この疾患の要点
フォトスクリーニングはカメラで小児の赤色反射を撮影し、弱視 危険因子を検出する視機能スクリーニング法である。
弱視の有病率は日本で約0.58%であり、早期発見・治療により良好な転帰が得られる。
3〜5歳児だけでなく、言語習得前の乳幼児や非言語的コミュニケーション児にも有用である。
2023年度時点で全国自治体の85.3%が3歳児健診に屈折 検査を導入している。
主な機器にはplusoptiX、Spot Vision Screener、iScreenなどがあり、赤外線やアプリベースの新世代機器も登場している。
スクリーニング陽性の場合は確定診断ではなく、小児眼科医による調節麻痺下検査への紹介が必要である。
フォトスクリーニング(photoscreening)は、カメラを用いて無散瞳 下の小児の眼画像を撮影し、フラッシュ後の赤色反射(red reflex)の三日月状反射の形態から屈折異常を推定する視機能スクリーニング法である。弱視危険因子(amblyopia risk factors)の有無を判定し、陽性の場合は小児眼科医による調節麻痺下検査への紹介が推奨される。
1979年 :Kaakinenが偏心フォトスクリーニングを初報告1)
1983年 :Otagoフォトスクリーナー(35mm一眼レフ+リング状光源)の開発
1990年 :MaslinとHopeが改良型を報告。35mmフィルム使用、90度離れた2つの軸外線状フラッシュを同時発光2)
1992年 :FreedmanとPressmanがEyecorカメラ(ポラロイドベース)を報告。即時画像評価が可能となった3)
1995年 :MTIフォトスクリーナーとして製品化4)
2016年 :米国小児科学会(AAP)が機器を用いた視機能スクリーニングを承認する政策声明を発表5)
2015年 :海外から「フォトスクリーナー」が輸入され、弱視発見率(約2%)が著明に向上した
2022年 :日本眼科医会が「3歳児健診における視覚検査マニュアル」を作成・配布
2023年度 :全国1,741自治体のうち85.3%で屈折検査を導入。国の半額補助が開始された
2023年度 :母子健康手帳に屈折検査項目が追記された
弱視の有病率は海外で0.14〜4.8%、日本では3歳児健診のメタアナリシスで0.58%と報告されている。米国ではアフリカ系1.5%、ヒスパニック2.6%と報告されている。弱視の原因は不同視弱視 が最多で、屈折異常弱視、斜視 弱視、形態覚遮断弱視の順に続く。
Q フォトスクリーニングは何歳から受けられますか?
A 3〜5歳児を主な対象とするが、言語習得前の3歳未満の乳幼児にも使用可能である。赤外線ビデオレフラクトメーターでは生後6か月から使用できる機器もある。
フォトスクリーニングの対象は弱視危険因子を有する小児である。弱視は一般に自覚症状に乏しく、幼児自身が視力 低下を訴えることは稀である。このため、スクリーニングによる早期発見が重要となる。
正常所見
両眼対称的な赤色反射 :明るく均一な黄橙色の反射を両眼で認める8) 。
反射色の個体差 :脈絡膜 色素により人種間で色調が異なるが、同一個体では左右対称である。
異常所見
混濁・反射減弱 :中間透光体の混濁により反射が暗くなる8) 。
白色・黄色反射 :網膜芽細胞腫 など眼底病変の存在を示唆する8) 。
左右非対称 :不同視を示唆する。強度屈折異常では反射が暗い。
全白内障 :反射なし。部分白内障では黄橙色背景に暗い反射を認める。
赤色反射の評価にはBrückner検査が用いられる。暗室で検影器のレンズパワーを「0」に設定し、45〜75cmの距離から両眼を同時に照明する8) 。散瞳前に実施すべきである8) 。
三日月状反射の方向により屈折異常の種類を推定できる。
屈折異常 三日月反射の方向 遠視 フラッシュ反対側(下方偏位) 近視 フラッシュ同側(上方偏位)
フォトスクリーニングが検出する弱視危険因子は以下の通りである。
屈折異常 :遠視・近視・乱視 ・不同視8)
斜視 :眼位のずれにより片眼の視力発達が阻害される
眼瞼下垂 :視機能に影響する程度のもの
中間透光体混濁 :先天白内障など8)
弱視のリスク因子には以下が報告されている。
不同視 :オッズ比が最も高い弱視危険因子
斜視 :不同視に次ぐリスク
未熟児・発達遅滞 :弱視の発症リスクが高い
一親等の弱視家族歴 :遺伝的素因
環境因子 :妊娠中の喫煙・飲酒との関連が報告されている
視覚の感受性は生後1〜18か月で非常に高く、その後8歳頃まで残存する。正常な視力発達の目安は、1歳で0.1、2歳で0.5、3歳で1.0である。この感受性期間中に弱視危険因子を除去することが、視力発達にとって重要である。
Q 精密検査を勧められたらどうすればよいですか?
A フォトスクリーニングは確定診断ではなく、弱視危険因子のスクリーニングである。陽性と判定された場合は速やかに小児眼科医を受診し、調節麻痺下屈折検査を受けることが推奨される。
iScreen
導入年 :2006年。2011年にiScreen 3000(手持ち型)へ改良6) 。
方式 :90度2軸で高速連続撮影。軸外フラッシュ方式。
特徴 :画像を会社に電子送信し、専門家が解析。一貫した画像判読が得られる。
plusoptiX
導入年 :1995年に市販7) 。
方式 :赤外線3軸。オートレフ値を算出。
特徴 :紹介基準の変更が可能。斜視10度以上で紹介を推奨。
Spot Vision Screener
方式 :手持ち型赤外線。plusoptiXの小型化版。
特徴 :アイトラッキング機能を搭載。光と音で数秒の測定が可能。
GoCheck KIDS
方式 :iPhoneアプリベース。
特徴 :低コストで導入可能。電子カルテ(EHR)連携に対応。
主要機器の特徴を以下に比較する。
機器名 方式 特記事項 iScreen 軸外フラッシュ 遠隔専門家解析 MTI 軸外フラッシュ(ポラロイド) 製造終了 plusoptiX 赤外線ビデオ オートレフ値算出 Spot Vision Screener 赤外線ビデオ 数秒で測定完了
このほか、MTIフォトスクリーナー は1995年に導入されたポラロイドフィルム方式の装置で、90度回転フラッシュにより2枚の連続写真を撮影する4) 。現在は製造終了しているが、一部で使用が継続されている。
**blinq.**は複屈折スキャナーを用いた装置で、弱視そのものを直接検出する方式である。不要な紹介の削減が期待されている。
日本の3歳児健診における視覚スクリーニングは3段階で実施される。
一次検査 :家庭で実施。問診票とLandolt環0.5視標による視力検査
二次検査 :健診会場で実施。全員に屈折検査を行い、問診票・視力再検・医師診察を経て精検勧告を判断
精検基準 :視診異常、斜視、視力0.5未満、屈折異常など
三次検査 :眼科精密検査
Q フォトスクリーニングの結果は正確ですか?
A フォトスクリーニングはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではない。陽性の場合は調節麻痺下屈折検査による精密検査が必要である。
フォトスクリーニング自体は診断ツールであり治療法ではないが、スクリーニングで弱視危険因子が検出された場合の対応を以下に記す。
弱視危険因子が検出された場合は、調節麻痺下屈折検査への紹介が推奨される。調節麻痺薬には以下が使用される。
トロピカミド・フェニレフリン合剤 :日常的な散瞳に用いられる
シクロペントラート :点眼後約60分で効果発現。調節麻痺は24〜48時間持続
アトロピン硫酸塩 :最も強力な調節麻痺薬。精密な屈折検査に用いられる
弱視と診断された場合の標準的治療は以下の通りである。
屈折矯正 :眼鏡処方による屈折異常の矯正が治療の第一歩である
遮閉療法 :健眼を遮閉し、弱視眼の視力向上を促す
フォトスクリーニングの基本原理は赤色反射(red reflex)の評価にある。検影器で瞳孔 に光を照射すると、眼底からの反射光が瞳孔を通じて観察される。正常眼では明るく対称的な黄橙色の反射を呈する。
屈折異常がある場合、瞳孔面での反射光に三日月状の明暗パターンが生じる。
近視 :三日月状反射はフラッシュと同側(上方)に出現8)
遠視 :三日月状反射はフラッシュと反対側(下方)に出現8)
偏心フォトスクリーニングでは、光軸からずらしたフラッシュにより三日月状反射を意図的に生成する1) 。現在使用されている方式は以下の3種に大別される。
軸外フラッシュ方式 (iScreen、MTI):可視光フラッシュを光軸からずらして照射し、三日月状反射を撮影する
赤外線ビデオ方式 (plusoptiX、Spot Vision Screener):赤外線を用いてオートレフ値を算出する。より客観的な屈折値が得られる
複屈折スキャン方式 (blinq.):黄斑 色素の複屈折特性を利用し、固視状態から弱視を直接検出する
Q フォトスクリーニングで近視と遠視はどう区別されますか?
GoCheck KIDSはiPhoneアプリを基盤としたフォトスクリーニングシステムである。従来の専用機器と比較して導入コストが低く、電子カルテとの連携が可能であり、大規模スクリーニングの普及に寄与する可能性がある。
blinq.は複屈折スキャナーを用いて弱視そのものを直接検出する新たなアプローチである。従来のフォトスクリーニングは屈折異常などの「弱視危険因子」を検出する間接的手法であったが、blinq.は弱視の有無を直接判定するため、不要な紹介の削減が期待されている。
1歳6か月健診での活用案 :赤外線ビデオレフラクトメーターは生後6か月から使用可能であり、3歳児健診より早期の導入が検討されている
屈折検査の義務化 :現在85.3%の自治体で導入されているが、全自治体での義務化が今後の課題である
精度管理 :機器の精度管理体制の確立が求められている
Kaakinen K. A simple method for screening of children with strabismus, anisometropia or ametropia by simultaneous photography of the corneal and the fundus reflexes. Acta Ophthalmol (Copenh). 1979;57:161-71.
Maslin K, Hope C. Photoscreening to detect potential amblyopia. Aust N Z J Ophthalmol. 1990;18:313-8.
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American Academy of Ophthalmology. Amblyopia Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
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