第1世代 FDTスクリーナー
空間周波数:0.25 c/d
時間周波数:25 Hz
視標サイズ:10×10度(中心5度は円形)
検査点:C-20(17点)、N-30(19点)
屈折矯正:±7Dまで不要
検査時間:スクリーニング40〜90秒、閾値4〜5分

1 cycle/degree(c/d)以下の低空間周波数の正弦波パターンを15 Hz以上の高時間周波数で反転させると、実際の2倍の周波数の縞として知覚される。この錯視現象をfrequency doubling illusionと呼ぶ。FDT(frequency doubling technology)はこの錯視現象を視野検査に応用したものである。
この現象は網膜神経節細胞のM細胞系(magnocellular系)の非線形反応が関与すると考えられている。M細胞は太い軸索径と大きな細胞体を持ち、全神経節細胞の約10〜15%を占めるに過ぎない。眼圧上昇に対して脆弱であり、機能的余剰が少ないため、緑内障の早期検出に有利と考えられている。
FDTは短波長自動視野計(SWAP)やフリッカーペリメトリーとともに、非従来型ペリメトリー(non-conventional perimetry)に分類される1)。緑内障診療ガイドライン第5版では「ごく初期の緑内障診断に有用である可能性が報告されている」と記載されている2)。
しかし、標準自動視野計より早期の緑内障性視野障害を検出できるという期待があったものの、そのエビデンスは十分ではなく、現在の緑内障管理においてはあまり使用されていない5)。主要な緑内障臨床試験はすべてSAPを使用している4)。原発開放隅角緑内障のPPPでも、FDTと短波長自動視野計は代替的検査法として位置づけられている3)。
緑内障では早期にM細胞系(大型の網膜神経節細胞)が障害されやすい。M細胞は全神経節細胞の約10〜15%しか占めず機能的余剰が少ないため、わずかな障害でもFDTで検出できる可能性がある。ただし、ガイドラインでは補助的な位置づけにとどまっている。
FDT視野計には第1世代と第2世代がある。
第1世代 FDTスクリーナー
空間周波数:0.25 c/d
時間周波数:25 Hz
視標サイズ:10×10度(中心5度は円形)
検査点:C-20(17点)、N-30(19点)
屈折矯正:±7Dまで不要
検査時間:スクリーニング40〜90秒、閾値4〜5分
第2世代 Humphrey Matrix
空間周波数:0.5 c/d
時間周波数:18 Hz
視標サイズ:5度(より小型で検出力向上)
検査点:24-2、30-2、10-2、黄斑に対応
屈折矯正:±4Dまで不要
閾値アルゴリズム:ZEST(ベイズ推定)
第2世代では視標を小さくすることでHumphrey視野計の30-2や24-2の検査点に相当する部位への視標呈示が可能となった。固視監視機能も追加されている。
検査時には「縞模様が見えたら応答ボタンを押す」よう説明する。FDTの視標は比較的大きいため、±6〜7Dの屈折異常であれば検査結果に大きな影響を与えず、原則として屈折矯正は不要である。患者は自分の矯正レンズを装着したまま検査を受けることができる。
コントラスト感度は0〜56 dBで測定される。視標呈示時間は200〜400ミリ秒、呈示間隔は無作為に0〜500ミリ秒となっている。
FDTスクリーナーのスクリーニングプロトコルには以下の2種がある。
| プロトコル | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|
| N30-1 | 78〜92% | 85〜100% |
| N30-5 | 85〜95% | 80〜90% |
FDT視野検査の結果はデシベル(dB)単位で報告される。基本的にHumphrey視野と同様の構成である。
スクリーニング検査では偏差が有意水準1%未満、2%未満、5%未満、5%以上の4段階の偏差確率プロットで表示される。
各指標は3回の試行で算出されるため、偽陽性が1つでもある検査は再検が推奨される。
白内障などの中間透光体混濁の影響がFDTでは大きい。また、日本の大規模疫学研究(多治見スタディ)では、FDTスクリーナーの特異度は高いが早期緑内障に対する感度は十分ではないとの報告がある。
第1世代FDTスクリーナーでは±7D以内、第2世代Humphrey Matrixでは±4D以内であれば屈折矯正は不要である。患者は自分の眼鏡を装着したまま検査を受けることができる。ただし、白内障などの中間透光体混濁の影響は受けやすい。
低空間周波数の正弦波格子を高時間周波数で逆位相反転させると、平均輝度の灰色にはならず、2倍の周波数の縞として知覚される。この現象は従来、外側膝状体M層におけるM-y細胞の非線形反応に特有のものと考えられてきた。
しかし、近年の研究では非線形応答を示す神経節細胞の独立したグループが真に存在するか疑問視されている。周波数倍増は網膜ではなく、視覚路の他の場所(皮質など)のメカニズムによるものであるとする説も提唱されている。
緑内障における最初期の神経損傷は、大径の網膜神経節細胞(M-y細胞)の消失に起因すると考えられている。M細胞系は全神経節細胞のごく一部であり機能的余剰が最小限であるため、わずかな細胞喪失でも機能低下が検出される可能性がある。
緑内障性視野障害の進行は以下のように特徴づけられる。
FDTはコントラスト感度を測定する検査であり3)、従来の明度識別域測定(SAP)とは原理が異なる。SAP(SITA-Standard)が緑内障管理の推奨標準であり5)、FDTやSWAPはSAPが正常な場合の補助的検査として位置づけられている4)。
ただし、主要な緑内障臨床試験はすべてSAPを使用しており、FDTやSWAPがSAPに対して明確な優位性を示した研究はないとされている4)。
Celloらは正常254眼と緑内障230眼を対象としたプロスペクティブ研究で、中等度〜進行した緑内障に対するFDTの感度・特異度がともに97%以上であることを示した。初期緑内障での感度は85%、特異度は90%であった。
Medeirosらの縦断研究では、ベースラインでSAP正常の緑内障疑い患者を追跡した。その後SAPで視野欠損が出現した患者の59%において、SAP異常に先立つ最大4年前にFDT異常が認められた。ただし、SAP異常例の18%ではFDTに再現性のある異常を認めなかった。
Quigleyは、FDTで2カ所以上の欠損部位があることを基準とすると、緑内障性視野欠損の検出において感度91%、特異度94%という最良のパフォーマンスが得られると報告した。
Bolandらは国民健康栄養調査(NHANES)2005-2008年の参加者6,797人のデータを再分析し、集団ベースの環境においてFDTは感度・特異度ともに不十分であると結論した。参加者の25%がFDT検査を完了できなかった点も課題として指摘されている。
iPadやスマートフォンベースのFDT検査が開発されつつある。検証が進めば、よりコンパクトでポータブルな検査として地域ベースの緑内障スクリーニングへのアクセシビリティ向上に寄与する可能性がある。
また、FDTは神経眼科疾患による視野欠損の検出においてもSAPと相関することが示されている。糖尿病患者では年齢一致対照群と比較してFDT感度が低下するとの報告もあり、糖尿病網膜症のスクリーニングへの応用可能性が示唆されている。
欧州緑内障学会(EGS)のガイドラインでは、FDTはSAPより早期の検出が期待されたものの十分なエビデンスが得られず、現在の緑内障管理ではあまり使用されていないと記載されている5)。日本では住民検診や人間ドックでFDTスクリーナーが使用されている実績がある。主要な緑内障臨床試験はすべてSAPを使用しており、FDTの位置づけは補助的である4)。