コンテンツにスキップ
緑内障

一酸化窒素供与プロスタグランジン関連薬

1. 一酸化窒素供与プロスタグランジン関連薬とは

Section titled “1. 一酸化窒素供与プロスタグランジン関連薬とは”

プロスタグランジン関連薬(PGA)は緑内障治療の第一選択薬として広く使用されている1)2)。PGAは主にぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進することで眼圧を下降させる。

一酸化窒素(NO)供与PGAは従来のPGAにNO供与機能を付加した新規薬剤である。眼内のエステラーゼにより、PGF2α受容体作動薬とNO供与部位に代謝される二重作用を持つ。PGF2α作用によるぶどう膜強膜流出の促進に加え、NOが線維柱帯・シュレム管の平滑筋を弛緩させることで線維柱帯流出路からの房水流出も増加させる。

現在、2つのNO供与PGAが開発されている:

薬剤由来PGA濃度開発状況
LBN(Vyzulta®)ラタノプロスト0.024%FDA承認済
NCX 470ビマトプロスト0.042〜0.1%第III相試験中
Q ラタノプロステンブノド(LBN)はラタノプロストと何が違いますか?
A

ラタノプロストは主にぶどう膜強膜流出路に作用するPGF2α受容体作動薬である。LBNはラタノプロスト酸に加えてNO供与部位(ブタンジオール一硝酸塩)を含む。NOが線維柱帯とシュレム管を弛緩させることで線維柱帯流出路からの流出も増加させるため、二経路の房水流出促進が得られる1)2)。VOYAGER試験ではLBN 0.024%がラタノプロスト0.005%より有意に大きな眼圧下降を示した(9.00 vs 7.77 mmHg、p = 0.005)1)

3. 臨床試験と有効性のエビデンス

Section titled “3. 臨床試験と有効性のエビデンス”

ラタノプロステンブノド(LBN)

Section titled “ラタノプロステンブノド(LBN)”

LBNの有効性と安全性は複数の臨床試験で評価されている1)

VOYAGER試験(第II相)

デザイン:ランダム化・検者遮検・用量設定試験。413眼、28日間

結果:LBN 0.024%の平均日内眼圧下降は9.00 mmHg。ラタノプロスト0.005%の7.77 mmHgに対し有意に優れていた(p = 0.005)1)

APOLLO・LUNAR試験(第III相)

デザイン:ランダム化・二重盲検・非劣性試験。840眼(統合解析)、12か月

結果:LBN 0.024%(1日1回)の平均眼圧は17.8〜18.9 mmHg。チモロール0.5%(1日2回)の19.0〜19.7 mmHgより全時点で有意に低かった(p < 0.001)1)

JUPITER試験(単群・オープンラベル、130眼、12か月)ではLBN 0.024%により4週時に平均4.3 mmHg(22%)、52週時に5.3 mmHg(25%)の眼圧下降が得られた1)

CONSTELLATION試験(クロスオーバー、25眼)ではLBN 0.024%がチモロール0.5%と比較して夜間眼圧を有意に低下させた(2.5 vs 2.3 mmHg、p = 0.002)。

NCX 470はビマトプロスト由来のNO供与PGAである。Dolomites試験(第II相)では3濃度(0.021%、0.042%、0.065%)のNCX 470をラタノプロスト0.005%と4週間比較した。NCX 470 0.042%(8.24 mmHg、p = 0.028)および0.065%(8.67 mmHg、p = 0.0009)はラタノプロスト(7.43 mmHg)に対し有意に大きな眼圧下降を示した。

LBNの副作用プロファイルは従来のPGAと同様である1)2)。APOLLO・LUNAR統合解析では安全性がPGA単独療法と同等であることが確認された1)

眼局所副作用結膜充血(最多)、睫毛の成長・増加、眼刺激感、眼痛、虹彩色素沈着の増加2)

PGA共通副作用:眼瞼周囲の色素沈着、眼瞼脂肪萎縮(periorbitopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(無水晶体眼・偽水晶体眼で後嚢破損例)、ヘルペス角膜炎の再活性化、ぶどう膜炎1)2)

Dolomites試験では高濃度ほど有害事象の発現率が高かった。結膜充血が最も多く(0.042%群で22.2%)、次いで点眼部位痛であった。3名で中止に至ったが、全体として忍容性は良好であった。

Q LBNは日本で使用できますか?
A

LBN(Vyzulta®)は2017年にFDAで承認され米国で使用されているが、日本では未承認である(2026年3月時点)。日本の緑内障診療ガイドライン(第5版)にもLBNの記載はない。日本では従来のPGA(ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト)が第一選択薬として使用されている。

LBNは眼内エステラーゼによりラタノプロスト酸に代謝される。ラタノプロスト酸はPGF2α受容体に結合し、毛様体筋の細胞外マトリックスをマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)で再構築することで毛様体筋間隙を開大する1)2)。これによりぶどう膜強膜流出路からの房水流出が促進される。

LBNの代謝産物であるブタンジオール一硝酸塩は眼内でNOを遊離する。NOは可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMPを増加させる。cGMPの増加は線維柱帯細胞とシュレム管内皮細胞の弛緩を誘導し、線維柱帯流出路からの房水流出を増加させる。

この二経路作用により、LBNは従来のPGA(ぶどう膜強膜流出のみ)と比較してより強力な眼圧下降効果を発揮する可能性がある2)

NCX 470は眼内でビマトプロストに代謝され、さらにビマトプロスト酸と6-(ニトロオキシ)-ヘキサン酸に分解される。ビマトプロスト酸がPGF2α受容体を刺激し、NO供与部位が線維柱帯を弛緩させる。LBNと同様の二重作用機序を有するが、基本骨格がビマトプロストである点が異なる。

NO供与PGAは緑内障薬物療法における新しいアプローチである2)。従来のPGAにNO供与機能を付加することで、単剤で二経路の房水流出促進が得られる利点がある。

LBNは長期安全性データも蓄積されつつあり、実臨床でのレトロスペクティブ研究で2年間にわたる有効性と忍容性が確認されている。

NCX 470については第III相試験(Mont Blanc試験)が進行しており、0.1%高用量の安全性と有効性のデータが期待される。

今後の課題:

  • LBNとNCX 470の長期予後(視神経保護効果を含む)の検証
  • NOの線維柱帯に対する直接的な効果の詳細な機序解明
  • 他のNO供与薬剤との併用効果の評価
  • 日本を含む各国での承認と臨床導入
Q NCX 470の開発はどこまで進んでいますか?
A

NCX 470はNicox SA社が開発するビマトプロスト由来のNO供与PGAである。第II相Dolomites試験でラタノプロストに対する優越性が示された。第III相Mont Blanc試験が実施されており、0.1%高用量の安全性・有効性データの結果が待たれている。承認されればLBNに続く2番目のNO供与PGAとなる可能性がある。

  1. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern®. 2020.
  1. European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
  1. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern®. 2020.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます