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網膜・硝子体

多発消失性白点症候群(MEWDS)

1. 多発消失性白点症候群(MEWDS)とは

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多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome; MEWDS)は、1984年にJampolらが報告した疾患概念である。「白点症候群(white dot syndrome)」と呼ばれる炎症性疾患群に属し、網膜色素上皮(RPE)および網膜外層に主座を置く。

白点症候群には本疾患のほか、急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)、点状脈絡膜内層症(PIC)、多巣性脈絡膜炎(MFC)、散弾状網脈絡膜症などが含まれる。近年、MEWDSは急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)と臨床症状が重なる部分が多く、AZOOR complexの一つと位置づけられている。

20〜50歳の近視眼の若年女性に好発する。男女比は1:4であり、女性の発症率が圧倒的に高い1)。年間発症率は10万人あたり約0.22例と報告されている7)。約半数の症例で感冒様の前駆症状を伴う1)

典型例は片眼性である。両眼性の報告はきわめてまれで、文献上6〜7例にとどまる2)4)。両眼性の場合は常に左右非対称な経過をたどる4)

年齢の非典型例も報告されている。最年少は9歳の女児10)、最高齢は75歳の男性であり7)、古典的な好発年齢を超える症例も存在する。

Q MEWDSは再発するか?
A

大部分は単回発作で終わるが、約10%に再発がみられる。ワクチン接種や感染症など強い免疫刺激が再発の誘因となりうる8)。再発例でも視力予後は比較的良好である。

急性かつ無痛性の片眼性視力変化で発症する。

  • 視力低下:軽度〜中等度。中心窩が障害されると顕著になる。
  • 光視症:閃光の自覚。初発症状として多い。
  • 暗点:耳側暗点、傍中心暗点、マリオット盲点拡大を自覚する。
  • 霧視:視界全体のぼやけとして訴えられる。
  • 色覚異常:色覚障害(色覚異常)を呈する症例がある1)

眼底検査では、後極部から赤道部にかけて多発する灰白色の点状病変を認める。病変は網膜深層〜RPEレベルに位置し、大きさは100〜200μmである1)。白点は数週間で消失するが、中心窩の顆粒状変化(オレンジ〜黄色の顆粒状外観)は残存しやすい。この顆粒状変化は症例の74〜96%にみられ、白点消失後も唯一の所見となりうる2)

その他の臨床所見として以下がある。

  • 軽度の硝子体:後部硝子体細胞を主体とする。
  • 視神経乳頭浮腫:乳頭周囲の漿液性網膜下液を伴うこともある。
  • 軽度の前房フレア:炎症反応の波及による。
  • 相対的瞳孔求心路障害(RAPD):まれに陽性となる。
  • 網膜静脈の血管鞘・網膜出血:まれな所見である。

まれに脈絡膜新生血管(CNV)を合併することがあり、発症後数ヶ月〜数年で出現する場合がある2)。CNVを生じた場合は視力予後不良となる。

Q 白点が見えなくても診断できるか?
A

白点は一過性であるため、受診時には消失していることがある。その場合でも中心窩の顆粒状変化や眼底自発蛍光の過蛍光所見から診断が可能である2)4)。白点を伴わない非典型例も報告されている7)

MEWDSの正確な病因は不明であるが、ウイルス感染や免疫反応の関与が推定されている。

  • ウイルス感染の前駆症状:約半数の症例で感冒様前駆症状がみられる1)
  • 近視:近視眼に好発する傾向がある。
  • 若年女性:20〜50歳の女性が大多数を占める。
  • ワクチン接種:B型肝炎、インフルエンザ、HPV、髄膜炎菌、COVID-19ワクチン後の発症が報告されている5)8)
  • COVID-19感染:SARS-CoV-2感染後のMEWDS発症が複数報告されている3)9)。COVID-19パンデミック期にはMEWDSの報告数が有意に増加した3)

ワクチン接種からMEWDS発症までの期間は中央値14日(1〜90日)と報告されている5)。COVID-19感染からの発症は平均29.6日(0〜70日)である3)

免疫学的機序として、ワクチン由来のmRNAがRIG-Iを介してI型インターフェロン(IFN-I)を誘導し、RPE細胞のバリア機能障害を引き起こす可能性が示唆されている5)。分子模倣(molecular mimicry)やアジュバントを介した炎症も推定されている。

MEWDSの診断は臨床所見と画像検査の組み合わせによる。特異的な血液検査はなく、感染症・自己免疫疾患を除外するための検査を行う。

FAFは最も感度が高く実用的な補助検査である4)。白点に対応する自発蛍光亢進斑(hyperautofluorescent dots)を認める。臨床的に白点が確認できない場合でも、FAFでは特徴的な過蛍光病変が検出されることがある4)。無症状の対側眼にも病変が見つかることがあり、両眼性疾患が従来認識されていたより多い可能性を示唆する4)

フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)

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白点に一致して造影初期から花冠状(wreath-like pattern)の点状過蛍光を示し、後期に染色を認める1)5)。視神経乳頭からの蛍光漏出を伴うこともある。急性後部多発性斑状色素上皮症との重要な鑑別点として、急性後部多発性斑状色素上皮症は初期低蛍光・後期過蛍光の「蛍光逆転現象」を呈するのに対し、MEWDSは初期から過蛍光を示す。

急性期にはellipsoid zone(IS/OS junction)の断裂・消失が特徴的である1)2)。外境界膜(ELM)の減弱も認められる。RPEの肥大や外網膜の過反射病巣が観察される1)

白点消失後にellipsoid zoneの回復がみられ、視力改善と対応する。再発を繰り返す症例では外顆粒層の菲薄化をきたすことがある。

インドシアニングリーン蛍光造影(ICGA)

Section titled “インドシアニングリーン蛍光造影(ICGA)”

後期相で臨床的白点数を上回る多数の低蛍光斑を認める1)5)。視神経乳頭周囲にも低蛍光斑が観察され、白点病変を認めない領域にも脈絡膜レベルの障害が示唆される。

ICGA後期の低蛍光は脈絡膜毛細血管の低灌流ではなく、網膜外層障害に続発するRPE異常によりICGの取り込みが変化したものと解釈されている1)。ただし、OCT-Aで脈絡膜毛細血管に一過性の血流欠損を示した症例も報告されており1)、病態の議論は続いている。

多くの症例では脈絡膜毛細血管の血流は保たれている1)。これは本疾患の主座が外網膜・RPEにあることを支持する所見である1)。COVID-19合併例ではCNVの検出にOCT-Aが有用であった報告がある3)

典型的にはマリオット盲点拡大を認める。そのほか耳側暗点、傍中心暗点がみられる。急性特発性盲点拡大症候群(AIBSE)はMEWDSと同一スペクトラム上の疾患と考えられている。

急性期にa波振幅の減少がみられる。多局所網膜電図では視野異常部位に一致した振幅低下が認められ、診断に有用である。変化は可逆的であり、回復とともに正常化する。

検査法主な所見特記事項
FAF過蛍光斑最も感度が高い
FA初期花冠状過蛍光APMPPEとの鑑別に有用
OCTellipsoid zone断裂回復を経時的に確認可能

以下の疾患との鑑別が重要である。

  • 急性後部多発性斑状色素上皮症:両眼性が多く、白斑がやや大きい。FAで初期低蛍光・後期過蛍光の「蛍光逆転現象」を呈する。
  • 多巣性脈絡膜炎(MFC/MCP):慢性経過をたどり、CNVを合併しやすい。
  • 急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR):眼底所見に乏しく、視神経炎と誤診されやすい。多局所網膜電図やOCTが診断に必要。
  • サルコイドーシス:類似の蛍光眼底造影所見を呈することがある。
  • 原田病:両眼性の胞状網膜剥離が特徴。前駆症状に頭痛・耳鳴を伴う。
  • 梅毒・結核:感染性網脈絡膜炎として除外が必要。
Q 急性後部多発性斑状色素上皮症とはどう区別するか?
A

急性後部多発性斑状色素上皮症は両眼性に発症することが多く、白斑はMEWDSよりやや大きい。最も重要な鑑別点はFAの造影パターンである。MEWDSは初期から過蛍光を示すのに対し、急性後部多発性斑状色素上皮症は初期低蛍光・後期過蛍光の「蛍光逆転現象」を特徴とする。

MEWDSは自己限定的な疾患であり、ほぼすべての症例が3〜9週間で自然軽快する。通常、治療は不要であり、経過観察が基本方針である。

視力低下が著しい症例や視神経乳頭浮腫を伴う例では、早期改善を目的としてステロイド内服を考慮することがある。重症例ではプレドニゾロン内服やステロイドパルス療法が有効との報告がある。

自然軽快が原則であるが、視力低下が高度な場合にはステロイド内服が選択肢となる。

  • プレドニゾロン内服:30mg/日より漸減(2週間〜1ヶ月)
  • カルナクリン錠:微小循環改善を目的に併用されることがある
  • 脈絡膜新生血管(CNV)合併時抗VEGF薬硝子体内注射が検討される。
  • 慢性再発例シクロスポリンの使用が報告されている。再発は10%未満であり、免疫抑制療法を要する症例はきわめて少ない2)

COVID-19関連MEWDS 7例のレビューでは、5例(71%)が何らかの治療を受けており、COVID-19関連例はウイルス性MEWDS全般と比べてやや重症化する可能性が示唆されている3)。不完全な視力回復例も報告されており、COVID-19関連例には注意深い経過観察が求められる。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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MEWDSの正確な病態生理は未解明であるが、主に網膜外層・RPEを主座とする炎症性疾患と考えられている。

最新の画像所見に基づく知見では、MEWDSの主座は網膜外層(視細胞・ellipsoid zone)であり、脈絡膜毛細血管は温存される1)

  • OCTでellipsoid zoneの断裂とRPEの肥大が認められる1)
  • OCT-Aでは脈絡膜毛細血管の血流欠損は認めないことが多い1)
  • ICGA後期の低蛍光はRPE異常に起因し、脈絡膜低灌流によるものではない可能性が高い1)

ただし、一部の症例ではOCT-Aで脈絡膜毛細血管の一過性血流欠損が報告されており1)、脈絡膜側の関与も完全には否定されていない。

MEWDSはAZOOR、AMN、PIC、MFC、AIBSEなどと臨床症状が重なり、同一スペクトラム上にある類縁疾患と考えられている。日本眼科学会ではAZOORの診断ガイドラインが作成されている。OCT所見としてellipsoid zoneの消失が共通しており、活動期にellipsoid zoneが不整になり、改善とともに視力が回復する経過はAZOOR complexに共通する特徴である。

ウイルス感染やワクチン接種後のMEWDS発症は、免疫介在性の機序を示唆する。mRNAワクチンに関しては、RNA sensor(RIG-I)を介したI型インターフェロン産生がRPE細胞のバリア機能障害を惹起する可能性が指摘されている5)

分子模倣(molecular mimicry)や抗原相補性によるウイルスワクチン後の自己免疫反応も推定されている8)。HLA-B51ハプロタイプの頻度がMEWDS患者で正常群の3.5倍高いとの予備的報告もある9)

Wileyら(2022)は、17歳女性がSARS-CoV-2ワクチン接種2日後に両眼性視神経乳頭浮腫とMEWDS様の白点病変を発症し、髄液検査で開放圧55cmH2O、白血球数48細胞/μLのぶどう膜髄膜症候群を呈した症例を報告した6)。急性後部多発性斑状色素上皮症ではぶどう膜髄膜症候群の合併が知られるが、MEWDSでの報告はこれが初めてである。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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COVID-19パンデミック期(2020年3月〜2023年3月)にMEWDSの発生率が有意に増加したことが報告されている3)

Chenら(2024)は、COVID-19感染後に発症したMEWDS 7例を文献的にレビューし、平均年齢38.4歳、女性5例、平均感染-発症間隔29.6日であったことを報告した3)。2例(29%)が両眼性、5例(71%)が治療を受けており、COVID-19関連例では不完全な視力回復や治療介入の必要性が通常例より高い可能性を示唆した。

COVID-19ワクチン関連MEWDSについては27例の系統的レビューがあり、中央値年齢34.1歳、女性優位、接種から発症まで中央値14.7日であった3)。mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech)が最多であった。

Ramirez Marquezら(2022)は、HPVワクチン・髄膜炎菌ワクチン同時接種後にMEWDSを発症し、その後COVID-19感染およびBNT162b2ワクチン接種を経て対側眼に2回の再発を呈した17歳女性を報告した8)。回復期には褐色の網膜下病変が出現し、減弱したellipsoid zoneがRPEと異なる色調を呈した可能性が示唆された。

Yasudaら(2022)は、BNT162b2 mRNAワクチン2回目接種翌日にMEWDSを発症した67歳日本人女性を報告した5)。中等度の硝子体炎(1+ヘイズ、2+細胞)を伴い、視力は0.2まで低下したが、無治療で0.8まで回復した。通常より高齢かつ強い炎症を呈する非典型例であった。

Wangら(2022)は、75歳男性でウイルス前駆症状も白点もなく、マルチモーダルイメージングで典型的MEWDS所見を呈した症例を報告した7)。COVID-19ワクチン接種1週間後に発症し、3ヶ月後に視力は20/25まで回復した。

Shepherdら(2022)は、9歳女児のMEWDS症例を報告し、文献上最年少の報告例とした10)。感冒様前駆症状に続いて左眼の片眼性発症を呈し、数週間で自然軽快した。


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