静脈梗塞型
局所神経脱落症状:片麻痺、失語、感覚障害など脳卒中様症状。
てんかん発作:静脈梗塞に起因する皮質刺激により生じる。
顔面神経麻痺:顔面筋の脱力が認められる。

蛇咬傷後の脳静脈洞血栓症(Cerebral Venous Sinus Thrombosis; CVST)は、毒蛇咬傷(snake envenomation)による急性全身性凝固異常症の合併症として発生する病態である。
米国CDCの推定によれば、米国では毎年7,000〜8,000人が毒蛇に咬まれる。年間の死亡者はわずか平均5人にとどまる。米国に生息する主要な毒蛇は以下の4種である。
蛇咬傷は4月〜10月に多発する傾向があり、南部諸州で発生が多い。男性に多く、屋外作業に従事する男性が最もリスクが高い。
急性期の合併症は広く研究されているが、長期的な後遺症も見逃せない。毒蛇咬傷患者の13.7%に、片頭痛・筋骨格系疾患・視覚障害・急性腎障害・心理的苦痛のうち少なくとも1つの長期合併症が認められた。
毒蛇咬傷患者の13.7%に、少なくとも1つの長期合併症が認められたと報告されている。視覚障害・片頭痛・筋骨格系疾患・急性腎障害・心理的苦痛などが含まれる。CVSTはこれらの合併症の一つとして位置づけられる。
CVSTの自覚症状は多彩であり、以下が主なものとして挙げられる。
CVSTは2つの病態メカニズムにより異なる臨床像を呈する。
静脈梗塞型
局所神経脱落症状:片麻痺、失語、感覚障害など脳卒中様症状。
てんかん発作:静脈梗塞に起因する皮質刺激により生じる。
顔面神経麻痺:顔面筋の脱力が認められる。
静脈うっ血型
頭蓋内圧亢進:静脈うっ血による頭蓋内圧の全般的上昇。
意識レベル低下:重症例では昏睡に至ることがある。
乳頭浮腫:両眼性に出現し、視力障害・視野障害をきたす。
眼科的には、乳頭浮腫が頭蓋内圧亢進の重要なサインとなる。検眼鏡で両眼の乳頭浮腫を確認する。両側外転神経麻痺を合併することがあり、小児では内斜視として発見されることが多い。
蛇咬傷後の慢性再発性凝固異常症の初期徴候として、表在性・深部静脈血栓症や肺塞栓症が先行し、頭蓋内圧亢進・乳頭浮腫を伴うCVSTへ進行する場合がある。
乳頭浮腫・複視・一過性視力障害・外転神経麻痺などが出現しうる。乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進の結果として両眼性に生じ、放置すると不可逆的な視機能障害をきたす可能性がある。散瞳下眼底検査での早期確認が重要である。
蛇毒は大きく**血液毒性(hemotoxic)と神経毒性(neurotoxic)**の2種類に分類される。蛇毒に含まれる固有のタンパク質・酵素が溶血・組織壊死・抗凝固状態・血液凝固亢進状態などを引き起こす。
急性期には蛇毒が血液凝固のホメオスタシスを破壊し、凝固異常症が発生する。これにより血栓症または出血のリスクが高まる。
急性期の主な全身反応は以下の通りである。
| 反応 | 病態 |
|---|---|
| DIC類似疾患 | 播種性血管内凝固 |
| 急性腎不全 | 腎血流障害・腎毒性 |
| 低容量性ショック | 体液喪失・血管透過性亢進 |
| 死亡 | 重症例での不可逆的障害 |
蛇咬傷の長期合併症として、蛇毒が免疫反応を引き起こし、慢性的な血液凝固亢進状態(chronic hypercoagulability)を招くと考えられている。血液凝固亢進状態はCVSTの既知のリスク要因であり、蛇咬傷後にCVSTが発症する機序の根幹をなす。
CVSTの一般的なリスク要因の鑑別としては、感染性・自己免疫性・代謝性の病因も念頭に置く必要がある。
問診では以下の既往歴が重要である。
脳静脈洞の狭窄・閉塞を評価する画像検査を選択する。
| 検査法 | 特徴 |
|---|---|
| CT | 緊急評価に有用。出血性変化を検出。 |
| CT静脈造影(CTV) | 静脈洞の閉塞・血栓を描出。 |
| MRI | 実質病変・脳浮腫の詳細評価。 |
| MR静脈造影(MRV) | 静脈洞の狭窄・閉塞の標準的評価法。 |
| カテーテル脳血管造影 | 詳細な血管評価が必要な場合に実施。 |
MRVは脳静脈洞の狭窄・閉塞をもっとも正確に評価できる。確定診断には脳脊髄圧測定が必要であるが、その前にCT/MRIで占拠性病変・水頭症を除外することが原則である。
左側臥位で施行し、開放圧を測定する。開放圧25 cm H2O以上が異常高値とされ、頭蓋内圧亢進の指標となる。
CVSTが疑われる場合は、散瞳下眼底検査を含む完全な眼科検査が推奨される。
蛇咬傷が疑われるCVSTでは、血液学的精査・肝機能評価に加え、代替病因(感染性・自己免疫性・代謝性)の検討を行う。鑑別すべき疾患は血管性・術後・外傷性・感染性・炎症性・浸潤性・腫瘍性疾患にわたる。
まず頭部CT/MRIで占拠性病変・水頭症を除外し、MRVで脳静脈洞の狭窄・閉塞を評価する。眼科的には散瞳下眼底検査で乳頭浮腫の有無を確認し、蛍光眼底造影やOCTも補助的に活用する。腰椎穿刺で脳脊髄圧を測定し、血液学的精査・肝機能評価も行う。
蛇咬傷直後の急性期には以下の処置を優先する。
抗凝固療法
ワーファリン療法:日本では脳静脈洞血栓症に対してワーファリン療法が行われる。早期治療により視機能が温存されるが、治療の遅延は不可逆的な障害をきたす。
全身的抗凝固療法:血栓の拡大防止と再疎通の促進を目的とする。
血栓溶解療法:内科的管理が困難な症例に選択される。
頭蓋内圧管理
頭蓋内圧のモニタリングと制御:輸液・抗凝固薬・外科的手技を組み合わせる。
ダイアモックス・マンニトール投与:特発性頭蓋内圧亢進症では腰椎穿刺とともに使用される(ダイアモックスは保険適用外)。
定期的な治療調整:慢性再発性凝固異常症がある場合は継続的な管理が必要。
内科的管理で対応できない重症例では、外科的処置が必要となる。
以下の因子が存在する場合、合併症リスクが高まる。
悪性CVSTや脳ヘルニアを引き起こす実質病変がある場合は減圧開頭術、神経学的状態が著しく悪化している場合は直視下血栓除去術が選択される。第四脳室の閉塞や良性頭蓋内圧亢進症では脳室腹腔シャント術が適応となる。
蛇毒は血液毒性と神経毒性の2種類に大別される。血液学的合併症の主因は、蛇毒が凝固ホメオスタシスを破壊することによる凝固異常症である。
急性期には以下の経路で血栓症または出血リスクが高まる。
慢性期のメカニズム(仮説)については、以下のように考えられている。
蛇毒が免疫反応を誘導し、慢性的な血液凝固亢進状態(chronic hypercoagulability)が持続する。この状態はCVSTの既知のリスク要因であり、蛇咬傷後のCVST発症を説明するとされている。
CVSTは2つの臨床像を呈する機序をとる。
蛇咬傷は視覚障害の獲得性原因の一つとして報告されており、乳頭浮腫から視機能障害へ進行する経路が重要である。
蛇咬傷後のCVSTを含む長期的な合併症に関する研究は、現時点では非常に限られている。