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ぶどう膜炎

光干渉断層計における高反射輝点(HRF)

1. 光干渉断層計における高反射輝点とは

Section titled “1. 光干渉断層計における高反射輝点とは”

高反射輝点(Hyperreflective Foci; HRF)は、スペクトラルドメイン(SD)またはスィープソース(SS)OCT上で観察される、小型・丸形・ドット状の高反射性病変である。2009年にCoscasらが滲出型加齢黄斑変性患者で初めて報告し、同年Bolzらが糖尿病黄斑浮腫患者でも確認した。以来、様々な網膜疾患における疾患進行・治療反応の潜在的バイオマーカーとして研究が進んでいる。

HRFは眼科領域では網膜・硝子体脈絡膜に認められるドット状病変を指す(他臓器の過反射性焦点とは区別される)1)。発見以来、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜ジストロフィ、そしてぶどう膜炎性黄斑浮腫など、広範な眼疾患で観察されている1)

Q HRFはすべての眼科疾患で同じ意味を持つのか?
A

疾患によってHRFの成因と意義は異なる。加齢黄斑変性では疾患進行マーカー、DRでは炎症・虚血のバイオマーカーとして機能する。ぶどう膜炎では治療反応の指標となりうる。いずれの疾患でも「炎症プロセスの指標」という共通点がある1)

HRF自体は症状を引き起こす病変ではなく、基礎疾患に伴う自覚症状が前景に立つ。

  • 視力低下:黄斑浮腫や網膜構造破壊による。
  • 変視症・歪視黄斑部HRFが集積する場合。
  • 飛蚊症:硝子体炎を伴うぶどう膜炎に合併する場合。

HRFの形態的特徴は以下の通りである。

  • サイズ:30μm未満。RNFL(網膜神経線維層)と同等の反射強度を持つ。
  • 後方シャドウ:原則として伴わない(硬性白斑との最大の鑑別点)。
  • 分布:網膜全層に散在し、黄斑部中心窩から1500μm以内が臨床的に重要。
  • 眼底への対応:眼底鏡で対応する可視病変を認めない。

主な鑑別病変との比較を以下に示す。

所見HRF硬性白斑網膜血管
サイズ<30μm多様>30μm
後方シャドウなしありあり
主な層全層外網状層内層

脈絡膜高反射輝点(Choroidal HRF; HCF)は近年注目され、通常の脈絡膜メラノサイトの色素に由来する正常所見と病的なものの鑑別が重要である1)

HRFの組織学的相関は完全には解明されていないが、複数の成因が提唱されている1)

  • 活性化ミクログリア細胞:虚血・炎症によって活性化されたミクログリアがアメーバ状に肥大化し、HRFとして観察される。VEGFのアップレギュレーションを伴う炎症反応を惹起する。
  • RPE細胞移動:網膜色素上皮(RPE)細胞が破壊・移動することで生じる。眼底色素変化を伴う患者で多い。
  • マクロファージ浸潤:脂質を貪食したマクロファージが硬性白斑の前駆体として機能する。
  • 蛋白質・脂質漏出:血液眼関門破綻による蛋白漏出や脂質蓄積。
  • 光受容体崩壊産物エリプソイドゾーン(EZ)や外境界膜(ELM)破壊後に生じる産物。

疾患との関連:ぶどう膜炎ではIL-6上昇など炎症性サイトカインの増加、糖尿病網膜症では高血糖による神経変性・微小血管障害が活性化ミクログリアを誘導する1)

HRFはOCT検査で同定する。診断のポイントは以下の通りである。

OCT上の判断基準:

  • 30μm未満のドット状高反射病変。
  • RNFL相当の反射強度。
  • 後方シャドウなし。
  • 網膜全層に分布可能(外層・内層・全層)。

臨床的重要性の基準: 中心窩から1500μm以内の黄斑部HRFが最も臨床的意義が高い。

疾患によってHRFの分布と意義は異なる。

  • 加齢黄斑変性:外層および内層に分布。疾患進行マーカーとして機能。
  • 糖尿病網膜症:全層に分布。マクロファージ/ミクログリア特異的バイオマーカーCD14上昇と相関1)
  • ぶどう膜炎性黄斑浮腫:全層に分布し、中心窩網膜厚と正の相関を示す。治療後に減少する。
Q 硬性白斑とHRFをOCTで区別できるか?
A

区別可能である。硬性白斑は後方シャドウを伴い、境界が不規則で、外網状層に限局し、眼底検査で黄色病変として確認できる。HRFは後方シャドウなし、30μm未満、全層分布で眼底対応病変なし、という点で明確に異なる。

HRF自体は治療対象ではなく、基礎疾患の治療によってHRFの変化を評価する。

ぶどう膜炎性黄斑浮腫における対応

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  • ステロイド療法:炎症抑制によってHRFは治療に反応して減少する。浮腫消失後も残存HRFは網膜内層に留まることが多い。
  • 治療反応評価:HRFの数と分布変化を治療効果の補助指標として使用できる。
  • 抗VEGF療法やステロイドインプラントによる治療後にHRFの数が減少することは確立されているが、治療反応の予測因子としての正確な役割は依然不明確である。
  • ベースライン時のHRF多数は抗VEGF療法への反応不十分と関連する可能性があり、これらの患者ではデキサメタゾンインプラントが有益な場合がある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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HRFの形成は複雑なプロセスであり、その高反射性は特定の網膜病理や疾患によって異なる1)。複数の研究が疾患を超えた共通のメカニズムを同定している。

ミクログリアは虚血・炎症によって活性化されると肥大化・アメーバ様形態変化を示す。これにより:

  1. VEGFのアップレギュレーション
  2. 炎症性サイトカイン産生
  3. さらなるミクログリア活性化(フィードバックループ)

が生じる。ベースライン時のHRF増加はCD14(マクロファージ/ミクログリア特異的マーカー)上昇と相関することが示されている。

エリプソイドゾーン(EZ)・外境界膜(ELM)破壊との関係

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EZやELMが破壊された後、活性化ミクログリアが外側へ移動することで脈絡膜高反射輝点(HCF)が形成されると推測される1)。これはStargardt病において中心窩萎縮と相関することが確認されている。

網膜ジストロフィにおける機序

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網膜色素変性やStargardt病では、破壊されたRPE細胞や色素移動に由来するHRFが萎縮領域上方の網膜内層に見られ、疾患後期に外層へ移動する。

加齢黄斑変性では乾性型と湿性型で成因が異なる。乾性加齢黄斑変性では変性光受容体・RPE細胞由来、湿性加齢黄斑変性では脂質を貪食する活性化ミクログリアが主体である可能性がある1)。糖尿病網膜症では高血糖による神経変性・微小血管異常・炎症が複合的に作用する1)


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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スコーピングレビューの成果(2025年)

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Mat Norら(2025)はJournal of Ophthalmologyに発表したスコーピングレビューで、42の研究を精査し、以下を結論として報告した1)

30μm未満のHRFは疾患を超えて網膜炎症のバイオマーカーであるという点で研究者間に合意がある。HRFのサイズと局在は疾患発現と一致する。加齢によるHRFは加齢黄斑変性と量・外観で区別可能である。

動物モデルと組織研究の必要性

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HRFの基礎的病態メカニズムの解明には、さらなる動物モデル・ヒト組織サンプルでの研究が不可欠であると指摘されている1)。疾患横断的な変動性を説明し、疾患進行との関連を明らかにするためのさらなる研究が求められる。

原田病(Vogt-Koyanagi-Harada病)では、サンセットグロウ眼底(SGF)とHCFの定量的関係の解明が進んでいる。HCFはen face OCTで定量化可能であり、脈絡膜メラノサイトの変化の指標となる可能性がある2)

現在、研究目的では半自動・全自動カウントプロトコルが複数開発されている。日常臨床での標準化が実現すれば、HRFを定量的バイオマーカーとして治療監視に応用できると期待される。


  1. Mat Nor MN, Green CR, Squirrell D, Acosta ML. Retinal Hyperreflective Foci Are Biomarkers of Ocular Disease: A Scoping Review With Evidence From Humans and Insights From Animal Models. J Ophthalmol. 2025;2025:9573587.
  2. Tayal S, et al. Hyperreflective Choroidal Foci in Vogt-Koyanagi-Harada Disease. Cureus. 2024;16(4):e58867.

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