Grade I
直径5mm未満:表在性で輪部に限局した病変。
浸潤範囲:角膜実質の半分程度までにとどまる。

角膜類皮腫(corneal dermoid)は、角膜・輪部・結膜に生じる先天性の良性腫瘍である。皮膚組織が角結膜に迷入して異所性に増殖した分離腫(choristoma)で、輪部デルモイド(limbal dermoid)とも呼ばれる。分離腫とは、本来その部位に存在しない正常組織が異所性に増殖した腫瘍の総称である。
新生児における発生率は1〜3:10,000とされ、先天性眼窩病変の25%を占める2)。輪部デルモイドが最も多く、特に下耳側の輪部に好発する。片眼性が多く、遺伝性ではなく突発性に発生する。出生後は基本的に大きさは変化しない。直径は3mmから大きいもので10mmに達するものもある。
角膜類皮腫と眼窩類皮嚢胞は全く別の疾患であり、混同しないよう注意が必要である。
角膜類皮腫は先天性の良性腫瘍(分離腫)であり、悪性化の報告はない。生後は基本的に大きさが変化しない非増殖性の病変である。ただし、弱視や整容面の問題を生じることがあるため、定期的な経過観察が重要である。

角膜類皮腫は耳下側の角膜輪部に好発する境界鮮明な白色半球状の充実性腫瘤である。乳白色から薄い茶褐色の色調を呈し、表面に毛髪を認めることがある。デルモイド表面は皮膚のように角化しているため、涙液はその部位ではじける。
斜乱視・遠視性不同視による弱視が約2/3の症例で合併する。両側性は眼球表面類皮腫全体の10〜25%に認められる5)。
臨床的およびAS-OCT所見に基づいて3段階に分類される5)。
Grade I
直径5mm未満:表在性で輪部に限局した病変。
浸潤範囲:角膜実質の半分程度までにとどまる。
Grade II
大型病変:角膜の大部分を覆い、実質深層のDescemet膜直前まで達する。
特徴:Descemet膜自体は侵していない。
Grade III
最重症:角膜全体を覆い、眼球前面から虹彩色素上皮まで貫通する。
頻度:最も稀なタイプである。
角膜類皮腫は胎生期における第一および第二鰓弓の形成異常に起因する。角膜・結膜を形成する外胚葉の異形成により、皮膚組織が角結膜に迷入して分離腫を形成する。ほとんどの症例は孤発性であるが、以下の症候群と関連して発生することがある。
輪部デルモイドに副耳、耳瘻孔、下顎骨低形成、脊椎異常などを合併する症候群で、3,000〜5,000出生に1人の頻度で発生し、男女比は3:2である1)。ほとんどが孤発性である。母体糖尿病、高血圧、ウイルス感染(インフルエンザ、風疹)、コカイン・タモキシフェン・レチノイン酸への暴露などが素因として報告されている1)。
輪部デルモイドを認めた場合は、全身検査を施行してGoldenhar症候群の合併を確認する必要がある。
角膜類皮腫(輪部デルモイド)はGoldenhar症候群の眼所見として認められることがある。Goldenhar症候群は副耳、耳瘻孔、下顎骨低形成、脊椎異常などを伴う先天性の疾患で、3,000〜5,000出生に1人の頻度で発生する1)。輪部デルモイドを認めたら全身検査でこれらの合併を確認することが重要である。
角膜類皮腫の診断は主に臨床所見に基づいて行われ、一般に生検は不要である。切除標本がある場合は組織病理学的検査で確定診断が可能である。
Goldenhar症候群が疑われる場合は、耳鼻咽喉科・小児科を含む集学的評価を行う。聴力検査、頭部CT、脊椎X線、心臓・腎臓超音波検査などが推奨される1)。
角膜類皮腫で最も重要なのは弱視の予防と治療である。手術によって乱視は改善されないため、弱視の治療にはならない。手術前から屈折矯正(眼鏡)と健眼遮閉による弱視治療を開始する必要がある。
乱視が1D未満で表面不整が最小限のGrade Iデルモイドでは保存的経過観察が適切である。定期検査は6〜12か月ごとに行い、視力・病変サイズ・調節麻痺下屈折検査を評価する。
手術はあくまで整容的なものであり、早期手術の適応は原則としてない。以下の場合に手術を考慮する。
手術はGradeに応じて術式を選択する。
| Grade | 推奨術式 |
|---|---|
| Grade I(表在性) | 切除+表層角膜移植 |
| Grade II | 深層層状角膜移植術(DALK) ± 羊膜移植 |
| Grade III | 前眼部全再建 |
腫瘍切除後に表層角膜移植を併用する。単純切除のみでは再発や偽翼状片が高頻度に生じる。移植片は新鮮角膜である必要はなく、冷凍保存角膜でよい。トレパン径は通常7.0mm程度が選択される。縫合は10-0ナイロン端々縫合で約12針行う。腫瘍の取り残しがあると術後に強い炎症反応や偽翼状片を生じるため、完全切除を心がける。
Abdulmannanら(2022)は乳幼児・小児期の輪部デルモイド5例の管理成績を報告した。4例で1D以上の乱視を認めたが、術後も乱視の改善はみられず、視力改善は主に眼鏡装用と健眼遮閉によるものであった6)。
手術でデルモイドを切除しても乱視は改善されない。手術は整容目的であり、弱視の治療にはならない。乱視による弱視には、眼鏡による屈折矯正と健眼遮閉療法が必要である。術後も乱視は変化しないかわずかに増加する傾向が報告されている6)。
角膜類皮腫の手術は整容目的であり、原則として早期手術の適応はない。瞳孔領を覆うデルモイドでは早期手術を要するが、輪部に限局して増大がない場合は乳幼児期以降に行う。幼少時の手術は全身麻酔が必要となる。
角膜類皮腫の発生機序には複数の仮説がある。一つは発生初期における視神経杯の縁と表面外胚葉の間の中胚葉細胞の化生性変化から生じるという説である。もう一つは、周囲の眼構造の胚発生過程における多能性細胞の迷入(sequestration)が示唆されている。
デルモイドは分離腫として、外胚葉由来の毛髪・皮膚、まれに歯などの組織と、中胚葉由来の脂肪組織・軟骨などから構成される。組織学的には、コラーゲン性結合組織・毛包・脂腺を含む表皮・真皮に類似した構造を示す。
デルモイド組織自体は増殖活性を有しない。
Mitamuraら(2021)は、12歳時に輪部デルモイド切除を受けた79歳日本人女性で、残存デルモイド組織を含む翼状片様増殖を報告した。免疫組織化学でKi67(細胞増殖マーカー)は翼状片上皮細胞と新生血管内皮細胞で陽性であったが、デルモイド成分(脂肪組織・結合組織・末梢神経)では陰性であった3)。不完全切除で残存したデルモイド組織は増殖能を持たないものの、翼状片発生の修飾因子として作用する可能性が示された。
この報告は、切除時の完全切除の重要性を裏付けるとともに、デルモイド組織そのものが先天性の非増殖性病変であることを改めて示している。
Poddiら(2025)は、Grade I輪部デルモイドに対して切除後にマイトマイシンC(0.02%)塗布と三層羊膜移植をフィブリン糊で固定する術式を報告した。18歳女性で2年間の経過観察にわたり再発なく、角膜表面のトポグラフィ正規化・高次収差の減少・BCVA改善が確認された2)。
巨大角膜・眼球表面デルモイド(17×14mm)に対して、Choudharyら(2021)はpre-descemetic DALK(深層前部層状角膜移植)と対側眼からのSLET(simple limbal epithelial transfer)を組み合わせた術式を報告した。偽翼状片の形成を予防しつつ整容的に満足な結果が得られた4)。
SMILE手術で抽出したレンティクルを用いた層状角膜移植も報告されており、ドナー角膜を必要としない術式として注目されている。
Fuら(2024)は、Goldenhar症候群の4歳男児に対して全エクソーム解析(WES)を実施し、小耳症に関連する可能性のある5つの遺伝子変異(PRDM16、FAT4、POLR1C、PLEC、MED12)を同定した1)。Goldenhar症候群の遺伝的基盤の解明は今後の診断・予防に寄与する可能性がある。
- Fu Y, Yu H, Zhang J, Zhou N. Goldenhar syndrome with limbal neoformation, microtia and skeletal deformities: a case report and literature review. BMC Ophthalmol. 2024;24:81.
- Poddi M, Romano V, Borgia A, et al. Combined Multilayered Amniotic Membrane Graft and Fibrin Glue as a Surgical Management of Limbal Dermoid Cyst. J Clin Med. 2025;14:607.
- Mitamura M, Kase S, Ohguchi T, Ishida S. A case of pterygium-like proliferation containing postoperative limbal dermoid remnants: a clinicopathological study. BMC Ophthalmol. 2021;21:12.
- Choudhary DS, Agrawal N, Hada M, Paharia N. Massive corneal-epibulbar dermoid managed with pre-descemetic DALK and SLET. GMS Ophthalmol Cases. 2021;11:Doc05.
- Juneja A, Puthalath AS, Gupta N, Verma PK. Isolated bilateral limbal dermoid, preauricular skin tags and ametropic amblyopia. BMJ Case Rep. 2021;14:e245078.
- Abdulmannan DM. Successful Management of Limbal Dermoid in Infancy and Childhood: A Case Series. Cureus. 2022;14(3):e22835.