屈折性
完全矯正で正位:遠視の完全矯正眼鏡で眼位が正位になる。
AC/A比正常:遠見と近見の斜視角はほぼ同程度。
斜視角:通常20〜40プリズムディオプトリー(PD)。
両眼視機能:おおむね良好である。

調節性内斜視(accommodative esotropia)は、調節努力に伴う調節性輻輳を原因とする内斜視である。背景因子として中等度以上の遠視がある。遠視を完全屈折矯正することで斜視角が減少する。
後天内斜視のなかで最も頻度が高い。全斜視患者の約3分の1を占め、有病率は人口の1〜2%と推定される。性別や人種による偏りはない。発症時期は1歳から3歳までが多い。ただし生後4か月から7歳の間で見られることもある。
遠視度数は+2D以上で発症しやすい。+8D以上ではかえってまれになる。純粋調節性内斜視の平均遠視度数は+5.43D±2.25とされる。発症が最も多い時期は視力が発達しはじめ明視努力を盛んに行う1歳半〜3歳頃である。まれに生後6か月以内に早期発症することがあり、その場合は乳児内斜視との鑑別が必要となる。
幼児期に遠視が顕在化し、鮮明な視界を得るために調節努力が増加する時期と一致するためである。新生児は+2D程度の遠視を有し、7〜8歳頃まで遠視が増加する傾向がある。
発症が幼少であるため、複視の訴えはめったにない。以下の症状が認められることがある。
調節性内斜視は共同性の内斜視を呈する。調節麻痺下屈折検査が診断に不可欠である。
屈折性
完全矯正で正位:遠視の完全矯正眼鏡で眼位が正位になる。
AC/A比正常:遠見と近見の斜視角はほぼ同程度。
斜視角:通常20〜40プリズムディオプトリー(PD)。
両眼視機能:おおむね良好である。
非屈折性
高AC/A比:近見時に内斜視角が遠見より10PD以上増大する。
屈折異常:遠視のほか、正視や近視でも生じうる。
二重焦点で改善:+3.00D加入により近見眼位が改善する。
両眼視機能:良好であることが多い。
部分調節性
残余内斜視:完全矯正で斜視角は10PD以上減少するが、10PD以上の残余内斜視が持続する。
混合型:調節性と非調節性の内斜視が混在する。
手術適応:残余内斜視に対して手術を検討する。
両眼視機能:さまざまで、不良のことが多い。
中等度の遠視(通常+2.00〜+6.50D)を伴う。発症初期は間欠性の内方偏位を認め、徐々に恒常性に移行することもある。片眼弱視を合併する場合がある。
調節性内斜視の根本的な原因は、調節努力に伴う調節性輻輳の過多である。
遠視眼では鮮明な像を得るために調節が必要となる。調節は輻輳を刺激する。融像性開散がこの輻輳を補正しきれない場合に内斜視が発症する。
AC/A比(調節性輻輳/調節の比率)が異常に高いために、近距離での調節量に対して輻輳が過剰になる。屈折異常の種類を問わず発症しうる。
+2D以上の遠視は発症しやすいが、必ずしも内斜視に至るわけではない。融像性開散の能力や個人差が関与する。+8D以上の強度遠視ではかえって発症がまれになる。
調節性内斜視の診断には、調節麻痺下屈折検査と眼位評価が不可欠である。
小児の屈折検査では調節の介入が大きいため、調節麻痺薬の使用が必須である。
遠見と近見の斜視角の差が10PD以上であれば高AC/A比を疑う。
| 測定法 | 方法 | 正常値 |
|---|---|---|
| Gradient法 | +3D加入後の斜視角変化量÷3 | 4±2 PD/D |
| Heterophoria法 | 遠近の斜視角差+瞳孔間距離を加味 | 4±2 PD/D |
完全矯正眼鏡を3か月以上装用し、以下で判定する。
眼鏡装用後、眼位が安定するまでの期間は症例によりさまざまである。多くは3か月以内に落ち着くが、それ以上かかる場合もある。眼鏡装用の状況を確認しながら慎重に判定する。
治療の目的は正常な眼位の回復、両眼視機能の発達促進、弱視の予防・治療である。
完全屈折矯正眼鏡の装用が基本である。調節麻痺下の屈折検査値(小児ではアトロピン硫酸塩点眼が第一選択)をもとに処方する。純粋調節性内斜視では0.5%アトロピンを1日3回、3〜5日間点眼し、完全矯正眼鏡または0.5D引いた度数の眼鏡を装用させる。終日装用が必須であり、眼鏡枠がずれ落ちないよう注意する。完全矯正眼鏡により遠見・近見とも正位が得られれば手術は適応とならない。
遠方は完全屈折矯正とし、近方に+2.5〜+3.0Dを加えた二重焦点レンズまたは累進屈折力レンズの眼鏡を装用する。近見で正常な眼位を回復させる最小の付加度数(最大+3.00Dまで)を処方する。AC/A比は成長とともに正常化が認められることもあり、8〜12歳頃には二重焦点眼鏡から単焦点眼鏡への変更、または眼鏡装用が不必要となることが37〜62.5%に認められる。その他、コリンエステラーゼ阻害作用によりAC/A比を減少させるジスチグミン臭化物(ウブレチド点眼液1%)の点眼による薬物療法も選択肢となる。
完全屈折矯正眼鏡の装用が第一選択である。遠視は7歳以下では増加する可能性があるため、手術前に調節麻痺下屈折検査を再施行して低矯正でないか確認する。眼鏡装用下の斜視角に対してのみ手術を行う。
約30%の患者が屈折矯正に加えて手術を必要とする。以下の条件で手術が検討される。
主な術式は以下の通りである。
手術を受けても屈折矯正の眼鏡装用は継続が必要である。遠視を伴う内斜視は年齢とともに外斜視に移行することもあるため、手術は慎重に決定する。
部分調節性内斜視に対する化学的除神経として使用されることがある。続発外斜視のリスクが低いとされるが、切開手術のほうが良好な結果を示すとの報告もある。
弱視を合併した場合は速やかに治療を開始する。健眼遮閉が基本であり、診断確定次第開始する。
遠視は成長とともに減少する傾向がある。しかし、最終的に眼鏡なしで正位を維持できるのは全体の約15%にとどまる。残りは屈折性調節性内斜視の状態が継続するか、部分調節性内斜視に移行する。
調節性内斜視の発症機序は、調節―輻輳―縮瞳の近見反応トライアドに基づく。
遠視眼では網膜上に鮮明な像を結ぶために調節(水晶体の曲率増加)が必要である。調節に伴い、調節性輻輳(accommodative convergence)が生じる。正常では融像性開散がこの余剰な輻輳を相殺し、眼位を正位に保つ。
遠視が中等度以上(通常+2.00D以上)になると、必要な調節量が増大し、それに比例して調節性輻輳も増大する。融像性開散の代償能力を超えた時点で内斜視が顕性化する。AC/A比自体は正常範囲(4±2 PD/D)であるが、調節量が大きいため輻輳の絶対量が過剰になる。
AC/A比が異常に高い(6 PD/D以上)ため、単位調節量あたりの輻輳反応が過大となる。近見時には遠見時以上の調節が必要であるため、近見眼位が著明に内偏する。屈折異常の種類にかかわらず発症しうる。
新生児は+2D程度の遠視を有する。7〜8歳頃まで遠視が増加し、その後20歳頃までに減少する。この遠視の増減が調節性内斜視の発症・経過に影響する。1歳未満で発症する早期発症型も存在し、乳児内斜視との鑑別を要する。
恒常性の内斜視では、偏位眼からの像が大脳皮質で抑制される。固視眼が一方に偏ると非優位眼への持続的抑制が生じ、斜視弱視に至る。交代固視がある場合は両眼とも視力が同等に発達する。
調節性内斜視は後天内斜視のなかで最も頻度が高く1)、遠視矯正による眼位改善の恩恵は大きい。弱視治療のために眼位矯正を行い、その結果として弱視が自然に改善する可能性も示唆されている1)。
斜視弱視に対する新しいアプローチとして、両眼視を利用した治療法の研究が進められている。両眼の視覚要素を分離し、弱視眼への注意を促す方法が検討されている。しかし、その機序は未解明であり、十分にデザインされた対照研究が必要とされている1)。
成人の調節性内斜視に対して、エキシマレーザーによるLASIKやPRKで遠視を矯正し、眼鏡離脱を目指す試みがある。ただし小児への適応は確立されていない。