リサミングリーン染色所見
リッドワイパー部の帯状染色:上眼瞼翻転時に瞼板結膜最下端に帯状の染色域を認める
Marx’s line付近の変化:粘膜皮膚移行部に沿った上皮障害パターンを示す
下眼瞼にも認めうる:下眼瞼のリッドワイパー部にも同様の所見がみられることがある

リッドワイパー上皮症(lid wiper epitheliopathy: LWE)は、上眼瞼結膜の最下端に位置するリッドワイパー(lid wiper)の上皮が傷害された状態である。リッドワイパーとは瞬目時に眼表面を拭うように接触する部位を指す。2002年にKorbらにより初めて定義された比較的新しい概念である。
涙液層の潤滑機能が低下すると、瞬目のたびにリッドワイパーと眼表面の間に過剰な摩擦が生じる。この繰り返しの機械的刺激が上皮障害を引き起こす。CL装用者ではCL表面と瞼結膜の直接接触が摩擦をさらに増大させる。
CL装用者のドライアイ症状の原因として注目されている。非CL装用者のドライアイ患者にも認められ、涙液機能障害の指標としての役割が期待される。
CL装用時の乾燥感・異物感が最も多い訴えである。「レンズが乾く」「夕方になると装用感が悪化する」といった症状を呈する。CL非装用者では一般的なドライアイ症状(乾燥感・眼精疲労・異物感)として自覚される。
注目すべき点として、従来のドライアイ検査(Schirmer試験・BUT)が正常でもLWEを認める症例がある。ドライアイ症状があるにもかかわらず客観的所見に乏しい患者では、LWEの存在を疑うことが重要である。
リサミングリーン染色所見
リッドワイパー部の帯状染色:上眼瞼翻転時に瞼板結膜最下端に帯状の染色域を認める
Marx’s line付近の変化:粘膜皮膚移行部に沿った上皮障害パターンを示す
下眼瞼にも認めうる:下眼瞼のリッドワイパー部にも同様の所見がみられることがある
染色法による検出力の違い
リサミングリーン:LWE検出に最も鋭敏であり、第一選択の染色法である
フルオレセイン:検出可能だが感度はリサミングリーンに劣る
ローズベンガル:検出可能だが刺激が強く臨床使用は限定的である
上眼瞼翻転後、リサミングリーン染色によるリッドワイパー部の染色範囲で評価する。
| Grade | 水平幅 | 矢状幅 |
|---|---|---|
| 0 | なし | なし |
| 1 | 線状(<2mm) | <25% |
| 2 | 2mm以上 | 25〜50% |
| 3 | 広範(>4mm) | >50% |
水平幅と矢状幅の組み合わせで総合判定する。Grade 2以上を臨床的に有意なLWEとする報告が多い。
フルオレセイン染色でもLWEを検出できますが、リサミングリーンのほうが鋭敏です。日常臨床でリサミングリーンが使用できない場合、フルオレセインで代用可能ですが、軽度のLWEを見逃す可能性があります。最も正確な評価にはリサミングリーン染色が推奨されます。
LWEの本態は瞬目時の摩擦による機械的上皮障害である。
主な原因・リスク要因として以下が挙げられる。
LWEの診断は上眼瞼翻転後の生体染色検査に基づく。
診断手順:
併用すべき検査:
LWEはドライアイのサブタイプ分類において「摩擦関連ドライアイ」の指標として位置づけられている。従来のBUTやSchirmer試験では検出できない涙液機能異常を反映する所見として臨床的意義がある。
LWEの治療目標は眼表面の摩擦を軽減し、上皮障害を改善することである。
CL関連の対策
CL装用中止:最も確実な治療であり、中止により速やかに改善する
CL種類の変更:低含水レンズ・シリコーンハイドロゲルレンズへの変更を検討する
1日使い捨てレンズ:汚れの蓄積を回避でき、摩擦軽減に有効である
装用時間の短縮:症状が軽度の場合は装用時間の調整で対応可能なこともある
薬物療法
レバミピド点眼(ムコスタ®):ムチン分泌を促進し、眼表面の潤滑性を改善する
ジクアホソルNa点眼(ジクアス®):水分分泌とムチン分泌を促進する
人工涙液:涙液を補充し、一時的に摩擦を軽減する
眼軟膏(就寝前):夜間の摩擦を軽減し、上皮修復を促進する
治療の段階的アプローチ:
レンズ素材や含水率の変更で改善する症例はあります。特にシリコーンハイドロゲルレンズや1日使い捨てレンズへの変更が有効なことがあります。ただし、それだけでは不十分な場合も多く、ムチン分泌促進薬の併用や装用時間の短縮が必要になることがあります。改善しない場合はCL装用の中止も検討されます。
リッドワイパーは解剖学的に上眼瞼結膜の最下端、Marx’s line付近に位置する。瞬目時に眼表面と最も密に接触する部位であり、涙液の薄層がこの界面の潤滑を担う。
正常な瞬目メカニクス:瞬目時にリッドワイパーは角膜・CL表面上を滑走する。涙液層が十分であれば、流体潤滑(boundary lubrication)が働き摩擦は最小限に抑えられる。
LWE発症の機序:
CL装用時の増悪因子:CL表面は角膜上皮と比較して摩擦係数が高い。特にCL表面の乾燥(dehydration)は摩擦係数を著しく上昇させる。CL上の涙液層はベアな角膜上よりも薄く不安定であり、潤滑の破綻が起こりやすい。
ドライアイとの関連:LWEは「摩擦亢進型ドライアイ」の概念に直結する。TFOS DEWS IIではドライアイの悪循環モデルに眼表面の摩擦が組み込まれており、LWEはその臨床的指標として重要視されている。
CL非装用者でもドライアイ患者にLWEが認められることがあります。涙液量の減少やムチンの異常により潤滑機能が低下すれば、CL装用の有無にかかわらず瞬目時の摩擦が増大します。ドライアイ症状があるにもかかわらず通常の検査で異常が見つからない場合、LWEの評価が有用な場合があります。
LWEに関する研究は近年活発化している。
ムチン分泌促進薬の有効性:日本発のレバミピド点眼・ジクアホソル点眼がLWEの改善に有効であることが複数の研究で示されている。これらの薬剤は涙液のムチン含有量を増加させ、眼表面の潤滑性を向上させる。
低摩擦CLの開発:CL素材表面の摩擦係数を低減する技術開発が進んでいる。表面処理技術や保湿成分含有CLにより、装用中の摩擦軽減が期待される。
診断技術の進歩:前眼部OCTや共焦点顕微鏡によるリッドワイパー部の客観的評価法の研究が進められている。生体染色に依存しない定量的評価が可能になれば、早期診断と治療効果判定の精度向上が見込まれる。
ドライアイのサブタイプ分類における位置づけ:摩擦関連ドライアイの指標としてLWEの重要性が認識されつつある。今後のドライアイ診療ガイドラインにおいて、LWE評価が標準的な検査項目に組み込まれる可能性がある。