上皮剥離法(Epi-off)
標準的方法:最も効果的とされる1)
角膜上皮はリボフラビンの実質拡散を妨げるバリアとなるため、上皮を剥離して浸透を促進する
欠点:術後疼痛、上皮治癒遅延、感染リスクあり

角膜コラーゲンクロスリンキング(corneal collagen cross-linking:CXL)は、角膜拡張症の進行を抑制するための処置である。光感作物質であるリボフラビンと紫外線A(UV-A)光を組み合わせ、光化学反応によってコラーゲン線維間に新たな共有結合を形成する1)。これにより角膜の機械的強度が増し、拡張の進行が抑えられる。
CXLの基礎技術は1990年代後半にドレスデン大学で開発された。リボフラビンを浸透させたブタおよびウサギ角膜に紫外線を照射し、コラーゲン架橋の誘導に成功した。ヒトでの研究は2003年に開始され、進行性円錐角膜患者16名全員で進行が停止した。70%で角膜前面曲率の平坦化が見られ、65%で視力が改善した。
2011年にFDAがオーファンドラッグ指定を付与し、2016年4月にリボフラビンとUV-Aを用いた角膜CXLが正式に承認された2)。
CXLは局所麻酔下で行われる処置であり、術中の痛みは通常ありません。しかし、上皮剥離法(エピオフ)では術後数日間、疼痛・異物感・流涙を生じることがあります。術後の痛みは鎮痛剤とバンデージコンタクトレンズで管理されます。経上皮法(エピオン)では上皮を剥離しないため、術後疼痛が軽減されます。
CXLの主目的は角膜拡張症の進行阻止である。最適な候補者は進行性の角膜拡張性疾患を有する患者である2)。
進行の判定には以下のパラメータを考慮する1):
CXL失敗(治療後の進行)のリスク因子として、術前年齢35歳以上、術前矯正視力20/25未満、術前最大急峻度58D超が報告されている2)。ただし、58D超の進行性円錐角膜でもCXLが安全に視力と角膜形状を安定化させたとする報告もある2)。
コンタクトレンズ使用者もCXLを受けることは可能です。ただし、術前の検査(角膜形状解析)の正確性を確保するために、一定期間のコンタクトレンズ中止が必要です。詳しい中止期間は担当医にご相談ください。
ドレスデンプロトコルはCXLの標準的な術式であり、最も多くのエビデンスが蓄積されている1)2)。
術前のリボフラビン浸漬後、角膜実質厚が400µm以上であることを確認する1)。デキストランフリーのリボフラビン製剤はストローマの術中脱水を軽減しうる1)。
上皮剥離法(Epi-off)
標準的方法:最も効果的とされる1)
角膜上皮はリボフラビンの実質拡散を妨げるバリアとなるため、上皮を剥離して浸透を促進する
欠点:術後疼痛、上皮治癒遅延、感染リスクあり
経上皮法(Epi-on)
上皮を温存する方法
上皮細胞間接合を緩める薬剤の使用、イオン導入(イオントフォレーシス)などの技術が試みられている
利点:術後疼痛・角膜ヘイズが軽減
欠点:上皮剥離法に比べ効果が低い可能性がある2)
ブンゼン・ロスコーの法則に基づき、UV-A照射強度を高めることで治療時間を短縮するプロトコルが開発されている。10mW/cm²で9分間(総エネルギー量5.4J/cm²)が標準と加速の良好なバランスを示す1)。ただし、45mW/cm²を超えるとCXLの効果が失われる。加速プロトコルは架橋強化効果が有意に減少するが、長期的な臨床的安定性は確認されている6)。
角膜厚320〜400µmの症例では、低浸透圧リボフラビン(hypo-osmolar riboflavin)を使用して角膜を400µm以上に膨潤させてから照射する1)。近年、Hafeziらは薄い角膜向けにSub400プロトコル(即時低浸透圧リボフラビン浸漬20分間+個別化UV-Aエネルギー照射)を導入した10)。
CXLと屈折矯正手術を組み合わせるアプローチが報告されている。
KERALINK試験(英国)は10〜16歳の進行性円錐角膜患者60例を対象としたRCTである。CXL群の18ヶ月後の平均K2は49.7D、標準治療群は53.4Dであり、調整平均差-3.0D(95%CI:-4.9~-1.1D、P=0.002)とCXLが有意に優れていた。CXL群の進行率は7%(2/30)に対し、標準治療群は43%(12/28)であった(OR 0.1、P=0.004)3)。
著者らは「CXLは若年患者の円錐角膜進行を大多数で阻止する」と結論し、「進行性疾患における第一選択治療として検討すべき」と推奨した3)。
FDA承認の第III相試験では、進行性円錐角膜205例をドレスデンプロトコルによる治療群とシャム対照群にランダム化した2)。
| 項目 | CXL群 | 対照群 |
|---|---|---|
| Kmax変化(1年) | -1.6±4.2D | 進行継続 |
| 術後拡張症試験(179例)のKmax変化 | -0.7±2.1D | +0.6±2.1D |
36ヶ月以上の長期追跡を含む75文献のメタ解析では以下の結果が報告されている2):
CXLの導入以降、円錐角膜に対する全層角膜移植の施行数が有意に減少したことが欧州の2つの研究で報告されている2)。
CXLは安全性の高い処置であるが、主に上皮剥離に関連する合併症が報告されている1)4)。
| 合併症 | 頻度・特徴 |
|---|---|
| 角膜ヘイズ | 高頻度。1-2ヶ月で出現、6-12ヶ月で消退1) |
| 永続的瘢痕 | 最大8.6%1) |
| 無菌性浸潤 | 術後早期。ステロイド点眼で消退1) |
| 感染性角膜炎 | 0.0017%1) |
| 上皮治癒遅延 | 上皮剥離法で生じうる |
| 過度の平坦化 | 遠視シフトを伴う |
| 内皮障害 | 1.4%(安全基準遵守下でも報告)1) |
CXLは単純ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス)の再活性化を誘発しうる1)5)11)。ヘルペス眼疾患の既往がある患者ではCXLは禁忌である1)。
Bagatinらの報告では、CXL後の単純ヘルペスウイルス角膜炎の発生率は52例中4例(7.69%)であった。4例全員に口唇ヘルペスの既往があった。術前5日前からのアシクロビル予防投与を行っても、16例中2例(12.5%)が単純ヘルペスウイルス角膜炎を発症した5)。
Wangらは300例中4例(1.33%)の新規単純ヘルペスウイルス角膜炎を報告した。4例とも眼ヘルペスの既往はなかったが、術後3日〜1ヶ月で発症した。自覚症状に乏しい例もあり、定期的なフォローアップが早期診断に不可欠であるとされた11)。
Moramarcoらは12歳男児のCXL後に重度の角膜融解が発生した症例を報告した。微生物学的検査は陰性であり、結膜弁手術で穿孔を回避した後、3ヶ月後にDALKを施行し視力20/25を回復した4)。
Tillmannらは2例のCXL後角膜融解・穿孔を報告した。1例は術後7日目に感染徴候なく穿孔し、もう1例は24時間以内に黄色ブドウ球菌が検出された。両例とも緊急全層角膜移植を要した10)。ZNF469遺伝子変異との関連も示唆されている10)。
Soleimaniらは術前角膜厚461µmの症例でCXL後角膜浮腫が発生した例を報告した。AS-OCTで非常に深いCXLラインが確認され、内皮細胞密度は対眼の60%に低下していた。ステロイド点眼で2ヶ月後に完全回復し、最終視力は20/30であった9)。
CXLは単純ヘルペスウイルス(HSV)の再活性化を誘発する可能性があります。紫外線照射、角膜神経叢の損傷、術後ステロイド使用などが再活性化の要因とされています。ヘルペス性角膜炎の既往がある方はCXLの適応外となります。口唇ヘルペスの既往がある場合は、術前に担当医にお伝えください。予防的な抗ウイルス薬の投与が検討される場合があります。
CXLの作用機序は光化学反応に基づく1)。
CXLの効果はリボフラビン濃度が深層で低下するため、主に角膜前層で発揮される。
CXLは角膜コラーゲンの性質を変化させ、少なくとも36ヶ月間にわたり角膜構造と細胞密度に影響を及ぼすことが示されている。眼圧測定値には有意な影響を与えない。
角膜抵抗因子や角膜ヒステレシスはCXLによりわずかにしか変化しないが、同一機器から導出されるカスタム変数はCXL後のより硬い挙動を示唆する変化を示す2)。
KERALINK試験は若年者(10〜16歳)に対するCXLの初のRCTとして、CXLが大多数で円錐角膜の進行を阻止することを示した3)。
著者らは「CXLによる進行阻止が長期的に持続すれば、乱視を有する若年患者の円錐角膜スクリーニングと早期CXLの正当性を裏付ける最初のエビデンスとなりうる」と述べた3)。
初期のコスト効果分析では、CXLは高い費用対効果を有することが報告されている3)。
CXLによる角膜強化作用と紫外線照射の殺菌活性を活かし、実質融解を伴う角膜炎の管理に応用されている。メタ解析では、補助的CXLが標準的な抗微生物療法単独と比較して感染性角膜炎の治癒を促進することが示されている。ただし、結果の一貫性はまだ確立されておらず、現在は標準的抗微生物療法に抵抗性の症例でのみ検討されている。
CXLは水疱性角膜症において角膜浮腫と角膜厚を減少させ、視力を改善させることが示されている。しかし、効果は約6ヶ月程度しか持続せず、緩和的な役割にとどまる可能性がある。
CXLの効果は長期間持続することが多く、10年以上の安定が報告されている研究もあります。しかし、約8%の症例でCXL後にも進行が認められることが報告されています。特に若年者では再進行のリスクがあるため、術後も定期的な経過観察が重要です。再進行が認められた場合、再度のCXLが検討されることがあります。
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- Moramarco A, di Geronimo N, Gardini L, et al. Management of corneal melting after collagen cross-linking for keratoconus: a case report and a review of the literature. BMC Ophthalmol. 2024;24:131.
- Bagatin F, Radman I, Randjelović K, et al. Herpes simplex keratitis following corneal crosslinking for keratoconus: a one-year case series follow-up. Diagnostics. 2024;14:2267.
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- Karani R, Sherman S, Trief D. A case of infectious crystalline keratopathy after corneal cross-linking. Am J Ophthalmol Case Rep. 2021;23:101139.
- Soleimani M, Ebrahimi Z, Yazdani Moghadam M, et al. Multi modal imaging in corneal edema after corneal collagen cross-linking (CXL); a case-based literature review. BMC Ophthalmol. 2021;21:442.
- Tillmann A, Kampik D, Borrelli M, et al. Acute corneal melt and perforation – a possible complication after riboflavin/UV-A crosslinking (CXL) in keratoconus. Am J Ophthalmol Case Rep. 2022;28:101705.
- Wang L, Deng Y, Ma K, et al. Herpetic keratitis following corneal crosslinking for keratoconus: a case series. Infect Drug Resist. 2022;15:6555-6562.