利点
早期検出能力:SAPより数年早く視野欠損を予測できる可能性がある。
パターンの一致:SWAP欠損パターンは緑内障性の神経線維束障害と一致する。
欠損の明瞭さ:SWAP異常はSAPの対応する欠損よりもサイズが大きく、進行も顕著に検出される。

青色刺激/黄色背景視野検査(blue on yellow perimetry)は、**短波長自動視野検査(short wavelength automated perimetry; SWAP)**とも呼ばれる非従来型の視野検査法である。高輝度の黄色背景光で赤・緑錐体の反応を抑制(選択的色順応)し、青色検査視標により青錐体の感度のみを測定する。
標準自動視野検査(SAP)では白背景に白刺激を用い、すべての網膜神経節細胞(RGC)集団を検査する。緑内障ではRGCの約40%が消失した段階で初めてSAPに視野欠損が現れるとされる。SWAPは青錐体系を担うコニオ細胞(K細胞)を選択的に評価することで、より早期の機能的障害を検出することを目的とする。
主な対象は早期の開放隅角緑内障および高眼圧症である。Humphrey自動視野計に内蔵されたSWAPプログラムが臨床的に広く用いられている。
SWAPを含む非従来型視野検査(FDT、フリッカー視野検査など)はSAPより早期の緑内障性視野障害を検出する目的で開発されたが、主要な緑内障臨床試験はいずれもSAPを使用しており、SWAPの明確な優位性を示すエビデンスは不十分である1)2)3)。
SAPは白背景に白刺激を用いて全ての網膜神経節細胞集団を検査する。SWAPは黄色背景で赤・緑錐体を抑制し、青色刺激で青錐体系(K細胞)のみを選択的に評価する。これにより早期の緑内障性障害を検出できる可能性があるが、変動の大きさや白内障の影響など欠点もある。
SWAPの主要パラメータを以下に示す。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 背景光 | 100 cd/m², 530 nm 黄色 |
| 検査視標 | 440 nm 青色, Goldmann V |
通常のSAP(W-on-W)と同様に、中心プログラム30-2、24-2、10-2、黄斑プログラムを使用できる。SITA(Swedish Interactive Threshold Algorithm)にも対応しており、従来のFull Thresholdプログラムに加えてSITA SWAPが利用可能である。
Humphrey Field Analyzer II(モデル700以上)およびOctopus 311で利用可能であり、正常データベースと統計解析パッケージが組み込まれている。Octopusは18 dBのダイナミックレンジを有し、同一条件ではHumphreyより広いレンジを持つ。
白内障(特に核硬化)はSWAPの結果に大きく影響する。水晶体の黄変が短波長光の透過を妨げ、視野欠損の偽陽性や偽の進行を引き起こす可能性がある。白内障が進行した症例ではSWAPの信頼性が低下するため、結果の解釈に注意が必要である。
網膜神経節細胞(RGC)は機能的に3つの主要集団に分類される。
| 細胞型 | 割合 | 機能 |
|---|---|---|
| P細胞(パルボ細胞) | 約80% | 色・コントラスト感受性 |
| M細胞(マグノ細胞) | 約15% | 運動・時間変調刺激 |
| K細胞(コニオ細胞) | 約5% | 青-黄対比 |
SWAPが標的とするのはK細胞(小二層性神経節細胞)である。K細胞は外側膝状体のコニオ細胞経路(koniocellular pathway)に接続し、青錐体からの信号を伝達する。
K細胞がSWAPで早期障害を検出できる根拠は以下の通りである。
SWAPの理論的基盤は1950年代のStiles(スタイルズ)による2色増分閾値法に遡る。色順応背景光で一部の色覚メカニズム(πメカニズム)の感度を低下させ、特定メカニズムの閾値を測定する手法である。SWAPは主要な短波長感受性メカニズム(π1)の分離に基づく。
複数の長期研究により、SWAPはSAPよりも3〜5年(場合により10年)早期に緑内障性視野欠損の発現部位と時期を予測できることが報告されている。SAP正常の高眼圧症の20〜25%にSWAP異常が認められる。
W-on-Wで正常を示しSWAPで異常を示す高眼圧症は、数年後にW-on-Wで暗点が出現し開放隅角緑内障に移行することがあり、緑内障進行の予知能力を有すると考えられている。視神経乳頭の評価とSWAP結果を組み合わせることで、緑内障発症リスクの評価精度が向上する可能性がある。
SWAPの感度は88%、特異度は92%に達するとの報告がある。しかし、EGSガイドラインおよびAAO PPPは、SWAPがSAPに対して明確な優位性を示すエビデンスが不十分であるとし、現在の緑内障管理において広く使用されていないと述べている1)2)3)。
利点
早期検出能力:SAPより数年早く視野欠損を予測できる可能性がある。
パターンの一致:SWAP欠損パターンは緑内障性の神経線維束障害と一致する。
欠損の明瞭さ:SWAP異常はSAPの対応する欠損よりもサイズが大きく、進行も顕著に検出される。
欠点
白内障の影響:核硬化による偽陽性・偽の進行が問題となる。
変動の大きさ:短期的変動がSAPより25〜30%大きい。偽陽性・偽陰性も多い。
検査時間:Full Threshold法ではSAPより2〜3分長く、片眼15〜20分を要する。順応時間も2〜3分必要。
高速閾値戦略(SITA SWAP)の導入により、検査時間の短縮と検出精度の向上が実現された。各測定点で感度が4〜5 dB向上し、ダイナミックレンジが拡大された。検出感度はFull Threshold法と同等以上であり、変動もFull Threshold法以下であると報告されている。
FDT(frequency doubling technology)視野計はM細胞系(マグノ細胞、全RGCの10〜15%)の障害を検出する検査法であり、SWAPとは異なる神経節細胞集団を標的とする。FDTは白内障の影響が大きいが、検査時間が短く屈折の影響を受けにくい(±7D以内)利点がある。日本の多治見スタディでは、FDTの特異度は高いが早期緑内障の感度は十分ではないとの報告がある。
SWAPとFDTはいずれも非従来型視野検査として早期緑内障検出を目指すが、主要臨床試験のエビデンスが不足しており、緑内障管理の標準とはなっていない1)2)3)。
SWAPは早期検出に優れる可能性があるが、白内障の影響・変動の大きさ・検査時間の長さなどの制約がある。主要な緑内障臨床試験はすべてSAP(W-on-W)を使用しており、ガイドラインでもSWAPの明確な優位性は示されていない1)2)3)。現状ではSAPが緑内障管理の標準であり、SWAPは補助的な検査として位置付けられている。