眼軸長16mm以上
眼窩成長:正常に近い可能性が高い。
拡張療法の時期:社会的・審美的ニーズに応じて調整可能。
方法:段階的にサイズを大きくするコンフォーマーの挿入。交換間隔は平均1週間〜1ヶ月ごと。

小眼球症(microphthalmos/microphthalmia)は、眼軸長が年齢平均より2標準偏差(SD)以上短い先天性の眼球発生異常である。成人では眼軸長21mm未満、1歳児では19mm未満が目安となる5)。頻度は1〜3人/1万人のまれな疾患で、根本的な治療法は確立していない。性差はなく、両眼性・片眼性の頻度は同等である。
小眼球症は形態や併発症の有無により以下のように分類される。
Duke-Elderの分類では、(1)真性小眼球(nanophthalmos)、(2)コロボーマに伴う小眼球、(3)眼先天異常に伴う小眼球、(4)全身疾患に伴う小眼球に分類される。また馬嶋の発生病理学的分類では、眼胞発育障害、眼杯形成障害、前眼部間葉異発生、水晶体起因性、硝子体起因性、胎生裂閉鎖不全、眼球壁発育障害の7つに分類されている。
Relhanらの分類では、角膜径11mmを基準としてnanophthalmos(NO)とposterior microphthalmos(PM)を区別する。NOでは角膜径10.06mm、前房深度2.68mm、水晶体厚4.77mmで閉塞隅角緑内障の合併率が69%に達するのに対し、PMでは角膜径11.39mm、前房深度3.20mm、水晶体厚3.93mmで閉塞隅角緑内障の合併率は0%である2)。
推定出生有病率は10,000人あたり0.2〜1.7人であり、地域差がある。小眼球症(microphthalmia)の有病率は約1/7,000、無眼球症(anophthalmia)は約1/30,000と報告されている5)。両側性が多く、両側性の患者は全身疾患を合併している可能性が高い。性別や人種による発症の差はなく、視覚障害児の3〜12%を占める。
小眼球症は解剖学的奇形(コロボーマ、白内障など)を伴うものを指し、真性小眼球は奇形を伴わず眼球全体が均等に小さいものである。真性小眼球は強度遠視と閉塞隅角緑内障のリスクが特に高い。詳細は「原因とリスク要因」の項を参照。
真性小眼球では以下の所見が特徴的である。
nanophthalmos(NO)とposterior microphthalmos(PM)の生体計測の比較を以下に示す。
| 項目 | NO | PM |
|---|---|---|
| 角膜径 | 10.06mm | 11.39mm |
| 前房深度 | 2.68mm | 3.20mm |
| 水晶体厚 | 4.77mm | 3.93mm |
| 閉塞隅角緑内障 | 69% | 0% |
Rajendrababuらの4例の組織学的検討では、nanophthalmos眼の強膜にはコラーゲン線維の不規則配列、fraying(ほつれ)、フィブロネクチンの過剰発現が認められた6)。眼軸長<17mmの症例では強膜層構造の重度崩壊がみられたのに対し、眼軸長>17mmでは層構造が保持されていた6)。
33〜50%が症候性であり、以下の全身異常を合併することがある5)。全身異常の合併は両眼性に多く、日本の調査では中枢神経系異常・発達遅延が13%、多発奇形・症候群が9%、染色体異常が4%と報告されている。
関連する症候群にはCHARGE症候群、Lenz小眼球症症候群4)、Fraser症候群、Lowe症候群、Meckel-Gruber症候群、TORCH症候群(先天感染)、Hallermann-Streiff症候群、oculodentodigital症候群などがある。小児科や遺伝科との連携が不可欠である。
大部分の症例は孤発性であるが、常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖性の遺伝形式が報告されている。小眼球症およびコロボーマに関連する遺伝的形質は100以上同定されている。
主要な原因遺伝子を以下に示す。
| 遺伝形式 | 主な原因遺伝子 |
|---|---|
| 常染色体優性 | SOX2, OTX2, BMP4, CHD7, GDF6, RARB, SHH |
| 常染色体劣性 | PAX6, STRA6, FOXE3, RAX, SMOC1, VSX2 |
| X連鎖性 | BCOR, HCCS, NAA10 |
このうちSOX2とPAX6が主要な原因遺伝子として同定されている。
教科書では症候性・非症候性・コロボーマ併発の3群に分けた詳細な遺伝子分類が示されている。症候性ではBMP4、MAB21L2、OTX2、SOX2(常染色体優性)やSTRA6(常染色体劣性)が、非症候性ではMFRP、PRSS56(常染色体劣性)が、コロボーマ併発ではTENM3(常染色体劣性)やGDF3、GDF6(常染色体優性)がそれぞれ報告されている。
個別の遺伝子変異として以下の報告がある。
13トリソミーや18トリソミーの患者に高頻度でみられる。
大部分は孤発性であるが、常染色体優性(SOX2、OTX2など)、常染色体劣性(PAX6、STRA6など)、X連鎖性(BCOR、HCCSなど)の遺伝形式が報告されている。100以上の関連遺伝子が同定されており、遺伝形式は原因遺伝子により異なる。
胎児の眼窩は妊娠11〜12週までに検出可能である。超音波検査で眼球の長さを測定する。臨床的に疑われる場合は、羊水穿刺による染色体マイクロアレイ解析などの遺伝学的評価が検討される。
78遺伝子MACパネルによる網羅的スクリーニングが用いられる7)。全ゲノムシーケンシング(WGS)はエクソームでは検出困難な変異の同定に有用である3)。
妊娠11〜12週で胎児の眼窩を超音波検査で検出可能であり、眼球の大きさを測定できる。疑わしい場合は羊水穿刺による染色体マイクロアレイ解析で遺伝学的評価を行う。
網膜機能が認められる場合、屈折矯正と弱視治療が最も重要である。真性小眼球では+20Dを超える強度遠視を呈するため、早期からの屈折矯正が不可欠である。小眼球症は強度屈折異常を合併するため、早期より眼鏡の常用を開始して視機能の発達を促すことが大切である。両眼性の軽症例では白内障・緑内障などの合併症を早期に診断し、手術および弱視治療を行う。一般に角膜径6mm以下または左右差の著しい例では視力0.02未満となる。ただし、網膜神経線維層の形成異常を伴う器質的弱視の要素もあるため、正常視力の獲得が難しい例が多い。弱視に対しては遮蔽による訓練を行う。重篤な視覚障害をきたしている例では、乳幼児期からロービジョンケアを開始する必要がある。
小眼球症による眼球容積の減少は顔面および眼窩の正常な発達に影響する。治療戦略は眼軸長を目安に決定する。
眼軸長16mm以上
眼窩成長:正常に近い可能性が高い。
拡張療法の時期:社会的・審美的ニーズに応じて調整可能。
方法:段階的にサイズを大きくするコンフォーマーの挿入。交換間隔は平均1週間〜1ヶ月ごと。
眼軸長16mm未満
眼窩成長:自然な成長は期待しにくい。
拡張療法の時期:成長に伴う非対称性を防ぐため早期に開始する。
方法:コンフォーマーに加え、インプラント・拡張器・真皮脂肪移植が必要。最重症例では眼窩骨切り術を行う。
3歳以降では患児が嫌がって装着が困難になるため、それ以前にコンフォーマーを装着させることが望ましい。
小眼球眼は乳幼児〜若年期に重篤な併発症を起こしやすい。頻度の高い併発症として白内障34%、緑内障13%、網膜剥離7%が報告されている。いずれも難治性であり、視機能を保持するためには生涯にわたる併発症の管理が必要である。
眼球萎縮や角膜混濁を生じた場合は、整容上の問題に対して義眼装用が勧められる。
眼軸長<16mmの重度例では、自然な眼窩成長が期待しにくいため生後数週間以内に開始することが推奨される。眼軸長≧16mmの場合は社会的・審美的ニーズに応じて時期を調整可能である。3歳以降は装着困難になることが多いため、早期の開始が望ましい。
小眼球症は胚発生初期における眼胞、前神経管、または眼窩の不適切な発達に起因する。胎生裂の閉鎖不全があるとコロボーマを合併する。眼杯のサイズ縮小、硝子体内プロテオグリカン変化、低眼圧、異常な成長因子の産生、二次硝子体の産生不足なども寄与するとされる。
真性小眼球では強膜におけるコラーゲンの異常やコンドロイチン硫酸の減少が報告されている。これにより強膜肥厚が生じ、渦静脈流出障害を引き起こし、脈絡膜液貯留から滲出性網膜剥離に至る。
組織学的には、強膜コラーゲン線維の不規則配列・fraying(ほつれ)・フィブロネクチン過剰発現が確認されている6)。眼軸長<17mmの症例では強膜層構造の重度崩壊がみられ、眼軸長>17mmでは層構造が保持される6)。
DeYoungら(2022)は、1歳男児の両眼コロボーマ+右小眼球症例でYAP1のde novo変異(c.178dupG)を全ゲノムシーケンシング(WGS)により同定した3)。この変異はエクソーム解析では検出が困難であり、WGSの有用性が示された。同一変異は父母に認められず、de novo発生であることが確認された。
Gholami Yarahmadiら(2022)は、イラン人男性においてTENM3のホモ接合スプライス部位変異(c.5069-1G>C)を報告した5)。TENM3の既知変異は7変異/6家系であり、本症例は新たな変異の追加報告である。近親婚家系からの報告が多く、常染色体劣性遺伝を裏付けている。
Javidiら(2022)は、近親婚家系の3週齢男児においてSIX6のホモ接合変異(c.1A>G)を78遺伝子MACパネルで同定した7)。角膜径は8.0×8.5/8.5×8.5mm、MRIでの眼軸長は19/17.5mmであった。SIX6変異による小眼球症とコロボーマの合併は本例が初めてである。
Rajendrababuら(2022)は、nanophthalmos 4例(平均眼軸長17.60±1.40mm)で白内障手術+予防的強膜開窓を施行し、摘出した強膜組織を光学顕微鏡で評価した6)。免疫組織化学でフィブロネクチンの過剰発現が確認され、高コストな電子顕微鏡を用いずとも診断が可能であることを示した。IOL度数は36〜54Dであった。
Adeelら(2023)は、MFRP遺伝子関連のPMPRS症例(47歳女性、眼軸長18.37/18.00mm、+10D)を報告した1)。WTW 12.0/12.4mm、網膜電図消失、foveoschisis、強膜脈絡膜肥厚が認められ、MFRP変異の表現型多様性が示された。