝カウンセリングを受けることが推奨される。
4. 診断と検査方法
Section titled “4. 診断と検査方法”臨床診断基準
Section titled “臨床診断基準”複数の診断基準が提唱されている。
- Blake基準(1998):大症状(コロボーマ・後鼻孔閉鎖・半規管低形成・特徴的な外耳)と小症状を組み合わせた基準。1)
- Verloes基準(2005):コロボーマ・後鼻孔閉鎖・半規管低形成の3Cをmajorとする。2)
- Hale基準(2016):CHD7遺伝子検査結果を統合した最新基準。5)
遺伝学的検査
Section titled “遺伝学的検査”- CHD7配列解析+欠失/重複解析:第一選択。3) 陰性の場合はマルチ遺伝子パネルやエクソーム解析へ進む
- ゲノムワイドメチル化解析(GMA):CHD7に特異的なエピジェネティックシグネチャーを検出する新手法。3) 標準的検査が陰性でも診断に有用
- RNA解析・Mini-gene Assay:イントロン変異など機能的影響が不明な変異の評価に使用する。3)5)
画像・電気生理検査
Section titled “画像・電気生理検査”- 頭部MRI(下垂体・視床下部の評価)5)
- 側頭骨CT(半規管無形成・前庭低形成の評価)3)
- 心エコー・心電図
- 出生前超音波:心奇形・耳異常・腎異常・成長制限がソノグラフィックマーカーとなりうる2)
主な鑑別診断
Section titled “主な鑑別診断”CHARGE症候群は多様な表現型のため、他の症候群との鑑別が重要である。Noonan症候群との8年間にわたる誤診例も報告されている。1)
| 疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 22q11.2欠失症候群 | 心奇形・免疫不全・低カルシウム血症 |
| Kabuki症候群 | 特徴的顔貌・歯牙異常・皮膚紋理異常 |
| Kallmann症候群 | 嗅覚脱失+性腺機能低下。CHARGEと重複 |
| VACTERL連合 | 椎体・肛門・心臓・食道・腎・四肢奇形 |
5. 標準的な治療法
Section titled “5. 標準的な治療法”CHARGE症候群の治療は各臓器の奇形に対する集学的チームアプローチが基本である。眼科・心臓外科・耳鼻科・内分泌科・リハビリテーション科が連携する。
眼科的管理
コロボーマ本体:治療法はない。屈折異常の矯正と弱視治療が中心。
網膜剥離予防:大きなコロボーマ境界部に予防的レーザー光凝固を行うことがある(選択的症例)。
網膜剥離治療:硝子体切除術(必要に応じシリコンオイル充填)。
羞明対策:遮光眼鏡の装用。
斜視手術:適応症例では外科的矯正を行う。3)
全身管理
心奇形:各奇形に応じた外科的修復(BT短絡術、大動脈縮窄修復、PDA結紮など)。2)5)
後鼻孔閉鎖:新生児期の緊急気道確保後、手術的開窓を行う。1)
内分泌:低ゴナドトロピン性性腺機能低下症にはテストステロン補充療法を行う。3)4)
聴覚:補聴器または人工内耳の適応を評価する。5)
発達支援:言語療法(ST)・理学療法(PT)・作業療法(OT)による早期介入が重要である。摂食困難が高度の場合は胃瘻・空腸瘻による経管栄養を行う。
コロボーマ自体の治療法はないが、大きなコロボーマの境界部にレーザー光凝固を行い、網膜剥離の予防を図ることがある(選択的な症例で検討)。網膜剥離が発生した場合は硝子体切除術が必要となる。定期的な眼科受診による早期発見が重要である。
6. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”CHD7遺伝子は2,997アミノ酸からなるクロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質をコードする。3) CHD7タンパク質はクロマチンリモデリング複合体に組み込まれ、エンハンサー・スーパーエンハンサー領域でのヒストン修飾とRNAポリメラーゼの動員を調節する。1)
CHD7のhaploinsufficiency(片方のアリルが機能しない状態)が多発奇形の原因となるメカニズムは以下の通りである。1)3)
- 神経堤細胞への影響:CHD7欠損によりクロマチンリモデリングが障害され、心臓(心円錐動脈幹)・顔面・耳の発生に関わる遺伝子発現が乱れる。ゼブラフィッシュとXenopusの実験モデルで神経堤細胞由来構造への影響が確認されている。1)
- GnRHニューロンへの影響:CHD7欠損はGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)産生ニューロンの形成・遊走を障害し、FSH/LH分泌低下を招く。これが低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の機序となる。4)
- 一次性性腺機能低下症の合併(新知見):一部の症例ではLeydig細胞のステロイド合成酵素(P450scc・P450 17α・3β-HSD・17β-HSD)の発現が低下し、一次性性腺機能低下も合併することが報告された。転写因子Ad4BP/SF-1は正常であり、酵素レベルでの選択的障害が示唆される。さらに精子形成停止とGCNIS(生殖細胞上皮内腫瘍)の合併も確認された。4)
コドン変異のタイプと表現型の関係については、nonsense/frameshift変異は典型的なCHARGE症候群の表現型と相関しやすく、missense変異は孤立性IHHや軽症例との関連が報告されている。ただし遺伝子型と表現型の対応は必ずしも明確でない。5)
7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”統合オミクス診断の可能性
Section titled “統合オミクス診断の可能性”Granadilloら(2021)は、従来の遺伝子解析では検出できなかったCHD7イントロン変異(intron4 c.2239-20_2239-6del)を、ゲノムワイドメチル化解析(GMA)・全ゲノム配列解析(WGS)再解析・RNA解析の統合オミクスアプローチにより発見した。3) GMAではCHD7に特異的なエピジェネティックシグネチャーが確認され、RNA解析ではhaploinsufficiencyが裏付けられた。
この手法は、標準的な遺伝子検査で原因変異が同定できない患者において診断率を向上させる可能性がある。
IHHとCHARGE症候群の連続スペクトラム仮説
Section titled “IHHとCHARGE症候群の連続スペクトラム仮説”Wuら(2025)は孤立性IHH(特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)と診断された患者がCHARGE症候群に再診断された7例の文献レビューを行い、CHD7変異がCSとIHHの共通遺伝的基盤となりうることを示した。5) IHHとCHARGE症候群は連続するスペクトラムをなす可能性が提唱されている。
出生前診断の精度向上
Section titled “出生前診断の精度向上”Traisrisilpら(2021)は出生前超音波の微細所見(耳形態異常・腎回転異常・音響刺激への無反応)がCHARGE症候群のソノグラフィックマーカーとなりうることを示した。2) 胎児MRIによるCNS評価との組み合わせが出生前診断の精度向上につながると期待されている。
8. 参考文献
Section titled “8. 参考文献”-
Saenz Hinojosa S, Reyes C, Romero VI. Diagnosis challenges in CHARGE syndrome: A novel variant and clinical description. Heliyon. 2024;10:e28024.
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Traisrisilp K, Chankhunaphas W, Sittiwangkul R, Phokaew C, Shotelersuk V, Tongsong T. Prenatal sonographic features of CHARGE syndrome. Diagnostics. 2021;11:415.
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Granadillo JL, Wegner DJ, Paul AJ, et al. Discovery of a novel CHD7 CHARGE syndrome variant by integrated omics analyses. Am J Med Genet A. 2021;185(2):544-548.
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Yoshida Y, Ogawa S, Meguro S, et al. CHARGE syndrome with both primary and secondary hypogonadism. IJU Case Rep. 2024;7:197-200.
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Wu J, Huang Z, Zhu B, et al. De novo CHD7 variant in a CHARGE syndrome preterm infant initially diagnosed as idiopathic hypogonadotropic hypogonadism: a case report and literature review. BMC Pediatr. 2025;25:926.