承認済み
voretigene neparvovec(Luxturna):RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー(LCA2)に対し、2017年にFDA・EMAが承認した初の眼科遺伝子治療薬である。1) AAVベクターによるサブ網膜投与で施行する。
小児コホートでの効果:Choroideremia(CHM遺伝子変異)に対するAAV遺伝子治療(Phase III)では、小児コホートで視力安定化が報告されている。1)

遺伝性眼疾患(inherited eye disease)は、網膜・視神経・角膜・水晶体など眼のさまざまな構造に影響する疾患群で、多くは遺伝子変異を原因とする。確定診断・遺伝形式の同定・患者家族への情報提供に遺伝子検査が不可欠であり、眼科医の果たす役割は大きい。
遺伝子検査は以下の目的で行われる。
検査には「臨床目的の検査」と「研究ベースの検査」があり、目的・費用・結果の確実性が異なる。
以下の原則が遺伝子検査実施の際の指針となる。
検査結果は次の3種類で返される。
| 結果 | 意味 |
|---|---|
| 陽性 | 疾患の原因となる変異を検出 |
| 陰性 | 対象領域に変異を検出せず |
| VUS(意義不明のバリアント) | 変異と疾患との関連が未確立 |
VUSは専門家による解釈と追加検討が必要であり、そのままでは診断根拠として用いることができない。
VUSは変異と疾患との関連性が現時点では不明な結果であり、「陽性」とも「陰性」とも断定できない。専門の遺伝カウンセラーや眼科遺伝専門医による解釈が必要であり、データベースの更新や追加の家族検査により再分類される場合がある。
眼科臨床で頻用される用語を以下に示す。
主要な遺伝子検査法の概要を以下に示す。
| 検査法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 染色体核型分析 | 染色体数・構造 | 大規模な染色体異常を検出 |
| 染色体マイクロアレイ | DNAコピー数変異 | 高解像度で脈絡膜新生血管を検出 |
| FISH | 特定染色体配列 | 標的プローブで可視化 |
| サンガー法 | 単一遺伝子 | 確実性が高い;少数変異の確認に適する |
| 遺伝子パネル | 複数遺伝子 | 関連遺伝子を一括評価 |
| WES | 全エクソーム | 診断未確定例の網羅的解析 |
| WGS | 全ゲノム | イントロン・調節領域も含む最も包括的な検査 |
| PCR | 短いDNA/RNA配列 | 特定変異の増幅・確認 |
遺伝性眼疾患の診断では、以下の順で段階的に検査を進めることが推奨される。1)
パネル→WES→WGSの段階的アプローチで診断が得られない場合、RNA-seq・長鎖シーケンシング・機能アッセイなどの補完的手法が検討される。1)
エクソーム・ゲノムデータの定期的な再解析により、初回解析時に未同定だった原因変異が新たに検出されることがあり、診断率が最大20%向上するとの報告がある。1)
WESはタンパク質をコードするエクソーム領域(ゲノム全体の約1〜2%)を対象とし、コストが比較的低い。WGSはイントロン・プロモーター・調節領域を含むゲノム全体を解析するため、非コード領域の変異も検出できるが費用・データ量ともに大きい。
一般にパネル検査→WES→WGSの段階的アプローチが推奨される。1) まず疑われる疾患群の関連遺伝子をパネル検査で評価し、診断に至らない場合にWESへ進む。それでも診断困難な場合にWGSが検討される。
変異の臨床的意義を判断するために以下のデータベースが活用される。1)
承認済み
voretigene neparvovec(Luxturna):RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー(LCA2)に対し、2017年にFDA・EMAが承認した初の眼科遺伝子治療薬である。1) AAVベクターによるサブ網膜投与で施行する。
小児コホートでの効果:Choroideremia(CHM遺伝子変異)に対するAAV遺伝子治療(Phase III)では、小児コホートで視力安定化が報告されている。1)
研究・治験段階
Stargardt病(ABCA4変異):Dual AAVベクターおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いた治療がPhase I/IIで進行中。1)
Achromatopsia(CNGA3/CNGB3変異):AAVベクターを用いた遺伝子治療がPhase I/IIで評価中。1)
Usher症候群1B(MYO7A変異):大型遺伝子に対応するDual AAVベクター療法がPhase I/IIで進行中。1)
X連鎖性網膜分離症(RS1変異):AAV8ベクターを用いた治療がPhase I/IIで評価中。1)
眼科領域の遺伝子治療では、AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターが最も使用されるデリバリーシステムである。1) 眼は免疫特権部位であり、低侵襲な局所投与が可能なため、遺伝子治療の主要な標的臓器となっている。
LCA2(RPE65変異による先天性黒内障)に対するvoretigene neparvovecが2017年にFDA・EMAの承認を取得しており、臨床使用が可能である。1) その他のIRD(Stargardt病・Achromatopsia・Usher症候群など)に対する遺伝子治療は現在Phase I〜IIIの段階にある。