金属異物
鉄・鋼:長期留置で眼球鉄錆症(siderosis)を引き起こす。視力予後には注意が必要。
銅:眼球銅錆症(chalcosis)の原因。純度の高い銅は劇症型全眼球炎を来すことがある。
鉛・アルミニウム:比較的反応性が低く、無機金属として良好に忍容されることが多い。

眼窩内異物(intraorbital foreign body; IOrbFB)とは、眼球の穿孔・貫通の有無にかかわらず眼窩内に存在するあらゆる異物を指す。ICD-10コードはH05.50〜H05.53(眼窩創傷後の残留異物)である。
異物は複数の観点から分類される。
眼窩外傷の約6例に1例にIOrbFBを合併するとされる6)。外傷性眼内異物(IOFB)全体の発生率は2.9%との報告がある5)。
33例の大型異物による眼窩穿通外傷の文献レビューでは、原因は暴行36.3%、転落33.3%、交通事故12.1%であり、男性が84.85%、平均年齢27.7歳であった8)。受傷者は労働年齢の男性が中心で、金属加工・建築業・スポーツ・農業が主要な受傷状況である。
文献レビューでは男性が84.85%、平均年齢27.7歳であった8)。暴行・転落・交通事故が主な受傷原因である。金属加工や建築業などの労働年齢男性が高リスク群となる。
受傷原因は多岐にわたる。
金属異物
鉄・鋼:長期留置で眼球鉄錆症(siderosis)を引き起こす。視力予後には注意が必要。
銅:眼球銅錆症(chalcosis)の原因。純度の高い銅は劇症型全眼球炎を来すことがある。
鉛・アルミニウム:比較的反応性が低く、無機金属として良好に忍容されることが多い。
有機物異物
木材・植物片:感染・炎症リスクが最も高い。眼窩蜂巣炎・外眼筋麻痺の原因となる。全例外科的摘出が推奨される。
動物性物質:感染リスクが高く、嫌気性菌・真菌のカバーが必要となることがある。
非金属異物
ガラス・プラスチック:金属と同様に比較的良好に忍容される。
ファイバーグラス・ゴム:組織反応は様々であり、異物の大きさ・位置に応じて管理方針を決定する。
有機物は感染・炎症リスクが高く、嫌気性菌や真菌の感染源となりうる。眼窩蜂巣炎・膿瘍形成のリスクがあるため、外科的摘出の絶対適応となる。また木材はCTでair密度に類似し、見落とされやすい点でも注意が必要である6)。
受傷機転の詳細(爆発・銃創・金属打撃→IOFBを強く疑う)と刺入口の確認が重要である。眼球破裂(open-globe injury)と外傷性視神経症(traumatic optic neuropathy)の緊急除外を行う。上部脳神経の評価と完全な眼科的・眼附属器検査を実施する。
各画像診断法の特性と適応を以下に示す。
| 検査法 | 適応・特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| CT(第一選択) | 0.06mm³の小異物も検出可能4)。gold standard | 木材はair密度に類似し見落としに注意6) |
| MRI | 木製・有機物異物、CTが陰性の微小断片に限定使用 | 強磁性金属除外後のみ使用可 |
| 超音波(Bモード) | 前部眼窩異物・網膜剥離・出血の検出 | 眼球破裂が疑われる場合は強く押さえない |
| 単純X線 | 金属スクリーニング | グラファイト・プラスチック・木材は過小評価 |
CTの詳細:非造影CT(軸位断・冠状断・副矢状断)が第一選択である。3mm以下の薄い切片で検索する。3D CTは異物の位置・形状把握に有用であり、大血管近傍の場合はCT血管造影を推奨する8)。ハウンズフィールド単位で異物材質の区別が可能である。Waters法単純X線は眼窩内の小さな金属の検出に用いられる。
木材IOFBのCT診断:乾燥木材は外傷性眼窩気腫と誤認されやすい。骨条件ウインドウ幅拡大(WL 500 HU, WW 3000 HU)とlung window(WL -500 HU, WW 1500 HU)を使用することで、木材とairの鑑別精度が向上する6)。幾何学的・線状形態を示す整形された低密度領域は木材を強く疑う所見である6)。新鮮木材は硝子体・外眼筋と同密度を示し、慢性期には脱水・周囲石灰化により高吸収に変化する6)。
MRI:強磁性金属異物が除外された後のみ使用可。金属があれば磁場変化で異物が移動するため禁忌となる。植物異物は水分含有量が少ないと描出できない時期がある。
確認された異物は創部または異物の培養を実施する。
強磁性金属異物がある場合、MRIは絶対禁忌である。磁場変化により異物が移動し、重篤な損傷を来すおそれがある。金属が除外された場合に限り、木製・有機物異物や微小断片の評価目的で限定的に使用できる。
管理方針は材質・大きさ・位置・合併症(視能・眼球運動・感染)・術者の専門知識に基づいて決定する。
保存的管理
適応:小さく不活性で深い位置の金属異物(無機物)、合併症のない後方位置の無機物異物。
根拠:金属・ガラスは比較的良好に忍容される5)。摘出による構造的損傷リスクを考慮する。
注意:膿瘍・瘻孔形成の定期的な監視が必要。強磁性体が残存する場合は将来MRI検査不可となることを患者に説明する。
外科的摘出
絶対適応:すべての有機物異物(感染・炎症リスク)。
適応:神経学的障害・眼球運動の機械的制限・急性または慢性感染症・視神経圧迫4)・大型異物8)・銅を含む異物4)。
原則:眼球破裂を合併する場合は異物探索に先立ち眼球修復を優先する。基本は速やかに異物を除去し創部を縫合する。
材質と合併症の有無によって判断が異なる。小さく不活性な金属・ガラス異物で無症状・無合併症の場合は、摘出による構造的損傷リスクを考慮して保存的管理を選択できる。一方、有機物(木材・植物)は感染リスクが高く全例摘出適応となる。神経学的障害・眼球運動制限・感染・銅を含む異物も摘出の適応である。
眼球鉄錆症(siderosis):鉄が2価・3価にイオン化し眼内に拡散する。角膜上皮・虹彩色素上皮・毛様体上皮・水晶体上皮・網膜色素上皮・虹彩散大筋/括約筋・線維柱帯・神経網膜に沈着し組織障害を引き起こす。虹彩異色症・瞳孔散大固定・前囊下茶色沈着物・白内障・網膜変性・続発性緑内障をきたす。
眼球銅錆症(chalcosis):イオン化銅は内境界膜などの基底膜と親和性を持つ。慢性経過ではKayser-Fleischer ring(輪部角膜混濁)・前囊下白内障・内境界膜下緑色沈着物を生じる。純度の高い銅は劇症型全眼球炎を来すことがある。
鈍的または高速物体による脈絡膜・網膜破裂である。裸の強膜・硝子体出血・網膜内/網膜下出血を呈する。自発的網膜復位と瘢痕形成により網膜剥離は通常生じないが、sclopetaria患者の40%が即時手術を要するとされる1)。
Motamed Sharatiら(2024)は、ハンマー作業中の眼窩金属異物により脈絡網膜衝撃波損傷を来した15歳男性例を報告した1)。眼球穿通なしに裸眼視力10/10が維持された。CT画像と管理フローチャートが示されている。
穿通性熱傷による外眼筋の焼灼短縮(tendinoplasty様)が制限性斜視を引き起こす。外眼筋は衛星細胞(satellite cells)の豊富な再生能を有し、自然回復しうる2)。
Liebmanら(2024)は、熱い金属串による左眼窩穿通性熱傷で内斜視を来した32歳女性例を報告した2)。6か月で自然改善後、残存内斜視に対し内直筋後転術を施行した。外眼筋熱傷損傷は自然回復しうるため、斜視手術は遅延させることが適切な可能性がある。
眼窩壁骨折(特に内壁:篩骨は最薄弱)を介して副鼻腔・頭蓋内に進展する。28歳男性のバイク転倒例では、ブレーキレバー(11cm)が左眼窩から右眼窩まで貫通し、篩骨骨折・気脳症を合併した4)。このような症例では耳鼻科・脳外科との学際的アプローチが必須となる。
骨条件ウインドウ幅拡大アルゴリズム(WL 500 HU, WW 3000 HU)とlung windowの組み合わせにより、乾燥木材とairの鑑別精度が向上する6)。乾燥木材はCT上airに類似するため、従来の設定では見逃されやすかった。
副鼻腔に及ぶ異物に対して低侵襲アプローチが可能である。術中画像ガイドナビゲーションを併用することで、小型・断片化異物の同定精度向上が期待される7)。
Laiら(2022)は、スリングショット損傷による後部篩骨洞・蝶形骨洞に達した金属球(15mm)を、経鼻内視鏡的に摘出した少年例を報告した7)。術後3週で視力6/9に回復し、学際的アプローチの有効性を示した。
Amaralら(2023)は33例の文献レビューに基づき、全例CTの施行・可及的速やかな手術除去・術後7日間の厳重観察と抗菌薬投与を推奨する大型異物管理ガイドラインを提案した8)。
初回外傷による損傷が早期合併症の主体を占める。
遅発性合併症:
| 条件 | 予後 |
|---|---|
| 眼球穿通なし・受診時視力良好・前方位置 | 良好 |
| 眼球関与なし | 視力低下なし |
| 術後視力喪失率 | 2.5〜4% |
| 文献レビュー33例(正常/後遺症/失明) | 42.4%/16%/36%8) |
後方異物は視神経障害による視力予後不良となりうる4)。