この疾患の要点
二次IOL 挿入術は、無水晶体 眼・IOL脱臼 ・IOL混濁・屈折 誤差などに対し、初回手術とは別に行うIOL移植術である。
術式の選択は、残存する水晶体嚢 ・毛様溝・虹彩 組織の状態と術者の習熟度に基づいて決定される。
嚢支持が十分な場合は毛様溝固定(3ピースIOL)が第一選択となる。
嚢支持がない場合は鞏膜固定(縫合法またはYamane法)または虹彩爪型IOLが主な選択肢となる。
いずれの術式も最終視力 に有意差はなく、各術式固有のリスクを理解したうえで選択する。
外傷による無水晶体眼では、感染リスク軽減のため一次IOL挿入は避け、二次挿入が推奨される。
二次眼内レンズ(IOL)挿入術(Secondary IOL Implantation)は、初回白内障 手術時またはその後に生じた無水晶体状態や、既存IOLの問題に対して行う追加的なIOL移植術の総称である。
無水晶体眼 :初回手術時の合併症・外傷・先天異常によりIOLを挿入できなかった場合
IOL脱臼・亜脱臼 :Zinn小帯断裂・縫合糸断裂によるIOLの偏位・落下
IOL混濁 :親水性アクリルIOLの石灰化など
屈折誤差(Refractive surprise) :予期せぬ大幅な屈折ズレ
多焦点IOLに対する患者の不満足 :グレア・ハローが日常生活に支障をきたす場合
IOL誘発性の角膜内皮 不全・囊胞様黄斑浮腫 :IOL位置不良による慢性炎症
小児先天白内障術後 :1〜2歳未満での摘出後の光学的リハビリテーション
外傷による開放眼球損傷(open globe injury; OGI)では、一次IOL挿入は眼内炎 リスクを高めるため、二次挿入が推奨される1) 。
Q IOL交換と二次IOL挿入の違いは何か?
A IOL交換は既存IOLを摘出して新たなIOLを挿入する術式を指す。二次IOL挿入術は既存IOLがない無水晶体眼への新規挿入も含む広義の概念である。本記事では両者を含めて扱う。
視力低下 :IOL偏位・脱臼・混濁による焦点障害
単眼複視 ・グレア :IOLのtilt(傾き)・decentration(偏心)による
不等像視・眼精疲労 :無水晶体眼の高度な遠視 ・左右差による
羞明 ・ハロー :IOL混濁・多焦点IOLの光学的問題
IOL脱臼
IOL偏位 :散瞳 下で支持部が瞳孔 領に視認される。
虹彩振盪(Iridodonesis) :Zinn小帯弛緩の所見。
硝子体 脱出 :前房 内への硝子体突出を伴うことがある。
IOL混濁
石灰化 :親水性アクリルIOLに多い。眼内ガス・空気接触後に発生。
後発白内障 :後嚢混濁による視力低下(Nd:YAGレーザーで対応可)。
IOL表面の析出物 :炎症・感染による変化。
二次IOL挿入術の術前評価は通常の白内障手術より詳細な前眼部評価が必要である。
結膜 ・鞏膜の状態確認 :緑内障ドレナージデバイス の有無を含む
角膜 評価 :透明性・浮腫・パキメトリー・スペキュラーマイクロスコピー(角膜内皮細胞数)
前房深度・硝子体脱出の評価
虹彩・水晶体嚢の残存状態 :術式選択の鍵となる
既存IOLの亜脱臼の程度とIOLタイプの確認
後眼部評価 :術後視力を制限しうる眼底病変の把握
前眼部OCT :IOL位置・前房深度の精密評価
Q 二次IOL挿入はどのタイミングで行うか?
A 外傷後の二次IOL挿入では感染リスク・炎症消退を確認してから施行する。開放眼球損傷後では少なくとも数ヶ月の待機が推奨されることがある1) 。白内障術中合併症後の二次挿入では、水晶体前嚢の閉鎖が始まる前の術後2〜6週間以内が最適な場合がある。インドの眼科医481名へのアンケート調査では、2〜6週間が最も多い回答であった3) 。
術式の選択は以下の段階的評価に基づく。
水晶体嚢が完全に残存している場合 :前嚢・後嚢の癒着を解除し嚢内固定を試みる
連続曲線性前嚢切開(CCC )の縁が全周残存する場合 :毛様溝への3ピースIOL固定(±オプティックキャプチャー)
水晶体嚢が部分的・不全の場合 :毛様溝固定、虹彩固定、鞏膜固定を嚢の状態に応じて選択
水晶体嚢がない場合 :鞏膜固定術または虹彩爪型IOL
連続環状切嚢の縁が全周残存している場合に適応となる。嚢外固定には3ピースアクリルIOLを使用する(1ピースアクリルIOLの嚢外固定はIOL脱臼・眼圧 上昇・緑内障 を生じることが多く避けるべきである)。
オプティックキャプチャー を組み合わせると、IOLの安定性・中心固定が向上し、近視 化が軽減する。ハプティクスを毛様溝に置き、連続環状切嚢を通してオプティックをキャプチャーする方法が最良とされている。
毛様溝固定ではIOLが嚢内固定より前方に位置するため、IOL度数を適宜下げないと近視化が生じる。
嚢支持がない眼に対する選択肢の一つである。虹彩の前面(前房側)または後面(後眼房側:retropupillary固定)への固定が可能である。
虹彩裏面固定の利点 :
生理的な後房への配置
前面固定より前房が深くなり角膜内皮不全リスクが低い
前面固定より早期・良好な視力回復
挿入の必要条件 :
前房内の硝子体完全除去
少なくとも270度の虹彩組織の残存(瞳孔径6mm未満)
前房深度3mm以上
瞳孔ブロック 予防のための周辺虹彩切除術(PI)が必要
虹彩爪型IOLの合併症 :角膜内皮細胞減少(術後3年で約10.9%)、眼圧上昇(0〜7%)、瞳孔の楕円化(最大13.9%)、IOL脱臼(0〜10%)
比較項目 虹彩裏面固定 鞏膜固定IOL 手術時間 短い 長い 視力(BCVA) 有意差なし 有意差なし 特異的合併症 虹彩萎縮・色素散乱・瞳孔歪 縫合糸露出・IOL傾斜
嚢支持・虹彩組織が不十分な場合、または浅前房・角膜内皮不全のある患者で選択される。
Ab externo法 (Lewis法):縫合糸を眼外から眼内へ通す。信頼性が高い。
Ab interno法 :眼内から外側へ通す。盲目的操作のため合併症リスクがやや高い。
縫合材料 :9-0ポリプロピレン、7-0ゴアテックス(CV-8)、または6-0ポリプロピレン
結節の処理 :三角形強膜 フラップ・ホフマンポケット・Z縫合などで結節を覆い感染を予防する
Yamane法は現在、嚢支持のない眼への二次IOL挿入において急速に普及している術式である。開放眼球損傷後の無水晶体眼を含む様々な状況での有効性が報告されている1) 。
30G(または27G)針を用いた経結膜的アプローチで結膜切開が不要
3ピースIOLの支持部先端を熱処理してフランジを作製し、鞏膜トンネル内に固定
縫合糸断裂・露出リスクがない
術後低眼圧 リスクが低い(30Gまたは27Gの小切開)
外傷後開放眼球損傷に続発した無水晶体眼へのYamane法適用例では、術後15ヶ月で裸眼視力20/50まで改善した症例が報告されている(糖尿病黄斑浮腫が残存視力の制限因子)1) 。
どちらが優れているかを示した決定的な研究はない。硝子体網膜 外科医は縫合なしの強膜固定IOLを好む傾向があり(57%)、前眼部外科医は縫合ありを好む傾向がある(60%)。縫合なしの中では硝子体網膜外科医はYamane法(40%)、前眼部外科医はグルーイングIOL(49%)を選ぶ傾向がある3) 。
二次IOL挿入術の注意点
1ピースアクリルIOLの嚢外固定は禁忌 :IOL脱臼・眼圧上昇・続発緑内障 を高率に生じる
親水性アクリルIOL(Akreos等)は将来の硝子体手術 を要しうる患者には不適切 :眼内ガス・空気曝露で石灰化が生じる
角膜内皮細胞の評価 :手術操作によるさらなる内皮細胞損失を考慮する
毛様溝固定のIOL度数 :嚢内固定より前方に位置するため適宜減算する
偽落屑症候群 ・外傷・高度近視・結合組織疾患によるZinn小帯の進行性弛緩が最多の原因である。縫合固定IOLでは、ポリプロピレン縫合糸(特に10-0)の経時的な加水分解・酸化劣化が糸断裂を招く。10-0ポリプロピレンでは12〜28%の断裂率が50〜80ヶ月以内に報告されており、9-0への移行が推奨される。
水晶体嚢が完全に残存する無水晶体眼では、ゼンメリング環(Soemmering’s ring)と増殖水晶体上皮細胞が前後嚢間のスペース維持に役立つ。このスペースをMVRナイフで切開し、残存皮質を除去後にIOLを嚢内挿入することで、生理的な位置への固定が可能となる。
Carlevale IOL(FIL SSF)は、T字型ハプティクスを鞏膜切開窓に通す新しい設計の縫合不要鞏膜固定IOLである。このEDOF (焦点深度拡張)版(FIL SSF EVOLVE)を無水晶体眼に対して使用した症例が報告されており、術後3ヶ月でUDVA 20/23(遠方)、UNVA 20/40(30cm近方)が得られた2) 。EDOF光学系と鞏膜固定設計の組み合わせにより、嚢支持のない患者にも眼鏡非依存の可能性を提供できるが、長期成績は蓄積中である。
既存の人工虹彩(AI)を摘出せずにその後方にIOLを固定する「サルーンドア法(Saloon Door Technique)」が報告されている。AIを12時・6時の位置で放射状に切開し、3ピースIOLをこの「扉のように開く切開部」から後房に通した後、Yamane法で鞏膜固定する4) 。AIの摘出・再固定が不要で手術侵襲が低減できるが、AIへのオフラベル使用(切開)であり、長期的なAI構造の安全性評価が必要である。
Thomas J, Armstrong G. Use of Yamane technique for secondary intraocular lens implantation following open globe injury. BMJ Case Rep. 2023;16:e255995.
Petrou P, Doumazos S, Kandarakis SA, et al. Implantation of a scleral fixated (Carlevale) EDOF IOL in aphakia. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;39:102391.
Kelkar AS, Kelkar J, Bhende P, et al. Preferred practice patterns in aphakia management in adults in India: A survey. Indian J Ophthalmol. 2022;70:2855-2860.
Roth K, Seiller-Tarbuk K, Amon M. Saloon Door Technique - “open sky” IOL exchange utilising flanged haptic fixation behind a pre-existing Artificial Iris. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;40:102431.
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