関連する全身疾患
ターナー症候群:リンパ浮腫を伴う
クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群:脈管形成異常
ノンネ・ミルロイ・メイジュ病:遺伝性リンパ浮腫
睫毛重生を伴うリンパ浮腫:結膜および末梢のリンパ浮腫

結膜リンパ管拡張症(conjunctival lymphangiectasia:CL)は結膜のリンパ管が限局性に異常拡張し、結膜上に局所的な浮腫状隆起を呈する疾患である。結膜のリンパ管は眼表面からの余分な水分・老廃物の排出を担っており、その拡張は充血・腫脹・刺激感・流涙などを引き起こしうる。
| 形態 | 特徴 |
|---|---|
| びまん型 | 広範な結膜浮腫 |
| 局所型 | 真珠の連なり外観 |
| 出血性 | リンパ管内に血液充満 |
局所型では数珠状に連なる小さな半透明の隆起が特徴的であり、「真珠の連なり(string of pearls)」と表現される。出血性結膜リンパ管拡張症は拡張したリンパ管と血管の間に交通が形成され、リンパ管内に血液が断続的に充満する病態である。
一般人口における有病率は約 1% とされる。遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスの患者では有意に高く、重度の全身疾患のバイオマーカーとなる可能性が指摘されている。
結膜リンパ管拡張症はリンパ管の限局性の拡張であり、リンパ嚢胞は拡張したリンパ管が嚢胞状の形態をとったものです。病理学的には同一のスペクトラム上にあり、両者の区別が困難な場合もあります。数珠状に連なる外観や出血の消退・再発を繰り返す所見がある場合はリンパ管拡張症の可能性が高いとされます。

無症状のことも多い。症状がある場合は異物感・充血・流涙を訴える。出血性型では血性の分泌物が認められることがある。整容上の問題を主訴に受診する症例もみられる。
細隙灯顕微鏡検査では球結膜上に半透明〜黄色調の浮腫状隆起を認める。局所型では数珠状に連なる小隆起(真珠の連なり外観)が特徴的である。びまん型では広範な結膜浮腫(chemosis)を呈する。
出血性型ではリンパ管拡張部に血液が充満し、嚢胞内に偽前房蓄膿(pseudohypopyon)様の水平面形成を認めることがある。外傷や炎症を契機に静脈との交通が顕性化する。
発症原因として慢性炎症・眼手術や外傷後の瘢痕・リンパ管の循環障害が推測されている。特発性に発症することもあり、発症メカニズムは完全には解明されていない。
乳児期のリンパ管拡張症はリンパ系の発育不全に起因し、以下の全身疾患を伴うことが多い。
関連する全身疾患
ターナー症候群:リンパ浮腫を伴う
クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群:脈管形成異常
ノンネ・ミルロイ・メイジュ病:遺伝性リンパ浮腫
睫毛重生を伴うリンパ浮腫:結膜および末梢のリンパ浮腫
関連する代謝性疾患
ファブリー病:ライソゾーム蓄積症。渦状角膜が最多の眼所見であるが、結膜リンパ管拡張症やドライアイも認められる
遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス:有病率が一般人口より有意に高く、バイオマーカーの可能性がある
乳児に結膜リンパ管拡張症を認めた場合は、全身疾患の除外のために徹底的な全身検査が必要である。
結膜上の浮腫状隆起の形態・分布・色調を評価する。数珠状の連なりや出血の消退・再発を繰り返す所見は本疾患を示唆する。
低反射の嚢胞状病変がさまざまな大きさで観察される。リンパ管の拡張程度と範囲を非侵襲的に評価できる。
確定診断は病理所見による。拡張したリンパ管は 1 層の内皮細胞で覆われ、内腔にリンパ液の貯留を認める。
| 鑑別疾患 | 主な鑑別点 |
|---|---|
| 結膜封入嚢胞 | 単発・球状・可動性 |
| リンパ管腫 | 多房性・深部浸潤 |
| アレルギー性結膜炎 | 充血・掻痒・乳頭 |
鑑別疾患として結膜弛緩症・瞼裂斑・結膜上皮内腫瘍・結膜母斑嚢胞なども挙げられる。数珠状の外観と出血の消退・再発の反復があれば本疾患の可能性が高い。
結膜の水ぶくれ様の膨らみは結膜リンパ管拡張症のほか、結膜封入嚢胞・結膜浮腫(chemosis)・アレルギー性結膜炎など多様な原因が考えられます。自然に消退することもありますが、持続する場合や出血を伴う場合は眼科での精査をお勧めします。
多くの結膜リンパ管拡張症は介入なしで自然に消退する。無症状であれば経過観察でよい。
異物感を訴える場合や出血を繰り返す場合は点眼治療を行う。人工涙液(ソフトサンティア等 1 日 6 回)と低力価ステロイド点眼(フルメトロン 0.1% 1 日 2 回、改善に伴い漸減)の併用が処方例として用いられる。抗ヒスタミン点眼が使用されることもある。
点眼治療で効果不十分な場合や整容上の問題がある場合に手術適応となる。
外科的切除
冷凍凝固術
方法:液体窒素による凍結
特徴:外科的切除の代替として有効
注意:最適な結果を得るために複数回の施行が必要な場合がある
抗 VEGF 薬(ベバシズマブ)の単回結膜下注射はリンパ管新生(lymphangiogenesis)に関与する VEGF を標的とし、有効性が報告されている。高周波電気焼灼術は外科的切除よりも結膜組織を多く温存でき、第一選択の治療オプションとして注目されている。
多くの結膜リンパ管拡張症は自然に消退します。無症状の場合は経過観察のみで問題ありません。ただし症状が持続する場合や出血を繰り返す場合は点眼治療や手術が必要になることがあります。完全切除を行えば再発は通常みられません。
結膜のリンパ管は他の眼組織と異なり発達しており、球結膜の粘膜固有層は疎な結合組織で構成されるため可動性に富む。リンパ管拡張症では何らかの原因でリンパ管の壁構造が脆弱化し、内圧上昇またはリンパ液の排出障害により管腔が拡張する。
脈管形成異常部位において拡張リンパ管と静脈の間に交通が形成されると、血液がリンパ管内に流入する。外傷や炎症が契機となり交通が顕性化することが多い。リンパ管内に貯留した血液は重力により沈降し、偽前房蓄膿様の水平面を形成する。
先天性結膜リンパ管拡張症はリンパ系の発育不全に起因する。ターナー症候群やクリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群では全身のリンパ管形成異常の一部として結膜病変が出現する。