コンテンツにスキップ
小児眼科・斜視

外斜視

外斜視は片眼が外側に偏位した眼位ずれの総称である。偏位が恒常性か間欠性か、交代性か片眼性かによってさらに分類される。間欠性外斜視は斜視の中で最も発症頻度が高い。小学生の約0.14%に認められ、発症は幼児期〜8歳が多く、3〜4歳が最多である。

間欠性外斜視(IXT)

基礎型:遠近の斜視角差が10PD以内。最も一般的な型。

開散過多型:遠見>近見10PD以上。真の開散過多型は全IXTの5〜7.2%と希少2)。見かけ型(30分遮閉/+3D負荷で近見変化なし)との鑑別が重要。

輻湊不全型:近見>遠見10PD以上。

恒常性・感覚性外斜視

恒常性外斜視:常に外方偏位。先天性はまれ。

乳児外斜視:1歳までに眼位の正位化が起きず外斜視のままである型。発症時期が早いため両眼視の発達は強く障害される。乳児期発症の外斜視の60%に全身疾患や中枢神経系の異常を伴っており、CTやMRIを加えた神経学的検査が必要である。

感覚性外斜視:片眼の視力0.2以下で融像が破綻し発症。原疾患が4歳までに発症すると内斜視、4歳以降に発症すると外斜視になりやすい。

術後外斜視:内斜視術後の過矯正または長期経過後の外斜視化。

長期観察では約10%が自然治癒、約40%が不変、約50%が恒常性外斜視へ悪化する。欧米では内斜視と外斜視の比率が1.8:1と内斜視のほうが多いのに対し、わが国では1:1.2〜2.8と外斜視のほうが多く、この傾向は東南アジアでも同様である。

Q 間欠性外斜視は放置すると悪化しますか?
A

長期観察では約50%が恒常性外斜視へ悪化するとされる。自然治癒は約10%にとどまる。定期的な経過観察を行い、恒常性化・立体視悪化・眼精疲労が生じた場合は手術を検討する。ただし、PEDIG研究では3年間の経過観察で立体視悪化・恒常性化が稀であったとの報告もある。

  • 複視:外方偏位時に抑制がなければ自覚する。偏位が小さい場合は視界のぼやけとして感じることがある。
  • 眼精疲労:融像維持の輻湊努力による調節過剰から頭痛・嘔吐・吐き気が生じる。
  • 斜位近視:輻湊努力による調節が近視化を引き起こす。両眼開放時のみ裸眼視力が低下する現象。
  • 片目つむり:明るい屋外で融像困難となり、複視を避けるため片眼を閉鎖する。
  • 無自覚:小児は抑制を発達させるため複視を自覚しないことが多い。

外斜視の重症度評価にはニューカッスル・コントロール・スコア(NCS)が用いられる(家庭+遠見+近見で0〜7点の合計評価)。

術前NCS値の変化を示す。

術式術前NCS術後NCS
BLR(両外直筋後転)9.00.62±1.06
RR(片眼後転短縮)9.01.04±1.16

斜位時の両眼視は正常に発達している。乳幼児発症例では単眼固視症候群・軽度弱視(約5%)が合併することがある。

Q 外斜視で片目をつむるのはなぜですか?
A

明るい屋外では眩しさによる縮瞳で焦点深度が深まり、外方偏位が顕在化して複視が生じやすくなる。その複視を回避するために片眼を閉鎖すると考えられているが、正確な機序は未解明である。この「片目つむり」は外斜視を疑う重要なサインである。

外斜視の病因は未解明であり、融像・眼位整列維持能力の障害が根本的な機序と考えられている。

  • リスク因子:神経学的障害・早産・母親の薬物/アルコール乱用・遺伝子異常・未矯正屈折異常・家族歴。
  • 感覚性外斜視:片眼の視力不良による融像障害が原因。
  • 術後外斜視:内斜視術後の過矯正または長期経過後の外斜視化。

器質疾患・視力障害の除外が第一優先である。

  • Hirschberg試験・交代遮閉試験:間欠性外斜視では偏位が出現する状況と出現しない状況を区別して評価する。
  • 交代プリズム遮閉試験(APCT):最大斜視角を引き出すために長時間遮閉後に実施する。
  • 遠見・近見の斜視角比較:基礎型/開散過多型/輻湊不全型の分類に必須。
  • 見かけ開散過多型の鑑別:+3.00Dレンズ加入または30分片眼遮閉後に近見斜視角を再測定する。変化がなければ真の開散過多型である。
  • 両眼視機能検査:Worth 4灯・Bagolini線維鏡・抑制スコトーマ・網膜対応検査を実施する。
  • 眼球運動検査A-V型斜視・輻湊不全の鑑別を行う。

保存的管理

パートタイム遮閉:3時間/日の遮閉。3〜10歳で遠見コントロールスコア2点以上のIXTに有効1)

光学的治療:プリズムレンズ、過矯正(マイナス)眼鏡。斜視角が小さい場合に適応。

視能訓練:抑制除去・融像・輻湊訓練。斜視角25PD未満かつ近見立体視ありが条件。

手術療法

両外直筋後転術(BLR):基礎型・開散過多型の基本術式。

片眼後転・短縮術(RR):BLRと成功率は同等(開散過多型で83.3%)2)

併用手術:V型には下斜筋減弱術、A型には上斜筋減弱術を併用する。

Hattら(2023)のPEDIGランダム化比較試験(3〜10歳のIXT)では、パートタイム遮閉(3時間/日)群が観察群に比べ3か月時点で遠見コントロールスコアが0.4点有意に改善した(95%CI 0.1〜0.7)1)。6か月でも0.3点の有意差が持続した(95%CI 0.02〜0.6)。遠見偏位量も3か月で2.1PD、6か月で1.9PD改善した。

BLR手術量の目安(開散過多型IXT)

Section titled “BLR手術量の目安(開散過多型IXT)”
斜視角BLR後転量
15PD4mm
20PD5mm
30PD7mm
40PD8mm
45PD9mm

(Han 2023より)2)

開散過多型IXTのBLR術後成績では遠見38.1±8.0PD→−1.5±7.6PD、近見26.3±9.1PD→−0.9±6.2PD、遠近差(NDD)15.4→0.6と改善した2)

Q 間欠性外斜視の手術はいつ行うべきですか?
A

視機能が安定する4歳以降が原則である。恒常性化・立体視の悪化・眼精疲労・整容的問題が明確になった時点で手術適応を検討する。保存的治療で改善が得られない場合も手術を考慮する。

Q 両外直筋後転術と片眼後転短縮術のどちらが良いですか?
A

開散過多型間欠性外斜視では、両外直筋後転術(BLR)と片眼後転短縮術(RR)の成功率はともに83.3%で同等との報告がある2)。術式の選択は患者の偏位量・眼位特性・外科医の経験を考慮して決定する。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

間欠性外斜視の融像維持機構は主に融像性輻湊によって担われる。近見では比較的容易に斜位を保つが、遠見でコントロールが破綻して外斜視が顕在化する。

  • 感覚適応(抑制):幼少期発症のため外斜位時に複視ではなく抑制を発達させる。両眼視野は20〜30度(正常40度より狭い)と制限されるが、周辺立体視は斜位時にも維持される。
  • 乳児発症外斜視の神経可塑性:成人後の手術でも立体視(55秒弧)の回復が得られた症例が報告されている3)。術後の両眼視回復は2週〜6か月かけて段階的に生じる3)

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

Hattら(2023)のpost hoc解析では、パートタイム遮閉のコントロール改善効果は確認されたが、追加研究による長期的な効果の検証が必要とされている1)

Hanら(2023)は開散過多型IXTにおけるRR術式の適応拡大可能性を示した2)。BLRが標準であった開散過多型においても、RRが同等の成功率を持つことが確認された。

Littlewoodら(2021)は乳児期に外斜視を発症し15年間4回の手術を受けた成人患者で、手術後に両眼単一視(BSV)と立体視(55秒弧)が回復したことを報告した3)。成人の乳児発症外斜視への手術が残存する神経可塑性を活用できる可能性を示唆している。


  1. Hatt SR, Kraker RT, Leske DA, et al. Improved control of intermittent exotropia with part-time patching. J AAPOS. 2023;27(3):160-163.
  2. Han M, Shen T, Wang X, et al. Surgical outcomes of bilateral lateral rectus recession versus unilateral recession and resection for the divergence excess type of intermittent exotropia. Indian J Ophthalmol. 2023;71(11):3558-3562.
  3. Littlewood RA, Rhodes M, Burke J. A post-surgical stereovision surprise in an adult with an exotropia since infancy previously managed, at two years with surgery. Br Ir Orthopt J. 2021;17(1):97-103.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます