Aモード
原理:単一の超音波ビームを送信し、反射波を波形(スパイク)として表示する。横軸が時間(距離)、縦軸がエコー強度を示す。
周波数:8 MHz
主な用途:眼軸長測定、角膜厚測定、腫瘍内部の組織性状評価

眼科超音波検査(ophthalmic ultrasonography)は、超音波を利用して眼球内および眼窩内の構造を非侵襲的に可視化する画像診断法である。眼球は体表に近く、液体で満たされた構造であるため、超音波検査に適している。
20 kHz以上の高周波音波がプローブ(探触子)内の圧電素子から発生し、組織の境界面で反射される。反射波(エコー)の強度と到達時間から、組織の位置や性状を画像化する。音波は液体中より固体中の方が速度が速い。音響インピーダンスや密度が異なる組織境界では、音波の散乱・反射・屈折が起こる。
エコーの強度により、画像上の各領域は以下のように表現される。
高密度の病変の後方には音響陰影(シャドーイング)が生じ、無エコー域となることがある。
Aモード(amplitude mode)は反射波を波形(スパイク)として表示し、組織間の距離や反射率を数値的に評価する方法である。Bモード(brightness mode)は反射波の強弱を画面上の輝度変化として表示し、二次元断層像を得る方法である。詳細は「検査の種類と原理」の項を参照。
眼科領域で用いられる超音波検査はAモード・Bモード・超音波生体顕微鏡の3種類である。検査部位により使い分けることが望ましい。
Aモード
原理:単一の超音波ビームを送信し、反射波を波形(スパイク)として表示する。横軸が時間(距離)、縦軸がエコー強度を示す。
周波数:8 MHz
主な用途:眼軸長測定、角膜厚測定、腫瘍内部の組織性状評価
Bモード
原理:反射波の強弱を輝度(明るさ)の変化で表し、プローブを動かすことで二次元断層像を構成する。
周波数:10 MHz(一般的には5〜20 MHz)
主な用途:眼内・眼窩内病変の形態診断、網膜剥離の検出、腫瘍の計測
超音波生体顕微鏡
原理:30〜60 MHzの高周波超音波で前眼部を高解像度で描出する。解像度は高いが深達度は浅い。
主な用途:毛様体の形態評価、隅角の定量的評価、前房深度の測定
一般的な超音波診断装置では5〜20 MHzの振動子が使用される。Bモードから得られる二次元画像をコンピューターグラフィックで3D画像に再構築し、病変の大きさや境界を立体的に捉えることも可能となっている。
超音波検査が特に必要となるのは以下の状況である。
| 状況 | 具体例 |
|---|---|
| 透光体混濁 | 成熟白内障、硝子体出血、角膜混濁 |
| 眼内病変の精査 | 眼内腫瘍、網膜剥離、水晶体脱臼 |
| 生体計測 | 眼軸長測定(IOL度数計算) |
角膜・水晶体・硝子体などの中間透光体の混濁により眼底が透見できないとき、Bモード超音波検査は極めて有用である。検査による侵襲も少なく、装置も小型化されており、外来で容易に使用できる。
硝子体出血で眼底が全く透見できない場合でも、網膜剥離の有無や後部硝子体剥離の有無を評価でき、術前検査として不可欠である1)。糖尿病網膜症の経過観察でも、硝子体出血やその他の透光体混濁がある場合に網膜の状態を評価するための有用な診断ツールである4)。
白内障手術の術前評価において、成熟白内障や高密度白内障で光学式眼軸長測定が不可能な場合、超音波眼軸長測定(Aモードおよび/またはBモード)が推奨される6)。光学式測定と超音波測定の間に有意差はないとされるが、光学式の方が非接触で迅速かつ正確という利点がある6)。
脈絡膜メラノーマなどの眼内腫瘍の診断と経過観察にも不可欠であり、AモードとBモードの併用検査は厚さ3 mm以上の脈絡膜メラノーマの診断において95%以上の精度を有する。
最も多い適応は白内障手術前の眼軸長測定である。そのほか、硝子体出血や成熟白内障で眼底が観察できない場合の網膜剥離の除外診断、眼内腫瘍の計測と経過観察、眼内異物の検出などに必要となる。
Aモードは主に眼軸長測定に用いられる。
区分音速方式(水晶体1,641 m/秒、前房・硝子体1,532 m/秒)は、等価音速方式(有水晶体眼1,550 m/秒)より測定誤差が少ないとされる。光学式測定装置と比較して超音波Aモード法の測定値は0.2〜0.3 mm短く表示される。
超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope)は30〜60 MHzの高周波を使用する。毛様体を含む前眼部の詳細な形態評価が可能で、隅角鏡検査に比べて客観性・再現性に優れた定量的評価が可能である。眼圧上昇時に角膜の透見性が低下している状態でも隅角の状態を把握できる。ただし高周波のため深達度が浅く、眼球内や眼窩の検査には適さない。
正常眼では硝子体は完全な無エコー(陰性像)を呈する。硝子体内に何らかのエコー(陽性像)が認められれば、病的変化を疑うべきである。正常では網膜・脈絡膜・強膜は分離することなく、眼球内壁を裏打ちする1層の組織像として観察される。
後部硝子体剥離に関連する眼底不透明硝子体出血における網膜裂孔の検出について、Bモード超音波検査の感度には44〜100%と大きなばらつきがあると報告されている1)。網膜裂孔が疑われる場合は、初回評価後1〜2週間以内に超音波検査を再検すべきである1)。
硝子体出血で網膜の全容が不明な患者でBモード超音波検査が陰性の場合も、毎週のフォローアップが推奨される1)。
| 所見 | 網膜剥離 | PVD |
|---|---|---|
| Aモード棘波 | 高い | 中等度 |
| 可動性 | 規則的・平滑 | 不規則・粗雑 |
| 視神経との連続性 | あり | なし |
網膜剥離では膜エコーが視神経乳頭部と連続し、Aモード上の棘波が高く、眼球運動後の動きは規則的・平滑である。後部硝子体剥離では視神経との連続性がなく、棘波は低めで、動きは不規則かつ眼球運動停止後も波打つ動きが残る。増幅感度(ゲイン)を下げると硝子体膜エコーは網膜エコーより早く消失する点も鑑別に有用である。
脈絡膜悪性黒色腫などの眼内腫瘍の検出・計測・経過観察にBモードは有用である。
各種腫瘍の超音波所見の特徴は以下の通りである。
早産児網膜症(ROP)のステージ5の分類においても、Bモード超音波検査による網膜剥離の評価が必要とされる3)。
成熟白内障やその他の透光体混濁で後方の観察が困難な場合にも、Bモードは眼内腫瘤や網膜剥離、後部ぶどう腫の検出に適切であるとされる2)。
脈絡膜メラノーマの評価においてBモード超音波検査は中心的な役割を果たす。基底径と病変の厚さは転移や死亡率と相関するため、画像診断による計測と経過観察が重要である。
Ramos-Dávilaら(2025)は、Mayo Clinicにおける1,021例のぶどう膜メラノーマを対象にBモード超音波による形態分類を行った5)。ドーム型739例(72.4%)、キノコ型119例(11.7%)、多分葉型85例(8.3%)、微小隆起型77例(7.5%)に分類された。腫瘍の大きさで補正した多変量解析では、多分葉型は転移リスクが2.08倍(p = 0.003)、死亡リスクが2.38倍(p < 0.001)であった。
この研究から、Bモード超音波によるメラノーマの形態評価は予後予測因子としても重要であることが示されている5)。
Aモード超音波検査による眼軸長測定は、熟練者でも0.3 mm程度の測定誤差が生じうる。眼軸長1 mmの測定誤差は短眼軸長眼で約3.4 D、標準眼軸長眼で約2.9 D、長眼軸長眼で約1.6 Dの屈折誤差を生じる。そのため測定誤差は0.2 mm以内に収めることが求められる。
測定精度を向上させるため、以下の方法が推奨される。
シリコーンオイル充填眼では、光学式眼軸長測定の方が超音波よりIOL度数計算の精度が高いとされている6)。
Bモード検査では以下のアーチファクトが生じうる。
超音波検査は理論上、硝子体混濁の影響を受けにくいが、硝子体手術後にシリコーンオイルやガスが注入された眼では音速変化や深達度変化のため良好な画像が得られない。
救急外来においてベッドサイド超音波検査(POCUS: Point-of-Care Ultrasound)の有用性が注目されている。眼科救急は救急外来受診の約3%を占めるが、眼科医が常時在院しているとは限らないため、救急医による超音波検査の重要性が高まっている。
Teismannらは救急外来での網膜剥離評価にBモードを使用する際のニーモニック「CASE」を提唱している。
近年、前眼部OCTの進歩により超音波生体顕微鏡の一部の適応が前眼部OCTに置き換わりつつある。しかし虹彩後方や毛様体の観察では超音波生体顕微鏡が依然として優位性を保っており、両者は相補的な関係にある。
前眼部OCTは非接触で高解像度に前眼部表面を評価できる。一方、超音波生体顕微鏡は虹彩後面や毛様体、後房などの深部構造を評価しやすい7)。
Vishwakarmaら(2023)は、AS-OCTと超音波生体顕微鏡を併用することで、結節性強膜炎との鑑別が困難であった結膜下真菌症の診断・評価に有用であった症例を報告した7)。