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神経眼科

帯状疱疹性視神経炎

帯状疱疹性視神経炎(Herpes Zoster Optic Neuritis; HZON)は、眼部帯状疱疹(HZO)の稀な後遺症として生じる視神経炎である。三叉神経第1枝(眼神経)領域の帯状疱疹に伴い発症する。

HZOは帯状疱疹全症例の約10〜20%に発症し、そのうち約半数に何らかの眼合併症を生じる。HZONはこれらの眼合併症のなかでも稀な合併症に分類される。

Hutchinson徴候とは、鼻尖・鼻翼に皮疹を認める所見であり、鼻毛様体神経の支配領域に一致する。Hutchinson徴候が陽性の場合、眼合併症の頻度が有意に高い。

無疱疹性帯状疱疹(Zoster sine herpete; ZSH)では、皮疹を伴わず神経症状のみが出現することがある。この場合、診断が困難となる点に注意が必要である。

若年者に重篤なHZOを認めた場合、HIV感染の存在を考慮する。CD4陽性リンパ球数が500/μL以下の免疫不全状態では、帯状疱疹が重症化しやすい。

Q 帯状疱疹性視神経炎は眼部帯状疱疹のどのくらいの時期に発症するか?
A

HZOと同時、またはHZO発症から最大10週間後までの発症が報告されている。HZOの皮疹出現後しばらく経過してから視力低下が生じる場合もあるため、HZO患者の視力変化には継続的な注意が必要である。

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Christina M Hunt, Hannah M Gregory, William Gannon. Oral Valacyclovir Treatment of Herpes Zoster Ophthalmicus-Induced Optic Neuritis. Cureus. 2021 Aug 9; 13(8):e17033. Figure 4. PMCID: PMC8425502. License: CC BY.
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HZO自体の全身症状として、発熱・倦怠感・三叉神経第1枝領域の頭痛・眼痛が出現する。皮疹出現前から、三叉神経支配領域の違和感・疼痛を訴えることがある。

視神経炎の症状として、患眼の視力低下が主訴となる。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”
  • 視力低下:患眼に急性の視力低下を認める。程度はさまざまである。
  • 相対的瞳孔求心路障害(RAPD):患眼に相対的瞳孔求心路障害を認める。視神経障害の客観的指標として重要である。
  • 眼底所見:初期は正常または視神経乳頭浮腫を呈する。進行すると視神経萎縮へと移行する。
  • 神経学的所見:患側の三叉神経第1枝領域に知覚低下を認めることがある。
  • 皮膚所見:三叉神経第1枝領域(前額部・上眼瞼・鼻背)に帯状疱疹特有の紅斑・水疱・痂皮を認める。皮疹は神経支配領域に限定される。

HZONの原因は、神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化である。

VZVはHSVと異なり、細胞外に出るとすぐに不活化される。再活性化時は神経を介して皮膚に直接出現するため、皮疹は神経支配領域に厳密に限定される。

以下の因子がHZONのリスクを高める。

  • 免疫不全:HIV感染(CD4陽性リンパ球500/μL以下で帯状疱疹発症リスクが上昇)、悪性腫瘍、免疫抑制薬使用など
  • 高齢:加齢に伴うVZV特異的細胞性免疫の低下により再活性化リスクが上昇する
  • Hutchinson徴候陽性:鼻毛様体神経関与を示し、眼合併症全般のリスク増加と関連する
Q 帯状疱疹の予防接種はHZONの予防に有効か?
A

帯状疱疹ワクチンはHZO自体の発症を抑制する効果が期待される。HZO発症が抑制されれば、その合併症であるHZONの発生リスクも間接的に低下しうる。ただし、ワクチンがHZON発症を直接予防するというエビデンスは現時点では限定的である。

HZONの臨床診断は、HZOの経過中または発症から約3ヶ月以内に、急性の片側性または両側性の前部・球後視神経症が生じた場合に行う。

主要な検査法を以下に示す。

検査所見・目的
眼窩MRI患側視神経の造影効果・拡散制限、T2強調像での三叉神経核の線状高信号
蛍光眼底造影(FA)患側視神経乳頭の後期染まり
腰椎穿刺・髄液分析PCR・血清学的検査によるVZV検出(PCR陰性例の報告もあり)

MRIは視神経疾患の第一選択検査である。STIR画像および造影T1強調画像の冠状断が有用である。視神経の拡散制限は視力回復不良の予測因子として提唱されている。

ドップラー超音波では血流は通常正常であり、血管性視神経症との鑑別に役立つ。

鑑別に必要な血液検査として、CBC・ESR・CRP・梅毒血清反応・ANA・AQP4抗体・MOG抗体などを検討する。

以下の疾患との鑑別が重要である。

巨細胞動脈炎除外は緊急性が高く、ESR・CRP・側頭動脈生検が必要な場合がある。

治療の基本は抗ウイルス薬による全身投与である。

症例の重症度に応じて以下のように使用する。

  • 孤立性HZON(神経症状なし):アシクロビル経口〜10 mg/kg 静注、7〜10日間
  • 神経症状合併例・脳MRI異常例:アシクロビル10〜15 mg/kg 8時間ごと静注、2〜3週間

日本の標準治療でも抗ウイルス薬の全身投与が基本であり、重症例では入院のうえ静注投与を行う。HZOの皮疹に対してはアシクロビル眼軟膏を併用する。

アシクロビルの作用機序:VZVが産生するチミジンキナーゼ(TK)によりリン酸化され、三リン酸体がウイルスDNAポリメラーゼを選択的に阻害する。宿主正常細胞ではリン酸化されないため、選択毒性が高い。

ステロイド併用の可否については議論がある。

  • 推奨する立場眼内炎症が存在する場合、経口プレドニゾン60 mg/日にステロイド点眼を加える報告がある
  • 慎重意見:確定的な利益のエビデンスが乏しく、VZV網膜炎を惹起するリスクがある

HZOの偽樹枝状角膜炎に対しては、HSV角膜炎とは異なりステロイド点眼の使用が可能である。

感染性視神経炎ではステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000 mg点滴3日間)を単独で行わず、抗ウイルス薬による原因治療を優先する。

Q ステロイドの併用は推奨されるか?
A

一律には推奨されない。眼内炎症が顕著な場合には併用が検討されるが、VZV網膜炎リスクを高める可能性があるため慎重に適応を判断する必要がある。抗ウイルス薬を十分に投与したうえで使用を検討するのが原則である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

HZONの発症には、以下の3つの病態生理学的メカニズムが提唱されている。

直接感染

海綿静脈洞を介した直接的な神経感染:VZVが三叉神経節から海綿静脈洞を経由して視神経に直接侵入することによる視神経障害。

炎症性脱髄

炎症性脱髄:VZV感染に伴う局所炎症が視神経の髄鞘を障害する機序。視神経炎の病態と共通する部分がある。

免疫応答

反応性免疫応答による視神経乳頭浮腫:全身またはCNS感染に対する宿主免疫応答が視神経乳頭に浮腫をもたらす機序。

VZVは初感染(水痘)後、三叉神経節をはじめとする感覚神経節に終生潜伏感染する。加齢・免疫低下などを契機に再活性化が起こると、ウイルスが神経軸索を逆行性に伝播して皮膚・眼組織に到達し、帯状疱疹を発症させる。

HZO後に出現する**帯状疱疹後神経痛(PHN)**は、数か月から年余に及ぶ激烈な疼痛として問題となる。

Q 水痘・帯状疱疹ウイルスはどのようにして視神経を障害するのか?
A

現在3つのメカニズムが提唱されている。海綿静脈洞を介した視神経への直接感染、炎症による視神経の脱髄、および全身・CNS感染に対する反応性免疫応答による視神経乳頭浮腫である。単一の機序ではなく、複数が組み合わさって視神経障害を引き起こすと考えられている。

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