表在型
外観:乳頭表面に黄白色の結節が露出して見える。
眼底自発蛍光所見:眼底自発蛍光(FAF)で過蛍光を呈する。
診断:比較的容易。散瞳下の眼底検査で確認できる。

視神経乳頭ドルーゼン(optic disc drusen; ODD)は、視神経乳頭(optic nerve head)内に蓄積した石灰化結節である。ムコタンパク質・ムコ多糖類からなる屈折性の石灰化物で構成される。細胞外物質の石灰化凝集体(calcified aggregates of extracellular materials)が、軸索輸送(axoplasmic transport)の障害の結果として視神経乳頭に沈着・蓄積したものと考えられている2)。
有病率は0.34〜2.4%と報告されており、性差はない。70%以上の症例で両眼性に生じるが、左右非対称であることが多い2)。不完全浸透を伴う常染色体優性遺伝が疑われており、先天性疾患と位置づけられる。幼児期には目立たず、健診や他疾患の精査を契機に発見されることが多い。加齢とともにドルーゼンは増大し、視野障害の進行と相関する1)。小乳頭(crowded OD)を誘発しうることも知られている2)。
関連疾患として、網膜色素変性症・網膜色素線条(angioid streaks)・アッシャー症候群・ヌーナン症候群・アラジール症候群が挙げられる。慢性進行性の視神経疾患として近年注目されている。
不完全浸透を伴う常染色体優性遺伝が疑われている。家族にODDがある場合は眼科受診を推奨する。両眼性の割合が高いことも特徴である。
ODDは通常無症状である。視野異常は70%以上の症例にみられるが、緩徐に進行するため自覚症状がないことが多い。
視野異常は70〜90%の症例で確認されるが、埋没型より表在型で症状が自覚されやすい。年約1.6%の割合で視野狭窄が進行する。
視野異常のパターンを下表に示す。
| パターン | 特徴 |
|---|---|
| 盲点拡大 | 最も一般的 |
| 弓状暗点 | 視神経線維走行に沿う |
| 周辺視野狭窄 | 進行例で出現 |
通常は良好な視力予後である。ただし年約1.6%の視野狭窄の進行があり、まれにNA-AIONやCNVM合併時に急激な視力低下をきたすことがある。定期的な検査が重要である。
ODDには表在型と埋没型の2型がある。
表在型
外観:乳頭表面に黄白色の結節が露出して見える。
眼底自発蛍光所見:眼底自発蛍光(FAF)で過蛍光を呈する。
診断:比較的容易。散瞳下の眼底検査で確認できる。
埋没型
外観:乳頭浮腫様を呈する(偽乳頭浮腫 pseudopapilledema)。真の乳頭浮腫との鑑別が困難。
診断:OCT・超音波検査・眼底自発蛍光による精査が必須。
視野障害:表在型より高率に生じる。
共通する眼底所見として、以下が挙げられる。
視野障害の主要因はドルーゼンによる視神経線維への直接圧迫(direct axonal compression)である2)。
ODDの病因は、先天的な視神経乳頭の形成異常(dysplasia)と血流障害にある1)。軸索輸送の障害により石灰化物質が蓄積し、加齢とともにドルーゼンが増大する1)2)。先天的に小さい・混雑した視神経乳頭(crowded OD)が形成の前提条件とされる2)。
遺伝的背景として不完全浸透の常染色体優性遺伝が疑われており、家族内発症が知られている。関連疾患として以下が挙げられる。
ODDの診断で最も重要な臨床課題は、真の乳頭浮腫との鑑別である。偽乳頭浮腫の一般的な原因としてODDが挙げられる3)。
鑑別のポイントを下表に示す。
| 所見 | 真の乳頭浮腫 | ODD(偽乳頭浮腫) |
|---|---|---|
| 充血 | あり | なし |
| 毛細血管拡張 | あり | なし |
| 出血 | あり | なし/まれ |
真の乳頭浮腫では乳頭の微小血管鬱血・充血・毛細血管拡張・火炎状出血を認める。ODDによる偽乳頭浮腫では毛細血管拡張や充血がなく、生理的乳頭陥凹を欠くが血管走行を明瞭に追える。
超音波検査
Bモード/Aモード:石灰化ドルーゼンは高振幅スパイクとして検出される1)。ゲインを低下させても信号が維持される点が特徴的。
意義:埋没型ドルーゼンの診断に有用。乳頭浮腫との鑑別に実施する。
眼底自発蛍光(FAF)
表層ドルーゼン:過蛍光として明瞭に描出される1)。OCTと眼底自発蛍光を組み合わせた評価が推奨される2)。
埋没型:眼底自発蛍光で検出困難な場合もあり、OCTとの併用が重要。
OCT
所見:視神経乳頭内の低反射卵形構造として同定される1)。埋没型ドルーゼンの検出が可能3)。
RNFL評価:早期の網膜神経線維層菲薄化の検出に有用。PHOMS(乳頭周囲視神経線維層の過反射隆起)評価にも使用する3)。
小児の両眼性乳頭浮腫様所見ではODDが鑑別に上がる。超音波BモードやOCTで石灰化の有無を確認し、真の乳頭浮腫と区別することが重要である。必要に応じて神経内科的精査も検討する。
ドルーゼンそのものに対する有効な治療法はなく、合併症への管理・治療が主体となる。
視野欠損に対する有効な治療法は確立されていない。一部の症例では眼圧降下薬が検討されることがある。定期的な視野検査と形態変化の長期観察が管理の中心である。
Markan A らの症例報告では、ODDに伴う乳頭周囲CNVM合併の10代前半男児例に対してマルチモーダルイメージングが実施された1)。左眼BCVAは6/60で、他院で視神経炎と誤診されステロイド治療が施行されていた。抗VEGF3回投与で網膜下滲出液が消退し、3か月後にBCVA 6/9まで改善した。
CNVM合併時の治療選択肢として以下が挙げられる。
ドルーゼン自体への有効な治療はない。合併症(CNVMなど)への対処が主体である。定期的な視野検査と乳頭形態変化の観察が重要である。急な視力低下・視野異常がある場合は速やかに受診する。
ODDの形成は、視神経前部篩状板へのヒアリン様物質の沈着から始まる。先天的に小さい・混雑した視神経乳頭(crowded optic disc)が形成の前提条件である1)2)。
血流障害と軸索輸送の低下により、細胞外石灰化物質が視神経乳頭に蓄積する2)。加齢とともにドルーゼンが増大すると、視神経線維への機械的圧迫が生じ、視野障害が進行する1)2)。
視野障害の発生機序は以下の通りである。
ドルーゼンの大きさや局在と視野変化は必ずしも一致しない。CNVM(乳頭周囲脈絡膜新生血管膜)の発生機序は、ODD部位における脈絡膜血管への影響と乳頭周囲の血管構造障害と推察されている1)。
眼底自発蛍光・OCT・OCT-A・FFA・超音波(USG)を組み合わせたマルチモーダルイメージングが、ODD関連合併症の包括的評価に有用である1)。特にOCT-Aは乳頭周囲の異常血管膜(CNVM)の検出に有用であり、FFA単独では見逃される症例の把握に貢献する1)。
ODDに伴うCNVMへの抗VEGF療法の有効性が症例報告で示されており、知見の蓄積が期待される1)。症例数が少なく長期成績は不明だが、治療選択肢として検討されている。
OCTの普及により埋没型ドルーゼンの検出精度が向上している3)。PHOMS(乳頭周囲視神経線維層の過反射隆起; peripapillary hyperreflective ovoid mass-like structure)概念の導入によって偽乳頭浮腫の診断精度がさらに向上しつつある3)。
ODD(50歳未満)と非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION)の関連性についての知見が蓄積されており、ODDが虚血性視神経症の素因となることが示唆されている2)。