眼をこする癖
微小外傷:眼擦りが角膜上皮に微小外傷を与え、粘膜類天疱瘡上方制御とコラーゲン分解を促進する。
アレルギーとの関連:花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息、春季カタルなどに伴う眼掻痒が誘因となる1)。
肥満細胞の活性化:IgE結合によりヒスタミン・プロテアーゼ・TNF-αが放出される。

円錐角膜(keratoconus)は、角膜中央部の実質が透明なまま菲薄化し、角膜が円錐状に前方突出する進行性の疾患である。角膜形状の異常により不正乱視が生じ、進行性の近視と視力低下を来す。
通常は思春期に発症し、30歳頃に進行が停止ないし緩徐になることが多い。10歳未満の発症は稀であり、診断時の年齢は15〜30歳が一般的である3)。小児人口における推定有病率は0.16%であるが、より高い有病率を示す報告もある。オランダでは1:3753)、オーストラリアの20歳では1:843)、特定の民族集団では1:453)とされている。
小児の円錐角膜は成人より進行が速いことが知られており2)3)、初診時にすでに進行期にある割合が高い。Meyerらの研究では、小児・青年148眼を平均2.9年間追跡し、77.0%にトモグラフィー上の進行を認めた2)。未治療の場合、約20%の眼が高度の視力障害により角膜移植を必要とする2)。
通常は両眼性であるが、重症度に左右差があることが多く、片眼性のこともある。多くは孤発例であるが、家族性に発症する例もある。
小児の円錐角膜は成人と比べて進行が速い。角膜の生体力学的剛性が年齢とともに増加するため、小児の角膜は分解を受けやすい。Meyerらの研究では小児の77%に進行を認め、診断時に進行期にある割合も高い。また、小児は円錐がより中心部に形成される傾向がある。そのため成人の6〜12か月間隔に対し、1〜3か月間隔のフォローアップが推奨されている。
| 所見 | 特徴 |
|---|---|
| 角膜菲薄化・突出 | 中央部の実質菲薄化と円錐状突出 |
| Fleischer輪 | 円錐基底部の鉄沈着環 |
| Vogt線条 | 実質深層の垂直微細皺襞1) |
Vogt線条は中等症〜深層の実質に認められる垂直(稀に水平)の微細な皺襞であり、外部からの軽い圧迫で消失する特徴がある1)。
Bowman層が断裂すると角膜上皮下に網目状の実質表層瘢痕が生じる。進行例では下方注視時に下眼瞼が外方に弓状に湾曲するMunson徴候や、光が角膜を透過して対側に集光するRizzuti徴候を認める。
小児患者では成人と比べて円錐がより中心部に形成される傾向が報告されている。診断時に27.8%が進行期にあり、88%が進行を示すとの報告もある。
小児円錐角膜の病因は十分に解明されていないが、遺伝的要因と環境的要因の複合が関与する1)。
角膜実質の菲薄化はコラーゲンの分解により生じる。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の増加とその組織阻害因子(TIMP)の減少が角膜拡張症の角膜で確認されている1)。円錐角膜患者の涙液中ではIL-6、TNF-α、粘膜類天疱瘡-9などの炎症性メディエーターが増加しており1)、これらがケラトサイトのアポトーシスを誘導し、角膜菲薄化の一因となる。
眼をこする癖
微小外傷:眼擦りが角膜上皮に微小外傷を与え、粘膜類天疱瘡上方制御とコラーゲン分解を促進する。
アレルギーとの関連:花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息、春季カタルなどに伴う眼掻痒が誘因となる1)。
肥満細胞の活性化:IgE結合によりヒスタミン・プロテアーゼ・TNF-αが放出される。
遺伝的要因
家族歴:CLEK研究では14%に家族歴を認めた1)。第一度近親者の20.5%に家族歴が報告されている。
遺伝形式:常染色体優性遺伝が示唆されるが、劣性遺伝の報告もある。
関連遺伝子:ライシルオキシダーゼ遺伝子、CAST遺伝子の多型が同定されている1)。
関連する全身疾患
ダウン症候群:円錐角膜との関連が最も高い疾患である。
結合組織疾患:Ehlers-Danlos症候群、Marfan症候群、骨形成不全症1)。
その他:Apert症候群、Crouzon症候群、網膜色素変性症、Leber先天性黒内障1)。
生活習慣関連:閉塞性睡眠時無呼吸、高BMI1)。
眼をこすること自体が直接的な原因ではないが、角膜への微小外傷が粘膜類天疱瘡上方制御とコラーゲン分解を促進し、円錐角膜の進行に関与する可能性がある。特にアトピー性疾患を合併する場合はリスクが高まるため、アレルギー治療により眼掻痒を軽減し、眼擦りを避けることが推奨される。
角膜トポグラフィーは早期診断に最も有用な検査であり、特に下方の急峻化(inferior steepening)を示すパターンが重要である。プラチドリング型装置では角膜前面の曲率を定量化し、不正乱視を検出する。
角膜トモグラフィー(Pentacam等のScheimpflug像)は前面・後面の高度情報と角膜厚を同時に評価でき、円錐角膜の検出精度が高い。Belin Ambrosio Display(BAD)は後面・前面の高度情報と角膜厚を単一マップに統合する解析法である。
2015年のコンセンサス文書では、進行の最低基準として以下の3項目のうち少なくとも2項目の変化が必要とされている1)。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 前面急峻化 | 前面角膜の急峻化 |
| 後面急峻化 | 後面角膜の急峻化 |
| 菲薄化 | 角膜厚の減少または菲薄化率の変化 |
Meyerらの研究では、148眼のうち46.6%が3カテゴリ中2カテゴリで進行し、25.7%が3カテゴリすべてで進行を示した2)。進行眼は初診時のKMAXが有意に高く(55.4±6.3 vs 52.2±5.4 D; p<0.01)、中心角膜厚が有意に薄かった(442.1±56.7 vs 454.4±47.5 μm; p=0.01)2)。
17歳未満の患者およびKmaxが55 Dを超える症例では、より密なフォローアップが推奨される1)。成人の6〜12か月間隔に対し、小児では1〜3か月間隔の経過観察を推奨する報告がある。
CXLは進行性円錐角膜に対する最も重要な治療法であり、リボフラビンとUV-A光を用いて角膜の生体力学的剛性を強化する1)。CXLは疾患の進行を停止または減速させ、角膜移植の必要性を低減しうる1)。
KERALINK試験は10〜16歳の小児を対象としたランダム化比較試験であり、CXLの有効性と安全性を評価している3)。3つのRCTに基づき、CXLは成人の角膜拡張症進行の抑制に有効であることが示されている3)。
Meyerらの研究では小児・青年の77.0%(114/148眼)にトモグラフィー上の進行が認められた。初診時にKMAXが高い症例ほど進行リスクが高かった2)。この高い進行率は、小児における早期CXL検討の根拠となっている2)。
上皮剥離CXL(epi-off)
標準プロトコル:角膜上皮を除去後にリボフラビンを浸透させ、UV-Aを照射する。
有効性:小児でも角膜安定化が証明されており、最長5年間の安定性が報告されている。80%の小児で視力が改善し、術後4年間でKmax値が減少した。
加速型との比較:6〜36か月の追跡では標準型と加速型で同等の効果が示されている。
上皮温存CXL(epi-on)
利点:術後の疼痛が軽減され、感染リスクが低下する。
小児への適性:術後の抗菌薬点眼のコンプライアンスが不十分になりうる小児には有利である。
課題:リボフラビンの浸透が制限されるため、効果が標準型より劣る可能性がある。
CL管理は進行を抑制するものではないが、不正乱視を中和して最良の視力を提供する。軽度で安定した症例では眼鏡やソフトトーリックレンズ、中等度〜重症例ではRGPレンズが必要となる。スクレラルレンズ、ハイブリッドレンズ、ピギーバックレンズなどが急峻な不正角膜に適している。
進行した円錐角膜にはDALK(深層前部層状角膜移植術)またはPK(全層角膜移植術)が適応となる。PKは視力改善が大きいが拒絶反応の発生率が高い。小児患者における角膜移植は成人より予後が不良であり、再移植のリスクも高い。
角膜内リングセグメントの挿入は視力改善に有用である。同種角膜実質内リングセグメント(CAIRS)は合成セグメントに代わる新しいアプローチとして研究が進められているが、小児における長期成績はまだ十分でない。
CXLは小児患者に対しても安全性と有効性が報告されている。標準的な上皮剥離法と加速型は同等の効果を示し、最長5年間の角膜安定化が確認されている。術後の疼痛や感染リスクを考慮し、上皮温存法が選択されることもある。ただし小児は成人より術後進行率が高い傾向があるため、密な経過観察が必要である。
角膜の生体力学的剛性は年齢に反比例する。小児の角膜はコラーゲン架橋が少なく、酵素的分解を受けやすい1)。このため、同じ程度の外的ストレス(眼擦りなど)でも成人より大きな角膜変形が生じうる。
眼擦りによる微小外傷は角膜上皮および実質の粘膜類天疱瘡(MMP-1, 粘膜類天疱瘡-2, 粘膜類天疱瘡-7, 粘膜類天疱瘡-13, 粘膜類天疱瘡-14)を上方制御する。これらの酵素はI型・II型コラーゲン、フィブロネクチン、膜糖タンパク質を分解する。加えてTIMPの減少が粘膜類天疱瘡活性を増幅させ、コラーゲン分解が亢進する1)。
円錐角膜患者の涙液中ではIL-6、TNF-α、粘膜類天疱瘡-9が増加している1)。眼アレルギーに伴い肥満細胞・好塩基球上のIgEが反応し、ヒスタミン・プロテアーゼ・TNF-αが放出される。これらの炎症性メディエーターはケラトサイトのアポトーシスを誘導する。
ケラトサイトのアポトーシス → 細胞外マトリックスの菲薄化 → コラーゲン架橋の減少 → 実質体積の減少 → 角膜拡張(ectasia)という順序で病態が進行する。
組織病理学的には、上皮の菲薄化、Bowman層の断裂と瘢痕化、実質コラーゲン線維の変性と層板消失、Descemet膜の破裂と皺襞が認められる。Descemet膜が破裂すると房水が実質に流入し、急性角膜水腫を生じる。
KERALINK試験は英国の4施設で実施された、10〜16歳の小児を対象とするランダム化比較試験である3)。CXLの標準治療に対する優越性を評価しており、小児円錐角膜に対するエビデンスの強化が期待される。
角膜クロスリンキングと角膜切除を組み合わせた手法として、Athensプロトコル(部分的トポグラフィーガイド下PRK+角膜クロスリンキング)やCretanプロトコル(経上皮PTK+角膜クロスリンキング)が報告されている。Knezovićらはdecentered individualized sphero-cylindrical(DISC)ablationと角膜クロスリンキングの併用により、不正乱視の改善と進行抑制の両立を報告した4)。
次世代シーケンシング技術の進歩により、円錐角膜の発症に関与する遺伝子の同定が進んでいる。ライシルオキシダーゼ遺伝子やCAST遺伝子の多型が報告されており1)、将来的には遺伝的リスクに基づく早期スクリーニングが実現する可能性がある。
小児円錐角膜の長期的な自然史に関するデータは依然として不足している2)。Meyerらは過去の研究で進行率が0〜88%と大きなばらつきがあることを指摘しており2)、さらに長期間の追跡研究が必要であるとしている2)。
円錐角膜には遺伝的要因が関与している。CLEK研究では14%に家族歴が認められ、第一度近親者の20.5%に家族歴が報告されている。常染色体優性遺伝が示唆されるが、多くは孤発例である。遺伝的リスクがあっても環境因子(眼擦り、アトピー)の制御により進行を抑制できる可能性がある。