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緑内障

オミデネパグ イソプロピル(EP2受容体作動薬)

1. オミデネパグ イソプロピルとは

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オミデネパグ イソプロピル(OMDI、商品名エイベリス®)はプロスタノイドEP2受容体選択性作動薬に分類される緑内障治療薬である2)。従来の第一選択薬であるFP受容体作動薬(ラタノプロスト・トラボプロスト・タフルプロスト・ビマトプロスト)とは作用する受容体が異なる。

OMDIはEP2受容体に選択的に結合し、細胞内cAMPを増加させる。これにより線維柱帯流出路とぶどう膜強膜流出路の両方からの房水流出を促進し、眼圧を下降させる1)2)

項目内容
一般名オミデネパグ イソプロピル
受容体EP2受容体選択性作動薬
濃度・用法0.002%、1日1回点眼

2018年に日本で世界初承認を取得し、2024年に米国FDAでも承認された1)。日本の緑内障診療ガイドライン(第5版)ではプロスタノイド受容体関連薬の一つとして位置づけられ、「EP2受容体作動薬も第一選択になり得る」と記載されている2)

Q OMDIはラタノプロストと何が違いますか?
A

ラタノプロストはFP受容体に作用し、主にぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進するプロスタグランジン関連薬である。一方、OMDIはEP2受容体に作用し、ぶどう膜強膜流出路に加えて線維柱帯流出路からの流出も促進する2)。また、OMDIはFP受容体作動薬で問題となるプロスタグランジン関連眼周症(PAP)——虹彩色素沈着、眼瞼色素沈着、睫毛変化、上眼瞼溝深化(DUES)——が生じないことが大きな利点である1)2)。眼圧下降効果はラタノプロストと同等(非劣性)である1)

3. 臨床試験と有効性のエビデンス

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OMDIの有効性と安全性は複数の臨床試験で評価されている1)

AYAME試験(第III相・日本)

デザイン:ランダム化・検者遮蔽・非劣性試験。日本人の原発開放隅角緑内障/高眼圧症患者

結果:OMDI 0.002%(1日1回)の4週時平均日内眼圧下降は5.9 mmHg。ラタノプロスト0.005%の6.6 mmHgに対し非劣性が示された1)

PEONY試験(第III相・アジア)

デザイン:ランダム化・検者遮蔽・非劣性試験。アジア4か国370眼、3か月1)

結果:OMDI群の平均日内眼圧下降は7.1 mmHg(28.8%)。ラタノプロスト群の7.8 mmHg(31.3%)に対し非劣性が確認された(群間差0.6 mmHg、95% CI: 0.0〜1.2)1)

RENGE試験(第III相、日本、12か月)ではOMDI 0.002%の長期有効性と安全性が確認された。黄斑浮腫は偽水晶体眼でのみ観察され、有水晶体眼では認められなかった1)

FUJI試験ではラタノプロストのノンレスポンダー/低レスポンダーに対するOMDIの有効性が検討された。ラタノプロストで効果不十分な症例でもOMDIへの切り替えにより追加の眼圧下降が得られた1)

PEONY試験では、全9測定時点(1週・6週・3か月の各9時・13時・17時)でOMDIのラタノプロストに対する非劣性基準(群間差の95% CI上限 ≤1.5 mmHg)が満たされた1)。1週時の眼圧下降は両群とも6.1 mmHg(24.8%)と同等であった1)

Q OMDIはラタノプロストの効果が不十分な患者にも有効ですか?
A

FUJI試験において、ラタノプロストのノンレスポンダーまたは低レスポンダーに対してOMDI 0.002%への切り替えが検討された。OMDIはFP受容体とは異なるEP2受容体を介して作用するため、ラタノプロストで十分な眼圧下降が得られなかった症例でも追加の眼圧下降効果を示す可能性がある1)。ただし、OMDIとFP受容体作動薬の併用は禁忌ではないが、タフルプロストとの併用は禁忌とされている2)

PEONY試験における有害事象の発現率はOMDI群40.0%、ラタノプロスト群29.7%であった1)

有害事象OMDI群ラタノプロスト群
結膜充血11.9%5.4%
羞明5.4%0.5%
ドライアイ4.9%2.2%
角膜肥厚3.8%1.1%

重篤な眼有害事象は両群とも認められなかった1)。OMDI群で4例が有害事象により中止となった(ぶどう膜炎1例、虹彩炎1例、羞明1例、異物感1例)1)

PEONY試験では、外見変化に関連する有害事象(眼瞼色素沈着、睫毛肥厚、睫毛伸長)はラタノプロスト群のみで報告された1)。OMDIはEP2受容体作動薬であり脂肪分化を抑制しないため、FP受容体作動薬で問題となる上眼瞼溝深化(DUES)は生じないと考えられている1)

日本の緑内障診療ガイドライン(第5版)の副作用一覧においても、EP2受容体作動薬は虹彩・眼瞼色素沈着「−」、睫毛多毛「−」と記載されている2)

PEONY試験ではOMDI群の平均中心角膜厚変化は+3.4 µmであり、臨床的に有意な角膜浮腫は認められなかった1)。50 µmを超える増加は4例(7眼)で観察されたが、角膜浮腫や視力変化を伴わなかった1)

PEONY試験では黄斑浮腫の報告はなかったが、偽水晶体眼の割合が10.0%と低く、観察期間も3か月と短かった1)。日本での長期安全性試験(RENGE試験)で黄斑浮腫が偽水晶体眼のみに観察されたことから、日本では眼内レンズ挿入眼(後嚢破損例)が禁忌に設定されている1)2)

Q OMDIが禁忌となる患者は?
A

日本の緑内障診療ガイドライン(第5版)によると、OMDIは①無水晶体眼、②眼内レンズ挿入眼で後嚢破損がある場合、③タフルプロストとの併用が禁忌である2)。偽水晶体眼で黄斑浮腫が報告されているため、眼内レンズ挿入眼への使用には慎重な経過観察が求められる1)。また、角膜肥厚が報告されていることから、角膜内皮機能が低下した患者への使用も注意が必要である1)

OMDIは眼内エステラーゼにより活性代謝物オミデネパグに変換される。オミデネパグはEP2受容体に高い選択性で結合する(Ki = 3.6 nM、EC50 = 8.3 nM)。EP2受容体は毛様体および線維柱帯に発現するGタンパク質共役型受容体であり、刺激によりアデニル酸シクラーゼが活性化されcAMPが増加する1)

cAMPの増加は以下の二経路で房水流出を促進する:

ぶどう膜強膜流出路:毛様体筋の弛緩と細胞外マトリックスの再構築により、ぶどう膜強膜流出路からの房水流出が増加する1)2)

線維柱帯流出路:線維柱帯細胞とシュレム管内皮細胞の弛緩により、線維柱帯流出路からの房水流出も増加する1)2)

FP受容体作動薬は主にぶどう膜強膜流出路に作用するのに対し、OMDIは両流出路に作用する2)。また、FP受容体作動薬は脂肪分化を抑制するためPAP(上眼瞼溝深化・眼瞼脂肪萎縮等)を引き起こすが、OMDIのEP2受容体刺激は脂肪分化を抑制しないためPAPが生じない1)

PEONY試験(2024年)により、日本人以外のアジア人集団(インド・台湾・韓国・シンガポール)でもOMDIのラタノプロストに対する非劣性が確認された1)。米国では第III相SPECTRUM 3/4試験でチモロールとの比較が行われている1)

OMDIはFP受容体作動薬に対し、PAP回避という明確な臨床的利点を持つ1)。特に美容的副作用を懸念する患者や、片眼治療で左右差が問題となる症例での第一選択として期待される。

今後の課題:

  • 長期使用(数年単位)での角膜内皮細胞への影響の検証1)
  • 偽水晶体眼における黄斑浮腫リスクの詳細な評価
  • 他薬剤との併用療法の有効性と安全性の確立
  • FP受容体作動薬からの切り替え戦略の最適化
  1. Wang TH, Aung T, George R, et al. Omidenepag isopropyl versus latanoprost in Asian patients with open-angle glaucoma or ocular hypertension: the phase 3 PEONY study. Clin Ophthalmol. 2024;18:2093-2106.
  1. 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.

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