眼科的所見
視力・視野・対光反射:通常は正常に保たれる。
網膜血管変化:細動脈狭窄・鞘形成(sheathing)・動静脈交叉現象(AV nicking)・軟性白斑を認めることがある。多くは無症状。網膜血管閉塞は稀である。
細隙灯所見:早期水晶体混濁、毛様体萎縮(毛様体細動脈の関与による)が報告されている。
視神経:通常は正常だが、蒼白・萎縮の報告もある。

CADASIL(Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarcts and Leukoencephalopathy)は、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症である。第19染色体(19q12)上のNOTCH3遺伝子変異により引き起こされる遺伝性脳細小血管病であり、現在知られている中で最も一般的な遺伝性脳卒中の原因疾患とされる1)。
主要な臨床症状は前兆を伴う片頭痛、皮質下虚血性脳卒中、精神症状、認知機能障害である。これに加え、視覚前兆・複視・オシロプシア・網膜血管変化など多彩な眼科的徴候を呈する点が本疾患の神経眼科的な特徴である。
有病率は英国スコットランドの研究で10万人あたり4.15人と報告されているが、過小評価の可能性がある。一方、一般人口におけるNOTCH3病的バリアントの保有率は3.4/1000であり、アジア人で特に高い頻度が確認されている2)。発症は通常中年期であり、症状出現後の経過期間は約20〜25年とされる。常染色体優性遺伝(伝達率50%)だが孤発性変異も存在する。男性は女性より期待寿命が短く、皮質下梗塞・認知機能低下の発症も早い傾向にある。
英国スコットランドの研究では有病率は10万人あたり4.15人と報告されているが、過小評価の可能性がある。一般人口でのNOTCH3病的バリアント保有率は3.4/1000であり2)、無症候性保有者も多く存在すると考えられる。アジア人で特に保有率が高いことも示されている。
眼科的所見
視力・視野・対光反射:通常は正常に保たれる。
網膜血管変化:細動脈狭窄・鞘形成(sheathing)・動静脈交叉現象(AV nicking)・軟性白斑を認めることがある。多くは無症状。網膜血管閉塞は稀である。
細隙灯所見:早期水晶体混濁、毛様体萎縮(毛様体細動脈の関与による)が報告されている。
視神経:通常は正常だが、蒼白・萎縮の報告もある。
神経眼科的所見
CADASILにおける頭痛はICHD-3で「CADASILに起因する頭痛」(code 6.8.1)として二次性頭痛に分類される3)。前兆症状に感覚性・言語性・運動性前兆が過剰に表現され、59.3%が非典型的・複雑型前兆を示す。また前兆がTIA(一過性脳虚血発作)と重複する場合もあるため、単純な片頭痛として扱うことは適切ではない。
CADASILの原因はNOTCH3遺伝子変異である。NOTCH3は34個のEGF様リピートをもつ膜貫通型受容体をコードし、変異はエクソン2〜24(EGFRドメイン)に集中する。システイン置換変異が主体であり、変異により膜貫通タンパク細胞外ドメインが蓄積する。現在280以上の病的変異が報告されている2)。
変異部位によって表現型の重症度が異なる。EGFrドメイン1〜6の変異はEGFr 7〜34の変異より重症で生存率が低く、EGFr 7〜34の変異では58歳時点でもMRI正常・無症状の例が存在する5)。中国本土ではexon 3, 4, 11, 12, 13, 14にホットスポットが集中している6)。
以下に主な鑑別疾患を示す。
| 疾患名 | 遺伝形式 | GOM沈着 | 鑑別点 |
|---|---|---|---|
| CARASIL | 常染色体劣性 | なし | HTRA1ホモ変異、若年発症、脱毛・腰痛 |
| CADASIL様疾患(HTRA1ヘテロ変異) | 常染色体優性 | なし | 発症がCADASILより遅い8) |
| ファブリー病 | X連鎖 | — | αガラクトシダーゼA欠損 |
CADASIL様疾患(HTRA1ヘテロ変異)はCADASILと類似の脳MRI所見を示すが、GOM沈着を欠く点が皮膚生検での鑑別に有用である8)。
脳MRIは診断において中心的な役割を果たす。主要所見は以下の通り。
Pesciniスクリーニングスケールは15点以上でNOTCH3遺伝子検査を検討する指標である1)。主な得点項目を以下に示す。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 前兆を伴う片頭痛 | 3点 |
| 外包WMH | 5点 |
| 認知機能低下/認知症 | 3点 |
| 白質脳症 | 3点 |
| 2世代以上の家族歴 | 2点 |
| 皮質下梗塞 | 2点 |
| 50歳未満の発症 | 2点 |
**ニューロフィラメント軽鎖(NfL)**はCADASIL患者で有意に上昇しており、有望な血液バイオマーカーとして研究が進んでいる2)。OCT-Aは非侵襲的に網膜血管密度を評価でき、CADASIL重症度のサロゲートマーカーとしての可能性が示されている5)。
NOTCH3遺伝子検査は診断のゴールドスタンダードである。スクリーニングにはPesciniスケールが有用であり、15点以上で遺伝子検査を検討する1)。遺伝子検査で確定できない場合は皮膚生検によるGOM検出も診断根拠となる。
現時点でCADASILの根本的な治療法は存在しない。治療は血管リスク因子管理・二次予防・対症療法が中心となる。
血管管理
血管リスク因子の制御:高血圧・高コレステロール血症・糖尿病・肥満の管理が最優先。禁煙・体重管理・運動・血糖管理も重要である2)。
抗血小板療法:アスピリンまたはクロピドグレルが用いられる。有効性は明確には証明されていないが、多くの神経内科医が二次予防として使用している1,2)。
スタチン:脂質管理に使用される2)。
症状管理
認知機能障害:ドネペジルなどアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が用いられる。ただし168人を対象としたRCTでは血管性認知症への有意な改善は示されていない2)。
てんかん:バルプロ酸ナトリウム(500 mg/日から開始)、オクスカルバゼピンなど抗てんかん薬を使用する4)。
片頭痛:対症療法が中心。CADASILの「前兆」はTIAとの鑑別が必要なため、片頭痛治療薬の選択は慎重に行う3)。
急性虚血性脳卒中に対するIV-tPA(アルテプラーゼ0.9 mg/kg)の使用については議論がある。
根本的な治療法は現時点では存在しない。血管リスク因子(高血圧・高コレステロール・喫煙など)の管理と対症療法が治療の中心となる1,2)。認知機能障害にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、てんかんには抗てんかん薬が使用されるが、いずれも根治療法ではない。
CADASILにおける脳病変は慢性虚血と梗塞の蓄積による多発梗塞性脳症である。
NOTCH3変異 → 細胞外ドメイン(ECD)の蓄積 → 平滑筋細胞の成熟不全・構造欠陥 → GOM(顆粒状オスミウム嗜好性物質)形成という病態カスケードが生じる。GOMはNOTCH3 ECDを主成分とし、平滑筋細胞近傍に沈着する1)。血管壁は動脈狭窄・平滑筋線維化・変性を来し、脳血管反応性(自己調節能)が低下する。
壁肥厚は内腔径減少と必ずしも関連せず、脳血管反応性障害が虚血・脳病変の主因と推定されている1)。慢性虚血は細胞アポトーシスを誘発し、皮質萎縮・認知症へと進行する。機能獲得型変異では野生型レベルの遺伝子転写が維持される場合もある。
Aghettiら(2024)は3例のCADASIL患者でCOVID-19感染後の境界域脳梗塞を報告した(既報7例と合わせ計10例)7)。SARS-CoV-2はACE2を介した内皮細胞障害・vWFおよびフィブリノゲン放出による微小血栓形成を誘発し、血管緊張制御の破綻を来す。CADASILの慢性微小血管障害と相乗的に働き、軽症COVID-19でも血圧低下を伴わない多発梗塞が生じうる。
p.R90C変異マウスでは皮質拡延性脱分極(CSD)への感受性亢進が示されている。ただしCSDは脳虚血でも観察されるため片頭痛に特異的ではなく、CADASILの「前兆」が純粋な片頭痛と同一のメカニズムとは言えない3)。また、CADASILの片頭痛有無でCGRPレベルに差がないことも報告されている3)。
NOTCH3 ECDの排除またはサイレンシングを目的とした遺伝子治療が実験段階で研究されている1)。現時点では臨床応用には至っていない。
NOTCH3 ECDの排除を標的とした遺伝子治療が実験段階で研究されている1)。また造血成長因子による神経保護、NfLを用いた早期診断・予後予測など複数のアプローチが検討されている2)。現時点では標準治療は存在しないが、変異位置に基づく個別化医療や非侵襲的モニタリング手段の確立に向けた研究が進んでいる。