視能矯正
斜視の矯正訓練:抑制除去訓練法、異常対応矯正法、眩惑刺激法、残像法などを実施。
弱視の視能矯正:遮閉法やペナリゼーション法による治療を管理。

視能訓練士(orthoptist; ORT)は、視能訓練士法第2条において「厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行うことを業とする者」と定義される。名称独占の国家資格であり、独立した診療提供者ではない。
視能訓練士法の制定から50年以上が経過し、業務内容は大きく変革した。当初は視能矯正に特化していたが、現在ではその業務領域は広範囲に及び、多岐にわたる検査業務が主体となっている。
日本では医師の指示の下に眼科検査と視能矯正を行う医療専門職である。米国では主に小児眼科および神経眼科の領域においてミッドレベル・プロバイダー(医師と看護師等の中間に位置する高度な医療従事者)として機能する。米国医師会(AMA)に認められた職種であり、診療看護師(NP)や医師助手(PA)と同様の形態で眼科医の傍らで勤務する。
オプトメトリスト(optometrist)とは異なり、視能訓練士は独立した診療提供者ではない。また、教育背景や公式なトレーニングの期間・複雑さにおいて眼科テクニシャンとも異なる。
視能訓練士は医師の指示の下で両眼視機能の矯正訓練と眼科検査を行う医療専門職であり、独立した診療提供者ではない。一方、オプトメトリストは独立して眼科診療を行うことができる点が大きく異なる。
日本における視能訓練士の業務は、大きく4分野に分類される。
視能矯正
斜視の矯正訓練:抑制除去訓練法、異常対応矯正法、眩惑刺激法、残像法などを実施。
弱視の視能矯正:遮閉法やペナリゼーション法による治療を管理。
視機能検査
多岐にわたる検査:視力検査、眼圧検査、視野検査、OCT、角膜内皮検査など幅広い検査を実施。
眼位・眼球運動検査:眼位検査、輻湊検査、AC/A比測定、固視検査などを担当。
健診・検診
3歳児健診:弱視や斜視の早期発見を目的とした視機能スクリーニングを実施。
成人検診:緑内障スクリーニングなどの公的検診業務に従事。
ロービジョンケア
補助具の選定:拡大鏡や遮光眼鏡などの補助具を選定し、使用方法を指導。
生活支援:残存視機能を最大限に活用するための支援を行う。
視能訓練士が実施する検査は、入力系・統合系・出力系に分類される。
検査・訓練以外にも、以下の業務を担当する。
視力検査や眼圧検査をはじめ、OCT、視野検査、眼位検査、両眼視機能検査など、眼科で行われる大部分の検査を担当する。入力系・統合系・出力系の各領域にわたり、幅広い検査業務を遂行する。
視能訓練士の業務は視能訓練士法により規定されている。
業務は医師の指示のレベルにより区分される。
| 指示レベル | 矯正訓練 | 検査 |
|---|---|---|
| 具体的指示が必要 | 抑制除去訓練法、異常対応矯正法、眩惑刺激法、残像法 | 散瞳薬の使用、眼底写真撮影、網膜電図検査、眼球電図検査、眼振電図検査、視覚誘発脳波検査 |
| 医師の指示で実施可能 | 上記以外の矯正訓練 | 上記以外の眼科検査 |
なお、涙道通水通色素検査(色素を点眼するものを除く)は厚生労働省令により禁止されている。
視能訓練士法第3条により、視能訓練士国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要がある。合格者は視能訓練士名簿に登録され、免許証が交付される。
散瞳薬の使用、眼底写真撮影、網膜電図検査、眼球電図検査、眼振電図検査、視覚誘発脳波検査は、医師の具体的指示が必要である。また、涙道通水通色素検査(色素を点眼するものを除く)は実施が禁止されている。
視能訓練士になるには、視能訓練士国家試験に合格しなければならない。受験資格を得るためには、指定された養成施設(大学または専門学校)で所定の課程を修了する必要がある。
米国ではアメリカ視能訓練士評議会(AOC: American Orthoptic Council)が教育の要件策定、プログラムの認定、試験・認定、再認定を管轄している。
教育・認定の要件は以下のとおりである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入学要件 | 学士号(baccalaureate degree) |
| 養成期間 | AOC認定プログラムで24ヶ月 |
| 提携先 | ほとんどがACGME認定医科大学 |
| 認定試験 | 筆記試験および口頭・実技試験 |
| 再認定 | 3年ごと(継続教育の証明が必要) |
AOCは、米国眼科学会(AAO)、米国小児眼科斜視学会(AAPOS)、アメリカ認定視能訓練士協会(AACO)、米国眼科学会(AOS)、カナダ視能訓練士協会およびカナダ視能訓練士評議会の代表者で構成されている。
認定視能訓練士はAOCの倫理規定に拘束される。この規定は、視能訓練サービスが眼科医の全体的な監督下でのみ提供されることを求めている。
視能訓練士の勤務形態は多様である。日本では病院、クリニック、個人診療所、学術医療機関などで勤務する。米国では以下のような形態が報告されている。
視能訓練士の雇用は診療所に対して正の経済的効果をもたらす。フルタイム視能訓練士1人を診療所に加えることで、患者数が40%増加し、手術件数の増加にもつながるとされる。ケアの質向上と収益増加を両立できる。
給与体系は教育水準と経験に応じて設定される。確立された給与体系がない場合、同等の地位にある診療看護師(NP)の給与スケールに準じることがある。
フルタイム1人の追加で患者数が約40%増加し、手術件数の増加にもつながる。ケアの質を向上させながら、医師が診察できる患者数を増やすことで収益にも貢献する。
医師の働き方改革の実現に伴い、各医療職種の専門性を活かしたタスクシフト(業務の移管)のみならず、医療職種間のタスクシェア(業務の共同実施)が推進されている。
地域包括ケアシステムの構築に伴い、訪問診療や介護施設などにおいて医師とともに、あるいは医師の包括的指示の下で高齢者の視機能管理を行うことが望まれている。今後は眼科診療での役割を核として、保健・介護・福祉の領域での業務を拡大し、国民の眼の健康維持に貢献することが期待されている。