I度熱傷
肉眼所見:紅斑のみ。水疱なし。
疼痛:あり(+)。
予後:数日で治癒する。

眼瞼熱傷は眼瞼の皮膚に生じる熱傷である。熱・化学物質・電気が原因となる。
熱傷ユニット入院患者の7.5〜27%に何らかの眼科的関与がみられる。受傷機序の内訳では火災・火炎が46%と最多で、熱湯(scald)が32%と続く。そのほか料理油・溶融金属の飛入・花火・火炎が原因となる。
眼瞼皮膚の厚さは0.3〜0.6mmであり、体の中で最も薄い。皮下脂肪を欠くため、深達性熱傷に移行しやすい。一方、瞬目反射・ベル現象(Bell現象)・腕の防御動作の3つが働くため、眼球への直接損傷は比較的少ない。
小児は皮膚の上皮・真皮が薄く、液体による熱傷の影響が大きい。顔頸部の熱傷では受傷後24〜48時間以内に気道浮腫による気道閉塞が生じる危険があり、注意が必要である。
瞬目反射・ベル現象・腕の防御動作により、眼球への直接損傷は比較的少ない。ただし熱傷ユニット入院患者の7.5〜27%には眼科的関与がみられるため、受傷時は必ず眼科的評価を行う必要がある。

熱傷深度に応じた症状を呈する。
熱傷の深度は肉眼所見・疼痛・予後の観点から以下のように分類される。
I度熱傷
肉眼所見:紅斑のみ。水疱なし。
疼痛:あり(+)。
予後:数日で治癒する。
II度(浅在性)
肉眼所見:水疱を形成。水疱下の真皮は赤色。
疼痛:強い(++)。
予後:1〜2週間で治癒する。
II度(深在性)
肉眼所見:水疱を形成。水疱下の真皮は白色。
疼痛:強い(++)。
予後:3〜4週間を要する。
III度熱傷
肉眼所見:蝋状に硬化。乾燥した革様外観。
疼痛:消失(±)。神経破壊による。
予後:1か月以上。自然上皮化は期待できない。
ジャクソンの3帯域(Jackson 1947)は熱傷組織の同心円状構造を示す概念である。中心の凝固帯はタンパク質凝固による不可逆的組織喪失域であり、その外側のうっ滞帯は灌流低下域で救済が可能である。最外層の充血帯は灌流増加域であり、重篤な敗血症がなければ必ず回復する。
眼窩コンパートメント症候群を疑う所見として、石のように硬い眼瞼・眼球突出・視力低下・相対的求心性瞳孔反応欠損(RAPD)・眼筋麻痺・眼圧上昇(35〜40 mmHg超)がある。大量輸液蘇生を行った広範囲熱傷患者で特に注意を要する。
角膜評価にはフルオレセイン試験紙とコバルトブルー光を用いる。ベル現象の有無を記録しておくと後の兎眼予測に役立つ。眼表面評価では球結膜・円蓋部結膜・瞼結膜を含む全体を観察する。
III度熱傷では熱によって皮下の神経が破壊されるため、感覚が消失する。痛みがないからといって軽症ではなく、逆に最も深い損傷を意味する。
原因の内訳では火災・火炎が最多(46%)で、熱湯が32%と続く。そのほか料理油・溶融金属の飛入・花火・火炎も原因となる。
深度に影響する因子は以下の3つである。
化学熱傷との併発にも注意が必要である。燃焼後の火薬はアルカリ性となり、熱傷と化学外傷を同時に引き起こす場合がある。
高リスク群は小児(皮膚が薄い)・高齢者(併存疾患)・広範囲熱傷患者である。眼窩コンパートメント症候群発症リスクの閾値として、輸液量が5〜6 mL/kg/%TBSAを超える場合やIvy Index 250 mL/kg以上が目安とされる。
眼瞼の皮膚は0.3〜0.6mmと体内で最も薄く、皮下脂肪を欠く。このため同じ熱刺激でも深層まで熱が到達しやすく、深達性熱傷に移行しやすい。
診断は受傷機序の問診と視診が基本である。何が(原因物質)、どのような状況(接触時間・温度)で受傷したかを詳しく聴取する。
眼瞼評価:肉眼・弱拡大で眼瞼・睫毛の状態を観察する。
眼表面評価:結膜充血・虚血の範囲、角膜の浮腫・混濁・上皮欠損の範囲を確認する。眼瞼を翻転し、結膜円蓋部を含む全体を観察する。
角膜評価:フルオレセイン試験紙とコバルトブルー光で角膜上皮欠損を評価する。
眼圧測定:大量輸液蘇生を行った患者では受傷後48〜72時間は定期的に眼圧を測定する。
画像診断:高速外傷や爆発では眼球内・眼窩内異物の除外のため画像検査を行う。
写真記録:初期評価時に熱傷の深さと範囲を写真に記録する。
コンタクトレンズの確認:受傷時にコンタクトレンズを装用していた場合は見逃さないこと。
角結膜障害の評価には木下分類(Grade I〜IV)を使用する。
| Grade | 主な所見 | 予後 |
|---|---|---|
| I | 結膜充血・角膜上皮欠損軽度 | 良好 |
| II | 結膜虚血・角膜混濁 | 良好 |
| IIIa以上 | 高度虚血・全角膜混濁 | 不良 |
Grade I〜IIは予後良好、IIIa以上は予後不良とされる。
初期冷却:受傷直後に水道水または水嚢で局所を冷却する。熱傷部位の拡大防止・疼痛軽減・浮腫抑制が目的である。
気道確認:口腔顔面が関与する場合は気道確保を最優先とする。
潤滑:入院後24時間以内に頻回かつ大量の潤滑剤を塗布する。涙液産生・瞬目反射・眼瞼可動域が低下しているため、角膜保護に不可欠である。
抗菌薬:感染予防のため抗菌点眼薬または眼軟膏を併用する。
I度・II度(保存的治療):感染予防・消炎・上皮化促進が目的である。
III度(植皮):自然上皮化が期待できないため植皮を考慮する。
閉瞼困難時:兎眼角膜炎防止のため瞼板縫合(tarsorrhaphy)を一時的処置として考慮する。
眼球熱傷を合併した場合はステロイドを使用する。
| 重症度 | 治療 |
|---|---|
| 重症(全角膜上皮欠損・組織壊死) | メチルプレドニゾロン125mg 静注1〜2回、ベタメタゾン1mg/日またはプレドニゾン10mg/日を1〜2週間内服、ベタメタゾン点眼1日4回 |
| 中等症(高度充血・部分的角膜上皮欠損) | プレドニゾン5〜10mg/日を数日内服、ベタメタゾン点眼1日4回 |
| 軽症 | ベタメタゾン点眼1日2〜4回 |
いずれの重症度でも感染予防のため抗菌点眼薬または眼軟膏を併用する。
眼窩コンパートメント症候群が疑われる場合は画像診断を待たず緊急処置を行う。
全層自家植皮:眼瞼再建の第一選択である。収縮が少なく外反リスクが低い。全層植皮後の外反発生率は30%であるのに対し、分層植皮後は88%である。
一時的被覆:他家皮膚移植(cadaveric allograft)や生分解性一時被覆材(合成真皮マトリックス)も利用される。
3週間ルール:3週間以内に再上皮化しない深在性部分層損傷は切除+植皮を検討する。
角膜保護:羊膜・眼瞼縫合術・Boston Ocular Surface Prosthesisが用いられる。上皮欠損が遷延する場合は羊膜移植・角膜上皮移植(輪部移植)・培養粘膜上皮シート移植を検討する。
長期的には以下の合併症が生じることがある。
瘢痕性内反に対しては睫毛管理と内反症手術を行う。
全層自家植皮が第一選択である。収縮が少なく外反発生率が30%にとどまるのに対し、分層植皮後は88%に達する。ただし採取部位の制限がある場合は一時的被覆材や分層植皮を組み合わせる。
熱傷は複数の炎症メディエーターの放出を引き起こし、血管拡張・疼痛・浮腫をもたらす。ジャクソンの3帯域(1947)は組織損傷の空間的分布を説明する基本概念である。
凝固帯
特徴:最大損傷部位。タンパク質凝固が生じる。
転帰:不可逆的組織喪失。救済不能。
うっ滞帯
特徴:組織灌流が低下した中間域。
転帰:救済可能。しかし低血圧・感染・浮腫により完全壊死へ移行しうる。
充血帯
特徴:組織灌流が増加した最外層。
転帰:重篤な敗血症がなければ必ず回復する。
眼窩は強固な骨性コンパートメントである。広範囲熱傷に伴う大量輸液蘇生では血管内容量のサードスペースへの移動が受傷後6〜12時間でピークに達する。陽性圧換気も浮腫を悪化させる。眼窩内圧が灌流圧を超えると虚血性視神経症・網膜虚血が生じる。
瞬目時に眼瞼縁の皮膚は傷害されにくい構造にある。しかし熱傷後の瘢痕形成が数か月かけて進行するにつれ、睫毛乱生・眼瞼内反・外反・兎眼が生じる。瘢痕性拘縮は長期にわたる管理を要する主要な後遺症である。
生分解性一時被覆材(biodegradable temporizing matrix):薄い自家植皮の前段階として新生真皮を形成する合成真皮マトリックスである。従来の一時的被覆材の代替として研究が進んでいる。
培養口腔粘膜上皮移植:手術直後から眼表面を上皮で被覆でき、すみやかな消炎効果が得られる。目的は視力改善ではなく眼表面の安定化である。
Boston Ocular Surface Prosthesis:羊膜の利用が困難かつ眼瞼縫合が困難な広範組織欠損症例での角膜保護に用いる。
早期全層自家植皮:かつては瘢痕安定まで待機するのが一般的であったが、全層自家植皮・羊膜・各種皮弁の早期使用が眼科的罹患率を減少させるという報告がある。