アミロイドの所見
コンゴーレッド染色:偏光下でアップルグリーン(リンゴ緑色)の複屈折と二色性を示す。アミロイド確定の特異的所見。
通常染色:無定形のエオジン嗜好性またはオレンジ嗜好性物質の血管壁沈着。

アミロイドーシスは、低分子量タンパク質サブユニットからなる高度に秩序化された線維(アミロイド線維)が細胞外に沈着する全身性または局所性の疾患群である。側頭動脈にアミロイドが沈着すると、巨細胞性動脈炎(GCA)を模倣する臨床像を呈しうる。
分類
アミロイドーシスは産生部位により以下のように大別される。
側頭動脈アミロイドーシスの多くはAL(軽鎖)アミロイドーシスに起因する。ALアミロイドーシスでは単クローン性軽鎖可変領域免疫グロブリン断片が沈着し、多発性骨髄腫(MM)や意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS;Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance)などの形質細胞疾患に関連する。
歴史と疫学
側頭動脈生検におけるアミロイド沈着は1975年に初めて報告され、1986年にはALアミロイドーシスによる血管虚血症状の症例報告がなされた。以後30年間にわたり巨細胞動脈炎を模倣する症例報告が蓄積されてきた。
ALアミロイドーシスは男性にやや多く、診断時の平均年齢は65歳、側頭動脈病変患者の平均年齢は72歳と報告されている。巨細胞動脈炎(発症平均年齢75歳・女性優位)と比較して、側頭動脈アミロイドーシスは発症がわずかに若く男性優位である傾向がある。
眼アミロイドーシスの眼症状は多彩であり、眼瞼の丘疹・小結節、結膜肥厚、格子状角膜ジストロフィ、硝子体アミロイド沈着(偽ぶどう膜炎様)、網膜血管鞘形成などが知られている。
なお、日本では巨細胞動脈炎自体が欧米(特にスカンジナビア系に多く、英国の発生率は約1.2/10,000人)と比較してまれな疾患である。巨細胞動脈炎様症状を呈した際には本疾患を含む鑑別疾患の体系的な評価が求められる。
巨細胞動脈炎はT細胞介在性肉芽腫性血管炎であり、動脈壁に単核細胞浸潤と巨細胞形成を伴う全層動脈炎を呈する。側頭動脈アミロイドーシスはアミロイド線維の血管壁への沈着による虚血が機序である。両者は症状が酷似するが、巨細胞動脈炎が75歳・女性優位なのに対し、側頭動脈アミロイドーシスは72歳・男性優位であり、形質細胞疾患(MM・MGUS)を基礎疾患として持つことが多い。確定鑑別には側頭動脈生検が必要となる。
側頭動脈アミロイドーシスの自覚症状は巨細胞動脈炎およびリウマチ性多発筋痛症(PMR)のそれと大きく重複する。
以下に巨細胞動脈炎と側頭動脈アミロイドーシスの主な比較点を示す。
| 特徴 | 巨細胞動脈炎 | 側頭動脈アミロイドーシス |
|---|---|---|
| 発症平均年齢 | 75歳 | 72歳 |
| 性別 | 女性 > 男性 | 男性 > 女性 |
| 関連基礎疾患 | リウマチ性多発筋痛症(PMR) | 形質細胞疾患(MM・MGUS) |
| 検査所見 | ESR・CRP上昇 | ESR・CRP上昇+血清遊離軽鎖異常 |
| ステロイド反応 | 一般に改善 | 不定(改善・無反応・悪化) |
側頭動脈アミロイドーシスの主な原因はALアミロイドーシスにおける単クローン性軽鎖の全身性沈着である。通常は細血管に沈着するが、中型〜大型血管にも生じうる。
基礎疾患
リスク因子
なお、家族性原発性アミロイドーシスの眼合併症として硝子体アミロイドーシスがあり、常染色体優性遺伝を示し通常両眼性に発症する。
形質細胞疾患・血液悪性腫瘍の既往歴および家族歴を丁寧に確認することが鑑別診断の第一歩となる。
アミロイドの所見
コンゴーレッド染色:偏光下でアップルグリーン(リンゴ緑色)の複屈折と二色性を示す。アミロイド確定の特異的所見。
通常染色:無定形のエオジン嗜好性またはオレンジ嗜好性物質の血管壁沈着。
巨細胞動脈炎陰性例の対応
再評価の推奨:巨細胞動脈炎陰性の側頭動脈生検では、アミロイドの関与を考慮してコンゴーレッド染色を追加することが推奨される。
病理医による再評価:経験豊富な病理医による巨細胞動脈炎陰性生検の再評価が重要とされている。
筋肉生検は、PMRを模倣する場合に適応となる。
巨細胞動脈炎の診断基準5項目のうち3項目以上を満たす場合に巨細胞動脈炎と診断される。
巨細胞動脈炎では25〜50%で前部虚血性視神経症(AAION)を発症し、15〜40%は両眼性となる。巨細胞動脈炎患者の約20%はoccult 巨細胞動脈炎(全身症状なしに視力喪失を呈する)である。
巨細胞動脈炎陰性の生検結果であっても、症状が続く場合はアミロイドーシスの可能性を考慮すべきである。コンゴーレッド染色を追加し、経験豊富な病理医による再評価が推奨されている。同時に形質細胞疾患のスクリーニング(血清蛋白分画・遊離軽鎖・免疫固定法)を行うことが重要である。
側頭動脈アミロイドーシスと巨細胞動脈炎は症状が類似するが治療法が大きく異なるため、正確な鑑別診断が治療方針決定の前提となる。
ALアミロイドーシスの治療は、症状・部位・臓器障害の重症度・クローンの特性に基づいて決定される。腫瘍内科・血液内科への速やかな紹介が必須である。
ALアミロイドーシスの治療にも巨細胞動脈炎と同様にステロイドが使用されることがあるが、投与レジメンが異なる場合がある。アミロイドーシス患者のステロイド反応は様々であり、改善・無反応・悪化のいずれもありうる。長期ステロイド治療は副作用を引き起こし、診断を遅らせる可能性があることに注意が必要である。
巨細胞動脈炎では即座の高用量グルココルチコイド投与が標準治療である。経過が悪ければ失明リスクがあるため速やかな治療が必要であり、両眼性となることも多い(15〜40%)ため、ステロイドによる早期治療が求められる。
硝子体アミロイドーシスによる高度の硝子体混濁で視力低下をきたす場合は硝子体手術が適応となるが、残存硝子体にアミロイドが再沈着する可能性がある。眼疾患出現時は全身症状が進行している場合が多く、身体予後への配慮が必要である。
ステロイド反応は不定であり、改善・無反応・悪化のいずれもありうる。巨細胞動脈炎とは異なりステロイドが根治的治療とはならず、ALアミロイドーシスに対する化学療法・免疫療法が治療の主体となる。巨細胞動脈炎疑いでステロイドを開始しても改善しない場合は、アミロイドーシスを含む鑑別疾患を再検討し、血液内科・腫瘍内科への紹介を検討すべきである。
ALアミロイドの沈着は通常細血管において生じるが、中型〜大型血管でも認められる。側頭動脈壁へのアミロイド沈着は動脈狭窄(arterial stenosis)を引き起こし、虚血を誘発する。これが動脈炎性前部虚血性視神経症(AAION)様の視神経障害をもたらす機序となる。
咬筋を養う細動脈へのアミロイド沈着は血管狭窄を起こし、咀嚼時の相対的虚血を生じさせることで顎跛行の原因となる。
巨細胞動脈炎は主にT細胞介在性の肉芽腫性全身性血管炎であり、特に短後毛様体動脈(SPC arteries)に親和性がある。血栓性閉塞→視神経乳頭虚血という機序で視力喪失をきたす。組織学的には動脈壁の非特異的炎症から肉芽腫性炎症へと進行し、動脈狭窄・閉塞を来す。単核細胞浸潤と巨細胞形成を伴う肉芽腫性全層動脈炎が組織学的定義となる。
側頭動脈アミロイドーシスではこのような炎症細胞浸潤は認められず、無定形のアミロイド線維沈着が血管壁を侵すことで類似した虚血症状が生じるという点が根本的な相違点である。
巨細胞動脈炎に対するトシリズマブ(IL-6受容体拮抗薬)はランダム化比較試験(RCT)においてグルココルチコイド節減効果を伴う臨床的有効性が示されている。ただしこれは巨細胞動脈炎に対する治療であり、側頭動脈アミロイドーシスに直接適応されるものではない点に注意が必要である。
巨細胞動脈炎診断の fast-track pathway(迅速診断経路)の導入が診断遅延の減少と臨床転帰の改善に寄与することが示されている。このような迅速な診断体制は巨細胞動脈炎の模倣疾患(mimics)である側頭動脈アミロイドーシスの早期発見にもつながる可能性がある。
GAPS studyでは、PET-CTによる巨細胞動脈炎診断の感度92%・特異度85%が報告されている。巨細胞動脈炎とその模倣疾患の早期鑑別に有用であり、側頭動脈アミロイドーシスの発見にも貢献しうる先進的な画像診断法として注目されている。