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眼外傷

眼外傷の画像診断

眼球損傷は視覚障害の重要な原因である。WHOの推定では、眼外傷により毎年約160万人が失明し、約1,900万人が片眼失明または視力低下をきたす。

外傷関連眼損傷の有病率は約2〜6%で、症例の最大97%が鈍的外傷によるとされる。顔面骨折に関連する視力喪失・失明の発生率は10.8%に達し、頭部外傷患者の最大84%に眼の病変がみられることがある。眼外傷の推定発生率は10万人あたり3.5〜4.5である1)

急性外傷期では、周囲軟部組織の腫脹・鎮静・意識障害により眼球の身体診察が困難となる。このため画像診断が損傷範囲の評価に重要な役割を担う。

主な画像診断技術として以下が用いられる。

  • 超音波検査(USG):非侵襲的で中間透光体混濁時に有用
  • 超音波生体顕微鏡(UBM):前眼部の高解像度断層像
  • 光干渉断層計(OCT):前眼部・後眼部の非接触断層像
  • 蛍光眼底造影(FFA)・ICG・眼底自発蛍光網膜脈絡膜の循環評価
  • 単純X線:金属異物スクリーニング
  • CT眼窩骨折・異物・眼球破裂の評価
  • MRI:軟部組織の詳細描出(磁性体異物は禁忌)
Q 眼外傷の画像診断はなぜ必要なのか?
A

急性外傷期には周囲の軟部組織腫脹、鎮静、意識障害により眼球の直接診察が困難となることが多い。画像診断により損傷範囲・異物の位置・眼球構造の破綻を評価し、治療方針の決定に不可欠な情報を得ることができる。

  • 眼痛前房出血による眼圧上昇を伴う場合は強い疼痛を生じる
  • 視力低下:前房出血・硝子体出血・網膜損傷により生じる
  • 充血・流涙:炎症・組織損傷に伴い出現する
  • 複視:眼窩骨折による外眼筋の嵌頓・麻痺で生じる
  • 眼瞼腫脹:眼窩周囲への出血・浮腫により開瞼困難となることがある
  • 異物感:角結膜異物・眼表面損傷による

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

診察では以下の所見を系統的に確認する。

  • 頭部・顔面:裂傷・挫創・穿孔創の位置を確認する。圧雪感は眼窩気腫を示唆し、前頬部の知覚鈍麻は眼窩下壁骨折を疑わせる
  • 瞳孔所見散瞳視神経障害・外傷性散瞳・動眼神経麻痺)、縮瞳(外傷性Horner症候群)、RAPD外傷性視神経症
  • 前眼部:Seidel試験(フルオレセイン蛍光染色による房水漏出確認)、前房出血、虹彩離断、隅角後退、外傷性白内障(前嚢下皮質混濁・Vossius輪)、水晶体脱臼・亜脱臼
  • 眼底:外傷性網膜裂孔(上鼻側・下耳側に多い)、鋸状縁断裂、後極部網膜下出血(血腫吸収後に白線状脈絡膜破裂)、外傷性視神経症(受傷2週間後から乳頭蒼白化)

爆発外傷(ベイルート港爆発の報告)での損傷頻度は、眼表面疾患54.2%、眼瞼裂傷41.6%、眼窩骨折29.2%、前房出血18.8%、開放性眼球損傷20.8%であった2)

外傷の種類と頻度を以下に示す。

  • 鈍的外傷:全眼外傷の最大97%を占める
  • 開放性眼外傷:鋭利な刃物・釘などによる穿孔と、ボール・拳などによる眼球破裂に大別される
  • 眼窩内異物:成人では労務作業時や酩酊時、小児では箸などを持ったまま転倒した場合に多い
  • 眼窩吹き抜け骨折に伴う眼損傷は5〜10%とされる3)
  • 交通事故関連では重篤または失明に至る損傷が11.6%と報告されている3)

各画像診断モダリティの主な対象と特徴を以下に示す。

モダリティ主な対象主な特徴・利点
USG硝子体・網膜・脈絡膜・IOFB非侵襲・安価・非電離放射線
UBM前眼部深部(虹彩・毛様体)高周波・深達度5mm・接触式
前眼部OCT角膜・隅角・毛様体解離非接触・穿通性外傷でも可
後眼部OCT黄斑・網膜・脈絡膜μmレベルの断層解像度
CT眼窩骨折・異物・眼球破裂骨・金属異物の描出に優れる
MRI軟部組織・血腫の経時変化電離放射線なし・磁性体禁忌

1956年にMundtとHughesがAモードを、1958年にBaumとGreenwoodがBモードを導入した。7.5〜12MHzプローブを使用し、非侵襲的・非電離放射線・安価・容易に実施可能である。

開放性眼球損傷では相対的禁忌であり、一次閉鎖術を先行させることが強く推奨される。やむを得ず行う場合はプローブの滅菌が不可欠である。

各構造の所見は以下の通りである。

  • 前房:前房出血・隅角後退・毛様体解離の検出。イマージョン法・ウォーターバルーン法で異物検出が可能
  • 水晶体:有無・位置・完全性を評価する。外傷性白内障の20〜30%に硝子体網膜異常が合併する
  • 硝子体:硝子体出血が最頻所見。動的Bモード(kinetic B-scan)でPVD網膜剥離の鑑別が可能
  • 網膜:全剥離では視神経乳頭と鋸状縁に付着する三角形像を呈する。Aモードで音波が垂直方向のとき100%スパイクを示す
  • 脈絡膜:周辺部の滑らかで厚いドーム状の膜として描出される。360度脈絡膜剥離ではkissing choroidals(ホタテ貝様外観)を呈する
  • 強膜:後部強膜破裂の間接徴候として硝子体陥頓・PVD・牽引索・網膜/脈絡膜の肥厚/剥離・上強膜出血を認める
  • 眼内異物(IOFB):金属・ガラスは高反射率でシャドーイングを生じる。木材などの柔らかい材料は検出が困難

前房出血が多く眼底透見不能の場合に超音波検査を行う。シリコーンオイルまたはガス注入眼では良好な画像が得られない。

1990年代初頭にFosterとPavlinが開発した。高周波30〜60MHzで深達度4〜5mm・解像度50μmの高解像度断層像を作成する。

角膜浮腫・混濁がある状況でも虹彩離断・隅角後退・毛様体解離・チン小帯断裂・強膜裂傷・異物・上皮迷入を描出できる。CTやUSGで見落とされがちな小さく浅い非金属異物の検出・局在診断に有用である。

外傷性白内障の術前にチン小帯欠損を評価することで、硝子体脱出・核落下防止のための術前計画が立てられる。

仰臥位でオキシブプロカイン点眼麻酔後、アイカップまたはメンブレン方式(UD-8060)で施行する。

UBM

深達度:4〜5mm。虹彩裏面・毛様体まで描出可能。

接触式:検査中に接触が必要。穿通性外傷では施行に注意を要する。

角膜混濁:角膜混濁の有無にかかわらず前眼部を観察できる。

前眼部OCT

非接触:1310nm長波長光を使用。穿通性外傷でも施行可能。

解像度:角膜表層・隅角の高解像度画像を取得できる。

限界:色素組織を透過できず、虹彩後部色素上皮より深部は画像化不能。

1310nm長波長光を使用する非接触検査であり、穿通性眼外傷でも実施可能である。デスメ膜剥離・隅角閉塞・角膜実質内異物(深さ最大6mm)・毛様体解離裂隙・角膜裂傷・水晶体脱臼を描出できる。毛様体解離による低眼圧隅角鏡検査が困難な場合の代替手段となる。

830nm短波長光を使用する。ベルリン浮腫・外傷性黄斑円孔・網膜前/黄斑下出血・網膜剥離・脈絡膜破裂・剥離・RPE裂孔・外傷性網膜分離症の診断・評価に有用である。

蛍光眼底造影(FFA)・ICG・眼底自発蛍光

Section titled “蛍光眼底造影(FFA)・ICG・眼底自発蛍光”
  • FFA:RPE外側血液網膜関門の破壊によるフルオレセイン漏出を描出する。脈絡膜破裂に続発する脈絡膜新生血管(CNV)の評価にも有用である。外傷後の「胡椒塩(salt-and-pepper)様」外観は網膜機能の局所的喪失・暗点を示す
  • ICG:脈絡膜血管に沿った局所的充盈遅延・渦静脈周囲の漏出を描出する。外傷性脈絡膜破裂に続発する脈絡膜新生血管の特定に有用である
  • 眼底自発蛍光:損傷RPE領域を眼底検査・眼底写真単独と比較してより明確に描出できる

偽陰性・偽陽性が多く現代では役割は限定的である。ただし頭頸部の金属異物スクリーニングには有用であり、詳細不明の外傷では一通り撮像することが推奨される。金属片は長さ2mm・厚さ0.4mm以上で確認可能である。異物の位置測定にはWaters法・眼窩投影法・Comberg法が用いられる。英国の調査では眼窩吹き抜け骨折の83%で使用されていた3)

英国の調査では眼窩吹き抜け骨折の88%で使用されていた3)。冠状断CTが最も正確で、眼窩容積や外眼筋の可視化も可能である。眼窩容積13%以上の増加で眼球陥凹が生じうる3)

CTの主な適応と特記事項は以下の通りである。

  • 眼球破裂:眼球の変形・駆逐性出血・小眼球をCTで確認できる
  • 穿孔性眼外傷:問診・前眼部写真・CTによる眼内異物画像で診断可能
  • 眼窩部異物刺入:出血や空気の存在で最深到達部位が予測可能。疑う場合はまずCTを撮影する
  • 視神経管損傷:骨条件での撮像を依頼する
  • 植物・木片異物:CT値が経時的に変化する(乾燥木片は低density、体内で湿ると上昇)
  • 撮影面:Reid基準線(RB line)で撮影すると視神経〜視神経管が1つの水平面で観察可能
  • 3D画像:顔面骨折では病態把握に有用

CTで金属(磁性体)を疑う異物が残存する場合はMRI禁忌となる。若年者への繰り返し撮影では被曝に注意する。ヨード造影剤によるアナフィラキシー・急性腎不全のリスクがあり、eGFR < 45 mL/min/1.73m²の患者では造影CT施行時に十分な予防策が必要である。

軟部組織の観察にCTより優れ、電離放射線を使用しない。眼窩底骨折での脱出脂肪の検出、軟部組織ヘルニア・後方進展の描出に優れる。磁性体異物疑いでは絶対禁忌であり、異物の移動・発熱により重症化するリスクがある。植物異物は水分含有量が少ないと描出できない時期がある。撮像時間が長く、閉所恐怖症や可用性の制限が障壁となりうる3)

眼球のMRI信号特性を以下に示す。

部位T1信号T2信号
前房・硝子体低信号高信号
水晶体やや高信号低信号
網脈絡膜やや高信号低信号
強膜低信号低信号
Q 開放性眼球損傷で超音波検査は行えるか?
A

開放性眼球損傷では超音波検査は相対的禁忌である。一次閉鎖術を先行させることが強く推奨される。やむを得ず施行する場合はプローブの滅菌が不可欠であり、プローブを強く押さえないよう注意する。代替としてCT検査を選択することも推奨される。

Q 金属異物が疑われる場合にMRIは行えるか?
A

磁性体異物が疑われる場合はMRI絶対禁忌である。異物の移動や発熱により重症化するリスクがある。まずCTで異物の性状・位置を評価し、磁性体でないことが確認されてからMRIを検討する。

本疾患は「画像診断」が主題であるため、各外傷への対応において画像診断が治療方針決定にどう寄与するかを記述する。

  • 開放性眼球損傷:創閉鎖を第一次手術とする。CTで眼球の変形・眼内異物を確認し、術前計画を立てる
  • 眼内異物(IOFB):USGまたはCTで位置・材質を評価する。可及的速やかに摘出することで感染と眼球内容脱出を防ぐ
  • 眼窩内異物:まずCTで評価し、可能な限り早急(できれば当日)に摘出する。出血や空気の分布から最深到達部位を予測できる
  • 外傷性前房出血:隅角鏡検査は再出血リスクがあり受傷後1〜2週間は避ける。UBMまたは前眼部OCTで隅角解離・毛様体解離を評価する
  • 脈絡膜破裂:保存的経過観察。脈絡膜新生血管の発生をFFA/ICGで評価し、中心窩から200μm以上離れた黄斑部の脈絡膜新生血管にはレーザー光凝固を検討する
  • 外傷性視神経障害:受傷24〜48時間以内の早期診断が重要。視神経管損傷疑いではCTの骨条件撮像を依頼する。ステロイドパルス療法(プレドニン換算1,000mg)2〜3日または大量ステロイド(プレドニゾロン換算80〜100mg)+高張浸透圧薬(グリセオール・D-マンニトール300〜500mL)を3〜7日間投与する
  • 外傷性網膜剥離:開放性では嵌頓硝子体ゲルの牽引解除を目的とした比較的緊急性のある硝子体手術を行う。非開放性で透見良好なら強膜バックリング手術を検討する

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

外力による急激な前房内圧上昇→角膜輪部伸展→房水の後方・隅角部への移動→虹彩・毛様体損傷というメカニズムで前眼部損傷が生じる。眼球破裂(鈍的)では、眼球内圧上昇と衝撃波により角膜輪部に平行した間接的強膜開放創が形成され、赤道部後方に多い。

脈絡膜は伸展性に乏しく、眼球打撲による外圧で後極部(特に視神経乳頭周囲)に円周状の破裂を生じる。外傷性視神経障害は介達外力が視神経管に作用し、視神経実質内の血管原性浮腫(脳浮腫と同様の病態)をきたす。必ずしも視神経管骨折とは関係しない。

  • 超音波(USG)の原理:Aモードは一方向振幅変調(1956年Mundt・Hughes)、Bモードは断層輝度表示(1958年Baum・Greenwood)。両者は相補的に使用する
  • UBMの原理:高周波35〜50MHzにより深達度約5mmで高解像度断層像を取得する。角膜から毛様体までの前眼部構造を対象とする
  • OCTの原理:低コヒーレンス干渉法を用いる。軸方向解像度3〜20μm。後眼部OCTは830nm、前眼部OCTは1310nmの光を使用する

血腫のMRI信号は以下のように変化する。

病期時期T1信号T2信号
超急性期〜1日(Oxy Hb)等〜低信号高信号
急性期1〜3日(Deoxy Hb)低信号低信号
亜急性期3日〜1ヶ月(Met Hb)高信号高信号
慢性期1ヶ月〜(Hemosiderin)低信号低信号

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

開放性眼球損傷の一次修復タイミング

Section titled “開放性眼球損傷の一次修復タイミング”

多施設データの蓄積により、開放性眼球損傷の一次修復を早期に行うべきか遅延させるべきかに関するエビデンスが集積されつつある1)。Birmingham Eye Trauma Terminologyによる損傷分類を用いた比較研究が進行中であり、画像診断が術前評価に果たす役割が再評価されている。

大規模災害時の眼外傷における画像診断

Section titled “大規模災害時の眼外傷における画像診断”

ベイルート港爆発の報告では、大規模災害時の眼外傷トリアージにおける画像診断の役割が再認識された2)。救命処置が優先される急性期において、迅速かつ正確な眼科評価を系統化するための体制整備が課題とされている。

MRI矢状断は眼窩吹き抜け骨折の後方進展の描出において優れた情報を提供するが、撮像時間・環境の制約から臨床使用は依然として限定的である3)。被曝のないMRIの活用拡大が今後の課題となっている。


  1. Early versus delayed timing of primary repair after open globe injury. Ophthalmology. 2025;132:431-441.
  2. Kheir N, et al. Ophthalmic injuries after the Port of Beirut nonnuclear explosion. JAMA Ophthalmol. 2021;139(9):937-941.
  3. Courtney DJ, et al. Current practice in the management of orbital blowout fractures in the United Kingdom. Br J Oral Maxillofac Surg. 2000;38(4):319-322.

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