非感染性
Behçet病:眼炎症発作に伴いUMEを生じやすい。
Vogt-小柳-原田病:発症初期に漿液性網膜剥離を伴う。
サルコイドーシス:網膜静脈炎・脈絡膜肉芽腫に伴う。
若年性特発性関節炎:慢性虹彩毛様体炎を介してUMEに至る。

ぶどう膜炎性黄斑浮腫(uveitic macular edema; UME)は、ぶどう膜炎に伴い黄斑部に液体が貯留する状態である。ぶどう膜炎は先進国における全失明原因の最大15%を占める2)。その最も頻度の高い合併症がUMEであり、ぶどう膜炎患者の約3分の1に視力障害を引き起こす2)。
非感染性ぶどう膜炎患者の約8.3%にUMEが生じるとされる1)。囊胞様黄斑浮腫(CMO)はぶどう膜炎患者の10〜70%に認められ、前部ぶどう膜炎で5.1%、中間部ぶどう膜炎では40.7%と報告されている6)。
炎症が制御された後も浮腫が持続することがあるため、炎症と浮腫の両方に対する介入が必要である2)。感染性ぶどう膜炎が背景にある場合は、まず原因病原体に対する治療を優先する。
炎症消退後も黄斑浮腫が遷延することがある。そのため浮腫そのものに対する追加治療が必要となる場合がある。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
UMEの主な自覚症状は中心視力の低下である。
ぶどう膜炎では前房や硝子体への細胞浸潤、角膜混濁、併発白内障などでも視力低下が生じる。これらの所見以上に視力が低下している場合、囊胞様黄斑浮腫の存在を疑う。
UMEの臨床所見は原因となるぶどう膜炎の種類と炎症の活動性によって異なる。
UMEの根本原因は眼内炎症であり、その病因は多岐にわたる。
非感染性
Behçet病:眼炎症発作に伴いUMEを生じやすい。
Vogt-小柳-原田病:発症初期に漿液性網膜剥離を伴う。
サルコイドーシス:網膜静脈炎・脈絡膜肉芽腫に伴う。
若年性特発性関節炎:慢性虹彩毛様体炎を介してUMEに至る。
感染性
UMEのリスク因子には以下がある。
UMEの診断には光干渉断層計(OCT)が最も重要な検査である。
鑑別すべき疾患として、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、加齢黄斑変性、黄斑上膜による牽引性黄斑浮腫がある。白内障術後の黄斑浮腫(Irvine-Gass症候群)も鑑別に挙がる。
UMEの経過観察中はOCTによる黄斑部評価が欠かせない。炎症活動性や治療段階に応じて主治医が判断するが、治療中は1〜3か月ごとの検査が一般的である。
UMEの治療は複雑であり、患者ごとに最適な方法が異なる1)。感染性ぶどう膜炎では原因治療を優先し、非感染性UMEにはステロイドを中心とした治療を行う。
硝子体内投与は高い薬物濃度を得られるが、眼内感染や眼圧上昇のリスクがある。
| 薬剤 | 作用持続期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| トリアムシノロン(4 mg) | 約3か月 | 広く使用。繰り返し投与が必要 |
| Ozurdex(DEXインプラント) | 約4〜6か月 | 緩徐放出型。UMEへの有効性確認済み |
| Iluvien(FA 0.19 mg) | 約36か月 | 長期作用。白内障・緑内障リスク高い |
トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射:4 mgの投与で約50%の患者に視力改善が得られる1)。白内障進行は注射回数に関連し、4〜5回でほぼ確実に発症する。眼圧上昇は20〜45%に認められるが、多くは点眼で管理可能である1)。
デキサメタゾン硝子体内インプラント(Ozurdex):0.7 mgのデキサメタゾンを徐放するポリマー製インプラントである。HURON試験では8週時点で中心窩網膜厚有意低下と硝子体混濁改善が確認された1)。
Fanらの系統的レビュー・メタアナリシス(2023)では、単回DEXインプラント後にBCVAが1か月で-0.15 logMAR、3か月で-0.22 logMAR、6か月で-0.24 logMAR改善した3)。中心黄斑厚(CMT)は1か月で-179.77 μm、3か月で-179.13 μm、6か月で-140.25 μm減少した。
DEXインプラント後の眼圧上昇(IOP>21 mmHg)の発生率は13.6%、白内障形成は5.4%であり、いずれも点眼で管理可能であった3)。
POINT試験では、眼周囲トリアムシノロン(PTA)・硝子体内トリアムシノロン(ITA)・硝子体内DEXインプラント(IDI)を直接比較し、中心窩網膜厚減少率はそれぞれ23%、39%、46%であった1)。硝子体内投与が眼周囲投与より優れていたが、眼圧上昇リスクも硝子体内投与群で高かった。
フルオシノロンアセトニド硝子体内インプラント:Iluvien(0.19 mg、36か月持続)やRetisert(0.59 mg、30か月持続)がある。長期の作用が得られるが、白内障手術が73.8%(Iluvien)〜90%以上(Retisert)の有水晶体眼で必要となり、緑内障手術もそれぞれ11.9%、40%で必要となった1)。
トリアムシノロンアセトニド上脈絡膜腔注射用懸濁液(Xipere; SCS-TA)は、UME治療として初めて承認された薬剤であり、上脈絡膜腔投与として初の承認製剤でもある2)。
上脈絡膜腔(SCS)は脈絡膜と強膜の間に位置する潜在的空間であり、薬剤は後眼部に選択的に分布する2)。動物実験では、上脈絡膜投与により硝子体内投与と比較して後眼部への薬物曝露が12倍高く、前眼部への曝露は96%低下した2)。この特性により白内障や眼圧上昇のリスクが軽減される。
PEACHTREE試験(第III相)では、SCS-TA 4 mg投与群で24週時に15文字以上のBCVA改善を達成した患者が46.9%(偽処置群15.6%、p<0.001)であった2)。中心窩網膜厚減少は平均152.6 μm対17.9 μm(p<0.001)であり、4週時点から有意差が認められた。
MAGNOLIA延長試験では、SCS-TA群の50%が2回目投与後最長9か月間レスキュー治療を必要としなかった2)。48週間を通じたレスキューまでの中央値はSCS-TA群257日、偽処置群55.5日であった。
SCS-TAは全身性ステロイドの併用の有無、ぶどう膜炎の解剖学的位置、罹患期間にかかわらず有効性が示されている2)。非レスキュー患者におけるステロイド関連眼圧上昇の発生率は10.8%であり、偽処置群でレスキュー治療を受けた患者の21.7%より低かった2)。
VEGF阻害薬はUMEに対してオフラベルで使用される1)。脈絡膜新生血管を合併した場合は第一選択となる。ステロイド不耐やステロイドレスポンダー(眼圧上昇を起こしやすい患者)では有力な選択肢である。ただし、UMEに対する明確な投与レジメンは確立されていない1)。
まず降圧点眼薬で管理を試みる。多くの場合は点眼でコントロール可能である。点眼・内服で不十分な場合は線維柱帯切開術などの緑内障手術が検討される。ステロイド緑内障には線維柱帯切開術が特に有効とされる。
UMEの発生には内側および外側血液網膜関門(BRB)の破綻が中心的役割を果たす。
正常時、BRBは網膜血管内皮細胞(内側)と網膜色素上皮細胞(外側)のタイトジャンクションにより維持されている。ぶどう膜炎では炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6)がタイトジャンクション蛋白(ZO-1、オクルディン、クローディン)の発現を低下させ、血管透過性が亢進する6)。VEGFも血管透過性亢進と新生血管形成を促進する2)。
ぶどう膜炎による炎症では以下の連鎖が生じる。
後部硝子体膜の黄斑部への牽引もUME発生の一因となりうる。黄斑上膜や黄斑硝子体牽引症候群では、硝子体の牽引によって黄斑浮腫が生じることがある。
トリアムシノロンアセトニドは細胞内グルココルチコイド受容体に結合し、リポコルチン産生を促進して抗炎症性のアラキドン酸放出を抑制する2)。免疫細胞の浸潤・活性化を抑え、VEGFの発現を低下させることで血管透過性を改善し、浮腫を軽減する2)。
Muyaらのウサギを用いた研究では、SCS-TAは硝子体内投与用トリアムシノロン製剤と比較して注入時のグライドフォースが低く、ばらつきも少ないことが示された2)。これにより上脈絡膜腔への安全な薬剤送達が容易になる。上脈絡膜投与後、後眼部への高濃度が最初の2か月間維持され、3か月目には硝子体内投与と同等レベルとなった。
Mackensenらの試験では、インターフェロンβ(44 mg皮下注3回/週)投与群で黄斑厚が平均206 μm減少し、メトトレキサート(20 mg皮下注週1回)群では47 μm増加した(p<0.0001)1)。インターフェロンα2aはBehçet病を含む難治性UMEに対して80%以上の有効率が報告されている。
Taylorらの15例を対象とした前向き研究では、硝子体内メトトレキサート400 μg投与により黄斑厚が平均425 μmから275 μmに減少した1)。3分の1の患者が中央値4か月で再発したが、再注射は初回と同等の効果を示した。
オクトレオチド(100 μg皮下注3回/日、または長時間作用型20 mg筋注月1回)は、従来治療に抵抗した慢性UMEの9眼中7眼で浮腫を消退させたとの報告がある7)。局所眼内投与製剤の開発も進行中である。
硝子体内シロリムス(mTOR阻害薬)はSAVE-2試験でUME軽減の統計的有意差を達成できなかったが、一部の患者では著明な改善が認められた1)。適切な患者選択が今後の課題である。
SCS-TA(Xipere)は2021年に米国で承認されたが、2026年3月時点で日本では未承認である。国内での使用可能性については今後の規制動向を確認する必要がある。