急性期所見
瞳孔散大固定:対光反射の消失を伴う。虹彩括約筋の虚血による。
眼筋麻痺:外眼筋への虚血性障害による眼球運動制限。
蒼白網膜:眼動脈虚血による広範な網膜蒼白化。塞栓は認められない。
cherry red spotの不明瞭化:OAOではCRAOと異なりcherry red spotが不明瞭となる1)。

サタデーナイト網膜症(Saturday Night Retinopathy; SNR)は、薬物乱用や過度の飲酒による意識消失中に、眼球が長時間にわたり外部から圧迫されることで生じる急性虚血性網膜症である。
1973年にJayamらによって初めて報告・命名された疾患で、「土曜の夜に泥酔して倒れた状態で朝まで過ごす」という状況を典型例とする。眼動脈閉塞(ocular artery occlusion; OAO)の一型に位置づけられる。発生頻度はきわめて稀であり、報告数は少数にとどまる。
週末に薬物乱用や過度の飲酒により意識を失い、眼球が圧迫された体勢のまま一晩過ごして翌朝に発症するという典型的な状況に基づく。1973年のJayamらの報告による命名である。
眼球への持続的な外部圧迫と虚血を反映した所見が特徴的である。
急性期所見
瞳孔散大固定:対光反射の消失を伴う。虹彩括約筋の虚血による。
眼筋麻痺:外眼筋への虚血性障害による眼球運動制限。
蒼白網膜:眼動脈虚血による広範な網膜蒼白化。塞栓は認められない。
cherry red spotの不明瞭化:OAOではCRAOと異なりcherry red spotが不明瞭となる1)。
経過後の所見
眼球突出:急性期に認められることがあるが、自然軽快する。
視神経萎縮:慢性期に進行する。虚血による視神経の変性を反映する。
網膜菲薄化:長期経過後に確認される不可逆的変化。
網膜電図完全消失:網膜全層に及ぶ虚血の客観的指標となる。
OAOでは眼動脈の完全虚血により網膜・脈絡膜双方が障害される。そのためCRAOで典型的に見られるcherry red spotが不明瞭となる点が鑑別のポイントである1)。
CRAOでは脈絡膜循環は保たれるため黄斑部にcherry red spotが出現する。一方SNR(OAO)では眼動脈レベルで閉塞するため網膜・脈絡膜双方が虚血となり、cherry red spotは不明瞭となる1)。また塞栓の有無と圧迫の既往歴が重要な鑑別情報となる。
SNRの本態は、眼球への長時間の持続的外部圧迫による眼動脈虚脱と虚血である。以下の状況が原因として知られる。
SNRは除外診断が基本となる。意識消失の既往と眼球圧迫の可能性を病歴から確認したうえで、他の原因による眼動脈閉塞・網膜動脈閉塞を除外する。
以下に主要な検査と目的を示す。
| 検査 | 主な目的 |
|---|---|
| CT/MRI | 頭蓋内病変・塞栓源の除外 |
| 蛍光眼底造影(FA) | 血管閉塞部位の確認 |
| 網膜電図 | 網膜全層障害の客観的評価 |
急性の網膜動脈閉塞・眼動脈閉塞は眼科的緊急事態として対応する必要がある1)。
GCAは眼動脈・後毛様動脈を閉塞して急性視力喪失を引き起こす全身性血管炎であり、ステロイド投与による緊急治療が必要な疾患である。SNRと同様に眼動脈閉塞を呈するため、高齢者ではESR・CRPによる積極的な除外が推奨される1)。
SNRに対する確立した治療法は存在しない。現時点での対応は以下の通りである。
急性の網膜動脈閉塞・OAOは眼科的緊急事態として扱い、可能な限り早期に対応する1)。
急性期対応
前房穿刺:眼圧低下による再灌流を試みる。発症から時間が経過した場合の有効性は低い。
緊急精査:GCA・頭蓋内疾患の除外を速やかに行う。
眼科的緊急対応:急性RAO/OAOは緊急疾患として扱う1)。
経過観察
眼球突出:圧迫解除後に自然軽快する。経過観察が基本。
視力予後:多くの場合、重度の視力障害が永続する。回復は期待しにくい。
合併症管理:視神経萎縮・続発緑内障の発生に注意する。
SNRの発症機序は、持続的な眼球外部圧迫による眼動脈虚脱と虚血・再灌流障害の連鎖である。
OAOの病態において、眼動脈閉塞は網膜循環と脈絡膜循環の双方を遮断する点で、網膜中心動脈閉塞より予後が不良となる1)。
以下にSNRとCRAOの主要な相違点を示す。
| 項目 | SNR(OAO) | CRAO |
|---|---|---|
| 閉塞部位 | 眼動脈 | 網膜中心動脈 |
| 脈絡膜循環 | 障害あり | 保たれる |
| cherry red spot | 不明瞭 | 典型的に出現 |
| 主な原因 | 眼球外部圧迫 | 塞栓・血栓 |