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神経眼科

フォスター・ケネディ症候群 vs 偽フォスター・ケネディ症候群

1. フォスター・ケネディ症候群 vs 偽フォスター・ケネディ症候群とは

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フォスター・ケネディ症候群(FKS)は、片眼の圧迫性視神経萎縮と対側の頭蓋内圧亢進による乳頭浮腫を特徴とする臨床症候群である。1911年にRobert Foster Kennedyが報告した。

FKSは3型に分類される。

  • 1型:片側の視神経萎縮と対側の乳頭浮腫。最も典型的な病型であり、頭蓋内腫瘍(多くは髄膜腫)に続発する。
  • 2型:両側性の乳頭浮腫と片側の視神経萎縮。
  • 3型:両側性の乳頭浮腫から両側性の視神経萎縮へ進行するもの。

偽フォスター・ケネディ症候群(PFKS)は1型FKSと類似した眼底所見を呈するが、頭蓋内腫瘍以外の原因で生じる。PFKSの最も一般的な病因は、両側に時期をずらして発症する前部虚血性視神経症(AION)であり、特に非動脈炎性前部虚血性視神経症が多い。臨床的にはPFKSの方が真のFKSよりも遭遇頻度が高い。

Q 真のフォスター・ケネディ症候群と偽フォスター・ケネディ症候群はどちらが多いか?
A

臨床的にはPFKSの方が遭遇頻度が高い。真のFKSは頭蓋内腫瘍を原因とするため比較的まれであり、片眼の視神経萎縮と対側の乳頭浮腫を認めた場合はPFKS(特に非動脈炎性前部虚血性視神経症)を先に考慮することが多い。ただし腫瘍の見逃しを防ぐため、画像検査による除外は必須である。

真のFKSとPFKSでは、自覚症状の発症様式が異なる。

  • 進行性の視力低下:腫瘍による視神経圧迫側の眼に緩徐に進行する。
  • 頭痛:頭蓋内圧亢進に伴い生じる。
  • 悪心・嘔吐:頭蓋内圧亢進症状の一部である。
  • 嗅覚消失:嗅窩髄膜腫の場合にしばしば伴う。
  • 複視:頭蓋内圧亢進による非局在性の第VI脳神経麻痺に起因する。
  • 感情失禁:前頭葉の圧迫による性格変化が家族から報告されることがある。
  • 突然の視力低下:以前の視神経症がある僚眼の状況で、片眼に急性の視力障害が生じる。非動脈炎性前部虚血性視神経症では起床時に気付くことが多い。

うっ血乳頭の初期には、数秒間の一過性視朦のみで視力低下の自覚に乏しい場合がある。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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真のFKS

同側の視神経萎縮:腫瘍側の視神経乳頭は蒼白を呈する。圧迫性の単性萎縮(辺縁明瞭、平坦、血管狭細化)を示す。

対側の乳頭浮腫:頭蓋内圧亢進による乳頭腫脹を認める。萎縮した視神経はもはや浮腫を発現できない。

RAPD陽性:視神経萎縮側にRAPDを認める。

視野欠損:萎縮側は多様な視神経症パターン、浮腫側は盲点拡大や神経線維層欠損パターンを呈する。

偽FKS(PFKS)

片眼の視神経萎縮:以前の非動脈炎性前部虚血性視神経症などの虚血イベントによる二次的萎縮。炎性萎縮(灰色を帯び、辺縁やや不鮮明)を呈することがある。

対側の急性乳頭腫脹:新たな非動脈炎性前部虚血性視神経症では分節状またはびまん性の腫脹を認める。乳頭周囲に出血を伴うことが多い。

RAPD:より重症な眼にRAPDを認めることがある。

視力障害:両眼とも多様な程度の視力低下および視野欠損を示す。

対側僚眼の視神経乳頭が小さい、いわゆる「disc at risk」であることは非動脈炎性前部虚血性視神経症の特徴的所見である。

真のFKSの典型的原因は前頭蓋窩の腫瘍である。

  • 嗅窩髄膜腫:最も代表的な原因である。
  • 蝶形骨縁髄膜腫:前頭蓋窩に隣接する部位から発生する。
  • 前頭葉実質腫瘍:まれに原因となる。

髄膜腫のリスク要因は以下の通りである。

  • 過去の頭部放射線曝露
  • 神経線維腫症2型(NF2)
  • 女性:ホルモンの関与が示唆される。
  • 肥満

PFKSの主な原因を以下に示す。

非動脈炎性前部虚血性視神経症のリスク要因は以下の通りである。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高コレステロール血症
  • 喫煙歴
  • 睡眠時無呼吸症候群

非動脈炎性前部虚血性視神経症では短後毛様動脈の循環不全が病因と推察されており、血圧の日内変動における低下が誘因となる。

Q 非動脈炎性前部虚血性視神経症が両眼に起こる確率はどのくらいか?
A

非動脈炎性前部虚血性視神経症の僚眼への発症は5年以内に15〜30%で生じる1)。発症間隔の中央値は7〜12か月である。この両側時差性発症がPFKSの最多原因となる。

FKSとPFKSの鑑別には以下の検査が重要である。

  • 神経画像検査(CT/MRI):FKS疑いでは頭部・眼窩の造影CTまたはMRIが必須である。腫瘍の有無と進展範囲を確認する。PFKSの非典型例でも頭蓋内腫瘍の除外目的に施行する。
  • 眼底検査:視神経乳頭の萎縮と浮腫のパターンを確認する。
  • OCT(光干渉断層計):乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚の測定により、視神経萎縮の程度を定量的に評価できる。急性期の乳頭腫脹ではcpRNFLが増加するため、黄斑部の神経節細胞複合体(GCC)解析が早期の軸索障害検出に有用である。
  • 視野検査:萎縮側と浮腫側それぞれの視野パターンを評価する。非動脈炎性前部虚血性視神経症では水平半盲(特に下方)が多い。
  • 蛍光眼底造影:非動脈炎性前部虚血性視神経症では視神経乳頭への充盈遅延がみられる。動脈炎性では乳頭周囲脈絡膜の充盈遅延や欠損が特徴的である。
  • 血液検査:高齢者では巨細胞性動脈炎(GCA)除外のためESR・CRPを測定する。
  • 髄液圧測定:うっ血乳頭の確定診断に必要である。施行前にCT/MRIで占拠性病変を除外する。

FKSとPFKSの鑑別ポイントを以下に示す。

鑑別点真のFKSPFKS
視力障害の経過進行性(緩徐)突然発症(急性)
頭蓋内圧上昇通常は正常
嗅覚消失しばしば伴う通常なし
Q どのような検査でFKSとPFKSを鑑別できるか?
A

最も重要な検査はCT/MRIによる頭蓋内腫瘍の有無の確認である。FKSでは頭蓋内腫瘍を認めるが、PFKSでは認めない。加えて病歴(進行性か突然発症か)、嗅覚消失の有無、髄液圧も鑑別に有用である。

FKSの治療は原因腫瘍の管理が中心である。

  • 外科的切除:手術適応があれば、腫瘍の圧迫効果を軽減し頭蓋内圧を緩和するために切除が最善の選択肢となる。
  • 術前塞栓術:血管に富む腫瘍では術前塞栓により術中出血を減少させ術後合併症を抑制できる。
  • 副腎皮質ステロイド:症状のある脳腫瘍では腫瘍周囲浮腫と頭蓋内圧の軽減目的に投与する。
  • 定位放射線治療:非外科的介入が好まれる場合や高齢者(70歳以上)では手術リスクを考慮し定位放射線治療が選択肢となる。視神経鞘髄膜腫に対しては三次元分割放射線治療や強度変調放射線治療で良好な成績が報告されている。

FKSの治療

外科的切除:圧迫効果軽減と頭蓋内圧緩和の第一選択。

定位放射線治療:高齢者や手術リスクが高い場合の代替。

ステロイド:周術期の腫瘍周囲浮腫軽減に使用。

PFKSの治療

AAION:高用量全身性ステロイド療法を直ちに開始する。

非動脈炎性前部虚血性視神経症:確立された有効な治療法は存在しない。血管リスク因子の管理が中心。

特発性頭蓋内圧亢進症:体重管理、アセタゾラミド投与。重症例ではシャント手術や視神経鞘開窓術。

PFKSの治療は基礎疾患に依存する。

  • AAION:巨細胞性動脈炎が原因の場合は高用量プレドニゾン療法を直ちに開始する。僚眼への波及防止が最優先である。
  • 非動脈炎性前部虚血性視神経症:確立された有効な治療法は存在しない。抗凝固療法、血管拡張薬、ステロイド内服、視神経鞘減圧術などが試みられているが、有意な視力予後の改善は証明されていない。
  • 視神経炎:メチルプレドニゾロン静注療法に続く経口プレドニゾン投与が検討される。

圧迫視神経症に対してはステロイドパルスまたはハーフパルス療法が第一選択である。1〜3クール施行後にステロイド内服へ切り替える。急激な漸減は視神経症再燃の原因となるため避ける。

Q 非動脈炎性前部虚血性視神経症に有効な治療法はあるか?
A

現時点で非動脈炎性前部虚血性視神経症に対する有効性が証明された治療法は存在しない。血管リスク因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)の管理が中心となる。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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FKSの発症機序は腫瘍の増大に伴う段階的な過程である。

  1. 前頭蓋窩の腫瘍(多くは髄膜腫)が同側の視神経を直接圧迫する。
  2. 軸索の圧迫または血管圧迫に続発する虚血により、視神経萎縮が生じる。
  3. 腫瘍がさらに増大すると頭蓋内圧が上昇する。
  4. 頭蓋内圧亢進により対側に乳頭浮腫が発現する。
  5. 萎縮した同側の視神経は軸索流が既に断絶しているため、浮腫を呈することができない。

この結果、片側の蒼白萎縮と対側の乳頭浮腫という特徴的な非対称所見が完成する。

PFKSの最多原因である非動脈炎性前部虚血性視神経症では、以下の機序で発症する。

  • 短後毛様動脈の循環不全により視神経乳頭に微小梗塞が生じる。
  • 視神経乳頭が小さい(disc at risk)場合、篩状板で軸索が圧迫され循環障害が助長される。
  • 片眼に非動脈炎性前部虚血性視神経症が発症し、急性期の乳頭腫脹から1〜2か月で視神経萎縮へ移行する。
  • 対側眼に新たな非動脈炎性前部虚血性視神経症が発症すると、萎縮側と腫脹側の非対称所見が生じる。

視神経萎縮には2つの経路が存在する。乳頭浮腫(視神経乳頭炎、前部虚血性視神経症、うっ血乳頭など)を経て萎縮に至る経路と、球後視神経炎や圧迫視神経症のように正常乳頭から直接萎縮に至る経路である。

うっ血乳頭の機序は、頭蓋内圧亢進により視神経周囲のくも膜下腔圧が上昇し、視神経が締め付けられて軸索流が停滞することで乳頭浮腫が発生する。


  1. Salvetat ML, Zeppieri M, Miani F, Brusini P. Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (NA-AION). In: Albert DM, et al., editors. Albert and Jakobiec’s Principles and Practice of Ophthalmology. Cham: Springer; 2023.

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