第1段階
経口プレドニゾロン:初期用量は1 mg/kg/日が最多(76.9%)。最大用量の使用期間は4週間以内が大半。97.7%の専門医が免疫調節薬開始時に併用する。

リツキシマブ(rituximab)はCD20陽性B細胞の表面抗原CD20に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)や補体依存性細胞傷害(CDC)を介してB細胞を枯渇させるヒト‐マウスキメラ型モノクローナル抗体である。もともとB細胞性非ホジキンリンパ腫や関節リウマチの治療薬として開発された。
非感染性ぶどう膜炎の領域では、標準的な免疫抑制療法やTNF-α阻害薬に抵抗する難治例に対して使用される。国際眼炎症学会(IOIS)による53か国221名の専門医を対象とした実態調査では、リツキシマブは14種類の生物学的製剤の中で第3位の使用頻度を示した1)。アダリムマブ(98.6%)、インフリキシマブ(79.6%)に次ぎ、62.9%の専門医が臨床使用経験を有する1)。
ただし、第一選択の生物学的製剤としてリツキシマブを使用する専門医はわずか0.9%であり、アダリムマブ(97.7%)やインフリキシマブ(1.4%)と比較して低い1)。通常は他の生物学的製剤に不応の場合に二次・三次治療として位置づけられる。
アダリムマブなどのTNF-α阻害薬が無効または禁忌である難治性の非感染性ぶどう膜炎に対して用いられる。第一選択の生物学的製剤として選ばれることは稀であり(0.9%)、後方治療に位置づけられる1)。
リツキシマブ治療の対象となる非感染性ぶどう膜炎では、以下の症状が主訴となる。
リツキシマブの適応判断に関わる臨床所見は、原因疾患によって異なる。非感染性ぶどう膜炎は多様な自己免疫・自己炎症性疾患を含む。
非感染性ぶどう膜炎患者の約70%が視力障害を生じ、約20%は平均3年の経過で法的失明に至るとされる1)。
リツキシマブが使用される非感染性ぶどう膜炎は、自己免疫性・自己炎症性機序によるものである。全身性免疫調節薬の開始適応となる主な要因は以下の通りである1)。
全身性免疫調節薬を開始する前には包括的な検査が必要である。IOIS調査では全専門医(221名、100%)が投与前検査を実施していた1)。
主な投与前検査項目と実施率を以下に示す1)。
| 検査項目 | 実施率 |
|---|---|
| 血液生化学検査 | 98.2% |
| 血算 | 93.7% |
| QuantiFERON検査 | 88.7% |
その他、胸部X線(83.3%)、B型・C型肝炎ウイルス血清学的検査(72.4%)、HIV血清学的検査(57.5%)も実施される1)。
治療中の患者は通常6〜12週ごとに評価される。不活動性ぶどう膜炎の評価頻度は72.9%の専門医が6〜12週ごと、薬剤毒性のスクリーニングは74.7%の専門医が同間隔で実施している1)。
非感染性ぶどう膜炎の治療は段階的に進められる。IOIS調査によれば、典型的な治療手順は以下の通りである1)。
第1段階
経口プレドニゾロン:初期用量は1 mg/kg/日が最多(76.9%)。最大用量の使用期間は4週間以内が大半。97.7%の専門医が免疫調節薬開始時に併用する。
第2段階
従来型免疫調節薬:メトトレキサートが第一選択(57.0%)。ミコフェノール酸モフェチル(19.9%)、アザチオプリン(14.9%)が続く。
第3段階
生物学的製剤:アダリムマブが第一選択(97.7%)。不応例にインフリキシマブやリツキシマブへの変更を検討する。
リツキシマブは従来型薬剤と生物学的製剤を含むステップラダー方式の後方に位置する。ただし、60.2%の専門医は特定のぶどう膜炎診断名(91.0%)や従来型薬剤の禁忌(71.4%)を理由に、従来型薬剤の前に生物学的製剤を使用した経験がある1)。
リツキシマブの使用は疾患の種類によって異なる1)。
薬剤の効果判定には3〜6か月を要し、81.9%の専門医は3〜6か月の試験期間後に無効と判断して次の薬剤へ切り替える1)。
全身性免疫調節薬の併用は85.1%の専門医が実施していた1)。最も多い組み合わせはメトトレキサート+アダリムマブ(84.0%)であるが、リツキシマブにおいてもメトトレキサートやミコフェノール酸モフェチルとの併用が行われる。これらの免疫抑制薬の併用は抗薬物抗体の出現を抑制し、治療効果の維持に寄与する可能性がある2)。
薬剤中止前に必要な不活動期間は、64.3%の専門医が2年としている1)。
アダリムマブやインフリキシマブなどのTNF-α阻害薬が無効な難治例に対する後方治療として使用される。国際調査では62.9%の専門医が使用経験を有する1)。ただし第一選択にはならないため、専門医との相談が不可欠である。
リツキシマブはCD20抗原に結合する。CD20はプレB細胞から成熟B細胞に発現するが、幹細胞やプラズマ細胞(形質細胞)には発現しない。結合後、以下の機序でB細胞を除去する。
B細胞は抗体産生の前駆細胞であると同時に、抗原提示やサイトカイン産生にも関与する。非感染性ぶどう膜炎においてはB細胞が炎症の維持に寄与する症例が存在し、その場合にリツキシマブによるB細胞枯渇が有効となる。
近年、遺伝子治療に用いるAAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターの硝子体内投与後に生じる遺伝子治療関連ぶどう膜炎の予防にリツキシマブが注目されている2)。
硝子体内AAVベクター投与は中和抗体(NAb)の産生を誘導し、同側眼への再投与や対側眼への投与を困難にする。リツキシマブを初回投与時に併用し、B細胞集団を一時的に枯渇させることで、NAb上昇を抑制できる可能性が示唆されている2)。ただし、実験モデルではB細胞回復後に抗薬物抗体(ADA)が出現し、治療用導入遺伝子の発現を制限したとの報告もある2)。
コルチコステロイドや他の免疫調節薬をリツキシマブと併用することで、ADAを軽減しNAb抑制効果を改善する戦略が検討されている2)。
AAVベクターを用いた網膜遺伝子治療では、投与後に中和抗体が産生され対側眼治療の障壁となる。リツキシマブによるB細胞枯渇は、この液性免疫応答を抑制する手段として研究されている2)。ただし、まだ確立された治療法ではない。
AAVベクターを用いた網膜遺伝子治療は急速に発展しているが、硝子体内投与後の免疫反応は大きな課題である。リツキシマブを含む免疫調節戦略は以下のように検討されている2)。
抗TNF-α療法はすでに重症難治性ぶどう膜炎の標準的な後方治療として確立されているが、抗薬物抗体の出現が有効性の障壁となる点ではリツキシマブと共通の課題を有する2)。ミコフェノール酸モフェチルやメトトレキサートの併用は、いずれの生物学的製剤においても抗薬物抗体を軽減する可能性がある2)。
小児非感染性ぶどう膜炎の治療成績は生物学的製剤の導入により改善している3)。
Cannら(2018)は166名の小児非感染性ぶどう膜炎を解析し、72.9%がメトトレキサートを投与され、うち58名が生物学的製剤に進んだことを報告した3)。視力低下(>0.3 LogMAR)の発生率は0.05/眼年、重度視力低下(≧1.0 LogMAR)は0.01/眼年であり、過去の報告に比べ改善していた。
小児では白内障の発生率が最も高く(0.05/眼年)、若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎では緑内障が、特発性ぶどう膜炎では黄斑浮腫がより多いとされた3)。リツキシマブの小児ぶどう膜炎における役割については、さらなる検討が必要である。