定義
原因:胎生期の硝子体動脈を囲むグリア組織の退縮不全
別名:乳頭上膜(epipapillary veil)
初報告:1877年、Otto Bergmeister(オーストリア)

ベルグマイスター乳頭(Bergmeister papilla)は、胎生期の硝子体動脈(hyaloid artery)を囲むグリア組織が出生後も退縮せずに残存した先天所見である。1877年にオーストリアの眼科医Otto Bergmeisterが初めて報告した。乳頭上膜(epipapillary veil)とも呼ばれる。
胎児血管系遺残(persistent fetal vasculature; PFV)の一つであり、硝子体動脈後部遺残として分類される。PFVのスペクトラムには、Mittendorf小点(水晶体後面の遺残)、硝子体動脈遺残、瞳孔膜遺残、第1次硝子体過形成遺残なども含まれる。
硝子体動脈は通常、出生前に退縮して消失する。退縮が不完全な場合、視神経乳頭上にグリア組織の鞘が残存してベルグマイスター乳頭を形成する。自覚症状を伴わないことがほとんどであり、偶然の眼底検査で発見されることが多い。
定義
原因:胎生期の硝子体動脈を囲むグリア組織の退縮不全
別名:乳頭上膜(epipapillary veil)
初報告:1877年、Otto Bergmeister(オーストリア)
分類
上位概念:胎児血管系遺残(PFV)
分類:硝子体動脈後部遺残
関連病型:Mittendorf小点、硝子体動脈遺残、Cloquet管
予後
自然経過:多くは無症状で安定
治療:合併症なければ不要
稀な例外:乳頭前血管ループ血栓による合併症
PFVの中では比較的よく見られる先天所見である。関連するMittendorf小点は正常者の1〜2%に認められる。軽微なグリア組織の残存はしばしば無症状のまま偶然に発見される。
通常は無症状で、視力検査や眼底検査の機会に偶然発見される。視力への影響は、網膜や黄斑への二次的な関与の有無による。
稀な合併症として、硝子体嚢腫が形成された場合には飛蚊症と一過性の視力低下を生じることがある。
視神経乳頭の前方・中心部または鼻側から突出する膜状のグリア組織として観察される。片側性・両側性どちらの場合もある。視神経乳頭陥凹の見かけの大きさに影響を与えることがある。
網膜血管によって血管化されていることがあり、この場合は乳頭前血管ループ(prepapillary vascular loop)として観察される。
通常は視力に影響しない。乳頭前血管ループの血栓形成によるBRAO・BRVOや、硝子体嚢腫による飛蚊症・一過性視力低下が稀に報告されている。いずれも稀な合併症であり、大多数は視力障害を来さない。
ベルグマイスター乳頭の原因は、胎生期の硝子体動脈の退縮不完全である。
硝子体動脈は胎生4週末に内頸動脈から背側・腹側眼動脈を経て分岐し、胎生裂を通って第1次硝子体中に進入する。水晶体後面に達して硝子体固有血管板を形成し、発生中の眼への栄養供給を担う。胎生6週から第2次硝子体が網膜側から形成を開始すると、第1次硝子体は硝子体腔の中央部に押しやられていく。
硝子体動脈は胎生6か月頃に機能を失い、妊娠30週頃にCloquet管へ変化し、出生前に退縮消失するのが正常な経過である。視神経乳頭上のグリア組織がこの退縮過程を経ずに残存したものがベルグマイスター乳頭である。
細胞のアポトーシスを誘導する遺伝子の欠損がPFV全体の発症に関与すると推測されている。早産児に多いが正期産児にも見られる。
PFVのスペクトラムを以下に示す。
| 病型 | 部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| Mittendorf小点 | 水晶体後面 | 正常者の1〜2% |
| Bergmeister乳頭 | 視神経乳頭上 | グリア組織の残存 |
| 硝子体動脈遺残 | 硝子体腔内 | まれに出血の原因 |

ベルグマイスター乳頭の診断は、眼底検査を基本とし、必要に応じてOCTや蛍光眼底造影(FA)を組み合わせる。
主な検査法を以下に示す。
| 検査法 | 役割 | 備考 |
|---|---|---|
| 眼底検査 | 肉眼的確認 | 初回スクリーニング |
| OCT | 詳細な構造描出 | 確定診断に有用 |
| FA | 血管化の評価 | 血管ループの検出 |
最重要鑑別は退行した視神経乳頭新生血管(NVD)である。
PFV重症型(かつてPHPVと呼ばれた)との鑑別が問題となるのは、白色瞳孔を呈する場合である。この際には網膜芽細胞腫との鑑別が必要となり、FA・網膜電図・超音波・CT・MRIが診断に有用である。
ベルグマイスター乳頭は先天性のグリア組織であり、血管疾患や炎症の所見を伴わない。乳頭新生血管は虚血や炎症に随伴して後天的に生じる。FAで血管化の有無・蛍光漏出パターンを確認することが鑑別に有用である。
合併症を伴わないベルグマイスター乳頭に対しては治療を要しない。定期的な経過観察のみで対応可能であり、大多数で予後良好である。
乳頭前血管ループの血栓形成による合併症(BRAO、BRVO、硝子体出血など)が生じた場合は、それぞれの病態に応じた治療を行う。硝子体嚢腫が飛蚊症や視力低下の原因となっている場合も、症状の程度に応じて対応を検討する。
合併症がなければ治療不要である。大多数で予後良好であり、定期的な経過観察で十分な場合がほとんどである。乳頭前血管ループ血栓などの稀な合併症が生じた場合にのみ、その病態に応じた治療を行う。
ベルグマイスター乳頭の発症機序は、胎生期における硝子体動脈の正常退縮過程の不完全な遂行にある。
形成期(胎生4〜6週)
硝子体動脈の分岐:内頸動脈→背側・腹側眼動脈を経て硝子体動脈が形成される。
第1次硝子体への進入:動脈は胎生裂を通り第1次硝子体中に進入し、水晶体後面に達して硝子体固有血管板を形成する。
グリア組織の形成:視神経乳頭上の動脈をグリア組織が囲む。
退縮期(胎生13週〜後期)
第2次硝子体の形成:胎生6週より網膜側から第2次硝子体が形成開始。第1次硝子体はCloquet管に限局していく。
退縮の開始:硝子体動脈は胎生13〜15週より退縮を開始し、胎生6か月頃に機能を喪失する。
Cloquet管への変化:妊娠30週頃に残存する管腔がCloquet管として形成される。
出生時の残存パターン
正常:硝子体動脈が完全に消失し、Cloquet管のみ残存する。
Bergmeister乳頭:視神経乳頭上のグリア鞘が退縮せず残存する。
Mittendorf小点:水晶体後面に動脈前端の付着痕が残存する(正常者の1〜2%)。
胎生9週以降には微細な線維が出現して無細胞性の網工構造(第2次硝子体)が形成される。第2次硝子体が増加するにつれ、第1次硝子体とその内部の硝子体動脈はCloquet管として硝子体腔中軸部に限局していく。硝子体動脈は胎生5〜6週に最も発達し、13〜15週より退縮を開始、後期には消退するのが正常経過である。
退縮が不完全な場合、視神経乳頭上のグリア鞘がそのまま残存してベルグマイスター乳頭を形成する。細胞のアポトーシスを誘導する遺伝子の欠損がこの退縮不全に関与すると推測されている。