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ぶどう膜炎

スウィート症候群(急性発熱性好中球性皮膚症)

スウィート症候群(Sweet syndrome; SS)は、1964年にRobert Douglas Sweetが8症例を報告した疾患で、**急性発熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)**とも呼ばれる。発熱・末梢血好中球増多・有痛性紅斑性皮膚病変を特徴とし、病理学的には真皮への成熟好中球の密な浸潤を認める6)。近年は自己炎症性疾患として位置づけられ、インフラマソーム遺伝子変異の関与が示唆されている3)

  • 性差:女性に多く、男女比は約2〜3:1
  • 好発年齢:女性30〜50歳、男性50〜90歳。ただし小児を含む全年齢層で発症しうる4)
  • 病型別頻度:古典的(特発性)38〜53%、悪性腫瘍関連25〜44%、薬剤誘発性4〜24%
  • 再発率:古典的SSの最大3分の1で再発がみられる

古典的(特発性)

上気道・消化管感染症が先行することが多い。

炎症性腸疾患・妊娠との関連も報告される。

**全症例の38〜53%**を占める。

悪性腫瘍関連

血液悪性腫瘍が約85%で、急性骨髄性白血病(AML)が最多2)

固形癌では消化管癌が多い2)

後方視的研究で52例中27例(51.9%)がMASSであった2)

薬剤誘発性

G-CSFが最多の原因薬剤。

ST合剤・抗癌剤(全トランスレチノイン酸、プロテアソーム阻害薬、低メチル化薬)との関連も報告。

ワクチン(SARS-CoV-2含む)による誘発も確認されている6)

Q スウィート症候群は皮膚だけの病気ですか?
A

皮膚病変が主体であるが、最大50%の症例で皮膚外症状が出現する。眼・筋骨格系のほか、肝臓・脳・腎臓・肺・脾臓など多臓器に好中球浸潤を生じうる。

  • 発熱:しばしばみられるが、一部の患者では認めず診断に必須ではない
  • 頭痛・筋肉痛・関節痛・倦怠感:皮膚症状に随伴する最も一般的な全身症状
  • 皮膚病変:菫色(すみれいろ)〜紅斑性の丘疹・局面・結節が突発的に出現し、触れると圧痛を伴う。上肢に好発し非対称性に分布する
  • 充血・刺激感・流涙:前眼部病変で最も多い訴え
  • 急激な視力低下:網膜血管炎を伴う場合に生じる
  • 霧視飛蚊症・暗点:後眼部病変を示唆する症状
  • 眼症状は皮膚所見と同時、あるいは数日以内に出現し、約半数は両眼性である

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

SSに伴う眼病変は非常に多彩で、眼および周囲組織のほぼすべての部位に及ぶ。

部位所見
眼窩・眼瞼眼窩周囲の紅斑性水疱性発疹、涙腺炎
前眼部結膜炎(最多)、上強膜炎、強膜炎、周辺部潰瘍性角膜炎輪部結節、虹彩炎
後眼部脈絡膜炎、網膜血管炎、硝子体
神経眼科視神経病変を伴う汎ぶどう膜炎、炎症性緑内障
  • 眼窩周囲病変:痛みを伴う眼瞼腫脹・眼球運動制限を伴い、初診時に眼窩蜂窩織炎と誤診されることがある。全身性ステロイドによく反応する
  • 前眼部病変:結膜炎が最も一般的。虹彩炎・強膜炎・周辺部潰瘍性角膜炎も報告されている。前眼部に限定された病変でも視力低下を生じうる
  • 後眼部病変:網膜血管炎では急激な視力低下が一般的。眼底検査で血管に沿った滲出や網膜内出血を認めることがある
  • 視神経病変:稀に視神経を侵し、視力低下と視神経乳頭浮腫を呈する。汎ぶどう膜炎と乳頭浮腫はステロイドまたは免疫調節薬で速やかに消失する
Q スウィート症候群の眼症状で最も多いのは何ですか?
A

結膜炎が最も一般的な眼症状である。138人のSS患者を対象としたレビューでは眼病変は3%であったが、別の文献レビューでは患者の約3分の1に眼への浸潤が起こると報告されている。

SSの発症には3つの病型に対応する背景因子が関与する。

  • 上気道感染症・消化管感染症:症状出現の1〜3週前に先行することが多い1)
  • 炎症性腸疾患(IBD)妊娠との関連
  • SARS-CoV-2ワクチン接種:Pfizer-BioNTech、AstraZeneca、Moderna、Janssen、Sinovacの各ワクチン後の発症が報告されており、2022年時点で少なくとも14例が確認されている6)
  • 血液悪性腫瘍(特にAML)が約85%を占める
  • AML患者の約1%にSSが発症し、SSが悪性腫瘍の診断に先行する場合もある5)
  • 固形癌では食道癌・大腸癌・胃癌など消化管癌が多い2)
  • MASSの危険因子としてFLT3変異や骨髄異形成関連AMLが報告されている5)
  • G-CSFが最も多い原因薬剤
  • ヒドロキシクロロキン:少なくとも4例が報告されている3)
  • 全症例の10%未満と推定される3)
  • フランスの薬剤副作用データベース解析では、994,789件中136例がSS関連であった3)
  • HLA-B54:特に日本人患者で関連が報告されている。一方、白人集団ではHLA-ABC抗原との関連は認められていない
  • MEFV遺伝子変異:骨髄異形成症候群に伴うSSで同定されている6)

SSの診断基準は1986年にSu & Liuが提案し、1994年にVon den Drieschが改訂した。

古典的SS・悪性腫瘍関連SS:2つの主要基準すべて+4つの副基準のうち2つを満たす。

  • 主要基準
    • 痛みを伴う紅斑性の局面または結節の突発的な出現
    • 白血球破砕性血管炎の証拠を伴わない密な好中球浸潤の組織病理学的証拠
  • 副基準
    • 発熱(>38℃)
    • 基礎疾患(血液癌、内臓悪性腫瘍、炎症性疾患、妊娠)との関連、または上気道・消化管感染症・ワクチン接種の先行
    • 全身性ステロイドまたはヨウ化カリウムへの優れた治療反応
    • 発症時の異常検査値(4つのうち3つ:赤沈>20mm/hr、CRP陽性、白血球数>8,000、好中球>70%)

薬剤誘発性SS:A〜Eの5基準すべてを満たす。

  • A. 有痛性紅斑性局面・結節の突発的出現
  • B. 血管炎を伴わない密な好中球浸潤の組織病理
  • C. 発熱(>38℃)
  • D. 薬剤摂取と症状出現の時間的関連
  • E. 薬剤中止またはステロイド治療後の病変消失
  • 全血球計算(CBC):末梢血好中球増多(好中球増加を伴う白血球増多)が最も一貫した異常
  • 急性期反応物質:赤沈亢進・CRP上昇
  • 生化学検査・尿検査:異常があれば皮膚外病変を示唆
  • 悪性腫瘍の精査:貧血・好中球減少・血小板異常があれば骨髄生検を考慮2)
  • 確定診断に有用。真皮に成熟好中球の密な浸潤と核崩壊を認め、血管炎を伴わないのが特徴的所見1)
  • ただし一部の長期経過例では血管炎を伴うこともあり、血管炎の存在のみで診断を除外すべきでないとする意見もある6)
  • 細隙灯顕微鏡検査・眼底検査:全例で前眼部・後眼部の評価に施行すべきである
  • フルオレセイン蛍光眼底造影(FA):網膜血管炎に一致する虚血性変化・コルク抜き状血管を描出する
  • 深部イメージングOCT(EDI-OCT)・Bモード超音波検査:脈絡膜浸潤・びまん性強膜炎の特定に有用
  • 脳MRI:視神経病変が疑われる場合に施行。視神経の増強効果を認めることがある
  • 多形紅斑(EM):単純ヘルペス感染既往・炎症マーカーは正常〜中等度
  • 結節性紅斑(EN):皮膚病変が下肢に限局し、生検の組織像が異なる
  • ベーチェット病:膿疱性皮膚病変・生検での血管炎・HLA-B51陽性。SSではHLA-B54陽性が特徴的で、予後も異なる1)
  • 眼窩蜂窩織炎:眼窩周囲SSが誤診されやすい

ぶどう膜炎の合併は結節性多発動脈炎多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)・SLEなど他の全身性炎症疾患でもみられるため、診断基準に基づく鑑別が不可欠である。

全身性副腎皮質ステロイド療法(第一選択)

Section titled “全身性副腎皮質ステロイド療法(第一選択)”

全身性副腎皮質ステロイドは、病型を問わずSSの第一選択治療である。

  • プレドニゾン 1mg/kg/日で開始し、4〜6週かけて10mg/日まで漸減する方法が広く用いられる1)
  • 皮膚症状は通常1週間以内にほぼ消退する3)
  • 悪性腫瘍関連SS:基礎にある悪性腫瘍の治療により皮膚病変が消失しうる2)。ステロイドに不応の場合も抗白血病療法の開始で改善する
  • 薬剤誘発性SS:原因薬剤の中止後数週間以内に改善することが多い3)
  • 前眼部・眼窩周囲の病変は全身性ステロイドに良好に反応し、局所ステロイドが追加で必要になることは稀である
  • 前部ぶどう膜炎(虹彩炎)に対しては、ステロイド点眼(ベタメタゾンまたはデキサメタゾン)と散瞳薬の点眼を併用し、虹彩後癒着を予防する
  • 重症の後眼部病変では眼内ステロイドが転帰を改善する可能性がある
  • 視力を脅かす網膜血管炎には硝子体内ベバシズマブ注入網膜光凝固術が必要になる場合がある

ステロイド節約薬(代替・補助療法)

Section titled “ステロイド節約薬(代替・補助療法)”
  • コルヒチンダプソンヨウ化カリウムインドメタシン
  • 免疫抑制薬:シクロホスファミド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン1)
  • アシトレチン:好中球遊走を抑制する機序で、70%の寛解率(2週間)が報告されている1)
Q スウィート症候群の治療後に再発することはありますか?
A

ステロイドの漸減・中止後の再発率は病型を問わず高い。ただし眼症状については、難治性や再発性の病態は極めて稀で、重度の網膜血管炎を除き永続的な視力障害が起こる可能性は低い。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

SSの正確な病態生理はまだ完全に解明されていないが、IL-1によって活性化されたサイトカインおよび好中球が介在する過敏症反応が主要な機序と考えられている。

サイトカイン・炎症メディエーター

Section titled “サイトカイン・炎症メディエーター”

SS皮膚病変部では以下の炎症細胞マーカーが非SS患者や他の好中球性皮膚症と比較して高値を示す:

  • CD3(T細胞マーカー)
  • CD163(マクロファージマーカー)
  • ミエロペルオキシダーゼ(MPO)
  • メタロプロテアーゼ
  • 血管内皮増殖因子(VEGF)

その他、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-17、TNF-α、IFN-γの上昇、Toll様受容体・C型レクチン自然免疫受容体の発現亢進が報告されている6)

近年SSは自己炎症性疾患として分類されており、インフラマソーム遺伝子の変異が炎症の持続に関与する可能性が指摘されている3)。循環自己抗体、真皮樹状細胞、免疫複合体、白血球遊走メカニズム、1型ヘルパーT細胞などが病因に寄与する因子として示唆されている。

  • HLA-B54:日本人患者でSSとの関連が報告されている。白人集団ではHLA-ABC抗原との関連は認められていない
  • ベーチェット病ではHLA-B51陽性が特徴的であり、SSとの鑑別の一助となる1)

MASSの病態については、腫瘍抗原に対する過敏反応と、炎症性サイトカインの過剰産生・調節異常の2つの仮説がある2)。ステロイドに不応のMASS患者でも、基礎にある悪性腫瘍の治療により皮膚症状が改善する点は過敏反応説を支持する。

2022年現在、SSにおける眼病変に特化した独自の病態生理を記述した文献はないが、全身と同様の自己炎症メカニズムが関与していると推測される。

Q スウィート症候群とベーチェット病はどう区別しますか?
A

両者は臨床的に類似するが、ベーチェット病は膿疱性皮膚病変・皮膚生検での血管炎・HLA-B51陽性を特徴とする。SSは血管炎を伴わない好中球浸潤・HLA-B54陽性(日本人)が特徴であり、一般にベーチェット病より予後良好である。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

1999年に提唱されたSSの神経系合併症で、文献上70例未満と報告は稀である1)。脳炎・無菌性髄膜炎として発症し、頭痛・意識変容が多い。MRI所見はT2/FLAIRで脳幹・皮質・視床に非対称性信号異常を示す。

Acurio & Chuquilin(2023)は、10年前にADEM(急性散在性脳脊髄炎)と診断された51歳女性が再発し、皮膚生検でSSと確定診断された症例を報告した。脳MRIの広範なFLAIR高信号はステロイド治療後1か月でほぼ完全に消失した1)

2005年にHisanagaが提案した診断基準では、ステロイドに反応する神経症状、皮膚所見、ベーチェット病に特徴的なぶどう膜炎・皮膚血管炎の不在、HLA-Cw1またはHLA-B54の同定、の4項目で判定する。前3項目を満たせばprobable NSSと診断される1)

Bechtold & Owczarczyk-Saczonek(2022)は、SARS-CoV-2ワクチン接種後のSS発症を系統的にレビューし、少なくとも14例を同定した。各ワクチン種(mRNA・ウイルスベクター・不活化)で報告があり、古典的SSのほか水疱性・蜂窩織炎様・壊死性など多様な亜型が含まれた6)

Liu et al.(2025)は、SSを初発症状として18歳女性がDEK::NUP214融合遺伝子を持つAMLと診断された症例を報告した。SSが悪性腫瘍に先行して出現しうること、および皮膚症状出現時の血液学的精査の重要性が強調された5)

  • SSの眼病変に特化した病態生理の解明
  • 好中球性皮膚症全般における治療ガイドラインの策定(現時点でエビデンスが不十分)6)
  • 自己炎症機序に基づく分子標的治療の開発

  1. Acurio K, Chuquilin M. Neuro-Sweet Syndrome: A Diagnostic Conundrum. Neurohospitalist. 2023;13(4):406-409.
  2. Bagos-Estevez AG, Moore S, Turner L, Baldwin B. A Case of Bullous Sweet’s Syndrome Associated With Esophageal Adenocarcinoma. Cureus. 2024;16(1):e52954.
  3. Almeida-Silva G, Antunes J, Tribolet de Abreu I, et al. Hydroxychloroquine-induced Sweet’s Syndrome: A Case Report and Literature Review. Acta Derm Venereol. 2025;105:adv41333.
  4. Zhou AE, Weddington CM, Ge S, Hoegler KM, Driscoll MS. Pediatric sweet syndrome. Clin Case Rep. 2021;9:e04762.
  5. Liu H, Liu GX, Liu FH, Wang SG. Acute myeloid leukemia with DEK::NUP214 fusion resembling acute promyelocytic leukemia, initially presenting as sweet syndrome: A case report and literature review. J Int Med Res. 2025;53(3):1-6.
  6. Bechtold A, Owczarczyk-Saczonek A. Atypical presentation of Sweet syndrome with nodular erythema and oral ulcerations provoked by Ad26.COV2.S SARS-CoV-2 vaccination and review of literature. Dermatol Ther. 2022;35:e15923.

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