OCT
RPEバンド不連続:RPEの線状高輝度帯が途絶し、裂孔の辺縁を同定できる。
スクロール(巻状収縮):RPE遊離端が波状に隆起する特徴的所見。
Window defect:RPE欠損部から脈絡膜が透見される低反射領域。

網膜色素上皮裂孔(RPE tear)は、色素上皮剥離(PED)を伴う領域においてRPEが急激に裂け、収縮することでBruch膜と脈絡膜が露出する病態である。1981年にHoskinらが初めて報告した。
色素上皮剥離は、RPEの基底膜とBruch膜内膠原線維層が滲出液や血液によって分離した状態である。RPE裂孔が生じた部位では視細胞が存続できないため、視機能に異常を来す。
検眼鏡的には半月状〜三日月状の赤褐色病変として観察される。
主な原因と発生率:
起こりうる。中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、病的近視、脈絡膜腫瘍のほか、緑内障濾過手術後の低眼圧による稀な発生例も報告されている1)。色素上皮剥離を伴うあらゆる病態が潜在的なリスクとなる。
散瞳下眼底検査では、収縮・重複したRPE領域と脈絡膜が露出した脱色素眼底が観察される。最も典型的な形状は三日月形である。
Takemotoら(2023)は、緑内障に対するEx-PRESSフィルトレーション手術後にRPE裂孔を発症した1例を報告した1)。術後13日目に上方アーケード血管に沿うRPE裂孔と下方網膜の胞状網膜剥離が確認された。12か月後もRPE裂孔は残存し、網膜下増殖組織による牽引性網膜皺襞が持続していた。
OCTが最も有用である。RPEバンドの不連続性、RPE遊離端の波状巻状化(スクロール)、欠損部のwindow defectを明確に描出できる。FAやFAFを組み合わせることで、裂孔の範囲と活動性をより詳細に評価できる。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。
RPE裂孔の主たる発生機序は2つに大別される。
緑内障濾過手術後の特殊な機序としては、過剰な眼圧下降→脈絡膜循環障害→脈絡膜上腔への滲出液貯留→RPEの機械的伸展・破裂、という連鎖が報告されている1)。
色素上皮剥離の形態的特徴と全身要因が主なリスクを構成する。
高まる可能性がある。自然経過での発生率が10〜12.5%であるのに対し、抗VEGF注射後は14〜19.7%と報告されている。特に色素上皮剥離の垂直高が550μmを超える場合はリスクが増す。ただし、抗VEGF治療を中止するリスクの方が通常は大きく、継続が基本方針となる。
各モダリティは相補的な情報を提供する。複数の検査を組み合わせた総合的な評価が重要である。
OCT
RPEバンド不連続:RPEの線状高輝度帯が途絶し、裂孔の辺縁を同定できる。
スクロール(巻状収縮):RPE遊離端が波状に隆起する特徴的所見。
Window defect:RPE欠損部から脈絡膜が透見される低反射領域。
FA・FAF
FA:RPE裂孔部は顕著な過蛍光。スクロール部は遮蔽による低蛍光。
FAF:RPE裂孔領域は低自発蛍光。隣接するスクロール部は高自発蛍光。
IA(インドシアニン):RPE裂孔部で脈絡膜血管が明瞭に描出される。
Takemotoら(2023)の症例では、RPE裂孔部位に一致したwindow defect(FA)が確認され、12か月後のFAFではRPE裂孔部に持続する低蛍光が認められた1)。
新生血管型加齢黄斑変性
抗VEGF治療の継続:RPE裂孔発生後も継続が推奨される。治療により悪化する報告はない。
小さな裂孔:RPE細胞が再被覆し、視機能が部分的に回復しうる。
大きな裂孔(未治療):網膜下線維性プラーク・瘢痕が形成されやすい。
緑内障術後
眼圧上昇が治療の基本:過剰な眼圧下降が原因のため、眼圧を適正範囲に戻す1)。
経強膜的強膜弁縫合:眼圧を上昇させ、漿液性網膜剥離を改善する1)。
追加縫合+粘弾性物質前房内注入:眼圧安定化のための補助処置1)。
CNV+色素上皮剥離
CNV活動性の評価:RPE裂孔の発生機序がCNV収縮か静水圧か判別する。
高リスク例への配慮:半量投与療法やトリアムシノロン併用が検討されることがある。
Takemotoら(2023)の症例では、眼圧12〜15mmHgへの安定化後に網膜が復位し、12か月後の視力は0.3であった1)。RPE裂孔発症からIOP上昇処置までの時間が長かった点が、牽引性変化が残存した一因と考察されている。
裂孔の大きさと中心窩関与により予後を予測する。
| グレード | 裂孔径 | 視力予後 |
|---|---|---|
| Grade 1 | <200μm | 良好 |
| Grade 2 | 200μm〜1乳頭径 | 比較的良好 |
| Grade 3 | >1乳頭径 | 中等度 |
| Grade 4 | >1乳頭径+中心窩 | 不良 |
裂孔のサイズと中心窩への関与が鍵となる。Sarraf Grade 1〜2の小さな裂孔では、RPE細胞が再被覆することで視機能が部分的に回復する場合がある。一方、Grade 4(裂孔径>1乳頭径かつ中心窩関与)では視力予後が不良である。詳細は「Sarrafグレーディング」の項を参照。
色素上皮剥離内に貯留した滲出液が静水圧を高め、RPEが最も脆弱な点で破裂する。RPEは一度裂けると弾性収縮によりスクロール(巻状収縮)する。
OCT研究により、RPE下の1型CNV膜が収縮することでRPEに牽引が加わり、裂孔が形成されるメカニズムが裏付けられている。
Takemotoら(2023)が報告した症例では、以下の連鎖が推察された1):低眼圧→脈絡膜循環障害→脈絡膜上腔への滲出液貯留→網膜と脈絡膜の硝子体側への挙上→RPEの機械的伸展・破裂→RPEバリア機能障害→液体移動による漿液性網膜剥離。
動脈硬化による短後毛様動脈(SPCA)の循環障害は、虚血性視神経症の素地となると同時に、脈絡膜虚血を介してRPEバリア機能を障害し、機械的伸展に対する脆弱性を高めると考えられている1)。
RPE裂孔のリスクを決定する色素上皮剥離形態因子をまとめる。
| リスク因子 | 閾値 |
|---|---|
| 色素上皮剥離垂直高(Sarraf基準) | >550μm |
| 色素上皮剥離垂直高(Chan基準) | >400μm |
| 色素上皮剥離持続期間 | 短い(新生血管が未成熟) |