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角膜・外眼部疾患

角膜コラーゲンクロスリンキングの手法(Epi-off法 vs Epi-on法)

1. 角膜コラーゲンクロスリンキングの手法とは

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角膜コラーゲンクロスリンキング(corneal collagen crosslinking: CXL)は、リボフラビン(ビタミンB₂)を光増感剤として用い、波長365 nmのUVA光を角膜実質に照射することで、コラーゲン線維間の架橋結合を増加させる手技である2)。2003年にWollensakらが進行性円錐角膜に対する最初の臨床報告を行い1)、以降広く普及した。

FDAは14〜65歳の進行性円錐角膜および屈折矯正術後角膜拡張症に対してCXLを承認している2)。CXLの主な目的は角膜拡張症の進行停止であり、角膜の光学特性改善は副次的効果である2)

CXLには角膜上皮を除去するEpi-off法(上皮除去法)と、上皮を温存するEpi-on法(経上皮法)の2つの主要なアプローチがある。

Epi-off法

リボフラビン吸収:上皮除去によりリボフラビンおよびUVAの吸収が良好である。

効果:角膜の硬化・平坦化がより顕著であり、進行抑制効果に優れる1)

痛み:術後の疼痛が強く、視力回復までに時間を要する。

Epi-on法

回復:コンタクトレンズ装用への復帰が早い。

疼痛:不快感の持続期間が短い。

リスク:角膜感染症やヘイズのリスクが低いが、有効性はEpi-off法に劣る可能性がある1)

項目内容
適応進行性円錐角膜、LASIK後角膜拡張症
禁忌活動性感染、単純ヘルペスウイルス/HZV既往、角膜実質瘢痕
角膜厚上皮除去後400 μm以上が推奨

進行の定義は統一されていないが、一般に12〜18か月以内にKmax 1 D以上の増加、平均角膜屈折力の増加、屈折性乱視1 D以上の増加、角膜厚10%以上の減少のいずれかで判定される1)。単純ヘルペスウイルス角膜炎の既往がある場合はUVA照射によるウイルス再活性化の危険があるため注意を要する2)

Q 薄い角膜でもCXLは可能か?
A

従来は上皮除去後の角膜厚400 μm未満をCXLの禁忌としてきた。しかし低浸透圧リボフラビン溶液を用いてUVA照射前に角膜を400 μm以上に膨潤させる手法(sub400プロトコル)が報告されている2)。Hafeziらは角膜厚200〜400 μmの症例にUV照射時間を個別調整するプロトコルを報告した2)。Epi-on法では上皮厚を含めた角膜厚で評価するため、上皮除去後に400 μm未満となる症例でも治療対象となりうる。

標準的なEpi-off法はドレスデンプロトコルと呼ばれ、以下の手順で行う1)

  1. 局所麻酔下に7〜9 mmの角膜上皮をメスまたは回転ブラシで除去する。
  2. 0.1%リボフラビン(20%デキストラン含有)を2分おきに30分間点眼する。
  3. 3 mW/cm²のUVAを30分間照射する(総エネルギー量5.4 J/cm²)。照射中もリボフラビン点眼を継続する。

上皮除去にはPTK治療的角膜切除術)を用いる方法も報告されている。リボフラビン溶液はデキストランフリーのHPMC懸濁液も使用される。HPMC製剤は術中の角膜脱水を軽減する利点がある1)

照射強度を上げ照射時間を短縮する加速プロトコルも試みられている。総エネルギー量5.4 J/cm²を維持しながら、たとえば9 mW/cm²で10分間、または30 mW/cm²で3分間とする方式がある。一部の研究では標準法と同等の有効性を報告する一方、角膜平坦化や硬化が劣るとの報告もあり結果は一定していない1)

標準ドレスデンCXLは進行性円錐角膜の悪化を停止させる(治療の主目的)。36か月以上のフォローアップを含む75文献のメタアナリシスでは、裸眼視力の改善、角膜屈折力の遅発性低下、および乱視の一定の減少が示された2)

FDAの第III相試験(205名)では、ドレスデンプロトコルで治療した群はベースラインから1年でKmaxが1.6 ± 4.2 D低下したのに対し、対照群では進行が持続した2)。LASIK後角膜拡張症に対する試験(179名)でも治療群のKmaxは0.7 ± 2.1 D低下した2)

Wittig-Silvaらの前向きRCTでは、治療群でKmaxが有意に平坦化し(-1.45 ± 1.00 D, P < 0.002)、対照群では進行した(+1.28 D, P < 0.001)。長期追跡では4年後も平坦化が持続した1)

Q 加速プロトコルは標準法と同等の効果があるか?
A

加速プロトコルは照射強度を高め照射時間を短縮することで治療時間を削減するが、エビデンスは一定していない1)。標準法と同等の臨床パラメータを示す研究がある一方、角膜平坦化や硬化が劣るとの報告もある。Epi-on加速法とEpi-off標準法を比較した研究では同等の有効性を示した報告もあるが、データは限定的である。

Epi-on法では角膜上皮を温存したままリボフラビンを角膜実質に浸透させる。角膜上皮は疎水性であるためリボフラビンの透過が困難であり、以下の手法で浸透を促進する1)

化学添加物:塩化ベンザルコニウム(BAC)、EDTA、トロメタモール、局所麻酔薬などを添加し上皮バリアの透過性を高める。

イオントフォレーシス:電気的勾配を利用し、荷電リボフラビン分子を上皮越しに移動させる手法である。

リボフラビン濃度の増加:0.1%から0.25〜0.5%へ濃度を上げた溶液が使用される場合がある。

標準化されたプロトコルは確立されておらず、多様なリボフラビン溶液や添加物が研究ごとに使用されている。現時点で推奨される標準的なEpi-on法は存在しない1)

Epi-on法のシステマティックレビューでは、CXL後3〜12か月でUDVAが0.22〜0.28 logMAR改善した。ただしCDVAの変化およびKmaxの減少は統計的に有意でなかった。

一部の比較研究ではEpi-off群とEpi-on群の間でKmax減少に差を認めた。Al Fayezら(36か月追跡)ではEpi-off群のKmaxが-2.4 D低下したのに対し、Epi-on群では+1.1 D増加した(P < 0.0001)1)。このような結果から、Epi-on法の有効性はEpi-off法に劣る可能性が指摘されている1)

比較研究では一貫してEpi-on法の方が疼痛が少ない。70名を対象とした研究で1〜5段階の疼痛スケールにおけるEpi-on群の平均は2、Epi-off群の平均は4であった(P = 0.0035)。

指標Epi-off法Epi-on法
Kmax変化有意な平坦化効果は限定的
CDVA有意な改善改善は不明確

8つの比較研究を含むメタアナリシスでは、1年フォローアップにおいてUDVAとCDVAには有意差を認めなかった。しかし平均K値の減少はEpi-off法の方が有意に大きかった(標準化平均差0.28, P = 0.03)。イオントフォレーシスを用いたEpi-on法との比較ではさらに差が大きくなった(標準化平均差0.43, P = 0.01)。

KERALINK試験は10〜16歳の進行性円錐角膜患者60名を対象としたRCTである3)。CXL群では18か月後のK2(steep keratometry)が49.7 ± 3.8 Dであり、標準治療群の53.4 ± 5.8 Dと比較して調整平均差-3.0 D(95% CI: -4.9〜-1.1, P = 0.002)とCXL群が有意に良好であった3)。進行はCXL群7%に対し標準治療群43%であり、CXLにより進行リスクが90%低下した(OR 0.1, P = 0.004)3)

CXLは若年患者の大多数で円錐角膜の進行を停止させる。CXLは進行性疾患における第一選択治療として検討すべきである3)

小児患者78眼を対象とした5年追跡の前向きコホート研究では、Epi-off群で平均3.18 Dの角膜平坦化が得られたのに対し、加速Epi-on群では0.09 Dにとどまった。加速Epi-on群の9.4%(3/32眼)で進行が認められたが、Epi-off群では5年時点で進行を認めなかった。

Q Epi-off法とEpi-on法、どちらが優れているか?
A

現時点ではEpi-off法の方が角膜平坦化および進行抑制の効果で優位とするエビデンスが蓄積されている1)。特に長期データではEpi-off法で5年後も進行抑制が持続するのに対し、Epi-on法では一部に進行例を認める。一方、Epi-on法は疼痛が少なく回復が早い利点がある。化学添加物によるEpi-on法はイオントフォレーシス法よりK値減少に関してEpi-off法と同等であったとの報告もある。最終的な手法選択は個々の症例に応じて判断する。

Epi-off法の合併症

角膜ヘイズ:術後1〜2か月に出現し、通常6〜12か月で消退する。永続的な実質瘢痕の発生率は最大8.6%との報告がある1)

感染性角膜炎:Shettyらの報告では2,350名中4名(0.0017%)にみられた。すべてEpi-off法であった1)

無菌性浸潤:術後早期に出現し、ステロイド点眼で消退する1)

持続性上皮欠損:上皮治癒遅延が角膜融解のリスクとなる可能性がある。

Epi-on法の合併症

充血・異物感:術後24時間以内に消退する一過性の所見が多い。

羞明:術後早期の一過性症状として報告されている。

角膜上皮障害:加速Epi-on法の試験でびまん性点状表層角膜症を伴う光線性角膜炎が報告された。

全体的傾向:ヘイズ・瘢痕・微生物感染はEpi-off法の研究でのみ報告されている。

その他の合併症として、角膜浮腫、過度の角膜平坦化による遠視化、内皮障害などが挙げられる1)。内皮障害は角膜厚400 μm未満でUVA照射を受ける場合にリスクが高まる。一過性の内皮細胞数減少が認められるが、通常6か月で正常化する2)

CXLはリボフラビンを光増感剤として角膜実質に局所的に光重合を起こし、コラーゲン線維間の生化学的結合を増加させる2)。これにより構造的に脆弱な角膜が硬化し、拡張症の進行が抑制される。

UVA光(365 nm)の照射によりリボフラビンが励起され、活性酸素種が産生される。活性酸素種がコラーゲン分子間に新たな共有結合を形成し、コラーゲン線維の直径増大と線維間間隔の拡大をもたらす。この変化は角膜実質前方300 μmに集中する。

角膜上皮はリボフラビンに対する透過障壁として機能する。Epi-off法では上皮除去によりリボフラビンが直接角膜実質に到達する。Epi-on法では上皮を通過するリボフラビン量が制限されるため、実質での架橋形成が減少し、有効性が低下する可能性がある1)。化学添加物やイオントフォレーシスはこの制限を克服するための工夫であるが、標準化された方法は未確立である1)

角膜抵抗因子や角膜ヒステリシスなどの生体力学的パラメータはCXLによる変化が小さいが、同一機器から導出されるカスタム変数では硬化を示唆する変化が認められている2)

Q KERALINK試験が示した臨床的意義は?
A

KERALINK試験は10〜16歳の若年円錐角膜患者を対象としたRCTであり、CXLが若年患者の大多数で18か月後に円錐角膜の進行を停止させることを示した3)。CXL群では進行率7%に対し標準治療群では43%であり、進行リスクが90%低下した3)。この結果は、特に進行が速い若年患者においてCXLを第一選択治療として早期に検討すべきことを裏付けている3)

  1. Lim L, Lim EWL. Current Trends in Corneal Cross-Linking. Open Ophthalmol J. 2018;12:181-201.
  2. American Academy of Ophthalmology Corneal/External Disease Preferred Practice Pattern Panel. Corneal Ectasia Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
  3. Larkin DFP, Chowdhury K, Burr JM, et al. Effect of Corneal Cross-linking versus Standard Care on Keratoconus Progression in Young Patients: The KERALINK Randomized Controlled Trial. Ophthalmology. 2021;128:1516-1526.

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