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角膜・外眼部疾患

結膜反応性リンパ様増殖症

1. 結膜反応性リンパ様増殖症とは

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結膜反応性リンパ様増殖症(conjunctival reactive lymphoid hyperplasia:CRLH)は結膜のリンパ様細胞が良性に増殖する疾患である。結膜の粘膜関連リンパ組織(MALT)に対する抗原刺激の結果として T 細胞の免疫調節障害が生じ、B 細胞増殖のカスケードが惹起される1)。通常は良性であるが、稀に悪性リンパ腫へ進展することがある。

眼付属器リンパ様増殖症のうち約 1/3 が結膜に発生する1)。平均診断年齢は 35 歳であり、男性にやや多い(54%)1)。75% が片側性で、80% 以上が内側球結膜・涙丘・半月襞に病変を生じる1)

Q 結膜反応性リンパ様増殖症は癌ですか?
A

結膜反応性リンパ様増殖症は良性の疾患であり、癌ではありません。ただし悪性リンパ腫と外観が類似し、稀にリンパ腫へ進展する可能性があるため、生検による確定診断と定期的なフォローアップが重要です。単クローン性が確認された場合はリンパ腫リスクが約4倍に上昇するとされています。

無症状の場合もあるが、結膜充血・異物感・眼痛・眼瞼腫脹・霧視を訴えることがある。触知可能な腫瘤や整容上の問題が主訴となることも多い。

細隙灯顕微鏡検査では結膜にサーモンピンク色の滑らかな隆起性病変を認める。結膜充血はほとんどなく、有意な新生血管形成も伴わない。病変は内側球結膜に好発する。

前眼部 OCT では均質で低反射な病変として観察され、その表面の上皮は薄化している。超音波生体顕微鏡検査(UBM)では病変の深さと直径を定量的に評価できる。

CRLH の正確な原因は完全には特定されていないが、以下の因子が関与すると考えられている。

  • MALT への抗原刺激:持続的な抗原暴露が T 細胞免疫調節不全を誘導し、B 細胞増殖を惹起する1)
  • 感染:クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)との関連が報告されている
  • 自己免疫疾患:異常な自己免疫反応が関与する可能性がある
  • アレルギー:慢性的な結膜 MALT の炎症を促進しうる

サーモンピンク色の結膜腫瘤を確認する。結膜充血の程度・新生血管の有無・病変の範囲を評価する。

前眼部 OCT では均質・低反射の病変として描出される。超音波生体顕微鏡 は病変の深さ・直径の定量評価に有用であり、治療効果の判定にも使用される。高解像度 OCT は結膜アミロイドーシスとの鑑別に役立つ。

生検・免疫組織化学・フローサイトメトリー

Section titled “生検・免疫組織化学・フローサイトメトリー”

確定診断には切開生検が推奨される。病理組織学的にはリンパ濾胞内の正常胚中心を伴う慢性炎症性浸潤を認める。

フローサイトメトリーで多クローン性マーカー(CD3 陽性 T リンパ球+CD20 陽性 B リンパ球)が陽性であれば良性が確認される1)。Ki-67 の低発現も良性の指標となる。単クローン性が認められた場合はリンパ腫への進展リスクが約 4 倍に上昇する1)

鑑別疾患主な鑑別点
結膜リンパ腫単クローン性・浸潤性
結膜アミロイドーシスHR-OCT で鑑別可
慢性濾胞性結膜炎多発性濾胞・充血

結膜リンパ腫との鑑別には免疫組織化学・フローサイトメトリー・遺伝子再構成解析が不可欠である。

Q サーモンピンク色の結膜病変を見つけたらどうすればよいですか?
A

サーモンピンク色の結膜病変は結膜反応性リンパ様増殖症のほか、結膜リンパ腫やアミロイド沈着の可能性があります。外観のみでは良性・悪性の判別が困難なため、眼科を受診し生検を含む精査を受けることが重要です。特にフローサイトメトリーによる多クローン性の評価が診断の鍵となります。

CRLH の管理に関する専門家のコンセンサスやガイドラインは確立されていない1)

無症状で積極的治療を希望しない場合は慎重な経過観察が初期管理となる。

最も多く行われる治療法であり、235 例のレビューでは 65.9% が切除で治療された1)。球結膜の境界明瞭な病変が主な適応である。補助的な病変周囲へのステロイド注射や冷凍凝固が併用されることがある。

経口または局所ステロイドが第二選択として使用される(12.7%)1)。ただし長期使用は白内障眼圧上昇・感染リスクの増加を伴う1)

タクロリムス 0.03% 軟膏(Protopic)の局所投与が 2 例の結膜リンパ様増殖症に対して中等度〜完全な病変消退をもたらした報告がある。カルシニューリン阻害薬であるタクロリムスはシクロスポリンの 20〜100 倍の効力を有し、B 細胞増殖も抑制する。1)

放射線療法(外照射)は眼窩病変に限定されるが結膜病変にも使用報告がある。ドキシサイクリン・シクロスポリン 0.05%・インターフェロンα-2b の使用報告もあるが、いずれも少数例である1)リツキシマブ(抗 CD20 モノクローナル抗体)は眼窩病変に対して使用されており、ステロイド関連副作用の回避と悪性転換リスクの限定的な抑制が利点とされる。

Q 結膜反応性リンパ様増殖症の治療後も経過観察は必要ですか?
A

はい、治療後の経過観察は非常に重要です。20〜30%の再発率があり、稀に悪性リンパ腫へ進展する可能性があります。特にフローサイトメトリーで単クローン性が認められた場合はリスクが高まります。少なくとも5年間、6か月ごとの定期受診が推奨されています。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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結膜の MALT に対する持続的な抗原刺激が T 細胞の免疫調節不全を引き起こす1)。T 細胞機能の破綻により B 細胞増殖の抑制が解除され、リンパ様細胞の過形成が生じる。多クローン性の B 細胞増殖は良性の経過をたどるが、遺伝子型変異の蓄積により単クローン性へ移行するとリンパ腫への進展リスクが高まる。

結膜のリンパ増殖性疾患は良性の反応性リンパ過形成と悪性リンパ腫に大別される。結膜原発の悪性リンパ腫はほとんどが B 細胞性であり、低悪性度で発育緩徐な MALT リンパ腫(CALT lymphoma)が多い。CRLH はこのスペクトラムの良性端に位置し、単クローン性の獲得が悪性転換の指標となる。

CRLH の管理に関する専門家のコンセンサスは現時点で確立されていない1)。近年、ステロイドの長期使用に伴う副作用を回避するためのステロイド節約薬として、タクロリムス(0.03%)の局所投与が報告された1)。タクロリムスは T 細胞増殖の抑制に加え B 細胞増殖も抑制する特性を有し、皮膚リンパ様増殖症での治療成功報告とあわせ、今後の症例蓄積が期待される。

リツキシマブなどの標的療法は眼窩病変を中心に検討されており、結膜病変への応用拡大が課題である。また、単クローン性の有無によるリスク層別化と、それに基づく治療戦略の最適化が今後の研究方向として重要である。

  1. Rivkin AC, Bernhisel AA. Conjunctival lymphoid hyperplasia treated with topical tacrolimus: A report of two cases. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;37:102256.

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