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小児眼科・斜視

マイコプラズマ誘発性発疹および粘膜炎(MIRM)

1. マイコプラズマ誘発性発疹および粘膜炎(MIRM)とは

Section titled “1. マイコプラズマ誘発性発疹および粘膜炎(MIRM)とは”

マイコプラズマ誘発性発疹および粘膜炎(Mycoplasma-Induced Rash and Mucositis: MIRM)は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)感染に伴う肺外症状の一つである。従来、本疾患に伴う粘膜皮膚発疹は多形紅斑(EM)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)のスペクトラム内で分類されていた。しかし、Canavanらによる大規模な系統的レビューにより、MIRMは独立した疾患単位として分離された。

肺炎マイコプラズマは小児の市中肺炎の重要な原因であり、最大25%の患者に肺外症状が現れる。その中で最も一般的な肺外症状が、MIRMのような粘膜皮膚病変である。小児ではマイコプラズマ感染がSJS発症に先行することも多いとされる。

系統的レビューによると、MIRM患者の66%が男性で、平均年齢は11.9歳である。82%に眼所見が認められる。

以下にMIRM、多形紅斑、SJS/TENの主な比較特徴を示す。

特徴MIRM多形紅斑(EM)SJS/TEN
誘因肺炎マイコプラズマ単純ヘルペスウイルス薬剤
患者層若年男性若年男性成人
眼疾患頻度82%5〜23%50〜88%
死亡率3〜4%0〜6%25〜30%
Q MIRMとスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)はどう違うのか?
A

MIRMは肺炎マイコプラズマが誘因であるのに対し、SJSは主に薬剤誘発性である。MIRMは若年者に好発し、粘膜病変が主体で皮膚病変は軽微であるのに対し、SJS/TENでは広範な表皮剥離を伴いうる。死亡率もMIRM(3〜4%)はSJS/TEN(25〜30%)と比較して大幅に低い。

粘膜皮膚発疹の発現の約1週間前に、以下の前駆症状が現れる。

  • 発熱:感冒様の発熱が先行する。
  • 倦怠感:全身の倦怠感を伴う。
  • 咳嗽:肺炎マイコプラズマ感染に伴う咳嗽がみられる。

眼症状としては以下が含まれる。

  • 充血:両眼性の結膜充血を呈する。
  • 流涙:粘膜炎に伴い涙液分泌が増加する。
  • 羞明:光に対する過敏性がみられる。
  • 霧視:視力の一時的な低下を自覚することがある。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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MIRMは顕著な粘膜炎を特徴とし、通常、平均2.5箇所の粘膜部位が侵される。最も一般的には眼と口腔が侵される。

  • 両眼性結膜炎:結膜浮腫(chemosis)を伴わない点が特徴的である。角膜への影響は極めて稀である。
  • 粘液性分泌物:粘液性の眼脂を認める。
  • 結膜上皮欠損フルオレセイン染色で確認される。
  • 眼瞼縁の充血・染色:眼瞼粘膜皮膚移行部の変化を認める。
  • 偽膜:結膜に偽膜(pseudomembranes)を形成する場合がある。
  • 口腔粘膜病変:水疱性病変や広範なびらんがほぼ常に認められる。
  • 皮膚発疹:散在性の水疱や標的状発疹を認めるが、軽微にとどまる。
  • MIRM sine rash:皮膚病変を伴わない亜型も報告されている。
Q MIRMの眼症状はSJS/TENと比べて軽いのか?
A

MIRMでは結膜浮腫を伴わない両眼性結膜炎が一般的であり、角膜への影響は極めて稀である。一方、SJS/TENでは眼合併症頻度が約70%に達し、角膜上皮欠損・偽膜形成・角膜混濁など重篤な後遺症をきたしうる。MIRMの眼科的後遺症は症例の8.9%にとどまる。

MIRMの原因は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の感染である。肺炎マイコプラズマは皮膚・呼吸器感染症、肺炎、気管支炎、発熱を伴う上気道感染症の一般的な原因菌である。

  • 好発年齢・性別:若年男性に好発する。患者の66%が男性で、平均年齢は11.9歳である。
  • 肺外症状:肺炎マイコプラズマ感染者の最大25%に肺外症状が現れ、MIRMはその中で最も一般的な粘膜皮膚病変である。
  • 再発率:再発は稀であり、約8%にとどまる。

MIRMの診断は、臨床所見と検査所見の組み合わせにより行われる。高い臨床的疑いを持つことが重要である。

Canavanらが提案した典型的なMIRMの診断基準は以下の通りである。

  • 表皮剥離:体表面積(BSA)の10%未満
  • 粘膜部位:2箇所以上の関与
  • 皮膚所見:少数の水疱性病変、または散在する非定型的標的状病変
  • 非定型肺炎の所見:発熱、咳嗽、聴診上または画像上の所見
  • 検査所見:肺炎マイコプラズマIgM抗体の上昇、中咽頭または水疱のPCR陽性、寒冷凝集素の上昇

肺炎マイコプラズマの検出には以下の検査法がある。

  • 分離培養:確定診断に有用だが、培養に時間を要する。
  • PCR:中咽頭・水疱検体からの迅速な遺伝子検出が可能である。
  • 血清学的検査:IgM抗体陽性は最近の感染を示唆するが、数ヶ月間高値が持続しうる。急性期と回復期のペア血清でIgMの陰→陽転化、またはIgGの4倍以上上昇がより正確な診断につながる。
  • 補体結合反応:従来からの検査法として用いられる。

入院環境での前眼部評価には以下を使用する。

  • 倒像鏡、20ディオプターレンズ
  • フルオレセイン染色およびコバルトブルー光源
  • 角膜・結膜(球結膜・眼瞼結膜)・眼瞼の徹底的な評価
  • 上皮剥離の有無のフルオレセイン染色による確認

皮膚科・泌尿器科との連携も重要である。

MIRMは主に小児に発症するため、以下の疾患との鑑別が必要である。

鑑別疾患主な鑑別ポイント
SJS/TEN薬剤誘発性、広範な表皮剥離
多形紅斑(EM)単純ヘルペスウイルス誘発性、肢端の標的状病変
川崎病冠動脈病変、5日以上の発熱
水痘帯状疱疹水痘ウイルス、多形性の皮疹
ウイルス性発疹症各種ウイルスの全身発疹

日本におけるSJSの診断基準では、皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変、びらんまたは水疱がBSA 10%未満、38℃以上の発熱の3項目を必須所見とする。SJS/TENの眼合併症頻度は約70%とされる。

Q MIRMの診断にはどのような検査が必要か?
A

肺炎マイコプラズマの感染を証明するために、IgM抗体検査・PCR・ペア血清によるIgGの4倍以上上昇の確認が有用である。臨床的には表皮剥離がBSA 10%未満で2箇所以上の粘膜病変を認め、非定型肺炎の所見を伴う場合にMIRMを疑う。

現在、MIRM患者に対する標準的な治療プロトコルは確立されていない。しかし、臨床像が類似していることから、SJS治療ガイドラインに準じた治療が行われる。基礎疾患である肺炎マイコプラズマに対する全身治療が極めて重要である。

Gregoryの分類では、結膜および角膜の上皮剥離の部位と範囲に基づき重症度を判定する1)。重症の基準は以下の通りである。

  • 眼瞼縁の1/3以上の関与
  • 球結膜の直径10mm以上の関与(角膜の点状染色以上の有無を問わない)

重症以上の場合、局所療法に加えて羊膜移植術(AMT)が必要となる1)

SJS治療プロトコルに従った局所療法は以下の通りである。

  • 抗菌薬点眼:1日4回。感染予防を目的とする。
  • シクロスポリン0.05%点眼:1日2回。免疫調節を目的とする。
  • ステロイド点眼:1日2回。消炎を目的とする。
  • 眼瞼縁への軟膏:抗菌薬またはステロイド混合軟膏を1日2〜4回塗布する。

急性期治療

全身治療:肺炎マイコプラズマに対する抗菌薬投与

ステロイドパルス療法:全身的ステロイド投与による眼表面の消炎

局所療法:抗菌薬・ステロイド・シクロスポリン点眼

羊膜移植術:重症例では上皮剥離から7〜10日以内に施行

慢性期治療

ドライアイ管理:人工涙液頻回点眼、レバミピド点眼、涙点プラグ

睫毛乱生対策:定期的な抜去、眼形成手術

低濃度ステロイド点眼:慢性炎症の抑制、瘢痕性変化の進行防止

角膜混濁への対応:培養粘膜上皮移植術、輪部支持型ハードコンタクトレンズ

日本の教科書によれば、SJS/TENの急性期治療においては全身的ステロイドパルス療法に加えて、眼局所のステロイド点眼薬の頻回投与が必要である。急性期に十分な消炎を行い角膜上皮幹細胞を温存できるか否かが、その後の角膜の透明性および視力予後に大きく影響する。

慢性期には以下の眼表面管理が重要となる。

  • ドライアイ:人工涙液の頻回点眼に加え、ムチン産生亢進および抗炎症作用を有するレバミピド点眼が有効である。涙点プラグも適応となる。
  • 睫毛乱生:眼表面状態を悪化させる要因であり、定期的な抜去が必要である。睫毛根を切除する眼形成手術も開発されている。
  • 慢性炎症:低濃度ステロイド点眼により炎症を抑制し、瘢痕性変化の進行を防止する。
  • 視力障害:角膜への結膜組織侵入による視力障害に対しては、培養粘膜上皮移植術や輪部支持型ハードコンタクトレンズが選択肢となる。

重症例に対する羊膜移植術(AMT)が主体である。上皮剥離の発現から7〜10日以内にAMTを施行すべきであり、これを超えると有効性が低下する。

Q MIRMで羊膜移植が必要になるのはどのような場合か?
A

Gregoryの分類で重症以上、すなわち眼瞼縁の1/3以上の関与、または球結膜の直径10mm以上の関与がある場合に、局所療法に加えて羊膜移植術(AMT)が適応となる1)。上皮剥離から7〜10日以内の施行が推奨される。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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MIRMの正確な病態生理は完全には解明されていない。以下の2つの機序が提唱されている。

MIRM(免疫複合体型)

ポリクローナルB細胞増殖:マイコプラズマ感染によりB細胞が非特異的に活性化される。

免疫複合体の沈着:抗体産生に続き免疫複合体が組織に沈着する。

補体活性化:沈着した免疫複合体が補体系を活性化し皮膚損傷を引き起こす。

分子模倣:マイコプラズマのP1接着分子と宿主角化細胞との間の分子模倣も関与する可能性がある。

EM/SJS型(細胞傷害型)

パーフォリン/グランザイム経路:細胞傷害性T細胞による直接的な角化細胞障害。

Fasリガンドアポトーシス誘導による角化細胞壊死1)

グラニュライシン:顆粒球由来の細胞傷害性分子の関与。

IV型遅延型過敏反応:従来から提唱されている遅延型過敏反応機序1)

MIRMとEM/SJS型では病態生理が異なるため、臨床像や予後にも差異が生じると考えられている。MIRMの免疫複合体型の機序は、SJS/TENにおける細胞傷害型の機序と比較して、組織障害がより限局的であることを説明しうる。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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MIRMの眼科的予後はSJS/TENと比較して良好であることが示されている。系統的レビューでは、MIRMの眼科的後遺症(角膜潰瘍、結膜収縮、失明、癒着、ドライアイ、睫毛脱落など)は症例のわずか8.9%にとどまった。

最近の症例シリーズでは、適切な局所治療により、ほとんどの患者が矯正視力(BCVA)20/25(0.8相当)以上に回復し、眼瞼縁の瘢痕が残ったのは1例のみであった。

SJS/TENにおける治療プロトコルの応用

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Shanbhagら(2019)は、SJS/TENに対する重症度分類に基づく治療プロトコルの長期効果を報告した。厳格な重症度分類に基づく治療を行った群では、非厳格な治療群と比較して長期合併症が有意に少なかった。また、9/10の超重症例において早期AMTにより最終BCVAが20/20に達した1)

MIRMに特化した大規模前向き研究やランダム化比較試験は現時点では存在せず、最適な治療プロトコルの確立が今後の課題である。SJS/TENの治療プロトコルをMIRMに応用する際の有効性と安全性についてのさらなる検証が求められる。


  1. Shanbhag SS, Rashad R, Chodosh J, et al. Long-Term Effect of a Treatment Protocol for Acute Ocular Involvement in Stevens-Johnson Syndrome/Toxic Epidermal Necrolysis. Am J Ophthalmol 2019;208:331-41.
  2. Gonçalves R, Gata L, Brett A. Mycoplasma pneumoniae-associated mucositis. BMJ Case Rep. 2021;14(4):e239086.
  3. Silva KR, Giaccio RS, Aquino BM, et al. Mucocutaneous disease: a child with extrapulmonary manifestation of mycoplasma infection. einstein (São Paulo). 2025;23:eRC1138.
  4. Song A, Nicholson C, Maguiness S. Recurrent reactive infectious mucocutaneous eruption (RIME) in two adolescents triggered by several distinct pathogens including SARS-CoV-2 and influenza A. Pediatr Dermatol. 2021;38:1222-1225.
  5. Jain H, Singh G, Endy T. Mycoplasma pneumoniae-Induced Rash and Mucositis (MIRM) Mimicking Behçet’s Disease and Paraneoplastic Pemphigus (PNP). Case Rep Infect Dis. 2022;2022:1013922.

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