
SUNCT症候群
ひとめでわかるポイント
Section titled “ひとめでわかるポイント”1. SUNCT症候群とは
Section titled “1. SUNCT症候群とは”SUNCT症候群(Short-lasting Unilateral Neuralgiform headache attacks with Conjunctival injection and Tearing)は、三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)の一型である。結膜充血と流涙を伴う、短時間持続性の片側性神経痛様頭痛発作を特徴とする。TACsの中で最も稀な疾患に位置づけられる。
SUNCTとSUNA(Short-lasting Unilateral Neuralgiform headache attacks with cranial Autonomic symptoms)は同一スペクトラムの疾患と考えられている。両者の差異は自律神経症状の種類にある。SUNCTでは結膜充血と流涙の両方が必須であるのに対し、SUNAはいずれか一方でよい。
1978年に初めて報告され、1989年に臨床的特徴が完全に記述された。2004年に国際頭痛分類(ICHD)に追加され、2013年にSUNHA(短時間持続性片側神経痛様頭痛発作)の亜型として分類された。
推定有病率は10万人あたり6.6人、年間罹患率は10万人あたり1.2人とされる(いずれも過小評価の可能性あり)。発症年齢は10〜77歳にわたり、大部分は35〜65歳で平均発症年齢は48歳である。成人では男性優位の傾向があり、男女比17:2との報告もある。
小児例は文献上19例のみ報告されており、発症年齢は2〜18歳(平均9.9歳、中央値11歳)である2)。
SUNCTは結膜充血と流涙の両方が必須の診断要件であるのに対し、SUNAはいずれか一方のみ(または他の頭蓋自律神経症状)でよい。両者は同一疾患のスペクトラムであると考えられており1)、末梢神経ブロック後にSUNCTからSUNAへの移行が報告されている。
2. 主な症状と臨床所見
Section titled “2. 主な症状と臨床所見”- 片側性眼窩・眼窩周囲痛:灼熱感・刺痛・電気ショック様の重度疼痛。主に三叉神経第1枝(V1:眼神経)領域に局在する。側頭部・鼻・頬・口蓋への放散もある。
- 発作持続時間:1〜600秒(平均61秒)。
- 発作頻度:1日3〜100回(平均28回)。群発期には連日発作が繰り返される。
- 発作パターン:「プラトー型」(持続的激痛)と「鋸歯状型」(強度が変動する持続痛)がある。
- 群発期と無発作期:数週間の群発期と数週間〜数ヶ月の無発作期を交互に繰り返す。
- 日中優位:夜間優位の傾向はない。
- 誘発因子:前頭部・眼窩への触覚刺激、表情筋や咀嚼筋の使用、洗顔、髭剃り、会話、咳などで誘発される2)。
臨床所見(医師が診察で確認する所見)
Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”発作中に同側の頭蓋自律神経症状が出現する。
- 結膜充血:最も一般的な自律神経症状。痛みと同時に出現・消失する。
- 流涙:結膜充血とともにSUNCTの診断要件。痛みと同時に出現・消失する2)。
- 鼻漏・鼻閉:症例の約2/3で発生する。
- 前頭部発汗:発作中に同側前頭部に認められる。
- 偽性眼瞼下垂:眼瞼の血管性浮腫による。
- 眼圧上昇・角膜温度上昇:一部の症例で報告されている。
- 眼瞼下垂・縮瞳・無汗症:2例で記録されており、交感神経系低下を示す2)。
- 羞明:SUNHA患者52例中18例(35%)で報告されており、光が誘因となったのは4例(8%)のみであった1)。
前頭部や眼窩への触覚刺激、表情筋や咀嚼筋の使用(咀嚼・会話など)、洗顔、髭剃り、咳などで誘発される2)。三叉神経痛と同様のトリガーゾーンを持つことが多い。
3. 原因とリスク要因
Section titled “3. 原因とリスク要因”ほとんどの症例は特発性(一次性)である。しかし、一部の症例では基礎疾患に起因する二次性SUNCTが存在する。
二次性SUNCTの原因
Section titled “二次性SUNCTの原因”- 下垂体病変:プロラクチノーマが最多。UK症例集積研究ではSUNCT表現型の8%に下垂体病変が認められた1)。プロラクチンまたは成長ホルモン分泌腺腫が多い1)。
- 後頭蓋窩病変:毛様細胞性星状細胞腫、海綿状血管腫、動静脈奇形、脳幹虚血性病変など2)。
- 海綿静脈洞・眼窩の病変:神経線維腫症2型、転移性腫瘍など2)。
- 三叉神経血管圧迫:血管ループによる三叉神経根の圧迫2)。
二次性SUNCTの発症機序
Section titled “二次性SUNCTの発症機序”下垂体腫瘍による硬膜伸展、海綿静脈洞浸潤、トルコ鞍内圧亢進、ホルモン調節障害、視床下部神経伝達物質活性変化(特にドパミン)が三叉血管系を活性化すると考えられている1)。
全例でMRI検査が推奨される。二次性SUNCTは臨床像だけでは一次性と区別できないためである2)。後頭蓋窩および下垂体窩のMRIを施行し、器質的病変を除外することが必須とされる。
4. 診断と検査方法
Section titled “4. 診断と検査方法”ICHD-3診断基準
Section titled “ICHD-3診断基準”国際頭痛分類第3版(ICHD-3)によるSUNCTの診断基準は以下の通りである2)。
- A. 基準B〜Dを満たす発作が少なくとも20回
- B. 片側性の眼窩内・眼窩上または側頭部の刺痛/拍動痛で、1〜600秒持続
- C. 同側の結膜充血および流涙を伴う
- D. 少なくとも1日1回の頻度
- E. 他のICHD-3診断でより適切に説明できない
エピソード性と慢性型の区別:慢性型は寛解期なし(または3ヶ月未満)が1年以上持続するものをいう2)。
後頭蓋窩および下垂体窩のMRIが二次性SUNCT除外のために必須である1)。
SUNCTと鑑別すべき主な疾患を以下に示す。
| 疾患名 | 鑑別ポイント |
|---|---|
| 群発頭痛 | 持続時間が長い(15〜180分)。酸素・スマトリプタンに反応 |
| 発作性片頭痛 | インドメタシンに著効(SUNCTは反応せず) |
| 三叉神経痛 | 持続時間が極めて短く不応期あり。自律神経症状は軽微 |
| 一次性穿刺様頭痛 | 自律神経症状なし。痛みの部位が毎回異なる |
三叉神経痛との鑑別については補足が必要である。三叉神経痛は電撃痛で持続数秒、10万人あたり4〜5人に発症し、高齢女性に多い。顕著な自律神経症状を伴わない点と不応期が存在する点がSUNCTとの主な鑑別点となる。
5. 標準的な治療法
Section titled “5. 標準的な治療法”SUNCTには確立された単一の有効治療法はない。個人差が大きく、治療反応は症例ごとに異なる。
- ラモトリギン:最もエビデンスが強い薬剤。Na⁺チャネル遮断とグルタミン酸の過剰放出抑制により効果を発揮する2)。低用量から開始し緩徐に漸増する。小児では25〜100mg/日での使用報告がある2)。重篤な皮膚副作用(スティーブンス・ジョンソン症候群)に注意が必要である2)。
- カルバマゼピン:一部症例で有効。三叉神経痛にも使用される薬剤(テグレトール®)であり、Na⁺チャネル遮断作用を持つ。
- オクスカルバゼピン:カルバマゼピンの代謝産物。有効例の報告あり。
- トピラマート・ガバペンチン・プレガバリン:それぞれ有効例の報告がある1)。
- デュロキセチン:一部症例での有効報告あり1)。
- 静脈内リドカイン:難治例の入院管理下で、心臓モニタリングを行いながら使用する1)。
末梢神経ブロック
Section titled “末梢神経ブロック”GONブロック(大後頭神経ブロック)、SON/STNブロック(眼窩上・滑車上神経ブロック)、SPGブロック(翼口蓋神経節ブロック)をステロイドと組み合わせることで、発作頻度・重症度を60%減少させた報告がある1)。複数の頭蓋神経ブロックの組み合わせが、単独ブロックよりも効果的との報告もある1)。
外科的治療(難治例のみ)
Section titled “外科的治療(難治例のみ)”- 経皮的三叉神経節圧迫術:薬物療法に抵抗する例に対して検討される。
- 三叉神経根の微小血管減圧術(Jannetta手術):血管ループによる圧迫がある場合に施行。三叉神経痛でも同術式が行われるが、約20%に再発がみられる。
- 脳深部刺激療法(DBS):同側視床下部への電極留置。難治性TACsに対して施行されてきた。
- 二次性SUNCTの原因病変切除:下垂体腺腫切除後の完全寛解例が報告されている1)。
確立された単一の有効治療法はない。ラモトリギンが最もエビデンスの強い薬剤とされているが2)、効果には個人差が大きく、複数の薬剤を試みる必要があることも多い。難治例では末梢神経ブロックや外科的治療が選択される。
6. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”SUNCT発作の基盤には**三叉神経自律神経反射(TAR)**の病的活性化がある。脳幹で三叉神経と顔面神経副交感神経流出路(上唾液核:SSN)を結ぶ生理学的経路が関与する。SSNの支配領域には鼻腺・涙腺・顎下腺・口蓋が含まれ、この経路の活性化が結膜充血・鼻漏・縮瞳・流涙・顔面発汗を引き起こす。
視床下部の関与も重要な知見である。fMRIにより発作中の同側視床下部灰白質の活性化が確認されており、視床下部は疼痛調節系・SSNとの接続を通じて痛みと自律神経症状の双方を制御する可能性がある2)。視床下部へのDBS後に顕著な改善が得られた報告も存在する。
血管成分の関与として、発作時の眼圧上昇・角膜圧痕脈波振幅増大(眼内血流増加を示唆)、および頭痛側の上眼静脈・海綿静脈洞の異常静脈造影が報告されている。
CGRP/PACAPの役割について、CGRPは三叉血管系の重要な血管拡張性神経ペプチドであり、痛みだけでなく羞明にも関与する。PACAPは三叉神経節・翼口蓋神経節で発現し、PAC1受容体を介して硬膜C線維を活性化する1)。
概日リズムの影響として、発作は日中優位であるが、プロラクチン分泌微小腺腫を合併する症例では夜間群発の報告がある。プロラクチンの三叉神経節感覚ニューロンに対する神経調節作用が仮説されている2)。
Cesaroniら(2021)は、腫瘍切除や微小血管減圧後の劇的な改善が末梢機序の関与を支持すると論じた。三叉神経への血管・腫瘍圧迫や感染性破壊がエファプティック疼痛生成機序を通じて関与する可能性がある2)。
7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”SUNCT/SUNAスペクトラム概念の深化:両者は同一の病態生理を共有し、末梢神経ブロック後にSUNCTからSUNAへの移行が報告されている。同一疾患のスペクトラムである可能性が強まっており、診断カテゴリの再検討が議論されている1)。
下垂体腺腫切除後の完全寛解例:47歳男性(成長ホルモン腺腫再発、2年間の慢性SUNCT+羞明)において、内視鏡下経鼻的経蝶形骨洞手術による硬膜浸潤腺腫の切除後に疼痛・羞明が完全消失した症例が報告された1)。二次性SUNCTにおける原因病変治療の重要性を示す知見である。
SPGブロックの治療機序研究:経鼻的翼口蓋神経節ブロックが下垂体病変関連SUNCTの治療において副交感神経流出路を遮断する機序として注目されている1)。
ボツリヌス毒素の小児への応用:12歳の小児SUNCT患者に眼窩周囲・側頭部・上歯肉へ計70U投与した結果、良好な反応が得られたと報告された2)。症例数が少なく、今後の検討が必要である。
小児SUNCT認識向上の必要性:診断の遅れが不必要な検査や無効な治療につながる。小児では慢性型の報告がなく、自然経過が成人と異なる可能性がある2)。
8. 参考文献
Section titled “8. 参考文献”- Demirel-Ozbek E, Berker M, Unal-Cevik I. The Resolution of Photophobia and Short-Lasting Unilateral Neuralgiform Headache Attacks with Conjunctival Injection and Tearing (SUNCT) Subsequent to Growth Hormone Adenoma Resection: Elucidating the Proposed Pathophysiological Mechanisms. Neuro-Ophthalmology. 2025;49(5):408-414.
- Cesaroni CA, Pruccoli J, Bergonzini L, et al. SUNCT/SUNA in Pediatric Age: A Review of Pathophysiology and Therapeutic Options. Brain Sci. 2021;11(9):1252.