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角膜・外眼部疾患

アマンタジン誘発角膜浮腫

1. アマンタジン誘発角膜浮腫とは

Section titled “1. アマンタジン誘発角膜浮腫とは”

アマンタジンはNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬であり、もともとA型インフルエンザの予防薬として開発された。現在はパーキンソン病(PD)に伴う振戦やレボドパ誘発性ジスキネジア、多発性硬化症(MS)の疲労感の治療に使用されている。

本剤のまれな副作用として両眼性の角膜浮腫がある。33例の文献レビューでは患者の70%が女性で年齢中央値は52歳であった1)。退役軍人保健局の2年間の監視研究ではアマンタジン服用患者の0.27%に角膜浮腫が認められている。台湾の縦断的研究ではPD患者におけるアマンタジン使用時の角膜浮腫の相対リスク(RR)は1.98と報告されている。

Q アマンタジン以外のドパミン作動薬でも角膜浮腫は起こるか?
A

メチルフェニデート、ロピニロール、ブプロピオンなど他のドパミン作動薬でも同様の角膜浮腫の報告がある。いずれも薬剤中止により回復しており、複数のドパミン作動薬の併用は相加効果によりリスクが高まる可能性がある。

数週間から数ヶ月にわたる緩徐に進行する両眼性の霧視が主症状である。薬剤開始後数週間〜数ヶ月で発症することが多いが、治療開始から数年後に報告された例もある1)。文献レビューでは発症時の視力中央値は20/200(悪い方の眼)であった1)

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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  • 角膜浮腫:両眼性の中央優位のびまん性角膜浮腫。デスメ膜皺襞を伴う
  • 滴状角膜の欠如:フックス角膜内皮変性症と異なり滴状角膜(guttata)を認めない
  • 前房内炎症の欠如:角膜後面沈着物や前房内炎症を認めない
  • 角膜知覚:通常正常であり、ウイルス性角膜炎との鑑別に有用である
  • 角膜内皮検査:スペキュラーマイクロスコピーで内皮細胞密度の著明な低下を認める。文献レビューでは内皮細胞密度の中央値は759 cells/mm²であった1)
  • 進行例水疱性角膜症や上皮下水疱を呈することがある

アマンタジン毒性のリスク因子として以下が報告されている。

用量依存性

1日投与量:100mg/日超の患者のRRは2.71であったのに対し、100mg/日以下では1.69であった

累積投与量:生涯の累積投与量が多い患者ほど内皮細胞密度が低い傾向がある

内皮への慢性影響

前向き研究:アマンタジン服用患者は角膜内皮細胞密度の減少率が1.51%/年と、非服用PD患者(0.94%)や健常者(0.55%)より大きかった

高用量ほど影響:六角形細胞率の減少と変動係数の上昇が用量依存的に増大した

アマンタジン誘発角膜浮腫のIVCM所見
アマンタジン誘発角膜浮腫のIVCM所見
Buzzi M, Vagge A, Traverso CE, et al. Ocular Surface Features in Patients with Parkinson Disease on and off Treatment: A Narrative Review. Life (Basel). 2022 Dec;12(12):2141. Figure 1. PMCID: PMC9783883. License: CC BY.
角膜上皮レベルに多数の高反射円形沈着が散在しており、アマンタジン関連角膜毒性で報告される上皮内沈着を示す。細隙灯だけでは捉えにくい微細所見を補足する画像として有用である。

アマンタジン誘発角膜浮腫の診断は臨床的に行われる。他の角膜浮腫の原因を除外した上で、アマンタジン使用歴との関連を確認する。

  • 病歴聴取:アマンタジンの投与量・期間、他のドパミン作動薬の併用歴を確認する
  • 細隙灯顕微鏡検査:角膜浮腫の分布(中央優位)、デスメ膜皺襞、滴状角膜・前房内炎症の有無を評価する
  • スペキュラーマイクロスコピー:角膜内皮細胞密度、六角形細胞率(EH)、変動係数(CoV)を測定する
  • 角膜知覚検査:正常であることを確認し、ウイルス性角膜炎を除外する
  • フックス角膜内皮変性症(滴状角膜を伴う)
  • 後部多形性角膜変性症(PPCD
  • 虹彩角膜内皮症候群(ICE症候群、片眼性)
  • ヘルペス性角膜内皮炎(角膜後面沈着物・前房内炎症を伴う)
  • 実質性角膜炎
  • 水晶体性水疱性角膜症(眼内手術歴あり)
Q フックス角膜内皮変性症との鑑別点は何か?
A

フックス角膜内皮変性症ではスペキュラーマイクロスコピーや細隙灯顕微鏡で滴状角膜(guttata)が特徴的に認められるのに対し、アマンタジン誘発角膜浮腫では滴状角膜を認めない。また、フックスは慢性進行性であるが、アマンタジン誘発性は薬剤中止により多くの場合回復する。

治療の基本はアマンタジンの速やかな中止である。文献レビューでは大多数の症例が薬剤中止後30日以内(中央値30日、四分位範囲14〜35日)に角膜浮腫が消失し、視力中央値20/25まで回復した1)。神経内科主治医と連携し、代替薬への変更を検討する。

角膜浮腫の対症療法として高張食塩水(5%塩化ナトリウム)点眼が使用されることがある。ただし、内皮機能障害が本態であるため効果は限定的である。水疱性角膜症に進行した場合は疼痛管理のためのバンデージコンタクトレンズや予防的抗菌点眼薬を使用する。

文献レビューでは33例中5例(10眼)で角膜移植術が必要であった1)。デスメ膜内皮角膜移植(DMEK)やデスメ膜剥離自動角膜内皮移植DSAEK)が選択される。アマンタジンの使用を継続したまま角膜移植を行うと非免疫性の移植片不全を生じる報告があるため、移植前に薬剤を中止する必要がある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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正確なメカニズムは不明であるが、角膜内皮細胞に対する用量依存的な毒性が主因と考えられている。角膜内皮細胞はNa⁺-K⁺ ATPaseポンプやSLC4A11などのイオン輸送体を介して角膜間質から前房へ水を汲み出すポンプ機能と、細胞間密着結合によるバリア機能を有する。これらの機能により角膜の含水量が一定に保たれ、透明性が維持されている。

アマンタジン誘発角膜浮腫で角膜移植が必要となった症例の組織病理検査では、滴状角膜や炎症を伴わない中等度から完全な角膜内皮細胞の消失が認められた。薬剤誘発性のストレスが角膜内皮細胞に加わり、閾値を超えると内皮細胞の機能不全および消失が進行し、ポンプ機能の低下により角膜間質に水分が貯留して浮腫が生じると推定されている。

特発性反応(薬剤開始後1ヶ月以内の発症)よりも用量依存的な慢性毒性が主な機序と考えられる。文献レビューでは1ヶ月以内に発症した症例は全体の9.7%に過ぎなかった1)

Q 角膜内皮細胞が減少すると元に戻るのか?
A

ヒトの角膜内皮細胞は再生能力がほとんどなく、障害を受けた細胞は周囲の細胞が扁平化して面積を拡大することで補われる。アマンタジン中止後に角膜浮腫が消失しても内皮細胞密度は低値のまま残ることが多く、将来的な角膜代償不全のリスクを抱える。このため長期フォローアップが推奨される。


  1. Raharja A, Mina W, Ashena Z. Amantadine-induced corneal edema: A case and literature review. Am J Ophthalmol Case Rep. 2023;32:101881.

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