小さいチャート
麻痺筋のある眼:緑レンズを装用した側の眼に麻痺がある。
最大制限:麻痺筋の作用方向に最も縮小する。格子から最も離れた部位の作用筋が麻痺筋である。
内画の縮小:通常より小さい内画は筋の機能不全を示す。

ヘス試験(Hess test)は、外眼筋の機能不全(underaction)または過動(overaction)の程度を記録するために用いられる検査法である。注視方向によって眼位のずれが変化する非共同性斜視(incomitant strabismus)の評価・モニタリングに適している。
ヘスチャートと注視野検査の主な意義は、眼球運動障害や複視の程度を「記録」することにある。他の眼科検査と異なり、この検査で初めて異常が検出されたり確定診断に至ることは少ない。視診による眼球運動検査のほうが得られる情報量は多いが、障害の程度を客観的に記録し経時変化を追跡する点においてヘス試験は優れている。
非共同性斜視は以下のような原因で生じる。
麻痺性の眼球運動障害や複視があり、その程度や経時変化を客観的に記録したい場合に行われる。眼窩底骨折・外転神経麻痺・甲状腺眼症の運動障害記録や、麻痺性斜視の術前術後の評価にも用いられる。
ヘスチャートは、異なる注視方向における眼筋機能と偏位をグラフィカルに表現する。解釈の第一歩はチャート中心点(第1眼位)の偏位の確認であり、これにより斜視のタイプと大きさの初期評価が可能となる。
小さいチャート
麻痺筋のある眼:緑レンズを装用した側の眼に麻痺がある。
最大制限:麻痺筋の作用方向に最も縮小する。格子から最も離れた部位の作用筋が麻痺筋である。
内画の縮小:通常より小さい内画は筋の機能不全を示す。
大きいチャート
対側共同筋の過動:麻痺筋の対側にある共同筋(yoke muscle)が過動している眼を示す。
最大進展:過動共同筋の作用方向に最も拡大する。
外画の拡大:通常より大きい外画は筋の過動を示唆する。
小さい方のチャートが麻痺筋のある眼(患眼)を示し、その中で最も縮小した方向が麻痺筋の作用方向である。大きい方のチャートは対側の共同筋(配偶筋)が過動している眼を示す。
ヘス試験は中心窩投影(foveal projection)に依拠し、「混同(confusion)」の原理に基づいている。この原理は「複視(diplopia)」とは異なる概念である。
複視
二重視:眼位のずれにより、単一の物体が2つの像として認識される状態。
一つの対象物から両眼に異なる像が投影されることで生じる。
混同
像の重畳:両眼の対応点(通常は中心窩)が同時に刺激され、2つの異なる物体が重なって見える現象。
ヘス試験はこの混同を利用して眼位偏位を評価する。
ヘス試験では、赤緑眼鏡のような解離ツール(dissociative tools)を用いて人工的に混同を作り出す。赤レンズを固視眼の前に、緑レンズを検査眼(非固視眼)の前に配置し、固視眼で見ている像と非固視眼で見ている像を重ね合わせるために必要な非固視眼の位置を記録する。
複視は眼位のずれにより一つの物体が二重に見える状態である。一方、混同は両眼の対応点(中心窩)が刺激されることで、2つの異なる物体が重なって見える現象である。ヘス試験はこの混同の原理を利用して眼位偏位を測定する。
ヘススクリーンは、濃いグレーの背景に市松模様が描かれたタンジェントスクリーンである。25個の赤色光が個別に制御され、診断眼位方向を表す。グリッドは内画(中心から15°)と外画(中心から30°)で構成され、格子1つが眼球回転の5°に相当する。
筋続発症とは、非共同性斜視において発症後に順次現れる筋肉の過動と機能不全のパターンである。シェリントン(Sherrington)の相反神経支配の法則とヘーリング(Hering)の等量神経支配の法則に基づく。
筋続発症の発現順序は以下の通りである。
| 順序 | 変化 | 法則 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 対側共同筋の過動 | ヘーリングの法則 |
| 第2段階 | 同側拮抗筋の過動 | シェリントンの法則 |
| 第3段階 | 対側拮抗筋の機能不全 | 両法則の複合 |
筋続発症が見られない場合は発症間もない麻痺を示唆する。筋続発症が存在する場合は長期にわたる陳旧性の麻痺を意味し、その範囲が広いほど慢性的である可能性が高い。
多形性松果体細胞腫(pleomorphic pineocytoma)の脳神経外科手術後に右第IV脳神経麻痺(滑車神経麻痺)を発症した66歳男性の症例が報告されている。
すべての筋続発症が出現しており、陳旧性麻痺であることが示唆された。
ヘス試験にはいくつかの限界がある。
近年、アイトラッカー(eye tracker)デバイスなどの技術進歩により、患者や検者の要因に左右されにくい、より客観的で正確な評価が可能な代替手段も登場している。
赤緑色覚異常がある場合、従来の赤緑眼鏡を用いたヘス試験は正確に施行できない。代替として、両面鏡を使用するリーズチャート(Lees chart)の使用が検討される。