主な適応

超音波毛様体形成術(UCP)
1. 超音波毛様体形成術(UCP)とは
Section titled “1. 超音波毛様体形成術(UCP)とは”超音波毛様体形成術(UCP: Ultrasound Cycloplasty)は、高密度焦点式超音波(HIFU: High-Intensity Focused Ultrasound)を利用した毛様体凝固術である1)。毛様体破壊術(cyclo-ablative procedures)に分類され、濾過手術やチューブシャント手術が困難または不成功の症例に適応される1)2)。
| 項目 | UCP | 経強膜毛様体光凝固術(TS-CPC) |
|---|---|---|
| エネルギー源 | 高密度焦点式超音波 | ダイオードレーザー |
| 照射方法 | リング型プローブ6点同時 | Gプローブで1点ずつ |
| 術後疼痛 | 比較的軽度 | 強い |
従来の経強膜毛様体光凝固術(TS-CPC)は定量性に乏しく、過剰な毛様体破壊により眼球癆に至る危険性がある。UCPは超音波エネルギーを毛様体に精密に集束させることで、周囲組織への損傷を最小限に抑える。
従来の経強膜毛様体光凝固術(TS-CPC)はダイオードレーザーを経強膜的に照射し、毛様体を広範に破壊する1)。破壊程度の定量性が低く、不足すれば眼圧が下がらず、過度になれば眼球癆に至るリスクがある。一方、UCPはHIFUを用いて毛様体に超音波を精密に集束させるため、周囲組織の損傷が少ない。術後の疼痛も比較的軽度であることが報告されている。また、UCPでは毛様体上皮のみが凝固壊死に陥るのに対し、冷凍凝固術では毛様体が完全に破壊される点も異なる。
3. 適応と装置
Section titled “3. 適応と装置”禁忌・注意
UCPデバイスは、6つの圧電トランスデューサーを内蔵したリング型プローブを備えている。各トランスデューサーは異なるタイミングで6か所の毛様体に超音波エネルギーを照射する。カップリングコーンを眼上に設置し、低圧吸引で固定する構造となっている。
4. 手術手技
Section titled “4. 手術手技”球周囲麻酔(peribulbar anesthesia)を施行する1)2)。経強膜的照明で毛様体の前縁を確認する1)。
カップリングコーンを患者の眼の上に設置し、低圧の吸引で回転を防止する。超音波プローブをカップリングコーンに挿入する。プローブ・カップリングコーン・眼球間の空間を眼科用灌流液(BSS)で満たし、超音波の伝導を確保する。各トランスデューサーが順次作動し、超音波エネルギーを照射する。
術後は局所抗菌薬と抗炎症薬を使用する。結膜充血や前房内炎症は通常一過性であり、経過観察で改善する。
5. 合併症と安全性
Section titled “5. 合併症と安全性”一般的な合併症
Section titled “一般的な合併症”| 合併症 | 頻度 | 備考 |
|---|---|---|
| 結膜充血 | 高頻度 | 通常一過性 |
| 前房内炎症 | 高頻度 | 数日〜数週で消退 |
| 白内障の進行 | 報告あり | 長期フォローアップで確認 |
強膜リングの充血が稀に認められる。術後1日目の疼痛は経強膜毛様体光凝固術(TS-CPC)と比較して有意に軽度であることが報告されている。
重篤な合併症
Section titled “重篤な合併症”低眼圧や眼球癆は複数の臨床研究で報告されていない。従来の毛様体破壊術で問題となる眼球癆のリスクが低い点がUCPの特徴である。
複数の臨床研究において、UCP施行後に低眼圧や眼球癆を生じた症例は報告されていない。従来の経強膜毛様体光凝固術では毛様体の破壊が過度になると眼球癆に至るリスクがあるが、UCPは超音波を毛様体に精密に集束させるため、周囲組織の損傷が少なく、毛様体上皮のみが凝固壊死に陥る。この選択的な作用が安全性の向上に寄与していると考えられる。
6. 作用機序
Section titled “6. 作用機序”房水産生の抑制
Section titled “房水産生の抑制”UCPは毛様体に高密度焦点式超音波を照射し、熱凝固を誘導する。毛様体突起の構造と血管系に変化を生じさせ、房水産生を減少させる。隣接する組織を損傷することなく、毛様体の選択的な凝固壊死が可能である。
毛様体は房水の産生組織であり、毛様体上皮から能動輸送・限外濾過・拡散により前房に房水を供給している。UCPによる毛様体上皮の凝固壊死は、この房水産生能を低下させる。
ぶどう膜強膜流出路への作用
Section titled “ぶどう膜強膜流出路への作用”UCPは強膜内の流出スペースを拡大させ、ぶどう膜強膜流出路からの房水排出を増加させるとされる。毛様体前端部の細胞間隙から毛様体実質を経て、上脈絡膜の結合組織へ至り、強膜を貫通する血管・神経周囲の結合組織を経由して眼外に流出する経路である。
ただし、UCPの眼圧下降効果は主に房水産生率の減少によるとの報告がある。施行3か月後に房水流量が15%減少した一方、ぶどう膜強膜流出には有意な変化が認められなかったとの研究結果も報告されている。
従来法との組織学的差異
Section titled “従来法との組織学的差異”冷凍凝固術では毛様体が完全に破壊されるのに対し、UCP施行後の凝固壊死は毛様体上皮のみに留まることが示されている。この選択的な作用が、眼球癆などの重篤な合併症リスクの低減に関与していると推定される。
7. 最新の研究と今後の展望
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望”臨床研究の成績
Section titled “臨床研究の成績”原発開放隅角緑内障を対象とした多施設共同前向き研究では、74%の成功率(視力脅威となる合併症なし・追加治療不要・20%以上の眼圧下降)が報告された。難治性緑内障104眼を対象とした長期研究では、術前27.6 mmHg(3剤使用)から3年後15.6 mmHg(2.8剤使用)へ低下し、成功率55%であった。
182眼を対象とした大規模後ろ向き研究では、術前23.46 mmHgから術後16.24 mmHgへ低下し、24か月での成功率は85.6%であった。
白内障と開放隅角緑内障を併発する患者を対象としたランダム化比較試験では、水晶体再建術+UCP併用群が水晶体再建術単独群と比較して有意に高い眼圧下降(中央値7 mmHg vs 2 mmHg)と成功率(67.7% vs 16.7%)を示した。
反復施行の有効性
Section titled “反復施行の有効性”1回目のUCP施行後に眼圧が再上昇した症例に対する2回目UCPの有効性も検討されている。術後6か月未満の早期上昇群で52.6%、6か月以降の晩期上昇群で55.5%の成功率が報告され、初回で十分な効果が得られなかった患者に対する再施行の有効性が示唆されている。
今後の課題:
- 長期(5年以上)の有効性と安全性の検証
- 至適な照射条件の確立
- 原発開放隅角緑内障に対する早期介入としての位置づけの検討
- 他のMIGSデバイスとの比較研究の蓄積
1回目のUCP施行後に眼圧が再上昇した31眼を対象とした後ろ向き研究では、2回目のUCPにより早期上昇群で52.6%、晩期上昇群で55.5%の成功率が報告されている。初回施行で十分な効果が得られなかった症例でも、再施行により追加的な眼圧下降が期待できる。ただし、反復施行に伴う毛様体の累積的な損傷については長期的な検討が必要である。
8. 参考文献
Section titled “8. 参考文献”
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. 2020.