非侵襲・迅速
造影剤不要:アナフィラキシーなど造影剤副作用のリスクがない。
短時間検査:1回の撮影は数秒〜数十秒で完了する。
繰り返し施行可能:経過観察目的での頻回な撮影が患者負担なく実施できる。

光干渉断層血管撮影(Optical Coherence Tomography Angiography; OCTA)は、近赤外光を用いたOCT装置に血流検出機能を追加した非侵襲的眼底血管撮影技術である。2014年に初めて臨床応用され、造影剤を使用しない血管可視化技術として急速に普及した。
OCTAの基本原理はモーションコントラストである。同一部位を繰り返しスキャンし、時間的に変動する信号成分(=血球の移動)と静止した組織信号を分離することで血流情報を抽出する。代表的なアルゴリズムとしてSSADA(Split-Spectrum Amplitude-Decorrelation Angiography)がある。
使用する光源によってSD-OCT(スペクトラルドメイン)とSS-OCT(スウェプトソース)の2種類が存在する。SS-OCTは波長が長いため脈絡膜深部の描出に優れる。
FAは造影剤を静脈注射し、漏出を含む蛍光パターンを二次元的に記録する。OCTAは造影剤不要で血管の流れのみを三次元的に描出し、層別解析や定量が可能である。ただし漏出・染色・poolingの評価はできないため、FAと相補的に用いられる。詳細は「主な特徴とFAとの比較」の項を参照。
非侵襲・迅速
造影剤不要:アナフィラキシーなど造影剤副作用のリスクがない。
短時間検査:1回の撮影は数秒〜数十秒で完了する。
繰り返し施行可能:経過観察目的での頻回な撮影が患者負担なく実施できる。
三次元・定量
層別解析:網膜を4層に分け、各層の血管網を個別に描出できる。
定量評価:血管密度(VD)・毛細血管灌流密度(MPD)などを数値化できる。
形態と血流の同時評価:OCT構造画像と血管画像を重ね合わせて確認できる。
FAにない利点
フローボイド描出:無灌流領域・毛細血管脱落を精細に可視化できる。
毛細血管叢の分離:表層と深層の毛細血管叢を個別に評価できる。
FAにない制限
漏出の描出不可:血管透過性亢進・新生血管からの漏出は検出できない。
画角が狭い:標準は3×3〜12×12mm程度で、広角FAに及ばない。
定量値の機種差:血管密度などの数値は機種間で直接比較できない。
FAとOCTAの主な相違点を以下に示す。
| 特性 | FA | OCTA |
|---|---|---|
| 造影剤 | 必要 | 不要 |
| 漏出評価 | 可 | 不可 |
| 層別解析 | 不可 | 可 |
現時点では置き換えられない。漏出・染色・新生血管の活動性評価にはFAが依然不可欠である。両者は相補的に用いるのが適切である。
OCTAを正確に行うためには適切な準備と撮影手順が必要である。
標準的な撮影範囲は3×3mm(高解像)から12×12mm(広範囲)まで選択可能である。黄斑部評価には3×3mmまたは6×6mmが用いられることが多い。視神経乳頭評価には4.5×4.5mmが一般的である。
OCTAではOCT断層像に基づいて各層の境界(セグメンテーション)を自動設定するが、病的眼では自動セグメンテーションが失敗することが多い。撮影後は必ずセグメンテーションラインを確認し、ずれがあれば手動修正する。
OCTAでは網膜血管叢を以下の4層に分けて描出する。
| 層名 | 略称 | 主な位置 |
|---|---|---|
| 表層毛細血管叢 | SCP | 神経線維層〜神経節細胞層 |
| 深層毛細血管叢 | DCP | 内顆粒層内側〜外側 |
| 外網膜 | — | 無血管層(正常では血流なし) |
| 脈絡膜毛細血管叢 | CC | ブルッフ膜直下 |
さらに神経線維層毛細血管叢(RPCP)を加えた分類を採用する装置もある。
OCTAには特有のアーチファクトが存在し、臨床判断に影響するため理解が不可欠である。
主なアーチファクトを以下に整理する。
| アーチファクト | 原因 | 影響 |
|---|---|---|
| 信号低下 | メディア混濁・色素 | 偽フローボイド |
| プロジェクション | 表層血管の影 | 深層への偽血流 |
| セグメンテーションエラー | 病的形態変化 | 層間信号混入 |
| 眼球運動 | 固視不良 | 線状白帯・重複 |
散瞳・固視確認・メディア評価を撮影前に行い、画質スコアを確認することが基本である。セグメンテーションは撮影後に必ず目視確認する。プロジェクション除去機能が搭載された機種ではこれを有効にする。
OCTAは多様な網膜・視神経疾患の診断と管理に活用される。
OCTAはDRの毛細血管異常を精細に描出できる。FAZ拡大・不整、毛細血管脱落(フローボイド)、新生血管の検出が可能である。AAO糖尿病網膜症診療ガイドライン(2024)では、OCTAはFAの補完的検査として、特に黄斑部毛細血管網の評価に有用であると位置づけられている5)。
血管密度(VD)はDRの病期と相関し、網膜虚血の客観的指標として研究が進んでいる。
Srinivasanら(2023)はDR患者を対象とした縦断研究で、ベースライン時のSCP-VDが低いほど1年間でのDR重症度進行リスクが高いことを報告した2)。DR進行群のSCP-VD中央値は12.90%、非進行群は14.90%で有意差があり(p=0.032)、ハザード比は0.825(AUC=0.643)であった。
脈絡膜新生血管(MNV)の検出はOCTAの主要な適応の一つである。AAO AMD診療ガイドライン(2024)では、OCTAによる黄斑新生血管検出感度は0.87、特異度は0.97と報告されており、FAに匹敵する診断精度を有する6)。
また、FAでは検出できない無症候性のsubclinical 黄斑新生血管(1型MNV・drusen下MNV)をOCTAで検出できる可能性があり、早期介入の観点から注目されている6)。
RVOでは閉塞部位の毛細血管脱落・フローボイドがOCTAで明確に描出される。AAO RVO診療ガイドライン(2024)では、黄斑部毛細血管網の虚血範囲の評価にOCTAが有用であると記載されている7)。
RAOでは閉塞血管の支配領域に一致した表層毛細血管のフローボイドが急性期から認められる。AAO RAO診療ガイドライン(2024)では、OCTAによる早期の血流評価が管理上有用であるとされている8)。
緑内障では視野異常に先行して神経線維層菲薄化と乳頭周囲血管密度の低下が生じる可能性があり、OCTAによる早期検出の研究が進んでいる。Zuberiら(2022)はNTG例でOCTA血管密度の低下を報告した4)。ただし現時点では診断・管理の主役はOCT構造画像と視野検査であり、OCTAは補完的役割にとどまる。
OCTAの定量指標をDR進行予測バイオマーカーとして活用する研究が進んでいる。
Srinivasanら(2023)は、ベースラインのSCP-VD(血管密度)がDR進行リスクと有意に関連することを縦断的に示した2)。VD 12.90%(進行群)vs 14.90%(非進行群)でp=0.032、ハザード比0.825、AUC=0.643であった。感度・特異度の改善により、将来的な個別化フォローアップへの応用が期待される。
従来の眼底OCTAに加え、前眼部・結膜へのOCTAの応用が広がっている。
Mgbojiら(2022)は結膜OCTAを用いてSCD患者の血管形態を評価し、非侵襲的な全身血管合併症モニタリングへの応用可能性を示した3)。
12×12mmを超える超広角OCTAの開発・普及により、周辺部網膜の血管病変や増殖前網膜症における新生血管の検出感度が向上することが期待される。
OCTAで検出されたsubclinical 黄斑新生血管に対して抗VEGF治療を行うことで、渗出性AMDへの移行を抑制できるかどうかを検討する臨床研究が進行中である6)。
広角化・高速化・AIによる自動解析・定量バイオマーカーの標準化が主な方向性である。機種間の定量値差を解消する標準化基準の確立も重要な研究課題である。