薬剤の入手
費用負担:緑内障治療薬の薬価が高額な場合、入手自体が困難となる。ジェネリック医薬品の活用が有効である。
早期補充の問題:患者が1滴以上点眼してしまい、予想より早く薬がなくなることがある。

緑内障は世界で7,000万人以上が罹患する失明の主要原因である。残存視機能を維持するためには早期かつ継続的な治療が不可欠であるが、点眼治療に対する非アドヒアランス(不遵守)率は30〜80%と報告されている。
近年では、患者中心の医療の観点から「アドヒアランス」の用語が推奨されている。
点眼治療のアドヒアランスを低下させる障壁は、薬剤の入手から毎日の投与まで多段階に存在する。
薬剤の入手
費用負担:緑内障治療薬の薬価が高額な場合、入手自体が困難となる。ジェネリック医薬品の活用が有効である。
早期補充の問題:患者が1滴以上点眼してしまい、予想より早く薬がなくなることがある。
適切な点眼
身体的制限:リウマチ性疾患・神経疾患による握力低下、頸部伸展制限が点眼を困難にする。
ボトル操作性:1滴を出すために必要な力がボトルにより異なる。複数滴が使用・浪費される。
視覚障害:緑内障や他の眼疾患による視力低下で、ボトル印字が読めない場合がある。
毎日の投与維持
物忘れ:慢性疾患を複数抱える高齢者で特に問題となる。高齢で自分で点眼できない場合は家族の協力が必要。
無症状性:大部分が無症状のため、毎日点眼する必要性を感じない患者がいる。
副作用:プロスタグランジン関連薬は局所副作用が多く、投与前の説明がないと使用を中断する患者がいる。
その他、疾患の進行リスクに対する理解不足、治療医への不信感、ヘルスリテラシーの低さも非アドヒアランスの要因となる。
点眼回数が多くなると忘れがちになるため、多剤併用時には配合点眼薬の使用が推奨される2)。眼圧が下がらない場合、薬剤の効果不足のほか、患者が点眼していない可能性も考慮すべきである。
緑内障は大部分が無症状であり、毎日の点眼の必要性を実感しにくい。加えて薬剤費用、点眼の身体的困難さ、副作用、物忘れなど多くの障壁が存在する。非アドヒアランス率は30〜80%と報告されている。
非アドヒアランスの早期発見は治療成功の鍵である。
アドヒアランス不良は手術適応の判断要素の一つである2)。副作用やアドヒアランス不良によって薬物治療が適切に行えない症例では、レーザー治療や観血的手術が選択肢となる2)。アドヒアランスの確認は、配合点眼薬の使用時において単成分薬剤と比較してより重要となる。点眼忘れによる眼圧下降効果の喪失が大きいためである。
身体的制限のある患者には、以下のような補助具が有用である。
| 補助具の種類 | 目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 点眼ガイド | 位置合わせ | 下眼瞼固定・視線誘導 |
| ボトルエイド | 握力補助 | クリップ装着式 |
| 滴下量調整器 | 無駄の削減 | 1滴の量を60%以上減少 |
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)は、効果・忍容性・アドヒアランスの理由から、点眼の追加または代替治療として適応がある1)。患者の治療計画遵守能力に依存しない利点がある。
配合点眼薬は1本で2成分の薬剤を投与できるため、点眼薬数と点眼回数を減らすことができる。緑内障診療ガイドラインでも多剤併用時のアドヒアランス向上に有用とされている(推奨度1B)。ただし、点眼忘れ時の眼圧下降効果の喪失が大きいため、アドヒアランスの確認がより重要となる。
毎日の点眼に代わる治療法として、持続放出型インプラントが開発されている。ビマトプロストやトラボプロストの前房内インプラントがFDA承認を受けており、点眼困難な患者の選択肢となる可能性がある。
緑内障の治療プロトコルは、従来の「まず薬物療法」モデルから、早期かつ繰り返しのレーザー線維柱帯形成術使用へと移行しつつある。最近の系統的レビューでは、レーザー線維柱帯形成術は1回の治療後でも高い成功率で眼圧を下降させることが示されている。
COAST試験(Clarifying the Optimal Application of レーザー線維柱帯形成術 Therapy Trial)が現在進行中であり、軽度〜中等度の開放隅角緑内障に対する一次治療として、毎年実施する低エネルギーレーザー線維柱帯形成術の有用性が検証されている。
EGS第6版では、服薬アドヒアランス改善に関するランダム化比較試験のネットワークメタアナリシスが引用されており、様々な介入戦略の比較評価が行われている1)。
レーザー線維柱帯形成術はレーザー治療であり、患者の点眼遵守能力に依存しない。持続放出型インプラント(ビマトプロスト、トラボプロストの前房内インプラント)も開発されている。ただし、すべての患者に適応があるわけではなく、主治医と相談の上で最適な治療法を選択する必要がある。