超音波ガイド下GONブロック
有効性:後頭部頭痛の頻度・重症度を6週・6ヶ月で有意改善。疼痛重症度40〜45%改善7)。
持続効果:単回ブロックで2年間効果が持続した症例もある3)。
精度:従来のランドマーク法より効果持続性が向上7)。

後頭神経痛(occipital neuralgia)は、C2・C3脊髄神経の末梢枝である後頭神経の損傷または炎症に起因する頭痛疾患である。大後頭神経(GON)・小後頭神経(LON)・第3後頭神経(TON)の分布域に発作性の激しい疼痛を生じる。
疫学的には、オランダの研究で発症率は10万人あたり3.2人と報告されており、性差は明確ではない。有病率1.2%との報告もあり、女性が80%を占めるとする研究もある3)。ある頭痛専門クリニックの調査では、800人の頭痛患者の25%が後頭神経痛の基準を満たした一方、85%に他の頭痛タイプが併存していた7)。
GONが関与する症例は全体の約90%に上る2)。痛みが同側の眼球奥に関連痛として放散するため、眼科を受診する患者が少なくない。
GON領域の痛みが同側の眼球奥に放散する関連痛が生じることがある。眼球自体に異常がないにもかかわらず眼の奥が痛むと訴えて眼科を受診するケースがある。
後頭神経痛の疼痛は発作性かつ特徴的な性質を持つ。
発作は数秒から数分間で、エピソード間に鈍痛を伴う場合もある。慢性化すると発作を繰り返し、日常生活に大きな支障をきたすことがある。
診察では以下の所見が確認される。
後頭神経痛の主な原因はC2・C3領域の頸神経の刺激・圧迫である。多くの症例は特発性とされるが、以下の原因が知られている。
国際頭痛学会(ICHD-3)の診断基準は以下の4項目からなる2)。
GONブロックは確定診断に不可欠な手技である。ただし、片頭痛・群発頭痛でも最大40%で偽陽性を示すため注意が必要である。信頼性を高めるため、2回目のブロックを行うこともある。
超音波ガイド下では、下頭斜筋-半棘筋間でGONを同定して施行する。使用薬剤の例として、メチルプレドニゾロン40mg/mL 1mLと0.5%ブピバカイン2mLの混合液がある3)。
神経ブロックによる疼痛緩和は診断を強く支持するが、片頭痛や群発頭痛でも最大40%で偽陽性を示す。より確実な診断のため、2回目のブロックを行う場合もある。他の基準と総合して判断することが重要である。
以下の疾患との鑑別が重要である。
| 鑑別疾患 | 鑑別ポイント |
|---|---|
| 頸性頭痛 | 頸椎内の病変に起因。GONブロックで鑑別 |
| 片頭痛 | 拍動性・悪心を伴う。分布が異なる |
| 群発頭痛 | 眼窩周囲の激痛。自律神経症状を伴う |
| 帯状疱疹 | 皮疹・水痘帯状疱疹ウイルス抗体価で確認5) |
初期治療は保存的アプローチから開始する。
超音波ガイド下GONブロック
有効性:後頭部頭痛の頻度・重症度を6週・6ヶ月で有意改善。疼痛重症度40〜45%改善7)。
持続効果:単回ブロックで2年間効果が持続した症例もある3)。
精度:従来のランドマーク法より効果持続性が向上7)。
ボツリヌス毒素(BOT-A)
機序:サブスタンスP・グルタミン酸の抑制、中枢性感作の軽減。
効果:6ヶ月時点で麻酔薬ブロックより疼痛改善が大きい7)。
異常な神経信号を減少させ疼痛を制御する手技。電界により組織変化を誘発する。Cohen et al.の報告では、PRFはステロイド注射より6週時点で後頭部痛の軽減が大きかったが、3ヶ月で効果が減弱した2)。
外科的治療は保存的療法・注射・薬物管理がすべて奏効しない場合の最終手段である。
根治的治療法は確立していないが、段階的アプローチにより症状の緩和は可能である。外科的治療は最終手段であり、ONSでは成人の72〜89%で疼痛減少が得られている1)。ただし感染や疼痛悪化のリスクも伴う。
後頭神経痛の中心的な病態は、GONの複雑な走行に起因する絞扼・圧迫である。GONはC2後枝から起始し、下頭斜筋を巻いた後、半棘筋と下頭斜筋の間を上行する。さらに半棘筋および上部僧帽筋を貫通して後頭部皮下に到達する。この貫通経路における筋膜性圧迫が神経障害性疼痛の主因となる4)7)。
後根進入帯(DREZ)の病変も後頭神経痛の発症と関連する。C2脊髄梗塞では血管性浮腫がDREZに生じ、一過性の後頭神経痛が誘発される6)。
三叉神経頸髄複合体(TCC:trigeminal cervical complex)は重要な解剖学的概念である。三叉神経脊髄路核尾側亜核は上部頸髄後角と解剖学的に連続しており、GON刺激が三叉神経第1枝の中枢性感作を引き起こすことがある5)。動物実験でもGON領域への刺激が三叉神経第1枝求心性線維の中枢性感作を惹起することが確認されている。
この機序により、三叉神経帯状疱疹から同側の後頭神経痛が二次的に発症する場合がある。TCC経由でのクロストークが想定されており、バラシクロビル3000mg/日×7日で完全寛解した症例が報告されている5)。
神経を周囲組織から物理的に剥離する手技として、2種類のハイドロダイセクション法が報告されている。
Lam et al.(2024)は2症例にD5W 20mLを用いた超音波ガイド下GONハイドロダイセクションを施行した7)。症例1(45歳女性、18ヶ月の後頭神経痛)では側臥位アプローチを用い、NRS 8→0/10、6ヶ月間0〜1/10が持続、NDI(頸部障害指数)は20→4/50(80%改善)。症例2(50歳女性、亜後頭部痛1年)では頭尾方向アプローチを採用し、NRS 9→1/10、6ヶ月間持続した。
D5Wによる鎮痛の機序として、glycopenic仮説(C線維からのグルコース除去により発火率が650%増加し、D5W投与で正常化)、サブスタンスP放出によるASIC1a活性化を介した鎮痛、IL-6・IL-1β減少の抗炎症効果が提唱されている7)。
Kaga(2022)は81歳女性に対し、後頭神経痛に対する筋膜ハイドロダイセクションとして世界初の報告を行った4)。半棘筋-下頭斜筋間に0.75%ロピバカイン5mLを注入し、胸鎖乳突筋深層に生理食塩水9mL+1%リドカイン1mLを注入した。処置直後にNRS 10→消失。23日後に鎮痛薬を中止し、4週間の追跡期間内に再発はなかった。低用量麻酔薬(生理食塩水9mL+リドカイン1mL)の使用により、局所麻酔薬中毒リスクが極めて低く抑えられた。
Mossner et al.(2024)は難治性後頭神経痛を持つ小児3例(15〜17歳)に対してONSの試行または永久植込みを施行した1)。全例で著明な疼痛減少(VAS 9〜10→0〜1/10、p=0.002)が得られ、合併症はなかった。1例は試行のみで15ヶ月間pain-freeとなり永久植込みを辞退した。小児後頭神経痛に特化したONSの報告は文献上ほとんどなく、本研究の知見は貴重である。なお小児の外科的GON減圧/神経切除では、Villeneuve et al.が6例の青年で VAS 8.3→1の疼痛改善を報告しているが、100%に感覚異常が生じた1)。
Xu & Yin(2024)は10年来の難治性後頭神経痛を持つ76歳男性に対し、6回の鍼治療(12日間)を施行した2)。S-LANSS(Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs)スコアは14→0となり、3ヶ月後も再発なし、9ヶ月後に月1〜2回の軽度頭痛のみが残存した。鎮痛機序としてエンドルフィン放出、肥満細胞脱顆粒、迷走神経-TNF-αシグナル経路が示唆されている。