開放性損傷
定義:角膜または強膜の全層損傷。
裂傷(鋭的外圧):穿通性損傷(単一裂傷)、貫通性損傷(入口+出口)、眼内異物(IOFB)の3型がある。
眼球破裂(鈍的外圧):眼球内圧の急上昇で生じる。角膜輪部に平行した強膜開放創となりやすく、結膜・Tenon嚢に覆われ診断が遅れやすい。

眼外傷の初期評価は、多くの場合、救急医・一般内科医・プライマリケア医などの非眼科医が担う。体系的アプローチを採用することで、視機能を脅かす病態を早期に特定し、予後を最適化できる。
トリアージの基本原則は2段階である。まず生命を脅かす状態(頭蓋内損傷・気道閉塞等)を優先し、次に視機能を脅かす状態に対応する。眼科医への紹介前に適切な初期処置を行うことが視力予後に直結する。
眼外傷の疫学的特徴は以下の通りである。
眼外傷は力学的外傷と非力学的外傷に大別される。力学的外傷はさらに機械的損傷(開放性・閉鎖性)に分類される。バイタルサインのチェック(意識・呼吸・血圧・脈拍・体温)は初期評価の必須項目である。
米国では2008年に約64万件(10万人あたり209件)の救急外来受診が眼損傷によるものとされる。発生した外傷の44.6%が家庭内で起きており、打撲傷や角膜上皮剥離が全体の44.4%を占める。

初期評価で確認すべき主な臨床所見を以下に示す。
眼球開放性損傷の所見
眼球閉鎖性損傷の所見
神経学的所見
眼窩所見
その他の重要所見
眼外傷の発生機転は多様であり、損傷の種類によって病態と予後が大きく異なる。
開放性損傷
定義:角膜または強膜の全層損傷。
裂傷(鋭的外圧):穿通性損傷(単一裂傷)、貫通性損傷(入口+出口)、眼内異物(IOFB)の3型がある。
眼球破裂(鈍的外圧):眼球内圧の急上昇で生じる。角膜輪部に平行した強膜開放創となりやすく、結膜・Tenon嚢に覆われ診断が遅れやすい。
閉鎖性損傷
定義:全層損傷を伴わない損傷。
打撲傷:鈍的外力による眼球・周囲組織の損傷。前房出血・水晶体亜脱臼・網膜剥離などを引き起こす。
層状裂傷:部分層の角膜・強膜裂傷。全層に至らない。
分類体系として Birmingham Eye Trauma Terminology(BETT)と Globe and Adnexal Trauma Terminology が使用される。1)
損傷部位は以下の3区域(Zone)に分類される。1)
| 区域 | 範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| Zone I | 角膜〜角膜縁 | 角膜に限局 |
| Zone II | 角膜縁〜強膜後方5mm | 前部強膜を含む |
| Zone III | 強膜後方5mm以降 | 後部強膜・視神経周囲 |
鈍的外傷の主な原因:スポーツ(野球・ゴルフ・ボクシング・サッカー等)、交通事故(エアバッグ)、転落、花火。
化学外傷の原因物質と機序:アルカリは脂肪酸を鹸化し液化壊死を起こし深部へ浸透する。角膜縁幹細胞に達すると治癒が著しく障害される。酸はタンパク質変性による凝固壊死でバリアを形成し、深部浸透が制限される。そのためアルカリ外傷のほうが一般に重篤になりやすい。
若年患者の眼窩骨折リスク:骨の弾力性が高い小児では外眼筋の絞扼リスクが高く、外科的緊急事態となりやすい。
一般的にアルカリのほうが重篤になりやすい。アルカリは液化壊死を生じて深部へ浸透し、角膜縁幹細胞に達すると治癒が障害される。酸は凝固壊死によるバリアで浸透が制限されるが、高濃度では同様に重篤な損傷を引き起こす。
体系的な初期評価が視機能予後を左右する。
眼球開放性損傷が除外された場合にのみ実施する。正常値は11〜21 mmHgである。
診断のために以下の検査を組み合わせる。
緊急度に応じた分類と初期管理の要点を示す。
眼窩コンパートメント症候群
緊急度:超緊急(90分以内に永久的視力喪失)
処置:外眥切開(lateral canthotomy)+下外眥靭帯切断(inferior cantholysis)による緊急減圧。臨床診断で判断し、即時処置が必要。
眼球開放性損傷
緊急度:緊急(速やかに眼科紹介)
処置:眼圧を上昇させる手技の回避。アイシールドで保護(眼球への圧迫不可)。異物除去は延期。制吐薬・鎮痛薬投与、NPO、頭側30度挙上。ミダゾラムは眼圧を上昇させずに鎮静可能。広域抗菌薬投与と破傷風免疫の確認。
化学外傷
緊急度:準緊急(直ちに洗眼開始)
処置:来院前から流水500mL以上の洗眼を指示。来院後は等張生理食塩水または乳酸リンゲル液でpH 7.0〜7.4になるまで持続洗浄。眼瞼痙攣時はモーガンレンズを使用。円蓋部の残存異物がpH安定を妨げることがあるため除去が必要。
前房出血
緊急度:準緊急(眼科的評価が必要)
処置:ベッド頭側30〜45度挙上、アイシールド装着、安静。NSAIDs・アスピリンは血小板抑制作用により出血増加のリスクがあるため回避。抗凝固療法中止のリスク・ベネフィットは内科医と協議する。
急性期の管理と手術適応は以下の通りである。
日本では安静により自然吸収を待つことが基本方針である。小児や前房出血のニボーが1/3〜1/2を超える場合は入院が望ましい。
| 薬剤 | 用法 |
|---|---|
| アトロピン点眼液(1%) | 1日1回就寝前 |
| リンデロン点眼液(0.1%) | 1日4回 |
| アドナ錠(30mg) | 3錠 分3 毎食後 |
| チモブトール点眼液(0.5%)※ | 1日2回(眼圧上昇時) |
診断は受傷後24〜48時間以内に行う。治療選択肢の有効性については議論がある。
直ちに眼科医へ紹介する。
眼窩は閉鎖空間であり、急性出血や軟部組織腫脹により眼窩内圧・眼圧が急速に上昇する。これが視神経の動脈灌流圧を超えると、90分以内に永久的な視力喪失に至る。外眥切開+下外眥靭帯切断による緊急減圧が唯一の有効な対処法である。
アスピリンやNSAIDsは血小板の機能を抑制し、再出血のリスクを高める。前房出血の急性期には必ずこれらの薬剤を避け、鎮痛が必要な場合はアセトアミノフェンを選択する。
アルカリは脂肪酸を鹸化して液化壊死を起こし、角膜深部へ浸透する。角膜縁幹細胞に達すると上皮再生が障害される。酸はタンパク質変性による凝固壊死でバリアを形成し、深部浸透を自己制限する。
眼球打撲により前後方向の圧縮と赤道方向の伸展が生じ、「外傷の7つの輪」を損傷する。鈍的外力が前房内圧を上昇させ、角膜輪部が伸展されると房水が後方・隅角部へ移動し、虹彩・毛様体の血管が損傷して出血する。
閉鎖空間である眼窩内の急性出血・軟部組織腫脹により眼窩内圧・眼圧が急速に上昇する。これが視神経の動脈灌流圧を超えると、90分以内に永久的な視力喪失に至る。
2つの機序が複合する。バックリング説は力が骨を介して伝達され骨壁が破綻するという機序であり、ハイドロリック説は力が眼球を介して伝達され眼内圧上昇により骨壁が破綻するという機序である。若年患者は骨の弾力性が高く眼窩壁が割れにくいため、開放骨折より外眼筋の絞扼(グリーンスティック骨折型)が生じやすい。
眼球打撲により圧縮→前後方向リバウンド減圧が生じ、硝子体が網膜を牽引して裂孔が形成される。外傷は硝子体を液化させ、液化硝子体が網膜裂孔から網膜下に貯留して剥離に至る。開放性眼外傷では直接的な網膜裂隙、または嵌頓硝子体ゲルによる二次的牽引が主な機序である。非開放性眼外傷では鈍的圧力による硝子体基底部の大きな網膜裂孔が特徴的である。
直接的外傷性視神経症(稀):穿通物体が視神経を直接損傷する。間接的外傷性視神経症:鈍的外傷による視神経管変形→視神経の剪断→腫脹→神経血管束圧迫→虚血悪化という経過をたどる。
外傷後のネオアンチゲン曝露により両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎を発症する稀だが重篤な合併症である。
McMasterら(2025)は16研究・10,874眼を対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。1) 24時間以内の一次修復は24時間以降と比較して眼内炎リスクを低下させることが示された。特に穿通性損傷・眼内異物(IOFB)損傷でエビデンスが強い。視力予後については研究間の異質性が高くエビデンスレベルは「very low」に格下げされた。IOFB除去タイミングの眼内炎率への影響については、4研究・2,216例を解析したが1研究のみが有意な関連を報告した。
Kheirら(2021)はベイルート港爆発事故における39患者48眼の眼外傷を報告した。2) 破片(shrapnel)ベースの損傷が主体で、53.8%が手術介入を要した。最終の最高矯正視力が20/200未満の症例が14.5%(7眼)に達し、光覚なしの4眼は全例が眼球摘出または内容除去術を要した。大規模災害における包括的な眼外傷対応戦略の重要性を強調している。