3時9時染色(HCL)
部位:角膜輪部の3時・9時方向に限局
原因:瞬目時にHCLが約2mm上下動し、3時・9時方向から涙を吸い込む際に局所乾燥が生じる
経過:軽症は3〜5日で治癒。びらんに進行した場合は約1週間を要し角膜混濁を残しうる

コンタクトレンズ(CL)合併症は、CL装用が原因または誘因となって発症する角膜・結膜障害の総称である。無症候性の軽微なものから角膜潰瘍に至る重症例まで程度はさまざまである。
CLが眼障害を誘発する主なメカニズムは以下の5つに大別される。
CL合併症の診察では、角膜所見から原因を推測し、その原因を除去することが重要である。原因・治癒期間・後遺症の有無・CL変更の要否を個別に説明し適切な治療を行う。
CL合併症の主な自覚症状は以下のとおりである。
充血・眼脂・疼痛のすべてを併発した場合は角膜感染症の可能性がありとくに注意を要する。
すべてのCLは角膜知覚を低下させる(hypoesthesia)。知覚低下によりCL装用者は角膜障害の初期症状を自覚しにくい場合がある。
フルオレセイン染色所見を広がり方(点状・面状・線状)と深さ(SPK・角膜びらん・角膜潰瘍)でパターン分類すると原因を推定しやすい。
3時9時染色(HCL)
部位:角膜輪部の3時・9時方向に限局
原因:瞬目時にHCLが約2mm上下動し、3時・9時方向から涙を吸い込む際に局所乾燥が生じる
経過:軽症は3〜5日で治癒。びらんに進行した場合は約1週間を要し角膜混濁を残しうる
スマイルマーク点状表層角膜症(SCL)
部位:瞳孔領下方(笑顔の口の形に一致)
原因:もともとドライアイのある患者でレンズ下涙液が減少して生じる
経過:ドライアイ用点眼薬で対応。夕方以降の早期脱離を指導する
びまん性点状表層角膜症(HCL/SCL)
部位:角膜全体にほぼ均一
原因:CL装用による酸素不足。レンズ汚れが機械的刺激を加え悪化する
経過:CL中止と点眼治療で4〜5日で治癒する
その他の点状病変パターンは以下のとおりである。
| パターン | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| ドーナツ状点状表層角膜症 | カラーCLの色素露出・SiHy+PHMB | 中央部が少なく周辺に集中 |
| ビッグマウス点状表層角膜症 | プリズムバラスト型SCLの酸素不足 | 角膜下方2/3に限局 |
| リング状ステイニング | SiHyとケア剤の不適合 | 2010年以降は激減 |
まずCLを直ちに外してください。痛みが軽度で視力低下がなければ、翌日まで装用を中止して様子をみることもできます。ただし充血・眼脂・強い疼痛を伴う場合は感染性角膜炎の可能性があるため、速やかに眼科を受診してください。外したCLは破棄せず、原因検索のため受診時に持参するとよいでしょう。
CL装用は微生物性角膜炎の最大のリスク因子の一つである。原因菌として緑膿菌・ブドウ球菌・連鎖球菌・セラチアが挙げられる。アカントアメーバ角膜炎(AK)患者の88%がCL装用者であったと報告されている。
ワンデーディスポーザブルレンズはレンズケア不要でケース汚染のリスクがなく、タンパク汚れの蓄積も最小限であるため、巨大乳頭結膜炎やケア剤関連の合併症は起こりにくいとされている。ただしドライアイ関連のスマイルマーク点状表層角膜症や就寝時装用による合併症はワンデーレンズでも生じうる。
CLによる角膜障害の診断には細隙灯顕微鏡検査が必須である。HCL装用眼ではフルオレセインを染色する前にレンズ表面の汚れや水濡れ性を観察することがポイントである。レンズ表面が乾燥してくると汚れが浮かび上がる。
上皮欠損のパターン判定に有用である。染色部位・形態・範囲から原因を推定する。
急性上皮浮腫では上皮全層欠損と誤診しうる。上皮欠損がなくてもtight junctionが弱化しフルオレセインが浸入するため、染色10分後に角膜全体が染色されたようにみえることがある。
| 鑑別疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 上輪部角結膜炎 | 結膜上皮も染色される |
| 感染性角膜潰瘍 | 培養検査で確定 |
| 角膜ヘルペス | 樹枝状潰瘍。偽樹枝状はCL関連 |
SEALsと上輪部角結膜炎(SLK)の鑑別では、SLKでは結膜上皮もフルオレセインで染色される点が異なる。偽樹枝状角膜炎はHCL固着時にみられ、線状病変の末端が2本以上に枝分かれする点で角膜ヘルペスの樹枝状潰瘍に類似する。
CL装用の中止と原因除去が基本である。角膜所見から原因を推測し、治癒期間・後遺症の有無・CL変更の要否を個別に説明する。
治癒後は原因に応じたCL変更を行う。3時9時染色ではSCLへの変更、SEALsでは安全なSCLの選択、スマイルマーク点状表層角膜症では保水性に優れたシリコーンハイドロゲルレンズへの変更が有効である。
CL装用中止と抗菌薬+低濃度ステロイド(0.1%フルオロメトロン)点眼で治療する。浸潤病巣が混濁として残ることがあるためステロイド使用が望ましいが、コンプライアンス不良が予測される場合はNSAID点眼で経過をみる。
視力脅威なし
対象:浸潤2mm以下かつ視軸から3mm以上離れた小さな非中心性潰瘍
治療:フルオロキノロン系点眼による経験的治療(エンピリックセラピー)
視力脅威あり
対象:浸潤2mm超、視軸から3mm未満、または治療開始48時間後の悪化例
治療:角膜培養+グラム染色を施行し、バンコマイシン+強化トブラマイシン点眼を1時間毎に開始。培養結果に応じて薬剤変更
CLの即時中止が必須である。原因菌として緑膿菌・ブドウ球菌が多い。アカントアメーバ角膜炎にはポリヘキサメチレンビグアナイド、イセチオン酸プロパミジンなどの多剤併用が行われる。
CL装用中止またはワンデータイプへの変更が基本である。0.1%フルオロメトロン1日4回を1〜2週間使用する。症状改善後に元のレンズに戻しても再発することが多く、CL種類の変更が望ましい。
微小嚢胞性・水疱性角膜上皮症の疼痛緩和にBCLを使用する場合は、高含水・高Dk値の薄型レンズが安全とされる2)。使用時には二次感染予防のため予防的広域抗菌薬の併用が推奨される2)。BCLは角膜浮腫の長期的な解決策とはならない2)。
シリコーンハイドロゲルレンズは従来のHEMAレンズに比べ酸素透過性が飛躍的に向上しており、低酸素関連の合併症は大幅に減少した。ただし素材の硬さからSEALsを生じることがあり、一部のケア剤との不適合でドーナツ状点状表層角膜症が報告されている。どのCLでも適切なケアと定期検査が重要である。
CLは角膜への大気中酸素供給を制限する。酸素透過率(Dk/t)の低いレンズでは角膜上皮の嫌気性代謝が亢進し、乳酸蓄積による浸透圧上昇から上皮浮腫が生じる。PMMAレンズ時代にはcentral circular cloudingと呼ばれる角膜中央部に局在した上皮浮腫が日常的にみられた。
1990年頃まで主流であったHEMAの従来型SCLでは酸素不足による急性上皮浮腫が頻発したが、現在は高Dk値のシリコーンハイドロゲルレンズが主流となり低酸素障害は減少している。
慢性的な低酸素状態は角膜新生血管を誘発する。長期装用者の新生血管は潜在的な輪部幹細胞欠損を反映している可能性がある。
瞬目時のCLと眼表面の摩擦が上皮障害を引き起こす。HCLでは瞬目のたびにレンズが約2mm上下に移動し、3時・9時方向から涙液を吸い込む。この際に当該部位の涙液が枯渇し点状表層角膜症が生じる。レンズエッジの機械的刺激が加わると角膜びらんや角膜浸潤に進行する。
SCLでは上眼瞼とCL表面の摩擦によりlid-wiper epitheliopathy(LWE)やSEALsが生じうる。SEALsは上眼瞼がCLを押さえている部位に発生し、レンズの角膜側表面が不整である場合にとくに起きやすい。
CL装用による慢性的な機械的刺激や細菌内毒素が免疫反応を惹起し、無菌性浸潤を生じる。消毒不十分なSCLやレンズケース内のバイオフィルムが原因となることが多い。
巨大乳頭結膜炎ではCL表面に沈着したタンパク質に対するI型アレルギー反応が関与する。上眼瞼結膜がレンズと常に接触し刺激されることで炎症と巨大乳頭が形成される。
レンズケース内のバイオフィルム形成は感染性角膜炎の重要なリスク因子である。バイオフィルム内の細菌は消毒剤に対する耐性が高く、レンズケースの定期交換が予防の要となる。