眼瞼・前眼部所見
眼瞼後退:DLBの約15%で報告。核上性運動障害(後交連核の障害)が原因。前頭筋・眼輪筋上部の活動による額のしわ寄せを伴う。
眼瞼痙攣:両眼瞼のエピソード的な痙攣的閉鎖。
開瞼失行:随意的に目を開けることができない状態。
瞬目回数減少:ドライアイの原因となる。

レビー小体型認知症(Lewy body dementia: LBD)は、α-シヌクレインというタンパク質で構成される「レビー小体」がニューロン内に蓄積する神経変性疾患である。LBDはレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies: DLB)とパーキンソン病認知症(Parkinson’s disease dementia: PDD)の2つの臨床型を包含する。
米国では約140万人が罹患している。発症年齢はおよそ70〜85歳で、男性が症例の約60%を占める。ほとんどのLBD症例は遺伝性ではないが、LRRK2・APOE・SNCA・SCARB2・MAPT・GBA遺伝子との関連が報告されている。
LBDの中核的臨床特徴は以下の4つである。
初期診断において70%以上のDLB症例が誤診されていることが報告されている2)。神経眼科的所見はLBDの診断・管理において重要な役割を果たすが、LBDに特異的な診断的眼科所見は存在しない。
両者ともレビー小体の蓄積を特徴とする同一スペクトラムの疾患であるが、診断基準が異なる。PDDは認知症の発症よりも1年以上前にパーキンソニズムの運動症状が発現していることが条件となる。DLBでは認知症と運動症状がほぼ同時か、認知症が先行する。
LBDでは多彩な視覚症状が出現する。
幻視は視覚刺激がない状態で形のはっきりした像が見える現象である。一方、パレイドリアは曖昧な視覚刺激(壁のシミ、木目など)が存在する状態で、そこから意味のある物体(人の顔など)が見える錯覚である。両者ともLBDに特徴的であるが発生機序が異なる。
LBDでは眼瞼異常と眼球運動異常の両面で多彩な所見を呈する。
眼瞼・前眼部所見
眼瞼後退:DLBの約15%で報告。核上性運動障害(後交連核の障害)が原因。前頭筋・眼輪筋上部の活動による額のしわ寄せを伴う。
眼瞼痙攣:両眼瞼のエピソード的な痙攣的閉鎖。
開瞼失行:随意的に目を開けることができない状態。
瞬目回数減少:ドライアイの原因となる。
眼球運動所見
サッカード異常:反射性・随意性サッカードの潜時延長(疾患重症度と相関)。水平サッカードの速度低下・精度低下・ばらつき増大。
上方注視麻痺:LBDで比較的よく見られる。ただしパーキンソン病や加齢でも起こりうる。
輻輳不全:遠方より近方で外斜視が増強する。
斜位の悪化:既存の斜位を悪化させることがある。
LBDのパーキンソン症状はパーキンソン病と比較して、無動と固縮がより対称的であり、振戦は対称的な姿勢時振戦である傾向がある。
DLBではサッカード抑制の障害、予測的サッカードの障害、エクスプレス・サッカード傾向の減少も報告されている。垂直性核上性眼筋麻痺の症例も報告されているが、この場合は進行性核上性麻痺(PSP)を除外する必要がある。下方注視麻痺はLBDよりもPSPにより合致する所見である。
LBDの原因は、α-シヌクレインの過剰発現と凝集である。α-シヌクレインは神経終末での細胞膜リモデリングに関与するタンパク質オリゴマーであり、過剰に凝集するとレビー小体を形成する。レビー小体の蓄積はミトコンドリアの断片化を招き、最終的にニューロンの死をもたらす。
レビー小体の伝播パターンは以下の通りである。
初期症状はこの沈着パターンに対応する。嗅神経→嗅覚消失、迷走神経→便秘、網様体→RBDが代表的である。
主なリスク要因は以下の通りである。
DLB患者の約75%が精神病症状(幻視・妄想を含む)を呈する1)。幻視の背景には潜在的な網膜機能障害(明所視・暗所視の網膜内層機能障害)が関与している可能性がある。
DLBの診断には認知症の存在が必須であり、以下の4つの中核的臨床特徴を基準とする。
2つ以上の中核特徴、または1つの中核特徴+1つ以上の指標的バイオマーカーがある場合は「ほぼ確実(probable)」なDLBとなる。1つの中核特徴のみ、または1つ以上の指標的バイオマーカーのみの場合は「疑い(possible)」のDLBとなる。
前駆期DLBには3つのサブタイプ(MCI発症型・せん妄発症型・精神症状発症型)が同定されており、早期診断による禁忌薬剤の回避や介護計画の策定に役立つ2)。
| 鑑別疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| アルツハイマー病 | 幻視は稀。海馬萎縮が顕著 |
| パーキンソン病 | 運動症状が認知症に1年以上先行 |
| 進行性核上性麻痺(PSP) | 下方注視麻痺がPSPに合致 |
| 多系統萎縮症(MSA) | 小脳症状・自律神経障害が主体 |
| 血管性認知症 | 階段状の認知機能低下 |
PSPでは初期に下方注視障害が出現し、経過とともに上方・水平注視も障害される。最終的に両眼がほぼ正中から外転位に固定される。眼瞼痙攣・開瞼失行・眼瞼後退もPSPで見られるため、下方注視麻痺の有無が鑑別の鍵となる。
LBDは進行性疾患であり、根治療法は存在しない。治療は症状管理が中心となる。
LBD患者はパーキンソン症状(すくみ足、姿勢不安定など)により転倒リスクが高い。遠近両用や三焦点レンズは足元の見え方が変わり、転倒リスクをさらに悪化させるため、単焦点眼鏡が推奨される。
完全に安全な抗精神病薬はないが、クエチアピンやクロザピンは比較的安全性が高いとされる。抗精神病薬以外にも抗パーキンソン病薬やガバペンチノイド(ミロガバリン・プレガバリン)でさえ低用量で精神病症状を誘発する報告があり3)、あらゆる薬剤の投与に慎重さが求められる。
LBDは進行性であり、診断後の生存期間中央値はDLB患者で4.7年、PDD患者で3.8年である。
レビー小体の主成分であるα-シヌクレインは、神経終末での細胞膜リモデリングに関与するタンパク質オリゴマーである。過剰発現したα-シヌクレインが凝集すると不溶性のレビー小体を形成し、ミトコンドリアの断片化を経てニューロン死を引き起こす。
DLBにおけるα-シヌクレイン凝集体はシナプス前終末に高濃度に集積する。皮質内のレビー小体数はニューロン総数に比して少なく、認知障害の程度とは直接相関しない3)。
幻視は複数の機序が関与する多因子的な現象と考えられている。
LBDにおける眼球運動障害は核上性の運動障害として生じる。
ピマバンセリン(pimavanserin)は選択的セロトニン5-HT2A受容体逆作動薬であり、ドパミン受容体に結合しない新規の第2世代抗精神病薬である。パーキンソン病認知症の精神病治療薬として2016年にFDAの承認を受けている。
Rothenbergら(2023)は、コリンエステラーゼ阻害薬や従来の抗精神病薬に抵抗性を示した4例のDLB患者にピマバンセリンを投与した。3例(75%)で精神病症状(幻覚の減少・妄想の減少・苦痛や興奮の軽減)の有意な改善を認め、4例全例でピマバンセリンの忍容性は良好であった。運動症状の悪化は認めなかった1)。
Tholanikunnelら(2023)は、前駆期DLBの3サブタイプ(MCI発症型・せん妄発症型・精神症状発症型)の臨床例を報告した。MCI-LBの研究診断基準(2020年公表)では、軽度認知障害に加えて中核特徴4項目(認知機能変動・幻視・RBD・パーキンソン症状)と指標的バイオマーカー3項目(DATスキャン・MIBG心筋シンチ・PSG)を用いる。早期診断は禁忌抗精神病薬の回避やアドバンスケアプランニングにつながるとされる2)。
Kanemotoら(2025)は、DLB患者においてガバペンチノイド(ミロガバリン15 mg/日、プレガバリン25 mg/日)の低用量投与で幻覚・妄想・易刺激性が出現し、中止により消退した症例を報告した。DLBのシナプス前終末にα-シヌクレイン凝集体が集積するため、シナプス前終末に作用するガバペンチノイドに対して過敏反応が生じた可能性がある3)。