線維柱帯切除術(TLE)
適応:薬物治療で眼圧コントロール不十分な症例。
特徴:マイトマイシンC(MMC)を併用する濾過手術(MMC-TLE)が標準。
成績:炎症沈静期のMMC-TLEは原発開放隅角緑内障と同等1)。成功率は12ヶ月91.7%、36ヶ月82.2%、120ヶ月66.5%2)。
注意:術後の炎症再発が手術不成功の主因となる。

ぶどう膜炎続発緑内障(Uveitic Glaucoma; UG)は、ぶどう膜炎に伴う持続性・反復性の眼圧上昇により緑内障性視神経症および視野欠損を生じる疾患である。
1813年にJoseph Beerが「arthritic iritis」としてぶどう膜炎と緑内障の関連を初めて報告した1)。1891年にはPriestley Smithが最初の近代的分類を発表した1)。
ぶどう膜炎の発生率は人口10万人あたり17〜52.4例である2)。ぶどう膜炎患者における続発緑内障の発生率は10〜20%、慢性ぶどう膜炎では46%に達する1)2)。非感染性ぶどう膜炎成人における眼圧21mmHg以上(OHT)の年間発生率は14.4%、眼圧30mmHg以上は5.1%/年である2)。前部ぶどう膜炎における永続的視力喪失の最多原因は緑内障であり、30.1%を占める2)。
以下の疾患ではUGの発症リスクが特に高い。
ぶどう膜炎患者全員が緑内障になるわけではない。全体では10〜20%に続発緑内障が発生する。ただし慢性ぶどう膜炎では46%に達するため1)、定期的な眼圧測定と経過観察が不可欠である。
UGの自覚症状はぶどう膜炎と眼圧上昇の両方に起因する。
眼圧は炎症の程度と機序により変動する。毛様体機能低下時は眼圧が低下し、房水流出障害時は上昇する。
UGでの眼圧上昇には、開放隅角・閉塞隅角いずれの機序も関与し、混合型もある1)2)。隅角鏡検査による隅角観察が機序の推定に不可欠である(「診断と検査方法」の項参照)。
眼圧上昇の主な機序は以下の7つに分類される。
| 機序 | 原因 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 線維柱帯の目詰まり | 炎症細胞・タンパク | 急性前部ぶどう膜炎 |
| 線維柱帯炎 | 炎症・線維化 | FHIC、HSV |
| 隅角結節 | 肉芽腫形成 | サルコイドーシス |
| 周辺虹彩前癒着(PAS) | 慢性炎症・瘢痕 | 若年性特発性関節炎、Behçet |
| ステロイド薬 | 薬剤性眼圧上昇 | 全原因 |
| 血管新生 | 新生血管による閉塞 | 重症慢性ぶどう膜炎 |
| 瞳孔ブロック | 虹彩後癒着全周 | 重症前部ぶどう膜炎 |
ステロイドがUGの原因となりうる割合は最大42%である2)。ステロイド誘発性眼圧上昇のリスク因子には原発開放隅角緑内障(POAG)の既往、緑内障の家族歴、関節リウマチ(RA)、小児・高齢者、糖尿病が含まれる2)。
フルオシノロンインプラントと全身療法の比較では、6.9年間の観察で緑内障発生率が40% vs 8%であり、インプラントで著しく高い2)。ステロイド緑内障との鑑別が治療方針決定に重要である1)。
ある。UGの最大42%がステロイドに起因するとされる2)。特にフルオシノロンインプラントでは6.9年間の観察で40%が緑内障を発症した(全身療法では8%)2)。ステロイド使用中は定期的な眼圧測定が必須である。
UGの診断にはぶどう膜炎の診断と眼圧上昇の機序の解明が必要である。ステロイド緑内障との鑑別が特に重要な点である。
ステロイド投与歴があり、開放隅角、隅角異常なし、他に眼圧上昇の原因がない場合はステロイド緑内障を疑う1)。ステロイドを中止・減量して眼圧の変化を観察することが鑑別に有効である。
UGの治療では炎症制御が最優先事項であり、眼圧下降と並行して行う。
ぶどう膜炎の消炎治療が眼圧管理の根本となる。
縮瞳薬(ピロカルピン)は後癒着促進・血液房水関門(BAB)破壊・炎症悪化のリスクがあり禁忌である1)。オミデネバグも炎症眼では慎重投与とされる。
| 薬剤分類 | 代表薬 | 注意点 |
|---|---|---|
| β遮断薬 | チモロール、カルテオロール | 第一選択。全身副作用に注意 |
| 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI) | ブリンゾラミド点眼、アセタゾラミド内服 | 点眼・内服の選択 |
| プロスタグランジン関連薬(PGA) | ビマトプロスト、ラタノプロスト | 炎症悪化・CMEのリスクあり。安静眼では有用2) |
| Rho-kinase阻害薬 | リパスジル | 抗炎症作用も示唆2) |
| 高浸透圧薬 | D-マンニトール(点滴) | 急性期の一時的な眼圧下降 |
PGAのうちビマトプロストはラタノプロストより炎症リスクが低いとされる2)。眼圧下降薬の順序は、β遮断薬・PGA・CAI点眼→CAI内服→D-マンニトール点滴の順に追加検討する。
UG患者の約30%が手術を要し、最大1/3が再手術となる2)。手術は原則として炎症沈静期に施行する。
線維柱帯切除術(TLE)
適応:薬物治療で眼圧コントロール不十分な症例。
特徴:マイトマイシンC(MMC)を併用する濾過手術(MMC-TLE)が標準。
成績:炎症沈静期のMMC-TLEは原発開放隅角緑内障と同等1)。成功率は12ヶ月91.7%、36ヶ月82.2%、120ヶ月66.5%2)。
注意:術後の炎症再発が手術不成功の主因となる。
チューブシャント手術
種類:Ahmed緑内障弁(AGV)、Baerveldt緑内障インプラント(BGI)、Moltenoインプラント3)。
AGV:眼圧11〜25.2mmHg減少。低眼圧リスクがTLEより少ない1)2)。
BGI:5年74%のqualified success。角膜変性9%、低眼圧黄斑症11%2)。
チューブ露出:7〜14.3%に発生4)。結膜修復が必要となる。
MIGS(低侵襲緑内障手術)
種類:GATT、Trabectome、KDB、XEN、PreserFlo2)。
小児UG:隅角切開術(Goniotomy)が選択肢。1年100%、5年80%の成功率2)。
XEN-45:12ヶ月79.2%の成功率2)。
深層強膜切除術(Deep sclerectomy):overall 93.9%の成功率2)。
使えない。ピロカルピン(縮瞳薬)はぶどう膜炎続発緑内障では禁忌である1)。後癒着を促進し、血液房水関門を破壊し、炎症をさらに悪化させるリスクがある。眼圧下降にはβ遮断薬やCAIが第一選択となる。
UG患者の最大1/3が再手術を要する2)。術後の炎症再発が手術不成功の主因であり、炎症沈静期に手術を計画することが重要である。再手術ではチューブシャント手術が選択されることが多い。
UGにおける眼圧上昇機序は、開放隅角型と閉塞隅角型に大別される。両者が混在する混合型も多い1)2)。
開放隅角機序
線維柱帯の物理的閉塞:血液房水関門(BAB)破綻により炎症細胞・タンパクが前房に流入し、線維柱帯を閉塞する1)。
線維柱帯炎(Trabeculitis):線維柱帯薄板・内皮細胞の腫脹により孔が狭小化する。慢性化すると不可逆的な瘢痕化を生じる1)。FHICで顕著に認められる。
Schlemm管崩壊:単核球浸潤によるtrabeculitisがSchlemm管を崩壊させ眼圧上昇を引き起こす1)。
ステロイド誘発:線維柱帯細胞の細胞外マトリックス産生亢進・細胞骨格変化が流出抵抗を高める。
房水分泌亢進:PGE1・PGE2介在の房水分泌亢進とBAB破綻による房水粘稠度上昇も関与する1)。
閉塞隅角機序
瞳孔ブロック:虹彩後癒着が全周に及ぶと瞳孔ブロックが生じ、膨隆虹彩を形成し、PASを生じて閉塞隅角となる1)。
毛様体腫脹:炎症による毛様体の腫脹・前方回旋が隅角を閉塞する2)。
慢性PAS形成:慢性炎症により進行性のPASが形成され、慢性閉塞隅角を来す。Vogt-小柳-原田病(VKH)患者の80%が閉塞隅角となる2)。
隅角新生血管:慢性炎症により生じた隅角新生血管が線維血管性膜を形成し、隅角を閉塞する1)。
Halkiadakisら(2024)のレビューでは、XEN63ゲルステントはXEN45より大きな内腔(63μm vs 45μm)を持ち、難治性UGで1年後の眼圧が16mmHgに達したことが報告された2)。
XEN63ゲルステントの閉塞時には10-0ナイロンプローブによるab-externo revisionによって開通を回復する手技が報告されている5)。
チューブ露出は術後合併症として7〜14.3%に生じる4)。角膜融解・虹彩脱出を伴うAhmed弁露出に対して、多層閉鎖法(心膜パッチ+カプセル自家移植+テノン嚢転位+結膜前進)による修復と、角強膜同種移植片を用いた輪部再建が報告されている4)6)。
Armstrongら(2024)は、チューブ再露出を繰り返す症例に対して同一象限でのチューブ交換と多層閉鎖を組み合わせた手術手技を報告し、予備的な成績として有望な結果を示した6)。
リパスジル(Rho-kinase阻害薬)はUGにおいてステロイド使用眼での有効性が示唆されており、抗炎症作用の可能性も報告されている2)。
マイクロパルス毛様体光凝固は従来型の毛様体光凝固と比較して低侵襲であり、UGにおける安全性が報告されている2)。標準的な毛様体光凝固の合併症(低眼圧・眼球癆)のリスクを軽減する可能性がある。
OCTアンギオグラフィによるUGの視神経乳頭・黄斑血管密度評価が、緑内障診断への応用を目指したパイロット研究段階にある2)。また、メンデリアンランダム化研究によりぶどう膜炎と緑内障の遺伝的な因果関連の可能性が報告されている2)。